三重県情報公開審査会 答申第130号
答申
1 審査会の結論
本件異議申立ての対象となった公文書のうち「個人の印影をのぞく部分」を開示する旨の実施機関の決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成14年7月25日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成13年度砂防指定地内作業等許可申請書の添付書類のうち土採取の同意書」の開示請求(以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、異議申立人(開示請求者ではない者)の情報が含まれる「同意書(以下「本件対象公文書」という。)」を、開示請求者に対して部分開示すると平成14年8月19日付けで行った決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
実施機関は、本請求に際し本件対象公文書に異議申立人の情報が含まれているため、条例第17条第2項の規定に基づき、異議申立人に対して意見照会を経て部分開示する旨の本決定を行った。
実施機関は本決定を行うと同時に、異議申立人に対して条例第17条第3項の規定に基づき、情報を開示する旨の通知をしたところ、本件異議申立てが提起されたものである。
なお、本請求を行った開示請求者には、平成14年8月29日付けで、本件異議申立てに係る決定に至るまで開示を停止する旨の通知がなされている。
3 実施機関の部分開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本件対象公文書を部分開示決定したというものである。
本件対象公文書は、三重県砂防指定地管理規則第4条第1項の許可を受けるため、同規則7条1項の砂防指定地内作業等許可申請書を提出するに当たり、同規則第7条第2項第1号により添付を義務づけられた書類である。
また、同意書が申請にあたっての必要添付資料とされている以上、許可を受け現地で作業が行われていれば、通常土地所有者の同意は当然あったものと推定されるところであり、この意味で、本件公文書は実質的に秘匿すべき情報にはあたらないと考えられる。
なお、当該公文書の印影については、これまでの本県の慣例や当審査会答申第102号を参考に、原処分で非開示とした。
4 異議申立ての理由
異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
当該土地は異議申立人の父母が購入したものであり、自分は土地の存在も知らず、特定業者と親が当時どのような契約を交わしたのかも承知していない。自分が関与しておらず責任を持てないものについて公開されると私生活上の権利利益を害するおそれがあり困る。
5 審査会の判断
本件対象公文書については、実施機関は、一部分について条例第7条第2号(個人情報)に該当し本決定が妥当であると主張している。一方、異議申立人は、本件対象公文書が条例第7条第2号(個人情報)に該当すると主張している。そこで、審査会においては、実施機関が非開示とした部分以外、つまり開示しようとした部分についてのみ以下のとおり判断する。
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
一方、開示請求に係る公文書に第三者に関する情報が記載されているときに、当該第三者の権利利益を保護し開示の是非の判断の適正を期するために、開示決定等の前に第三者に対して意見書提出の機会を付与すること、及び開示決定を行う場合に当該第三者が開示の実施前に開示決定を争う機会を保障するための措置についても定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
本号は、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨の規定であり、プライバシー保護のための非開示条項として、個人の識別が可能な情報か否かによると定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、個人識別情報を原則非開示としたうえで、個人の権利利益を侵害せずに非開示にする必要のないもの、及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優先するため開示すべきものをただし書で例外的事項として列挙する個人識別情報型を採用している。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
本件対象公文書である同意書には、工事人住所・氏名、該当地の所在、異議申立人である当時の土地所有者の住所・氏名・印影が記載されているが、そのうち、実施機関は、印影部分を除き開示しようとした。
実施機関が開示しようとしたこれらの情報は、特定の個人が識別される情報であるが、本件事案の場合、土地所有者の承諾がなければ事業を行うことはできず、すでに事業が行われている以上、土地所有者のの同意書が実施機関に提出されていたことは明らかである。また、登記簿を閲覧すれば、地番から土地所有者の住所・氏名も明らかとなることから、これらの情報は法令等の規定により公にされているものと認められる。
したがって、実施機関が開示しようとした情報は、本号ただし書きイに規定されているとおり、法令若しくは他の条例により公にされている情報であると認められるため、本号には該当しないものと判断する。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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14. 9. 3 | ・諮問書の受理 |
14. 9. 6 | ・実施機関に対して開示理由説明書の提出依頼 |
14. 9.12 | ・開示理由説明書の受理 |
14. 9.17 | ・異議申立人に対して開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
14.10.22 | ・書面審理 ・実施機関の開示理由説明の聴取 ・審議 (第161回審査会)
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14.11.26 | ・審議 ・答申 (第163回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。