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葛巻 直樹先生

 

葛巻 直樹先生


イライラ、怒りのコントロール(アンガーマネジメント)

 子育てに奮闘する皆さんは、きっといつも笑顔で育児をしたいですよね。いつも今日は良いママでいようと考えている人が多いと思います。でも現実は育児と家事そしてお仕事にいっぱいいっぱいな日々で疲れや焦りから、つい子どもを怒鳴ってしまった経験はありませんか?特に新型コロナ禍によって家族以外の方とふれあう機会が減り、イライラを抱えやすくなっている・・という相談が激増しています。
 そんなお気持ちを少しでも和らげるための心の持ちようを一緒に考えてみましょう。

 このママたちの後悔する気持ちや自己嫌悪する気持ちこそが、育児にとっては悪影響になってしまいます。ママの自己肯定感が下がることでストレスがたまり、余計イライラしやすくなり、また子どもに対して大声を出してしまうきっかけになりかねません。
 それを防ぐには、まずは罪悪感のもとになっている「衝動的・反射的に大声で叱ってしまう」ことを防ぐのが大切です。そこで反射的な怒りをコントロールするにはアンガーマネージメントが有効です。
 自分の怒りの感情をコントロールして、生活や仕事や人間関係をよりよくするためのセルフトレーニングをご紹介します。

  その1 「呪文を唱えながら6~10秒待つ」
 よく「気持ちを落ち着けるために深呼吸を」と言いますが、まさにその通りです。人間の怒りが最高潮に達してから落ち着くまで、だいたい6~10秒ほどかかります。その時間をどうしのぐかが問題なのですが、まずは意識をそらすために「数を数えること」の他に「呪文を唱える」のも効果的。呪文は自身が言いやすい言葉、落ち着ける言葉など、どんな言葉でも大丈夫です。例えば「子育てバンザーイ!」と唱えるだけでも大丈夫です。

  その2 「怒りのピークが去ったら、まずは「聴いて」それから「伝える」」
 少しクールダウンの状態になったところで、子どもの気持ちを聴いてみましょう。「どうしてこれをしたの?」「やろうと思ったのはどうして?」と、その行為をしたくなった気持ちに耳を傾けます。
 人間は誰でも「自分の思いを聴いてほしい」「自分は大切にされたい」という思いを持っているもので、それが満たされることで、子どもたちはとても安心できます。
 そのあとで「でも、これはやってはいけないよ」と行動を叱ります。本人の人格を否定するのではなく、「行動を叱る」のがポイント。 「あなたはダメな子ね」というように、本人の人格を否定する言葉を使ってしまうと、子どもの自己肯定感が低くなってしまいます。「こういう行動がダメなのよ」と、行動に焦点を当てるように気を付けてください。


ママがイライラしていいんです!

 第1回ではママが罪悪感や自己嫌悪の気持ちを持つことが悪循環につながることをお伝えしました。
 きっといつも笑顔で育児をしたいとお考えだと思います。ただ現実は家事とお仕事に大変な中で育児にも関わっていくとなれば日々疲れや焦りから、つい子どもを怒鳴ってしまった経験があると思います。
 世の中は「褒めて育てる」が呪文の様に言われるので余計にそのようなプレッシャーがママ達にかかってきています。でもよく考えてください。イライラする気持ちは子ども達が憎いから起きる気持ちでしょうか?なかには子どもを持つまで、自分がこんなにイライラする人間だと思ってこなかった・・や、職場ではイライラしないのに、わが子には毎日イライラ・・といった声があります。悩みは付きませんね。でもママが子どもにイライラするのはあたりまえなんです。なぜならイライラする気持ちは身近な対象にほど強く感じ、力関係の強い人から弱い人へ向かう性質があるからです。子どもは母親にとって最も身近な人、そして大人と子どもには圧倒的な力の差があります。ですからもともとイライラを生みやすい関係なのです。出産を機に「子どもと常に一緒に居る」生活が当たり前になることは大きな変化です。ママになって慣れないうちに頼れる人が側にいない環境、仕事と家庭の両立など、働く女性にとってママになることはとてもストレスフルなものです。
 私たちには、大切な子どもを守るために、イライラが備わっているのです。

「褒めなきゃ」のプレッシャーを捨てて良い

 子育て支援の講演会などで寄せられる質問などで「うまく褒められない」や「うまく叱れない」・・というものがあります。できれば叱らず褒めて育てられればどんなに良いだろう・・と多くのママが考えてみえると思います。「褒める子育て」は流行・・と言っては何ですが、できればそうありたいと考える方が大勢いらっしゃると思います。「ひとりでお片付けできて偉いね!上手だね!」などと声がけをすると褒められた本人はお片付けスイッチが入ってお片付けをはじめます。しかしこれが続くと、褒められないとお片付けをしないように・・・。
 本来の目的はお片付けをする事であって、ママに褒められることではないはずです。片付けが必要なときに片付けずに遊び続けている子ども達には、「今は何をする時間かな?自分で遊んだおもちゃは片付けようね」と諭すことが必要な関わりです。褒めて人を動かすことは実は危険なことです。褒める人がいないと行動しなくなるものなのです。本来のゴールは誰から褒められなくても主体的に片付けるようになり、習慣になること。そのゴールに導くために、大人は必要に応じて褒めたり、叱ったりすることが必要です。子育てにおいて褒めることは重要ですが、それだけを重視するわけではありません。褒められた経験の多かった人は、社会を生き抜いていく資質・能力が高いという調査結果があります。そのうち「厳しく叱られた経験」が多かった人は社会生き抜く資質・能力がより高い傾向が見られるという結果が出ています。つまり褒められた経験と叱られた経験のどちらもある人が「諦めない心」「へこたれない心」や「自己肯定感」が高いということで、決して「褒める」ことばかりを推奨する必要はなく、「~しようね」と促したり「叱る」ことも大切にしていただきたいと思います。


