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生川 美江先生

 

生川 美江先生


鍋物をよく食べる家庭の子どもは成績が良い⁉

 冬の季節、おいしい料理の代表格といえば鍋物ですね。
随分前になりますが、「鍋物をよく食べる家庭の子どもは成績が良い」ということが話題になったことがありました。インパクトのある話題だったため、テレビでも取り上げられました。

 「この食べ物が健康に良い」というような情報に触れることはよくありますが、行動に移す前にいったん冷静になりましょう。この場合、鍋物以外の食べ物については検証されていません。さらに重要なことは、「鍋物を食べれば成績が良くなる」わけではないことです。

 食事と健康との関連には、食べ物や栄養素に限らず、食事の環境や生活習慣など、ほかの因子が大きくかかわってきます。この話題については、このようなことが言えるのではないでしょうか。
 家族で鍋物を囲む家庭は、家族で時間を共有している、そして、家族で話をする機会が多いということです。最近の調査*では、家の人と学校での出来事について話をしている児童は、話をしていない児童よりも試験の成績が良かったと報告されています。食事をするということは食べ物を摂ることにとどまらず、古くからコミュニケーションの場としての役割を果たしてきました。寒い日には家族で温かい鍋を囲んで、お子さんと色々な話をしたいですね。

 しかしながら、コロナ禍において、鍋物は家庭内感染のリスクがあるとされ、あまりお勧めできないのが現状です。そこでご提案したいのが「ひとり鍋」です。それぞれ好みの味付けをして、それがどんな味なのかを家族に伝えます。この場合のポイントは二つです。「おいしい」だけではなく、どのようにおいしいのかを自分なりの言葉で表現すること、そしてお子さんの感じたことを決して否定しないことです。楽しみながら食べ物に関心を持つ、「食育」の良い機会になることでしょう。ぜひ一度お試しください。

*平成30年度「全国学力・学習状況調査」文部科学省


お手伝いにはいいことがいっぱい!

 入学・進級などの新しい生活にも慣れてきたこの頃,お子さんの新しい習慣にぜひ取り入れていただきたいのがお手伝いです。  家族の食に関わるお手伝いは,調理に限らず,食器の準備や盛り付け,片付け,食材の買い物など色々あります。包丁を持つことや火を扱うことに不安があるならば,ちぎる,混ぜる,盛り付けるなどの作業から始めてはいかがでしょうか。遊び感覚で楽しむ中で自然と手先を使う機会が増えます。その他にも,量の概念が身につく,作業の手順や効率化に関する能力が向上するなど,お手伝いには良いことがたくさんあります。また,家事参加することは,家族の健康や高齢の方に対する心配りにもつながります。何より,ご家族の喜ぶ顔を見られることは,お子さんにとってたいへん嬉しいことでしょう。

  食育基本法の前文に,「様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し,健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進する」とあるように,幼少期からの食に関わる経験が,生涯にわたる「健全な食生活」の基礎になるといわれています。小学生の頃にお手伝いをしていた大学生は,調理が得意だという研究結果(※1)もあります。
 筆者らが行った調査(※2)では,家族との調理経験のある児童は,お手伝いの頻度や,調理が好きな割合が高く,ひとりで調理をした経験も多いことがわかりました。家族と一緒に食事作りをするなかで,自身の食生活を営む力を身につけていくのですね。

  一方で,子どもと家事を行うことについて「自分でやった方が早い」,「子どもにやらせると自分の負担が増える」,「自分がやった方がきれいだ」と感じている保護者もいるようです(※3)。皆さまにも思い当たることがあるのではないでしょうか。忙しい毎日の中でも、少し余裕のある日に一緒に家事をする時間を持てるといいですね。

※1駒場千佳子,武見ゆかり,中西明美,松田康子,高橋敦子:女子大学生の調理をする力の形成要因に関するフォーカスグループインタビューを用いた検討, 日本調理科学会誌 45(2012)
※2生川美江,磯部由香,平島円,中井茂平:小学生の家庭における食事作りの実態,三重大学教育学部研究紀要 第 71巻(2020)
※3大和ハウス工業株式会社:子どもの家事参加実態調査(2017)


