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情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第86号

答申

1 審査会の結論

 実施機関が、本件対象公文書を非開示としたことは、妥当である。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成11年9月24日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った下記公文書の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が10月7日付けで行った非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。

 ヤマギシズム学園等から公立小中学校に通学する児童・生徒に対するアンケート調査記述内容一覧表

3 本件対象公文書について

 本件対象公文書は、実施機関が平成10年11月27日に、ヤマギシズム学園等から県内7小中学校に通学する407名の児童・生徒の協力を得て実施したアンケート調査のうち、児童・生徒が自由に記述した部分をまとめたものである。
 アンケート調査票は、いくつかの選択肢から選択する質問項目と、アンケート調査に付随して特定の質問事項について自由に記載する部分により構成されている。本件対象公文書は、別紙1の質問事項に対して、回答者が自由に記載した部分を転記したうえで一覧表にしたものであり、学校法人やまぎし学園の設立及びやまぎし学園津小中学校の設置認可申請について、認可の是非を検討する私立学校審議会への提出資料として実施機関が作成したものである。

4 実施機関の非開示理由説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書は条例第8条第1号(個人情報)及び第5号(行政運営情報)に該当し、非開示が妥当というものである。

(1)条例第8条第1号(個人情報)の該当性について

 本件事案のアンケート調査実施にあたっては、県内関係市町教育委員会及び小中学校等と実施方法、実施時期及び児童・生徒たちへの依頼方法等について協議し、「特定の個人や学校が識別できるような公表はしない」「基本的には、集計した結果のみを公表する」ことで、関係者の了解を得た。また、児童・生徒たちには、「アンケート調査には、学校名、学年、名前は記入せず、書いた後は自分で封筒に入れていただいてから集めますので、誰が何を書いたかは、誰にもわからないようになっています。皆さんから、ありのままのことをおたずねしたいとのことですので、県の調査に協力してほしいと思います。」と、調査実施2日前に各学校の教師を通じて伝えたところである。
 以上により実施したアンケート調査結果のうち、数値の集計結果については既に公表している。
 本件対象公文書である数値の集計結果以外の記述部分には、各個人の体験内容等の情報が具体的に記されており、中には特異な内容も多く記述されている。そうした個人情報は、「特定の個人が識別され、又は識別され得る」情報に該当する。
 なお、記述内容の中には、その情報のみでは特定の個人を識別することができない情報もあるが、それらの情報は県内のヤマギシズム学園という特定の集団の中で生活する児童・生徒たちの個人情報の総体といえるもので、公開することによって、ヤマギシズム学園で生活する児童・生徒たちに不利益が生ずるおそれがあり、プライバシー保護の観点からも非開示とすべきものである。
 このような事情から、通常は公開で実施している私立学校審議会についても、本件該当公文書が提出資料となった平成11年3月9日実施分については、非公開で開催した。

(2)条例第8条第5号(行政運営情報)の該当性について

 本件事案のアンケート調査は、児童・生徒に対して「この調査は、学校設置認可の審査という特定の目的のために実施するものであり、誰が何を書いたかは誰にも分らないようになっているので、皆さんはありのままのことを書いてください」と説明したうえで実施したものであるとともに、同趣旨の説明により、県内関係市町教育委員会及び小中学校等の関係者の協力を得ることができたものである。
 したがって、本件対象公文書を開示すれば、関係者との信頼関係が損なわれ、将来同種の認可申請が提出され、ヤマギシズム学園等で生活する児童・生徒たちの実状を把握するため、再度同様のアンケートを実施する場合に、関係者の理解、協力を得ることができなくなる。
 また、本件対象公文書を開示することの公益性と、開示がもたらす児童・生徒たちへの影響を勘案した場合、アンケート調査を実施する際に行った説明に反して開示することは、児童・生徒たちの県に対する信頼を裏切ることになり、児童・生徒の健全育成の観点からも非開示とすることが妥当である。

5 異議申立ての理由

 異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
 本件事案のアンケート調査書の原本は、無記名とはいえ、質問に対する答えが自筆で記入されており、実施機関が非開示の理由として示したとおり、「開示することによって、特定の個人が識別され、又はされ得る」ことは十分に考えられ、「識別されることによって調査対象となった児童・生徒たちに不利益が生ずるおそれがある」ことも理解できる。
 しかしながら、開示請求したのは、原本ではなく、「審議会資料として原本から転記して作成された記述部分に関する書類」である。本件対象公文書は、特定の個人が識別されないよう十分配慮して作成されたものと推察され、非開示理由にはあたらないものと考える。
 また、「記述内容を開示すれば、関係者との信頼関係が損なわれ、将来…(中略)…関係者の理解、協力を得ることができなくなる」とのことであるが、本件対象公文書の開示によって「誰が何を書いたかは誰にもわからないようになっている」との児童・生徒たち等に対する説明を反故にすることにはならないと考える。

