三重県情報公開審査会 答申第155号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成15年4月2日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「一志郡内の特定地番の用地廃止にかかる文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成15年4月9日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示(不存在)理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
公共用財産の用地廃止申請書は過去に返戻されており、返戻の時点で事務処理が完結している。県には保存されていないが、関係市町村役場で保存されている当該用途廃止申請書の受付が昭和55年度となっており、すでに開示請求の時点で20年以上経過している。したがって、三重県文書整理保存規程に定められている保存期間10年を経過しているためすでに廃棄済であり、保有していない。
また、文書の保存期間についても、用途廃止後は国に引き継がれて申請者へ売却等がなされるため、10年を超えてまで保管を行う必要はない。
4 異議申立て理由
異議申立人は、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈・運用を誤っているというものである。
当該用途廃止申請書がすでに返戻されているから、その時点で事務処理が完結していると実施機関は主張しているが、用途廃止の手続がなされた時こそが完結した時であるはずであり、完結していない案件である以上、本来所有しておくべきものである。
実施機関は、10年保存を理由に不存在を主張するが、里道等の法定外財産は一般的な行政財産より重要な文書として位置付けるべきであり、文書の保存年限が10年との認識は身勝手な解釈である。
5 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 本決定の妥当性について
本件事案について、異議申立人は実施機関が行った本決定の取消しを求めているが、異議申立書の内容や当審査会へ提出された意見書などから総合的に判断すると、異議申立ての主旨は、実施機関が本来保有しておくべきであると異議申立人が考える用途廃止にかかる公文書を、保存年限経過による廃棄のため不存在とした点であると認められる。
確かに、用途廃止申請書が書類不備等で返戻されている状態は、いまだ継続中の案件であるから、用途廃止手続が完了するまでは保有しておくべきとの異議申立人の主張は、一般的には理解できなくもない。
しかしながら、文書返戻後、再度の用途廃止申請があれば改めて手続を進めることが可能であるから、返戻手続をもって事務処理は完結しているとの実施機関の説明に不合理な点があるとは言えない。
また、当該用途廃止に係る文書の保存年限について、実施機関が現在10年と定めている期間そのものが適当ではなく、それを超えて保存すべき特に重要な文書である旨、異議申立人は主張するが、そもそも法定外公共用財産は用途廃止した後は、国へ引き継がれて申請者へ売り払い等がなされるものであるため、文書管理上特に重要な文書として、10年を超えて、すなわち30年間保存すべき文書には該当しない、とする実施機関の文書管理の運用に不合理なところがあるとまでは言えず、実施機関の本決定は妥当であると言わざるを得ない。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15. 6.25 | ・諮問書の受理 |
15. 6.26 | ・実施機関に対して非開示(不存在)理由説明書の提出依頼 |
15. 7. 4 | ・非開示(不存在)理由説明書の受理 |
15. 7. 7 | ・異議申立人に対して非開示(不存在)理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15. 7.30 | ・異議申立人からの意見書受理 |
15. 8. 5 | ・実施機関に対して意見書(写)の送付 |
15. 8.25 | ・実施機関からの反論書受理 |
15. 8.26 | ・異議申立人に対して反論書(写)の送付 |
15. 9.30 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・異議申立人の口頭意見陳述 (第183回審査会)
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15.10.28 | ・審議
(第185回審査会)
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15.11.25 | ・審議 ・答申 (第187回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。