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嘉成 永慈先生

 

嘉成 永慈先生


寄り道を楽しむ

 2020年からのコロナの流行で生活の中で様々な自粛を強いられる場面がありました。いくら自宅とはいえ、狭い空間でじっとしているのは肉体的にも精神的にも辛いものがあります。その反動からかキャンプブームが訪れましたね。私の地元のキャンプ場にも例年以上にたくさんの人が訪れ、自然の中で遊んでみえました。
 今回はそんな自然の中での遊びを、日常で楽しむ秘策をお伝えしたいと思います。それは、題名にもある通り『寄り道を楽しむ』ということです。
 自然の中で子どもを遊ばせようと思うと、何をしようか?と考えます。危険はないか?必要な道具は?と、考えだけが先走りどんどんハードルが上がっていってしまいます。自然の中で遊ぶってそんなに難しいことではありませんよね。『〇〇をする』という目的を達成するのではなく、『自分の楽しみを見つける』くらいが心地良いですね。あくまで遊びですから。
 おすすめはご自宅周りの散歩です。ただ『歩く』だけのことをどれだけ楽しむことができるでしょうか?子ども達はきっと、お父さんやお母さんと歩けるだけでニコニコですね。小さな草花を見つけたり、跳んだり走ったり、風を感じたり、夜は星空を見たり。普段は忙しなく通り過ぎるだけの道にたくさんの発見があるはずです。歩かせる、見つけさせるではなく、寄り道を存分に楽しんでください。


そりゃ緊張もするよね

 前回はお家の周りのお散歩をおすすめさせてもらいましたが、いかがだったでしょうか?ちょうど季節の変わり目で、お家の周りにも新しい発見がたくさんあったかと思います。
 年度が変わり、皆さんの生活も少し変わったのでしょうか?私の園では小さい子がお母さんと離れるのが寂しくて、え~んえんと泣いています。その中で、 紹介したい出来事が一つありました。
 年中の男の子が門の前で、まるでダンゴムシのように丸まっています。「どうしたの?」と聞いても返事はありません。しばらくそのまま待っていました。10分ほど経った頃「きんちょうする」と彼は言いました。4歳の男の子がこれほど的確に自分の思いを表現できるものでしょうか?昨年度、言葉も通じているのかいないのか、本能の赴くままに体を動かしていたような、わんぱくな男の子の大きな成長を感じました。 「ニワトリさんが卵を産んでるよ」と誘い、一緒に鶏小屋へ行きました。卵を見つけると、「保育室にいる先生に教えてあげる。」と彼は走って行きました。
 そのまま何事もなく保育室に入れて、お母さんとすんなりバイバイできるならそれに越したことはないのかもしれないですが、長い園生活、さらに長い学校生活でうまくいくことばかりではありませんよね。そんな時こそ心に余裕を持って寄り道を楽しみましょう。
 子ども達にとって、自分の思いにピッタリ合った言葉を探すのも時間がかかります。やりたいなとは思っているのに、足がなかなか前に出てくれません。でも、うまくいかないその事を自分のことと捉えてなんとかしようとしています。大きな変化が起こっていますね。それは大きな成長です。 普段の生活の中にもそんな子ども達の微笑ましくも、ヤキモキしてしまうそん出来事がきっとあることでしょう。大人から見ればなんて事のないように思えてしまうことですが、今まさに成長している大事な時間を、ぜひじっくりと味わっていただきたいです。

不安をコントロールできないこと

 夏真っ盛りになりましたね。私の園ではお泊まり保育が無事に終わりました。夏休みは、小学生の子達とキャンプで大忙しです。
 さて、今回はキャンプ(お泊まり保育)で気になったことを紹介したいと思います。それはお泊まりが出来ない子が増えたことです。
 ある男の子達が「今日は家に帰りたい」と言ってきました。(彼らは年少からうちの園に通い現在4年生。小学生のプログラムに通っています。)4年前のちょうど今頃、不安だったお泊まり保育を乗り越え「明日もやりたい!」と言ってお泊まり保育を楽しんでいたのに、4年経ってお泊まりが出来なくなっていきました。夜の闇の言いようのない不安を自分の中でコントロール出来ないのです。
 「もちろんいいよ。」と帰りたいと言いにきた子達に答えました。「でもみんなは大人になって自分で幸せを作っていくために、今日このキャンプを1段目としてやっているのだけど、泊まることをしないで帰る君達の1段目は何になるの?」と続けて聞きました。それから彼らと一緒に1時間ほど考えていました。突然閃いて「明日の朝6時に来て仕事をする」「家で自分のことを自分でする」と言い、次の日その通りになりました。
 自立性と自律性は2歳で獲得すると言われていますが、どうやら、5歳と9歳でこのように補習のような形で現れるようです。もちろん2歳の頃に「やりたいこととやっていいこと」を丁寧に関わるのが1番良いのですが、2歳を過ぎてもチャンスはやって来ます。
 根本的にはやることは同じですね。子どもが自分で考え決断できるように関わり、多少の間違いがあっても先に答えを用意せずに一緒に寄り道を楽しみましょう。でも、ダメなものはダメ。
 自分のこと(物の準備など)を自分でやってほしい保護者のみなさん、片付けを一緒にやってあげるといいですよ~「今日は何が楽しかったの?」とか対話をしながら。

