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木村 由美子先生

 

木村 由美子


最初の話 絵本と声

 本は平等です。誰でもそれを読むことができます。当たり前ですが中身も同じ。図書館にお越しください。無料です。誰でも、生まれて間もない赤ちゃんでも本を借りることができます。
 絵本は相棒です。これから子どもを持つ方、今子育てをしている方の。絵本は子どもと「うまーくつきあう」ことができます。子育てに自信がない時しんどい時にはそっとフォローに回ってくれます。絵本を子育ての相棒にしてもらいたいと思います。
 今時の絵本には何でもあります。子どもに伝えたい愛や友情、命や平和、夢や希望。知ってもらいたいこの世界のこと、先人の知恵や足跡。共に考えていきたい未来のことやその手掛かり。歴史、芸術、自然科学、哲学さえもわかり易く描かれているのが今時の絵本なのです。
 3つのカテゴリーを使い分けて読んで下さい。
 1つ目は「心を育てる本」。愛も思いやりも目に見えなくて説明しにくい。でも絵本ならうまく伝えてくれます。それと「知識の本」。知らなかったことを知ると子どもはうれしいんです。
 2つ目は「楽しい本」。読んで笑う、それだけ。でも笑ってる子どもはかわいいです。
 3つ目は「親の心が動く本」。一息ついたり荒ぶる心を静めたり。「ママが泣ける絵本」というジャンルがあるくらい。
 そして、絵本を読む時にどうしても必要なものがあります。それは声。他の誰でもない親の声です。声はその人独自のもの。そして心に残るものなのです。絵本の中の言葉は全て他人が書いたものです。しかしひとたび親が、その唯一の声で読んであげれば、子どもにとってかけがえのないものに変わります。「子どもの時本を読んでもらった」ことを覚えている人は多いのです。お腹の中の赤ちゃんに読んであげるのもいいですね。親の声はもう聞こえているのですから。
ある日ある時「あ、効いてる」ときっと感じる相棒の力。絵本を相棒に子育てをしてください。


二番目の話 絵本を楽しむヒント

 「子どもと絵本を楽しみましょう」よく聞く言葉ですが、初めて子育てをされる方は「どうやって?」と思われるかもしれません。「楽しむ」は人それぞれ。でも、絵本を楽しむヒントがあるとしたら…今回はそのお話です。
一番初めに知っておいていただきたいこと、それは絵本そのものが持つ力のこと。言い換えると「絵本は子どもが楽しめるようにちゃんと作られている」ということです。
ミリオンセラーの赤ちゃん絵本「いないいないばあ」(*1)を例にお話します。これは動物が「いないいない」と顔を隠し、頁をめくると「ばあ」と顔を出す遊びが繰り返される絵本です。この絵本には色々な工夫があります。例えば
・1頁に絵は1つで背景画がない …これは視力の発達していない赤ちゃんに見えやすい、わかりやすい絵です。
・動物は皆「正面顔」で描かれ「黒い目」が真っすぐこちらを見つめてくる …これが赤ちゃんの興味を引きます。
・動物は頁の前後で「全く同じ大きさ」で描かれている …このお陰で赤ちゃんは2つが同じものだと気づき、動物が顔を出したことを発見して喜ぶようになります。
 絵本の絵は赤ちゃんが楽しめるように描かれているのです。
さらに、この絵本の大きな魅力は「いないいないばあ」という実生活の中の普遍的な子どもの遊びを取り上げている点にあります。正に読み聞かせの現場で感じるのですが、ママもパパも誰でもすんなりこの絵本を読み始めます。自分の知っている言葉のリズムで読み進め、「ばあ」の所ではマザリーズ(*2)とも言える明るい高い声を出します。
 馴染みある子どもの遊び、音声化される言葉のリズムと頁をめくるリズム、そして優れた絵、これらが相まってこの絵本の「楽しい」が作り出されています。よくできた絵本だなぁと思います。
 勿論、絵本を選ぶことが必要です。でも、まず絵本自体が楽しむための力を持っていることを知って、子どもと絵本を楽しんでみて下さい。
   *1 「いない いない ばあ」 松谷みよ子/文 瀬川康男/絵 童心社
   *2 赤ちゃんをあやす時に抑揚をつけたり高い声を出したりするなどの口調


