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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第143号

答申

1 審査会の結論

実施機関は本件異議申立ての対象となった非開示決定を取り消し、開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨

異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成14年11月8日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成13年度カワラハンミョウ幼虫等の調査報告書中前回請求で非開示とされた部分」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成14年11月20日付けで行った非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。

3 本件対象公文書について

本件異議申立ての対象となっている公文書は、実施機関が財団法人三重県環境保全事業団に対して平成13年度に業務委託を行った中勢沿岸流域下水道(志登茂川処理区)志登茂川浄化センター環境事後調査に係る成果品(以下「本件対象公文書」という。)のうち三重ミティゲーション検討委員会(以下「検討委員会」という。)に関する部分である。

なお、異議申立人は、本件対象公文書の開示請求を平成14年3月及び同年5月に行ったところ、非開示部分については当分の間非開示とする旨の理由付記がされたうえで部分開示決定を受けたものであるが、本件異議申立ては、平成14年11月にさらに請求をした際に、実施機関が先の請求で非開示とした部分をなおも開示しなかったことに対して提起されたものである。

4 実施機関の非開示理由説明要旨

実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書中の非開示部分は条例第7条第5号(審議検討情報)及び第7条第6号(事務事業情報)に該当し、非開示が妥当というものである。

(1) 条例第7条第5号(審議検討情報)に該当

異議申立人が開示を求めている検討委員会の内容には、現在検討中である志登茂川浄化センターの自然環境の保全対策(案)およびこれにともなう施設配置変更計画(案)に対する審議が含まれている。この自然環境の保全対策(案)および施設配置変更計画(案)は、いずれも検討中であり、意思決定したものではなく、現段階では、事業者である県として、保全対策が可能かどうか、判断が付いておらず、また施設配置を見直すかどうか、という点でさえ、決定していない状況である。当該海浜の自然環境保全対策は、極めて難問であるため、専門家のアドバイスは必要不可欠であり、また、保全対策の成否を考えると施設配置計画の見直しをも視野に入れて検討した上で、保全対策の方針を意思決定する必要がある。

実施機関は、当時、保全対策の方針の検討や、それに必要な海浜現況調査の内容の検討を行っていたが、これらは専門性の高い問題であるため、自然環境分野の専門家・研究者の参考意見を聴取することが適当であると判断し、検討委員会を開催したものである。

すなわち、今回開催した検討委員会は、実施機関が意思決定した具体的な保全対策を提示し、これに対する意見を聴いたものではなく、その前段階として、今後の保全対策の可能性や、海浜現況調査等基礎調査の内容の妥当性等について、参考意見を聴いたものである。

事実、2回開催した委員会の審議内容は、今後の保全対策を検討していく上での課題等に関する議論が主であり、具体的な保全対策が論じられているものではない。

このように、保全対策が可能かどうか不明な複数の未決定案、および見直しを行うかどうかも不明な施設配置案を前提として審議した内容を開示することは、保全対策(案)および施設配置計画(案)が既定の事実であるかのように、一人歩きする事になり、地域に無用な混乱を招き、ひいては意思決定の中立性が損なわれるおそれがある。

また、専門家で組織された委員会への意見聴取は、保全対策立案のための調査研究でもあり、率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがある。

特に、委員の中には、以前からアドバイスをしていただいていた関係から、過去に誹謗中傷されたという事実があったため、委員会形式で多くの専門家に意見をいただくこととしたという経緯があり、意思決定されていない保全対策に対する意見が、いたずらに公開されることは、率直な意見の交換が損なわれるおそれが極めて高いと考えられる。

条例第7条第5号は、行政における内部的な審議、検討又は協議の際の自由な意見交換や公正な意思形成が妨げられたり、歪められたり、特定の者に利益や不利益をもたらすことなく、適正な意思形成が確保される必要から定められたものであり、本件はこれに該当する。

(2) 条例第7条第6号(事務事業情報)に該当

現在、志登茂川浄化センターの調査設計に関する予算執行および環境アセスメント事後調査の実施等に関し、争訟中である。

当該文書は、争訟の争点と同様に環境アセスメントに関するものであり、その開示により、争点がますます混乱する可能性が極めて高く、ひいては三重県知事は、適正な事業の執行を行うべき当事者としての地位を不当に害されるおそれがある。

また、検討委員会から、保全対策等について意見をいただいていることは、環境アセスメントの一環として、その時点毎に事業者自らが環境への影響を評価していくため自主的に開催、諮問していることに他ならないが、委員会の視点に立てば、県からの付託を受け、保全対策等の検討により環境影響に関する調査研究の一環として専門家の意見を答申していただいているものである。

よって、現段階のように、県の意思決定がなされていない時点で、公表した場合には、複数の未決定案に対し、外部からの種々雑多な意見が輻輳し、委員会における調査研究に際して公正かつ効率的な執行が不当に阻害されるおそれがある。