自分の好きなところ

 秋も深まり山が段々と色づいてきました。秋の深まりとリンクするように、子ども達の仲がどんどんと深まっていく時期ですね。私の担当する年長児も「みんなが入れるお家を作りたい」と森の中に家を作ろうと盛り上がっています。
  ある日、お母さんから相談を受けました。友達との距離が近づいていく中で、「ある子には優しいけれど、ある子には冷たく、相手によって態度を変えるところがすごく嫌なんです。」と。優しいのは良いけれど、冷たい態度になるのは確かに親としては嫌ですよね。でも、どうして人によって態度が変わるのでしょう?どうやら『出来る子』と『出来ない子』とで態度が変わるようなのです。
 お友達を大切にしてほしいという願いを持って子育てをされているので、お母さんはがっかりです。ではどうしたら良いのでしょう?よくよく話しを聞いていくと、どうやらお母さんはその子の『出来たこと』を褒め、『出来なかったこと』を叱るそうなのです。うんうん。なんとなくわかってきました。でも、それって当たり前と言えば当たり前なことですよね。しかし、子どもにとっては親の愛を確かめる大事な時間なのです。
 極端に言えば、『出来る子=良い子=お母さん(先生や友達)が好きな子』になるわけです。出来る子や良い子じゃなくっても、お母さんにとっては特別に大切な子に決まっているのに、思っているだけではなかなか伝わらないものですよね。
 自分のお子さんをどれだけ愛しているか、声を大にして言いましょう。そして、同じ分だけお子さんの気持ちを聞きましょう。「どうするべきか?」「何が正しいか?」ではなく、今の気持ちを。
 子ども達はお父さんやお母さんからもらった言葉を大切に育てている途中です。自分の好きなところも、友達の好きなところも見つけられると良いですね。
 

信頼への言葉

 もうすっかり春めいてきましたね。私の園の周りでもミツバチが忙しそうに働いています。もうすぐ年度が変わりお子さんも、お父さんお母さんの環境も大きく変化する方もみえることでしょう。コロナ禍がもう2年経とうとしています。さまざまな場所で生活環境も変化があったことと思います。私の園でもコロナによって行事などが減り、保護者間での繋がりが希薄になってしまうのではという危惧がありました。
 前回、愛されているという実感が自信に繋がるという話をしましたが、それは大人だって一緒です。「必要とされている」そういった繋がりの中で人は生活をしていますから、その繋がりが薄くなることはとても不安なことです。心に余裕がなくなるとどうしても子どもにも厳しい言葉が増えてしまいます。
 「〇〇はもう準備したの?」「大丈夫?」「そんなやり方じゃダメでしょ。」と言われ続けると子ども達は「あなたはダメな子ね。」と言われている気持ちになります。時にはケンカになったりして、こんなことを言いたいんじゃないのに…と後悔するお母さんも多いのではないでしょうか。そんな時は客観視して高い視点から、言葉にするとどう伝わるか?この思いをどう伝えるべきか?お困りの方は、心が疲弊している時こそそんな風にお互いのことを考えてみてください。
 そして出来るならば、言葉と立ち位置を『心配』から『信頼』へと変えてみてください。
 「〇〇の準備でお母さんが手伝えることはある?」「失敗してもあなたならきっといつかできると安心してるの。」「あなたはお母さんとは全然違う方法を考えられるから素敵。」と言われ続けるとお子さんはどう受け取るでしょうか?
 一人の人間としては対等な関係ですが、親と子では立場が違いますから同じ土俵に立てば親の方が優れているに決まっています。同じ土俵には立たないで。子どもが抱えている問題はよーく聞いて受け止めて、信頼の言葉で返してあげてください。
 子ども達に祝福を。子どもとの関係は自ずと良くなっていきます。
 