三番目の話 絵本を楽しむヒント

 「絵本は子どもが楽しめるようにちゃんと作られている」ということを知って下さいと前回お話しました。子どもと絵本を楽しむためのヒント、今回はその続きの話です。
子どもは絵本が好きです。子どもは絵本を楽しむ力をちゃんと持っています。
どうぞ「うちの子は絵本に興味がない、他のものの方がいいらしい」と決めてしまわずに、子どものそばに絵本をおいてあげて下さい。
 読み聞かせの会での話です。節分の頃になると私は幼稚園や図書館で「かえるをのんだととさん」(*)という絵本を読みます。ととさん(お父さん)が蛙を飲み蛇を飲み雉を飲み、ついには鬼を飲み込んでしまうという奇想天外なこの話に子どもたちは初め目を丸くします。それから「ととさんはどうなる?」と心配顔になり、話の終わりには決まって友だちと顔を見合わせてクククッと笑います。絵本の世界は大きさせいぜい30㎝四方、読み時間10分に満たないものです。それでも初めて見聞きするものに驚き、くるくると表情を変え、よく笑う。
 そんな子どもたちを見ていると、子どもは体の中にちゃんと「楽しむ力」を持っているのだなぁと思います。
 現在、大人の世界で視聴、体験できるものの多くが子どもの世界に降りてきています。赤ちゃんや子ども向きの数々のアプリ、ARや3DCGを活用した遊びや教育商品、音楽と映像で魅了するアニメーション等。これらの中で、小さくて絵も動かず音楽もない絵本はかすんでしまうのかというと決してそうではありません。子どもが物事を「楽しむ力」はとてもシンプルです。精巧で美しく高価なフィギュアでも牛乳パックのおもちゃでも、子どもは遊びます。30㎝四方の絵本でも、絵を見るじっと見る繰り返し見る。知らなかったことに驚き、知ったことを喜ぶ。不思議な世界を怖れ、でものぞきに行く。おもしろいと笑い、笑うこと自体を楽しむ。そして心で感じる。子どもはちゃんと絵本を楽しむことができます。
 さて、「子どもが楽しめるようにちゃんと作られている絵本」と「絵本を楽しむ力をちゃんと持っている子ども」この当たり前のような二つを信じることから私たちは始めなくてはなりません。この二つをつなぐのが大人の大切な役目だからです。絵本と子どもをどうやってつなぐか、次回はその話です。
*「かえるをのんだととさん」日野十成 作 斎藤隆夫 絵 福音館書店


四番目の話 赤ちゃんに絵本を読む

 子どもに絵本を読んであげる「絵本の読み聞かせ」。子どもと本をつなぐ方法の一つです。絵本は一人で読む漫画と違い、親子が一緒に読めるという点が魅力ですね。今回はそのスタートライン、「赤ちゃんに絵本を読む」の話です。
 乳幼児教室での新米ママと私の会話です。
「絵本を読んであげているのですが(赤ちゃんは)私の方ばかり見てきて、なかなか絵本を見てくれません。どうやればいいですか。」
「ママの声が聞こえるのでママの方を見るのですよね。赤ちゃんはママの声が気になります。始めは絵本を読むというより、絵本を開いてママの声を聞かせてあげるという感じがいいですよ。」
 ママの声は赤ちゃんの成長に必要なものです。赤ちゃんが泣くとママは「はいはい」「よしよし」と声をかけながらオムツを換えたりミルクをあげたりします。赤ちゃんは気持ちよくなります。繰り返すうちに「はいはい」「よしよし」は赤ちゃんにとって気持ちよくなる合図、心地よい音になっていきますから、赤ちゃんはママの声を喜んで聞くようになります。赤ちゃんは初め目があまり見えません。(生まれた時の視力は0.02、6カ月頃0.08位)そのかわり耳が発達していて声や音に敏感です。お腹の中にいた時から聞いていたママの声にはよく反応し、聞きながら声の高低やリズム、抑揚など特徴を捉えていきます。ママの声は実は言葉ですから、聞くことで赤ちゃんは次第に言葉の世界へ(つまり私たちが生きているこの世界へ)入ってくるのです。
 絵本はいずれ赤ちゃんに色々なことを教えてくれるものになりますが、始めの読み方は「声を聞かせてあげる」でよいと思います。声はその人独自のもの。声をその人の体の一部と考えるなら、ママが赤ちゃんに声をかけるということは「声で赤ちゃんにふれること」。これは赤ちゃんにとって抱っこと同じ喜びです。赤ちゃんに絵本を読む時は、初めは「声を聞かせてあげる」それから絵を見せながら「あやすように読む」「読みながらお話する」がいいと思います。
 さて、再び私と新米ママの会話です。
 「今から私が絵本を開いて赤ちゃんにゆっくりゆっくり近づけていきますから、お母さんは赤ちゃんの顔を見ていて下さいね。こうすると…」
 「あ、今、この子の顔(表情)が変わりました!絵を見つけたってことですか。」
 「赤ちゃんは目があんまり見えていないのです。月齢と共に視力が上がってくる。こうやって絵本を近づけたり見せ方を変えてみると、絵本の絵に気づいてくれることがありますよ。赤ちゃんの様子をよく見て絵本を見せてあげて下さいね。」