条例第7条第6号は、県の事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、争訟に係る事務に関し、県の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ、調査研究に係る事務に関し、その公正かつ効率的な執行を不当に阻害するおそれ、その他事務又は事業の適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの、が挙げられており、本件はこれに該当する。

なお、保全対策、施設配置について意思決定を行った後には、当該文書等を開示し、環境アセスメントの一環として十分な時間をかけ、今後とも検討委員会等で専門家の意見を聴きつつ保全対策を取りまとめていくものであり、現時点での開示の制限については、時間的な問題であり、開示することによる利益に対する制限の程度は極めて低いと考えられる。

5 異議申立ての理由

異議申立人は、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈・運用を誤っているというものである。

今回実施機関が非開示とした部分は、条例第7条第5号に該当し、「現時点においては、今回特定した内容を開示することにより、意思決定の中立性が不当に損なわれると判断するので、当分の間、非開示とする。」との理由で非開示とされたものである。検討委員会の意見は、県も当然尊重するという前提で意見を求めたはずであり、検討委員会が当該案件の審議中に開示を求めたものであれば、委員会の意思決定の中立性が不当に損なわれるとは言い得ても、報告書に意見が掲載された後は、県はこの意見を尊重して計画を進めるべき立場にあり、そうでなければ、何のために検討委員会に審議をさせたかということになる。意見の公開が県の意思決定の中立性を不当に損なうとは、条例の恣意的解釈に過ぎない。

仮に平成14年3月の請求に対する部分開示決定が妥当であったとしても、本決定までに既に8ヶ月近く経ており、しかも、当分の間非開示というに至っては、県の意思決定がいまだになされていないということで、到底信用できず、詭弁としか思えない。

6 審査会の判断

本件対象公文書について、実施機関は、条例第7条第5号(審議検討情報)及び条例第7条第6号(事務事業情報)に該当するので非開示が妥当であると主張している。

なお、実施機関は本決定で第5号(審議検討情報)に該当するとして非開示としたが、非開示理由説明書で第6号(事務事業情報)にも該当するとして非開示理由を追加したいとしている。非開示理由の付記が行政手続きの一環として条例上規定されているにもかかわらず、異議申立ての段階で非開示理由の追加を無制限に認めると、非開示理由の付記を求めた条例の趣旨が没却され、信義に反する結果となる。したがって、異議申立人の攻撃防御の機会を実質的に奪うような理由の追加は許されないと解すべきである。

しかし、本件事案の場合、追加した理由についても十分異議申立人に意見陳述の機会が付与されているので、本件事案について再度異議申立てと再決定が繰り返されることなく、紛争の一回的解決が可能となり、迅速な最終決定に資すると考えられるので、これを認めるものとする。

そこで、以下について判断する。

(1) 基本的な考え方について

条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。 条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2) 条例第7条第5号(審議検討情報)の意義について

本号は、行政における内部的な審議、検討又は協議の際の自由な意見交換や公正な意思形成が妨げられ、歪められたり、特定の者に利益や不利益をもたらすことなく、適正な意思形成が確保される必要から定められたものである。

(3) 条例第7条第5号(審議検討情報)の該当性について

実施機関が非開示とした部分には、現在検討中である志登茂川浄化センターの自然環境の保全対策(案)およびこれにともなう施設配置変更計画(案)に対する審議が含まれているが、これらは、いずれも意思決定したものではないため本号に該当する、と実施機関は主張している。

なお、実施機関は非開示理由説明書において、検討委員会は実施機関が設置した会議であるかのような説明をしているが、本件対象公文書が委託業務の成果品として実施機関あてに提出されたものであるという経緯や当審査会における実施機関の補足説明等から判断すると、本件対象公文書の非開示部分の記載内容は、財団法人三重県環境保全事業団が設置主体となった会議の内容に関するものであることが認められる。

したがって、本件対象公文書が、実施機関が財団法人三重県環境保全事業団に委託した業務の成果品として報告されたものである以上、その記載内容に仮に実施機関として意思決定がされていない事項に関する記述が含まれていたとしても、それをもって行政内部の審議検討過程にある情報であると言うことはできない。なぜなら、本号は「県、国、独立行政法人等及び県以外の地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報」をその保護の対象としているからである。本件対象公文書の非開示部分には、実施機関内部あるいは実施機関と他の機関との意見交換に関する記述は認められないため、本号に該当し非開示が妥当であるという実施機関の主張を認めることはできない。