家族で楽しむ行事食

 保護者の皆様にとって,小学校時代の楽しい思い出は何でしょうか? 春の遠足,夏のキャンプ,秋の運動会や修学旅行,冬にはクリスマス会など,様々な記憶が思い出されるのではないでしょうか。
 ところが,このコロナ禍で子どもたちを取り巻く環境は激変してしまいました。楽しみにしていたイベントが中止や縮小を余儀なくされました。夏休みにも出かけることができなかったばかりか,今後もイベントの実施には制限がついて回ることが考えられます。子どもたちに楽しい思い出を作ってあげられず,胸を痛めておられる保護者の方もおられることでしょう。
 そこでご提案したいのが,「家族で楽しむ行事食」です。「行事食」とは,季節ごとの行事やお祝いの日に食べる特別の料理のことを言います(*1)。日本には四季があり,古くから季節ごとの様々な行事が行われてきました。そして行事の時には必ず特別な料理が作られました。家族の幸せや健康を祈願するもの,作物の豊作に感謝の気持ちを表すものなど,数多くの料理が現在に受け継がれています。保育所や幼稚園,学校給食においても,節分,ひな祭り,七夕,お月見などの行事食が提供されています。子どもたちは行事や,それにまつわる食事や食育を経験していますので,ぜひご家庭で話題にし,行事食を作ってみてください。楽しかったこと,おいしかった経験は言葉にすることで記憶に残り,思い出すときに幸せな気持ちになります。また,行事を経験することは,イベントの減少で希薄になりがちな季節感を取り戻す機会にもなることでしょう。
 「すべて手作りで」と気負う必要はありません。代表的な行事食であるおせち料理など年末年始の料理は8割以上の人が食べていますが,すべて手作りする人は3割です(*2)。調理済み品も多く出回っていますので,お子さんと一緒に料理を盛り付け,「いわれ」を調べることから始めてみませんか。

*1農林水産省ホームページ,子どもの食育,「行事食について」
*2農林水産省,「和食文化に関する意識調査」,令和元年

 


朝食を食べれば元気もりもり、やる気いっぱい!

 皆さま、今朝目覚めたときの気分はいかがでしたか?「疲れが取れない」「もっと寝たい」と思われた方はありませんか?そんな気分を元気いっぱいに変えてくれるのが朝食です。現在、わが国では「早寝早起き朝ごはん」運動が展開されています。今回は、「早寝早起き朝ごはん」にはどんな良いことがあるのかについてお話します。

①一日を元気に過ごせる!
 私たちの体内時計の周期は24時間よりも若干長いのですが、朝の光を受けることで24時間に調節されます。加えて朝食を食べることで寝ている間に低下した体温が上がり、休んでいた脳や身体機能に1日の活動の準備が整います。

➁やる気が出る!
 毎日朝食を食べる子どもには「集中できない」「イライラする」といった訴えが少ないという報告があります(*1)。また、国語や算数のテストの点数は良い結果でした(*2)。脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、朝食を食べないと長時間にわたってエネルギーが不足する状態になり、やる気や集中力が続きません。朝食を食べて、授業に集中できる環境を整えましょう。また体力測定でも、朝食を食べている子どもの方が良い結果が出ています(*1)。

③生涯健康に過ごせる!
 朝食を食べると、大腸が動き出し排便を促します。現在、日本人に最も多いがんは大腸がんです。便秘をすることは良いことではありませんが、現代は野菜が不足しており便秘の人も多くみられます。家族で食事をしている家庭では野菜や果物など健康的な食品の摂取も多く、生涯を健康に過ごすために必要なバランスの良い食生活を送っています(*1)。
 保護者と子どもの欠食率には関連がみられます(*3)。朝食欠食の理由は親子ともに「食欲がない」「時間がない」が多く、子どもでは「用意されていない」がそれに続きます(*4)。少し早寝早起きして、果物や乳製品を摂ることから始めましょう。徐々に生活リズムが整い、朝から「お腹が空いた!」というお子さんの元気な声が聞かれることでしょう。

*1農林水産省「食育ってどんないいことがあるの?」
*2令和元年度「全国学力・学習状況調査」文部科学省、国立教育政策研究所
*3平成27年度「乳幼児栄養調査」厚生労働省、
*4平成22年度「児童生徒の食生活実態調査」日本スポーツ振興センター


コロナ禍で始める離乳食~ひとりでがんばりすぎないで~

 2年余り前、新型コロナウィルスの第一波に見舞われた頃、離乳食講座や栄養相談会が軒並み中止となりました。筆者は、乳幼児とママ・パパの支援を目的としたNPO法人で管理栄養士として活動していますが、ママたちから「不安」、「孤立感がある」などの声が寄せられたのを受けて、Zoomを利用した講座やLINEを利用した栄養相談を実施しました。現在は、市町村の支援も感染対策を施しながら実施されていますが、対面には不安があるという方には電話相談という方法もあります。ご自分に合った方法を選び、専門職に相談することができますので、利用してみましょう。
今回は、離乳食を始めるときに多いお悩みにお答えする形で書かせていただきます。