五番目の話 乳児に絵本を読む

 1歳前後の子どもと楽しむ絵本に「きんぎょがにげた」(*)があります。始めは食べ物やおもちゃなどのカラフルな絵を見て遊び、それから「きんぎょがにげた」「どこににげた」と読んで、家の中の物に交じって隠れている金魚を子どもと一緒に捜します。この絵本を先輩パパママはどんな風に読んで楽しんでいるのでしょうか。乳幼児教室からご紹介します。
 ・始めはじっと見ているだけでした。それから自分で金魚を捜すようになり、見つけると指差して喜ぶようになっていきました。それだけ成長したんだなぁと思いました。
 ・見つけて喜んでいるのでほめてやります。嬉しそうで可愛いなと思います。
 ・頁をめくった瞬間にもう金魚を指差すようになって、進歩していると思いました。
 ・リンゴとかキリンとか知っている物を指差す遊びをしています。
 ・絵本の中のクッキーやイチゴを食べる真似をして、まねっこ遊びをします。
 ・絵本に描かれたおもちゃを見て自分のおもちゃを出してくるので、並べて遊びます。
 ・「きんぎょはどこ」と言いながら金魚に見立てたハンドタオルを捜す遊びをします。子どもを金魚にして捜すことも。
 ・絵本がない時でも「どこどこ~」と言葉だけで遊んだりします。
 ・なぜ金魚が逃げたのか、わかるといいなぁと思いながら読んでいます。
 さて、親子が絵本を見ながら「これは〇〇だね」とやり取りをすること。これは乳幼児(子ども)が対象(絵本の中の物)を他者(親)と共有する行動で、子どもの発達を表す言葉で「共同注意」と言います。「共同注意」は子どもの言葉の獲得の基盤となる行動で、私たちのこの世界を認識する助けになります。  先輩パパママは「きんぎょがにげた」を読みながら指差しを促したりほめたり、言葉の遊びをしています。「共同注意」にあたるやり取りをして、ごく自然に子どもの発達の手助けをしているというわけですね。さらに、絵本を読みながらまねっこ遊びや現実の世界と関わる遊びを加えて、「言葉や物の認識の共有」を広げている人もあります。また「気持ちの共有」をしている人もいます。金魚を見つけて嬉しい、ほめてもらって嬉しいという子どもの気持ち、喜ぶ子どもを可愛いと思う親の気持ち、そしてこの絵本の結末(金魚が逃げた先は仲間の所であったこと)を子どもに伝えたいと思う気持ち、こういった気持ちを互いに表現し「気持ちの共有」をして読み聞かせをしています。参考になりますね。子どもは小さくても個性がありますから、絵本への反応も同じではありません。しかし、絵本は親子の仲立ちとなって、子育てを「うまーく手伝ってくれる」ものだと思います。

*「きんぎょがにげた」五味太郎作 福音館書店 1982年