なお、「保全対策が可能かどうか不明な複数の未決定案、および見直しを行うかどうかも不明な施設配置案を前提として審議した内容を開示することは、保全対策(案)および施設配置計画(案)が既定の事実であるかのように、一人歩きする事になり、地域に無用な混乱を招く」という実施機関の説明については、その主旨から判断すると、本号ではなく、条例第7条第6号(事務事業情報)に該当すると主張しているものと判断されることから、後述する。さらに、「委員の中には、以前からアドバイスをしていただいていた関係から、過去に誹謗中傷されたという事実があったため、委員会形式で多くの専門家に意見をいただくこととしたという経緯があり、意思決定されていない保全対策に対する意見が、いたずらに公開されることは、率直な意見の交換が損なわれるおそれが極めて高い」という主張についても同様であり、あわせて後述する。

(4) 条例第7条第6号(事務事業情報)の意義について

本号は、県の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象にされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非公開とせざるを得ないので、その旨を規定している。

(5) 条例第7条第6号(事務事業情報)の該当性について

実施機関は本件対象公文書の非開示部分は、実施機関として意思決定されていない事項について記述されているため非開示が妥当であると主張している。しかしながら、検討委員会は、自然環境分野の専門家・研究者の参考意見を聴取する目的で開催されたに過ぎず、最終的な意思決定は実施機関によりなされることを実施機関も説明しているところであり、検討委員会の審議内容を開示するとその内容が既定の事実であるかのように一人歩きすることになり、地域に無用な混乱を招く、という実施機関の主張を認めることはできない。

現段階のように、県の意思決定がなされていない時点で、公表した場合には、複数の未決定案に対し、外部からの種々雑多な意見が輻輳し、委員会における調査研究に際して公正かつ効率的な執行が不当に阻害されるおそれがあると、実施機関はあわせて説明している。しかし、環境問題に多くの県民の関心が集まる昨今の状況にかんがみれば、様々な意見が住民から寄せられる可能性が小さくないのは当然であって、本検討委員会はあくまでも実施機関に対して参考意見を述べる立場であるのであれば、実施機関が行う事務事業の円滑な遂行に直接的に影響を及ぼすとは言えず、非開示とすべき理由にはあたらない。

また、委員の中には、以前からアドバイスをしていただいていた関係から、過去に誹謗中傷されたという事実があり、率直な意見の交換が損なわれるおそれが極めて高い、と実施機関は説明している。しかしながら、このような事実を背景に、今回は「委員会形式で多くの専門家に意見をいただくこととしたという経緯」があったこともあわせて説明しており、また、検討委員会が本件委託業務の範囲内ではその任務を既に完了していることから、実施機関が抱くような危惧は生じ得ないものと考えられる。本件対象公文書の非開示部分を当審査会がインカメラ審理により見分したところ、どの委員が具体的にどのような発言をしたか判別できるようには記載されておらず、この点から・燉ヲ直な意見の交換が損なわれるという実施機関の主張に首肯することはできない。

さらに、現在争訟中であり、争点がますます混乱する可能性が極めて高く、ひいては、適正な事業の執行を行うべき当事者としての地位を不当に害されるおそれがある、と実施機関は主張しているが、そもそも情報公開制度は、原則として請求の目的や開示された情報の使途を問わず、広く何人に対しても認められた制度であり、現在争訟中のため争点がますます混乱するという理由をもって非開示とすることはできない。情報公開制度は、住民の知る権利に基づき、認められた制度であるのに、もし実施機関の主張するような理由で非開示とすることが認められることになれば、実施機関の恣意的運用が可能となり、住民の権利として認められた、本情報公開制度の存在意義自体が全く失われてしまう。したがって、現在争訟中であることを理由とした実施機関の本決定には理由がないと言わざるを得ない。

よって、以上のとおり、本件対象公文書の非開示部分は、本号には該当しないと判断すべきである。

(6) 結論

よって、主文のとおり答申する。

7 審査会の処理経過

当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

別紙1

審査会の処理経過

年月日 処理内容
14.12.19 ・諮問書の受理
14.12.20 ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼
15. 2.26 ・非開示理由説明書の受理
・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
15. 3.10 ・異議申立人からの口頭意見陳述申出書の受理
15. 3.11 ・書面審理
・実施機関の非開示理由説明の聴取
・異議申立人の口頭意見陳述
・審議
(第170回審査会)
15. 5. 6 ・実施機関の補足説明の聴取
・審議
(第173回審査会)
15. 5.27 ・審議
・答申
(第175回審査会)

三重県情報公開審査会委員

職名 氏名 役職等
※会長 岡本 祐次 元三重短期大学長
※会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
※委員 渡辺 澄子 松阪大学短期大学部教授
※委員 豊島 明子 三重大学人文学部助教授
委員 早川 忠宏 弁護士
委員 丸山 康人 四日市大学総合政策学部教授
委員 冬木 春子 三重短期大学生活科学科助教授

なお、本件事案にについては、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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