1.コロナ禍で離乳食を始めることが心配
離乳食は直接あかちゃんの体に入るものですから、ママ・パパは心配になりますね。しかしながら、元々離乳食は衛生的に作られるものです。手洗いを徹底し、新鮮な食材を使い洗浄、加熱を十分に行えば、コロナ禍でも特別ということはありません。

2.始めるタイミングがわからない
あかちゃんの準備が整ったサインはいくつかありますが、初めてのママ・パパには見極めは難しいものです。調査の結果(*)では、8割以上の方が「月齢」で決めています。始めた月齢は「生後5か月」と「生後6か月」がほぼ同数です。ママ・パパの準備が整ったら始めてみましょう。

3.始めたけれど、食べようとしない
食べない理由はいくつか考えられます。
・押し出してしまうとき…生後5か月頃までは、舌を前に押し出す反射が残っています。押し出してしまっても、嫌がっているとは限りません。数日間は一口でもよしとしましょう。
・泣き出してしまうとき…あかちゃんの集中力は長くは続きません。泣き出したら時間を置きましょう。初期の頃は、「食べる練習」とのんびり構え、嫌がったら離乳食は中断して母乳やミルクをあげましょう。

どうぞ、ひとりで悩まないで。お困りのときはご相談ください。

(*)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)


離乳食を始めたけれど・・・どう進めたら?あかちゃんが食べないときは?

 私たち管理栄養士が受ける相談の中で最も多いのが、「離乳食の進め方を知りたい(進め方がわからない)」ということです。これは、コロナ禍以前から変わりませんが、最近は中でも「メニューを知りたい」という声を聴くことが増えています。
 以前は支援センターの相談会に出向いた際、ママ同士でお話しするところをよく見かけましたが、コロナ禍の現在は親子二人で静かに遊んでおられます。また、支援センターの利用や自治体主催の離乳食教室では人数制限や入れ替え制を取り入れているところもあります。このような状況下で、ママたちの情報交換の機会が減っているのではないかという印象を受けます。
 
 離乳食の進め方は、母子手帳に記載されている「進め方」や「ポイント」が参考になります。分量にはあまりこだわらず、初期にはトロトロしたもの、その後はあかちゃんの成長に応じ、お口を何回かもぐもぐして飲み込める硬さにします。メニューについては、特別なものを用意する必要はありません。おうちの方の食事に目を向けてみると、あかちゃんに食べさせられるメニューもたくさんあります。中期になれば、大人の食事に調味する前に取り分け、軟らかく煮たものをあげてみましょう。調味前に取り分けることが難しければ、出来上がった料理を軟らかくゆでれば味も薄くなります。
 
 「小食」、「むら食い」、「遊び食べ」、「偏食」などの相談も多く、共通しているのは「食べない」ことです。中には「食べ過ぎる」という相談もありますが、少数派です。離乳期のお悩みには「食べない」ことが多いのです。
 あかちゃんが食べない、あるいは思ったよりたくさん食べる、そんなことが続いたら、母子手帳の乳児(幼児)身体発育曲線を確認しましょう。グラフの帯の中でお子さんなりの発育曲線を描いているかどうか、そして何より大事なことはご機嫌が良いかどうかです。
 
 小さな心配事が大きな不安になる前に・・・どうぞご相談ください。
 


離乳の意義~離乳食を進めるうえで大切にしたいこと~

 今回は、離乳食の役割についてお話します。あかちゃんが生後5か月頃から離乳食を食べる意義には次のようなことがあります。

1.エネルギーや栄養素の補給:成長に従って増えるエネルギーや栄養素量を水分の多い乳汁のみで賄うことはできなくなってきます。
 そのために水分が少なく少量でも多くのエネルギー等が摂れる離乳食に移行します。
2.消化機能の増強:このころに離乳食を与えると消化酵素が活性化します。
3.精神発達の助長:多種の食べ物を経験することで、五感が刺激されます。
4.食習慣の確立:食事時間を中心に生活リズムが確立するとともにバランスの良い食生活の基礎を築きます。
5.摂食機能の発達:5か月を過ぎたころから舌の動きが発達し、トロトロのものから形のあるものが食べられるようになってきます。

 管理栄養士として離乳期から幼児期のお子さんを持つ保護者の方々からの相談を受ける中で、特に気を配っていただきたいと思うのが「摂食機能の発達」です。あかちゃんがお乳を飲むのは哺乳反射で、教えられなくても唇と舌で乳首を加えて吸い、口の中に溜まった乳汁を飲み込みます。これに対し、「食べる」ということは随意的な行動です。すなわち、あかちゃんが「食べたい」と思わないと口を開いてくれません。この時に大切なのは安心できる環境です。日頃から慣れた室内で、安心できる保護者や保育者から離乳食をいただくということが大切です。沢山食べさせたいと力が入りすぎると、あかちゃんに緊張が伝わります。まだまだ食べる練習をする時期ですから、「残しても良い」くらいの楽な気持ちで接することで、あかちゃんも安心して食べ方が上手になっていきます。

 また、あかちゃんは大人が食べる様子を見て食べ方を学びます。コロナ禍において相手の口元を見るという機会が減っていますので、できるだけおうちの方と一緒に食卓を囲み、「もぐもぐしようね」と声がけをしながら食事をするとよいでしょう。

 


人生初の卒業とは?