6 審査会の判断

(1)基本的な考え方について

 条例第1条によると、本条例の目的は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進する、というものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
 なお、本件異議申立ては、改正された三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号)の施行前になされた処分にかかるものであるため、改正前の条例に則して判断する。

(2)条例第8条第1号(個人情報)の意義について

 本号は、基本的人権を尊重する立場から、個人のプライバシーは最大限保護する必要があること、また、個人のプライバシーの概念は法的に未成熟でもあり、その範囲も個人によって異なり、類型化することが困難であることから、個人に関する情報であって特定の個人が識別される情報が記録されている公文書は、原則として、非開示とすることを定めたものである。

(3)条例第8条第1号(個人情報)の該当性について

 本件対象公文書であるアンケート調査の記述内容一覧表には、各個人の体験内容等の情報が具体的に記述されている。中には特異な内容も多く記述されており、そうした個人情報は、開示することにより、特定の個人が識別され、又はされ得るので、条例第8条第1号(個人情報)に該当すると実施機関は主張している。さらに、特定の個人を識別することができないと思われる情報もあるが、それらの情報は県内のヤマギシズム学園という特定の集団の中で生活する児童・生徒たちの個人情報の総体といえるもので、プライバシー保護の観点からも非開示とすべきものであると主張している。
 審査会が、インカメラ審理により、本件対象公文書を検証したところ、当該記述内容に関わりのある者にとっては、誰が記述したか容易に推測できると思われる情報と、記述された情報のみでは特定の個人を識別することができないと思われる情報が混在している。
 本件対象文書のうち、別紙1の質問1及び2に対する回答部分と質問3から6に対する回答部分とは性質を異にするので、以下分けて検討する。

(ア)別紙1の質問1及び2に対する回答部分

 異議申立人は「特定の個人が識別されないよう充分配慮して作成されたもの」であるから非開示理由にはあたらないと主張している。確かに本情報は私立学校審議会への提出資料として原文から転記されたもので、転記する際、固有名詞を消す等の一定の配慮はなされているが、それでも回答者の具体的体験内容はそのまま表現されている。中には特異な内容も多く含まれ、そのほとんどは「特定の個人が識別され、又はされ得る情報」に該当するものと思われる。一部には必ずしも特定の個人を識別することができない情報も含まれているが、これらを明確に区分することも困難であるから、別紙1の質問1及び2に対する回答部分全体が条例第8条第1号に規定する個人情報として保護されるべきものである。
 なお、異議申立人の主張は必ずしも明確ではないが、同主張の全趣旨から、本情報は条例第8条1号ハに規定する「法令又は条例の規定に基づく許可、免許、届出等に際して作成し、又は取得した情報であって、公益上開示することが必要であると認められる情報」に該当し、開示すべきであるとの主張をしているものと解するのが相当であるから、この点についても検討を加えることとする。
 本情報は、法令に基づく許認可手続に際し作成又は取得した情報であり、有形力の行使又は「個別研さん」の理由及び内容について、調査に応じた児童・生徒が記述したものであるが、これらについては、アンケート調査のうち既に公開されている集計結果だけでも十分明らかにされており、個人のプライバシーを侵害しても開示することが公益上必要であるとまでは認められない。
 よって、別紙1の質問1及び2に対する回答部分は個人情報に該当し、非開示とした実施機関の決定は妥当である。