「怒りは二次感情」一次感情を伝えるとこどもが理解しやすくなる

 「怒り」は一次感情ではなく、二次感情と呼ばれています。
一次感情とは最初に感じる感情で、二次感情の元になるものです。
「怒り」の二次感情の元になる一次感情には「悲しみ」「虚しさ」「心配」「不安」「寂しさ」「焦り」等があります。
こどもが片付けをしないときに、何度も片付けるように注意してきたのに聞いてもらえないと「虚しさ」や「寂しさ」が「怒り」という二次感情を誘います。
こどもがお友達の家から17時に帰ると約束をしていたのに、時間を過ぎたときにイライラしてしまうのは、事故に巻き込まれたのではないか・・と心配になって起こる二次感情です。そこでこどもにイライラして感情をぶつけてしまうのではなく、「怒り」の感情を引き起こした一次感情に注目して、その気持ちを伝えると、こどもには理解しやすくなり、伝わります。
約束の時間が過ぎたとき、「17時を過ぎてるじゃないの!」とイライラするのではなく、「17時を過ぎると暗くなって危険だからお母さんは心配になるの」と言った方が伝わりやすくなりますね。イライラして伝えると、伝えたい気持ちより、態度が伝わってしまい、恐怖心が芽生えてきてしまいます。
お母さん自身が落ち着いて伝える事ができることで、お母さんの真の気持ちである一次感情(愛情)がより伝わりやすくなるのではないでしょうか?


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子どもと保護者の「自己肯定感」

 先日ある小学校で講演をさせていただく機会がありました。
 テーマは「イライラ、怒りのコントロール」で、アンガーマネジメントについてお話をしました。
 その際に「子どもに声をかけていく時のポイント」として子どもの心に届くメッセージの大切さ、どうすれば子どもに親として伝えたいことが伝わるのか・・をお話ししましたところ大変興味を持っていただけました。

 少し考えていただきたいことがあります。
 私たちは特に子どもに対して伝える時にどのような感情で子どもに向き合っているでしょう。
 「私がしっかりと言わなきゃ」「良くないところを指摘して直さないと」「こんなこともできないなんて、なんとかしなきゃ」など保護者として「なんとかしたい」という気持ちの強い方が多いのではないかと思います。
 親として子どもの成長が気になります。良くない行いをしていたら直さないと子ども自分も恥ずかしい思いをする。そう思うとちゃんと伝えるために「言い聞かせる」ことが多くなると思います。
 でもこの「言い聞かされている時の感情」はどのような感情でしょう? 「また始まった・・」「何度同じこと言うつもりだろう・・」「僕ばっかり悪いことになってる・・」な子どもの立場になるといっぱい親に向かって言いたいことがあるのではないでしょうか?
 こういうモヤモヤした気持ちを持っている時に、「とてもまともなこと」を言われても「反発心」が起きてしまうのです。 例え自分に落ち度があったとしても・・です。
 「言い分」は本人にとってはとってもわかってもらいたい事、でも他者からは「言い訳やくちごたえ」ですから当然聞き届けてはもらえません。
 でもこの聞き届けられない思いこそが子どもにとってはとてもとてもわかってもらいたい気持ちではないでしょうか?
 子どもだってわかっているのです、自分が叱られれば。ただ叱られている時に、モヤモヤした気持ちを聴いてもらえさえすれば子どもは親のメッセージを受け取れるようになります。
 わかりやすく言えば、子どものモヤモヤした気持ちを聴いてあげることこそが、親のメッセージを伝える前にやって欲しい事なのです。
 
 子どもの中にある「負のメッセージ」を黙って(否定・批判・評価・比較せず)受容して聴いてあげれば子どもは自分で自分の悪かった点について気づきます。
 保護者が落ち着いた態度で「子どもの姿勢(に関するメッセージ)を聴くこと」は子どもが自分を認めたもらえたと感じるために親の大切な姿勢だと感じます。
 
 私たちは「自分に感じているネガティブさ」を無条件で肯定的な聴く姿勢で受け止めてもらえることが「自分は肯定されている」と感じる事に繋がります。
 子どもの自己肯定感を育むため、「こうしなさい・・ああしなさい」というメッセージから「なにがあったのか聴くよ」という姿勢を大事にしてあげて欲しいです。
 
 子どもへの関わり方が変わること・・それは親としての自己肯定感の成長にも繋がっています。
 他者との共感的な関わりが大切なのです。


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