 皆様にとって人生初の卒業はいつでしたか?保育所や幼稚園の「卒園」という方が多いかもしれませんね。
 
 実は、私たちはそれより以前に卒業を経験しています。それは、母乳やミルクからの卒業です。以前は断乳といいましたが、近年は卒乳と呼んでいます。ご自身が卒乳(断乳)したことを若いママ・パパは覚えておられないと思いますが、高齢の方では「覚えている」という方があります。

 このお話をするには、我が国の離乳食の歴史についてご説明する必要があるでしょう。わが国で初めて「離乳」という概念が生まれたのは昭和35年、当時の文部省が発表した「離乳の基本」(現行は厚生労働省による「離乳・授乳の支援ガイド2019年」)です。それ以前には、離乳食を一から作るということはあまりなく、ご飯に数種類の野菜を入れて軟らかく煮た「おじや」や、時には大人がかみ砕いた食べ物を与えたりしていました(これは虫歯や感染症の一因でした)。これらの食べ物では必要なエネルギーや栄養素が十分に摂れず、栄養状態が悪くなるということもあったため、「離乳期栄養失調」という言葉もありました。そのため、当時のお母さんたちは、できるだけ長く母乳やミルクを与えました。3歳以上までというのは珍しくなく、時には5歳になっても母乳を飲んでいる児もあったようです。いざやめさせたいと思った時には子どもが離さず、乳首に梅干しや苦い薬を塗ってやめさせたという話も聞きます。そんなことから、「断乳」という言葉が使われたのかもしれませんね。

 近年は、離乳食が進んであかちゃんが自然に欲しがらなくなるのを待つ「卒乳」という意識が高まっています。1歳半までに卒乳する児が多くみられますが、2歳を過ぎても飲んでいる児もいます。相談の目安は「食事を3回食べているか」と「噛めているか」です。食事をしっかり噛んで食べたうえで牛乳代わりに飲んでいる場合や、心の安寧のために一日1~2回欲しがるというのであれば、無理に取る必要もありませんが、ご心配な方はどうぞお気軽にご相談ください。

 


幼児期に多い「食べない」悩み

 離乳完了期から幼児期にかけて、保護者の方から「離乳食の頃は何でも食べていたのに、最近は食べないことが増えて困っている」というお話をよく伺います。

 「乳幼児栄養調査」(平成27年度)(*1)の結果、子どもの食の悩みについては、「時間がかかる」、「偏食」、「むら食い」、「遊び食べ」、「食事よりも甘いお飲み物やお菓子を欲しがる」、「小食」などが上位に上がっています。筆者が所属するNPO法人が実施している相談会でも同じような傾向がみられます。
 これらの項目に共通するのは「食事を食べない」ということです。

 幼児が食事を食べない理由は、自我が芽生えて食べたいものと食べたくないものがはっきりしてきたこと、乳児期に比べると成長が緩やかであること、初めての食べ物には不安を覚えることなどです。

 前述の調査結果を平成17年、平成7年、昭和60年とさかのぼってみても、食の悩みについての回答の上位にはほとんど変化がありません。子どもが食べないことは長年保護者の方々を悩ませているのです。

 食事量が少ない時は、ご機嫌がよいか、元気に遊べているか、よく眠れるか、成長曲線に大きな変化がないか注視しましょう。体調に問題がなければ、成長とともに食事量も増えていきます。この間、避けるべきことは、食事そのものが嫌いになってしまうことです。保護者の方の食べさせたい気持ちがあまり強いとお子さんがプレッシャーを感じてしまうこともあります。
 「いつか食べられるようになるかな」とゆったり構え、できる限り家族で食卓を囲み、おいしそうに食べる姿を見せましょう。食卓が楽しく安心できる場所であれば、食べてみようという気持ちも芽生えます。

 体調や成長に変化や不安があるときは、医師に相談するほか電話相談やライン相談もぜひご利用ください。

*1厚生労働省/6歳未満の子どものいる保護者を対象に、10年ごとに実施