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情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第53号

答申

1 審査会の結論

 実施機関が「(平成8年~9年度)業務報告書(特定の産業廃棄物処理業者に係るもの)」について行った部分開示決定のうち、現認事項に該当する部分を非開示としたことは妥当でなく、開示すべきである。
 また、実施機関が「(平成8年度)廃棄物適正処理民間監視員の委嘱について」について、民間監視員の氏名・住所を非開示としたことは妥当である。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成9年6月26日付け及び7月16日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「産業廃棄物処理業者の監視に関する業務報告書」(以下「本件対象公文書1」という。)及び「廃棄物適正処理民間監視員に関する文書」(以下「本件対象公文書2」という。)の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、7月10日付け及び8月12日付けで行った部分開示決定(7月16日付けの請求に対しては、7月29日付けで決定期間延長の措置が執られている。)の取消を求めるというものである。
 なお、本件対象公文書1は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく産業廃棄物処理業者への立入調査等の内容を記述した業務の日誌であり、また、本件対象公文書2は、廃棄物の不法投棄等の不適正処理についての情報等を市町村長に提供するために委嘱された監視員に関するものである。

3 実施機関の部分開示理由説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書を部分開示にしたというものである。

(1)業務報告書(本件対象公文書1)について

 実施機関が非開示とした情報は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第19条第1項の規定に基づいて、特定の事業者に対して行った立入検査の内容である。
 これらは、検査・取締り等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該又は将来の同種の事務に著しい支障を生ずるおそれのある情報である。業務報告書の記載には、一般的に次のような特徴がある。

  • 当該事業所の処理状況等が詳細に記述されており、未確認の情報も含まれている。
  • 処理業者から聴取した内容がそのまま記述されている部分がある。
  • 立入検査により把握された改善を要する指導事項に関する記載が多くある。

 産業廃棄物処理行政においては、立入検査の結果、不適正処理等の法違反があった場合は、悪質違反例を除いて、行政処分を行う前に、口頭指導又は文書警告等により適正処理を指導し、改善を促すことによって法による規制を補完し、より実効性のある規制を果たしている状況にある。
 業務報告書は、前述のとおり指導事項や未確認情報及び処理業者からの聞き取り内容がそのまま記載されており、これらを全面的に開示することは、立入検査の具体的態様を規制対象者(本件事業者及び他の処理業者)にも明らかにすることとなり、立入検査の有効な実施の妨げとなる。
 また、立入検査においては、法に規定する事項以外に、適正な産業廃棄物の処理施設の確保と処理の推進を図るため、実施機関で独自に定めた「三重県産業廃棄物処理指導要綱」に基づく指導に関連する事項についても実施している。これらは、法的な根拠のない内容であるため、強制力を持たないことから、相手方の了解のもとに改善を履行させるものである。このため、処理業者は、業務報告書を開示することにより、行政に不信を抱き、非協力的な態度になり結果として行政指導を進める上で必要な信頼関係が損なわれ、必要な情報が得られなくなるおそれがある。
 よって、将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生じるおそれについて規定する条例第8条第5号に該当する。

(2)「廃棄物適正処理民間監視員に関する文書」(本件対象公文書2)について

 実施機関が非開示とした情報は、三重県廃棄物適正処理民間監視員設置要領(平成3年5月20日施行)第2条第1項の規定に基づき、平成8年度に市町村長からの推薦により廃棄物適正処理民間監視員として委嘱した者の氏名・住所である。
 民間監視員はボランティア活動の一環として日常生活の範囲で知りえた不適正処理等に関する情報を積極的に市町村長に報告することを期待されたものであり、市町村や保健所の窓口としての機能を果たしたり、住民の相談に応じることを業務とすべきものとして設けられた制度ではない。
 民間監視員の氏名・住所は個人に関する情報であり、公表を目的とした情報でもなく、公益性によって開示されるべき情報にもあたらない。
 よって、第8条第1号に該当する。
 また、この監視員を委嘱するにあたっては、その氏名等を非公表とすることが前提とされており、監視員らも氏名等の非公表を期待している。民間監視員の氏名・住所を開示した場合、県と関係当事者との信頼関係が損なわれることとなり、今後の事務事業の実施に理解や協力を得ることができなくなるおそれが十分にあり、事務事業の適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがある。
 よって、条例第8条第5号にも該当する。

