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黒瀧 一輝先生

 

黒瀧先生


大人の力と子どもの主体

 誰もが、子どもの健やかで豊かな育ちを願っています。特に、自分の家庭にいる子どもへは、より思いが強くなるものです。
 日々、見られるその子の言動を保護者なりに評価しながら「ああでもない」「こうでもない」と思いを巡らし、繰り返す中で、色々な想いが強くなったり重たくなったりもします。人は今まで自分が行ってきたことや、自分が体験してきたことから、何が大切かを学び、自分の中に価値観として定着していきます。言い換えれば、子どもはこれまで生きてきた中で感じたことや体験したこと以上には成長しません。これは、すべての人に当てはまる事だと思います。
 子どもは絵本からファンタジーを体験して心が動いたり、野外で土や草木の香りに心が動いたり、友達と遊ぶ中で色々な言葉や気持ちをぶつけあうことで変化しながら育っていきます。変化こそ宝です。毎日みていると変わらないなぁ~と思ってしまいますが、目に見えないところでも、変化は必ずあります。頑なで「変わらない」と思うことにも見えない変化があります。大人は、自分が見えるものわかるものを信じますが、子どもたちは今そこにないものや、目に見えないことも感じて生きています。あるものが、楽しくウキウキするものならば、それをそのまま感じ取り、頑なでトゲトゲするものなら、それもそのまま感じ取ります。生きるベースとなる場所や、家庭で一緒に生活する保護者からも、子どもたちは当然たくさんのことを感じながら変化しています。
 保護者としての想いや、我が子に求める感情が大きく、実際思うようになっていない、どうしたらいいのかと思いながら子どもに向かっていると、子どもはその親の気持ちをそのまま感じ取り変化していきます。大人は、自分の感情や想いをある程度コントロールできますが、子どもは感じたままを表現したり、やってみたりしながらたくさん変化し育っています。
 子どもは自分の気持ちに正直にあるがままを生きようとしています。大人になにも言わない子も、言わない選択をしているだけで想いをもっています。「正直じゃない子、素直じゃない子」と思っているのは、大人です。子どもは、その時思っていることや、感じていることを態度や言葉や行動で表現しています。子どもにとって生きるために必要な大人の言うこと、やっていることは、とても敏感に感じ取り成長していきます。人それぞれあるように、感じること、学ぶこと、成長することも、それぞれの時間軸の中で、いろんな形や様子があるものです。子どもの子ども時代はその子のものです。保護者であっても、それに口出すことは、その子の想いや感情を押し込めてしまうことにもつながります。
 子どもについて悩む時、今までの自分を振り返ってみるのもいいと思います。最近のことだけでなく、今ある自分の価値観は、自分の経験の何からきているのか。それは自分の遠い昔の一つの出来事から芽生えたものかもしれません。ずっと前につくられた大人の価値基準を、今の子どもに押し付けていることもあるかもしれません。あくまでも、それは大人の価値観です。子どもは、安心な居場所の中で、たくさんの人の価値観に触れる事で、子どもなりにたくさんの変化をしていきます。そのため、時には、子どもに大人の身勝手な価値観を押し付けていないかなど振り返ってみると、その子に対して違った見方ができることも多くなるのではないでしょうか。
 大人も子どもとの関わりの中で、変化し成長していくことが、子どもが安心して過ごす居場所を創ることだと信じています。
 抽象的な言葉が多くなりますが、子どもの「育ち」とは、科学的なことや学問的なことから見るだけでは、目の前にある課題や悩みは解消されません。子育てに期待いっぱい、不安いっぱいの保護者が、自分自身の想いや気持ちを振り返り、自分自身を尊いものだと感じることが、子どもを尊ぶことにつながります。不完全でもいい。完璧でなくていい。
 子どもも大人も生きているだけでありがとう。ありのままの自分を受け入れることが子育てのスタートなのではないでしょうか。


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