(イ)別紙1の質問3から6に対する回答部分

 これらの情報は、質問に対する回答者の具体的な気持ちや意見を記載したものであり、回答内容から具体的な回答者を特定することはほとんど不可能といえる。
 そもそも個人に関する情報のうち、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報のみを原則非開示としているのは、特定の個人が識別されなければ、個人のプライバシーを侵害するおそれはないか侵害したとしても軽微なものにすぎないと考えられるからである。
 しかし一般的にはそのようにいえるとしても、極めてプライバシー性の高い情報の場合は、具体的な個人まで識別されなくとも、「特定少数の者の中の誰か」といった程度に識別されるだけでも、開示されることによって不快に感じ、又は不利益を受けるおそれは十分あり得るであろう。
 条例第3条で「実施機関は、個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない」と規定し、公開を原則としながらも、個人のプライバシーは最大限に保護されるべきであるとしている趣旨に照らすと、特にプライバシー性の高い情報については、識別の程度を緩和しても、個人のプライバシーを保護すべき場合もあると思料される。
 そこで別紙1の質問3から6に対する回答部分を検討すると、本情報は極めて特殊な状況下において、それぞれの個人生活の一側面を正直に記述してもらうよう依頼したうえで収集した情報である。質問に対する回答者の具体的な気持ちや意見すなわち内心の意思を表明したもので、思想、良心の自由を保障した憲法第19条に照らし、極めてプライバシー性の高い情報といえる。
 そして本情報は、ヤマギシズム学園等から公立小中学校に通う児童・生徒という限られた個人から収集した情報であり、全く不特定多数の者の中から無作為に抽出され得られたアンケート結果とは異なり、回答者を具体的な個人まで特定できないとしても、特定少数の者(ヤマギシズム学園等から通学する児童・生徒)まで識別されている。
 したがって、これらの情報は「特定の個人を識別され、又は識別され得る」個人情報であり、個人のプライバシーは最大限に保護されるべきである。
 なお、実施機関は「特定の集団の中で生活する児童・生徒たちの個人情報の総体」と「特定の個人」の概念を広く解して、非開示とすべき個人情報としているが、同見解に従えば個人の集合体である集団ひいては組織や団体のプライバシーを認めることにもなり、本条例の趣旨と意義が損なわれかねない。よって実施機関の上記見解は認めることはできない。
 以上の点から、別紙1の質問3から6に対する回答部分についても「特定の個人を識別され得る」個人情報として非開示とした実施機関の決定は妥当である。

(4)第5号(行政運営情報)の該当性について

 実施機関は、将来同種の調査等を実施する場合、関係者の理解、協力を得ることができなくなることから、条例第8条第5号(行政運営情報)にも該当すると主張しているが、上述のとおり、本件事案は条例第8条第1号に該当し、実施機関の決定が妥当であるから、第5号(行政運営情報)の該当性について判断するまでもない。

(5)結論

 よって、主文のとおり答申する。

7 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙2審査会の処理経過のとおりである。


別紙1

  1. 世話係から、なぐる、たたく、つねる、つきとばす、たおす、引きずる、かみの毛を引っぱるといったことをされたことについて
      どのような理由でされましたか、また、どのようなことを何回ぐらいされましたか。
  2. 長い時間、一つの部屋に一人で正座させられ、世話係のゆるしが出るまで、外に出ることができないといったような「個別研さん」について
      どのような理由で「個別研さん」を受けましたか、また、どのような「個別研さん」を受けましたか。
  3. 「中学卒業後、高校へ行きたいと答えた人で、高校に行けると思わない」と答えた人は、その理由を教えてください。
  4. 「やまぎし学園津小学校、津中学校ができたら、行きたいと思いますか。」に答えた人は、その理由を教えてください。
  5. 学園(実けん地)に入ってよかったと思うことを教えてください。
  6. 最後に、何か言いたいこと、意見がありましたら自由に書いてください。

別紙2

審査会の処理経過

年月日 処理内容
11.11.16 ・諮問書受理
11.11.17 ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼
11.12. 6 ・非開示説明書受理
11.12. 6 ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、
意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
11.12.21 ・異議申立人の非開示理由説明書に対する意見及び口頭での意見陳述申出書受理
12. 5.16 ・書面審理
・実施機関の非開示理由説明の聴取    
(第109回審査会)
12. 6. 6 ・異議申立人の口頭意見陳述
・審議                       
(第110回審査会)
12. 7.11 ・実施機関の非開示理由補足説明の聴取
・審議                       
(第111回審査会)
12. 8. 4 ・審議
・答申                       
(第112回審査会) 

三重県情報公開審査会委員

職名 氏名 役職等
会長 岡本 祐次 三重短期大学法経科教授
会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
委員 渡辺 澄子 松阪大学短期大学部教授
委員 早川 忠宏 弁護士
委員 丸山 康人 四日市大学経済学部教授
委員 豊島 明子 三重大学人文学部助教授
委員 山口 志保 三重短期大学法経科講師

※ なお、本件事案については、前審査会委員である曽和俊文委員(関西学院大学法学部教授)も退任までの期間(H12.5.31付け退任)審理に参加した。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
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