4 異議申立ての理由

 異議申立人から提出された異議申立書及び口頭意見陳述による内容を総合すると、おおむね次のとおりである。
 実施機関が事業者の監視・指導情報の記載された業務報告書を開示しないことは、実施機関に対する住民の不信感を募らせるものである。事業者は住民の生命、健康に悪影響を及ぼしている可能性があり、これらの情報を公開することは公益に値するものであり、この意味で、部分開示処分は違法である。
 また、民間監視員については、県民が監視員への通報を行う必要からも、公費から金品で謝礼が支払われていることからも、公務員に準じて氏名等は開示されるべきである。
 氏名等を開示しても、それだけで事業者からの恐喝や脅しの被害があるとは思われないし、仮に事業者がそのような嫌がらせ行為をすれば、許可を取り消したり、更新を認めなければよいのである。

5 審査会の判断

 本件対象公文書1・2について、実施機関は条例第8条第5号に該当するので、部分開示にしたと主張している。そこで、以下について判断する。

(1)基本的な考え方について

 条例の制定目的は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。
 条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示項目を定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。

(2)条例第8条第5号(行政運営情報)の該当性について

 本号は、事務事業の内容及び性質から見て、開示することにより当該事務事業の目的を失い、又は公正若しくは適正な執行ができなくなるおそれのある情報は、非開示とすることができると定めたものである。
 また、反復的又は継続的な事務事業については、当該事務事業執行後であっても、当該情報を開示することにより、将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるもの又は将来の同種の事務事業の公正若しくは適正な執行に著しい支障を及ぼすものがあるので、これらに係る情報が記録されている公文書も、非開示とすることができるとするものである。

  1. 業務報告書について
    業務報告書を全面開示することは、事業者に対する行政監督の具体的態様を詳細に公表することになり、それは一方で、行政活動に対する住民の信頼を確保することに役立つものである。しかし、他方で、今後の指導監督ないし立入検査の公正若しくは適正な実施の妨げとなり、あるいは、文書の公開による支障をおそれ詳細な記述がされなくなったり、今後の行政指導の実施や情報収集において、処理業者の理解と協力が得られなくなるなど、将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあることは否定できない。
     そこで、以下では、業務報告書の内容に即して、より具体的に審査してみる。
     業務報告書のうち実施機関が非開示とした部分は大きく分けて、産業廃棄物処理施設立入検査の際の「現場において確認した事項(以下『現認事項』という。)」と「聴取内容」と「指導内容」とに区分される。以下、それぞれについて検討する。
    イ  「現認事項」 について
     現認事項には、ⅰ許可対象外の廃棄物が搬入されていた、ⅱ野焼きの跡が見られた、ⅲ多量の廃棄物が保管されていた、ⅳ廃棄物処理の状況、ⅴ処理業者における施設の維持管理状況等、敷地内に立ち入らないと確認できない事項と、ⅵ野焼きがされていた、ⅶ臭気が感じられた、ⅷ周辺に廃棄物が飛散していた等、敷地内に立ち入らなくても確認できる事項が含まれているが、いずれにしても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第19条で実施機関の立入検査権が認められている以上、これらの情報を得るために事業者等の任意の協力を不可欠とするものではない。それ故、これらの立入検査の結果判明した事実を開示しても、関係当事者との信頼関係が損なわれ、事業実施に必要な理解・協力を得ることができなくなったり、今後必要な情報を収集することができなくなるおそれがある情報とは認め難い。
    ロ 「聴取内容」について
     現場にて事業所の責任者及び従業員から聴取した情報は、実施機関が今後の指導方針等を検討・判断する上で必要不可欠なものであるが、必ずしも真実であるとは断定しがたく、業務報告書作成後に真実か否か確認される事項もある。
     したがって、これら不確定な事項を開示することにより、第三者に誤った情報を提供することとなり、関係当事者との信頼関係が損なわれ、今後必要な情報を収集することができなくなるおそれがあるものと認められる。
    ハ 「指導内容」 について
     実施機関の主張するとおり、産業廃棄物処理行政において、立入検査の結果、不適正処理等の法違反があった場合は、悪質な違反例を除いては、行政処分を行う前に、口頭指導又は文書警告等により適正処理を指導し、改善を促すことによって法に・謔驪K制を補完し、より実効性のある規制を果たしている現状が認められる。
     したがって、これらの指導内容を全面的に開示することは、立入検査の具体的態様を規制対象者(本件事業者及び他の処理業者)にも明らかにすることになるから、行政指導の有効な実施の妨げとなる、との実施機関の主張は認めざるを得ない。

