ハンセン病について
1.はじめに
ハンセン病は、聖書や日本書記にも書かれているほど、世界中に古くから存在し、科学・文化の発達した現代社会においても、この病気に対する誤解とそれに基づく偏見は根強く残っています。ハンセン病であった方々が社会に暖かく迎えられ、安心して生活できるよう、ハンセン病に対する偏見・差別を無くし、正しい理解をお願いします。
2.ハンセン病はどのような病気ですか
ハンセン病は、ノルウェーのアルマウェル・ハンセンによって発見された「らい菌」という細菌によって引き起こされる皮膚と末梢神経を中心とする慢性の感染症で、感染力は非常に弱く、仮に感染しても、発症することはほとんどありません。
ハンセン病の最初に現れる症状としては、顔や手足のように、衣服から出ている部分に起こる皮疹と、知覚障がいを主体とする末梢神経炎が見られます。手足の温痛覚麻痺のために、気がつかないうちにやけどして皮膚に水泡を形成することがあります。また、顔面、四肢末梢部のシビレ感や違和感、皮膚の知覚感覚過敏、日常動作困難など、神経症状を主訴とする場合もみられます。
3.ハンセン病の現状
1941年、米国で特効薬であるプロミンが発見され、現在は、DDS(ジアフェニルスルホン)、クロファミジン、リファンピシンなどの新薬の併用による多剤併用療法(MTD)が確立され、早期発見と早期治療により、短期間で治る病気になりました。
このような化学療法がなかった頃は、この病気は「らい」または「らい病」といわれ、不治の病と考えられており、顔面や手足などの後遺症が、ときには目立つことから、恐ろしい伝染病のように受け止められていました。
ハンセン病は、潜伏期間が数年以上と長いこと、病気がきわめてゆっくり進むこと、さらに同一家族で発病する人が多い場合があることから、遺伝病という誤解が生じましたが、先に説明したように、らい菌による感染症です。このような誤った理解から、ハンセン病患者だけでなく、家族も本当につらい思いをすることになりました。
平成8年、らい予防法は廃止となり、入所者は当然のことながら自由となられましたが、身体の障がいに加えて平均年齢が80歳になっており、また社会的諸理由により社会復帰する人は少数です。
一刻も早く、私たちの意識から差別と偏見を捨て去ることが、今、とても重要です。