子どもの脳を育てる

 段々と暑さが増してきましたね。川や海などに出かけられる方も多いと思います。この時期の子ども達は、自分の周り(見えている範囲)よりも遠くの場所に興味を持ち始めます。そこで出会ったものに夢中になっていくのですが…
 夢中になる段階よりもっと前の初めてやってみるという時「やりたくない」という声を最近はよく聞きます。よく理由を聞くと「やるのがこわい」とか「できなかったらいや」など。どうやら失敗するのが怖いのだそうです。うんうん。確かにそうですね。誰も失敗したいと思ってやる人はいないです。気持ちはそうなのですが、実は脳は別なのです。脳はめちゃくちゃ失敗を欲している、いわば失敗待ちの状態なのです。
 何か失敗をしたら、気持ちが悪いですよね。その気持ち悪さを受けて脳は本人が寝ている間に自動的に、『なぜ失敗をしたのか?』ということを徹底的に解明しようとします。(子ども達のお昼寝はこういう意味もありますね。)こうして失敗からどうすれば成功するのかを脳は学習していってくれます。もちろん、成功体験も大事です。成功をしたとき脳は最高の快感を覚えます。失敗はいわゆる不快です。不快はなるべく避けたいのが心情ですが、経験の価値としては成功と失敗は全く同じです。
 以前、保護者の方でとても素敵なことをお子さんに言われていました。前の日からとっても楽しみに準備をしていたのに、いざやってみると全然思った通りにいかなくて落ち込んでいる我が子に「やってみようと思って頑張ったんでしょ?お母さんは〇〇くんのこと、とてもカッコイイと思うよ。」
失敗しても大丈夫!と安心できるその根っこには、お母さんからの大きな愛情があるのでしょうね。
 

思い通りにいかない子育て

 秋も深まりとても気持ちの良い日が続きますね。よく遊びに行く山も紅葉が始まりとても綺麗な景色です。
 園の子ども達も山が大好きでこの時期は特に山に遊びに行くのですが、先日は自分の子どもと一緒に山登りに行きました。
 
 私には小学校3年生になる娘がいるのですが、その子に湧き水を汲みに行こうよと誘い山に行きました。「いいよー」とご機嫌な返事。いつも一緒に遊ぶのを楽しみにしてくれてはいるのですが、この娘が中々のじゃじゃ馬なのです。 意気揚々と車から降り、いざ山に登り始めると寄り道ばかり。全然前に進みません。たくさん気になるところがあるのでしょうね。『ただ歩く』ということは無くキョロキョロしながら歩きます。かと思えば私を抜かしズンズンと前に進んだり。
 皆さんからすればなんてことない話かもしれませんが、登山歴のある方からすれば、なんて危なっかしい歩き方なんだと思われることでしょう。私も一応登山歴もありますし、そもそも野外体験保育のアドバイザーなんてやらせてもらってることもあり、周りの目が気になってしょうがない。そしてそんな日に限っていろんな知り合いに出会うのです。「先生の娘さんですか?」なんて聞かれて。「はい…」(あぁ恥ずかしい)

 帰りなんて降り道をほぼ走って降りていくんです。あんまりにもひどいと思って「絶対にケガをしないっていう歩き方で歩いてみて」と言ったら、石の上をぴょんぴょんジャンプし始めるもんだから、(わざとなの?それともこのタイミングで挑戦を始めたの?)よくわからないけど「もう普通に行こう」と言ったらちゃんと走り出しました。

 夜ご飯を食べて庭で遊んでいると、突然地べたに寝っ転がって「星がキレイ」と言うので、ゴザを敷いて一緒に星を見ていたら、私の頭に砂をかけてゲラゲラ笑っているんです。「これはひどいじゃん」と言うと「お父さんなら全部笑い事にしちゃうんでしょ?」と言われてしまいました。これは信頼だと受け取っておきます。でもひどい娘です。

 ほぼ愚痴になってしまいましたが、私の思い描いている登山とは程遠いもので「もっとちゃんと歩いてよ」と言いたくなるような姿ではあるのですが、それは私の勝手な期待ですよね。私のそんな小さな見栄や期待は全く思い通りにはなりませんでしたが、娘は本当に一日幸せそうで、私の大きな願いはちゃんと叶ったのです。