     よって、実施機関が条例第8条第5号に該当するとして非開示とした情報のうち、「現認事項」に該当する部分を非開示としたことは妥当でなく、開示すべきである。
     なお、過去においては業務報告書の「現認事項」を非開示相当としてきた経緯がある。しかしながら、廃棄物処理法の改正(H9.6.18公布、H10.6.17施行)により、廃棄物の焼却施設及び最終処分場を有する事業者を対象に、地域住民等の生活環境保全上の利害関係を有する者に対し、施設の維持管理等の記録・閲覧が義務づけられたところであり、「現認事項」は、法に基づく閲覧内容と同様の維持管理状況を確認した事項であり、法の趣旨と照らし合わせても、開示して差し支えない情報と判断され、また、環境に対する行政及び国民、地域住民の意識は高まりをみせており、環境に関わる行政の情報は従前にも増してかなりの範囲まで住民に多くの情報が提供される状況下になっていること等を背景に審議を行い、上記の結論に至ったものである。
  2. 民間監視員の氏名・住所について
     実施機関が民間監視員の氏名・住所を非公表の了解の下に委嘱を行っている運用や、このため民間監視員らも氏名等の非公表を期待していると解されることからすれば、実施機関が民間監視員の氏名・住所を開示した場合、実施機関と関係当事者との信頼関係が損なわれることになり、今後の事務事業の実施に理解や協力を得ることができなくなるおそれが十分にあり、事務事業の適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあるというべきである。
     したがって、民間監視員の氏名・住所は第5号に該当する情報であり、非開示が妥当である。
     よって、第1号(個人情報)の該当性を検討するまでもなく、これを第5号に該当するとして非開示とした実施機関の処分は妥当である。

(3)結論

 実施機関が「(平成8年~9年度)業務報告書(特定の産業廃棄物処理業者に係るもの)」について行った部分開示決定のうち、「現認事項」に該当する部分を非開示としたことは妥当でなく、開示すべきである。
 なお、実施機関が「(平成8年度)廃棄物適正処理民間監視員の委嘱について」について、民間監視員の氏名・住所を非開示としたことは妥当である。

6 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

7 審査会としての提言

 審査会の結論は以上のとおりであるが、地球規模で環境問題に取組んでいる現状にあって、産業廃棄物処理の問題は、周辺住民にとって最も重大な関心事となっているのは当然のことと考えられる。したがって、行政と住民との信頼関係を保つためにも、今後も更なる積極的な情報の公表の実施を要望する。


別紙1

公文書目録

「本件対象公文書1」
 (平成8年度)
  平成8年 8月 6日付け 業務報告書
  平成8年 9月13日付け 業務報告書
  平成8年10月25日付け 業務報告書
  平成9年 3月31日付け 業務報告書
 (平成9年度)
  平成9年 4月16日付け 業務報告書
  平成9年 5月26日付け 業務報告書
  平成9年 6月 3日付け 業務報告書

「本件対象公文書2」
 (平成8年度)
  平成8年 6月20日付け 廃棄物適正処理民間監視員の委嘱について


別紙2

年月日 処理経過
9.9.22 ・諮問書受理
9.10.2 ・実施機関に対して部分開示理由説明書の提出依頼
9.11.4 ・部分開示理由説明書受理
9.11.21 ・異議申立人に対して部分開示理由説明書(写)の送付、
意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
9.12.10 ・口頭意見陳述申出書の受理
10.6.30 ・書面審理
・異議申立人の口頭意見陳述の聴取
・審議
(第85回審査会)
10.7.23 ・実施機関の部分開示理由説明の聴取
・審議
(第86回審査会)
10.8.7 ・審議
(第87回審査会)
10.9.9 ・実施機関の部分開示理由説明の聴取
・審議
(第89回審査会)
10.10.2 ・審議
・答申
(第90回審査会)

三重県情報公開審査会委員

職名 氏名 役職等
会長 岡本 祐次 三重短期大学法経科教授
会長職務代理者 曽和 俊文 関西学院大学法学部教授
委員 渡辺 澄子 松阪大学女子短期大学部教授
委員 室木 徹亮 弁護士
委員

樹神 成

三重大学人文学部教授

本ページに関する問い合わせ先

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津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
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