三重県情報公開審査会 答申第161号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った部分開示決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成14年12月15日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定宗教法人の財産目録」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成15年7月28日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書は、事務所備付け書類の写し(財産目録)(以下「本件対象公文書」という。)である。
なお、本件対象公文書である宗教法人法第25条第2項の事務所備付け書類(財産目録)については、当初の決定において、存否を答えることにより、当該法人の活動の有無を答えることとなることから、宗務行政の適正な遂行に支障を来すおそれがあるとの理由で存否応答拒否(平成14年12月27日付け)としたが、この決定に対し当審査会は、存否を明らかにしない決定を取消し、改めて開示・非開示等の決定を行うべきである旨、答申した(平成15年7月11日付け答申第144号)。実施機関は、これを尊重し、存否を明らかにしたうえで、改めて部分開示決定を行っているが、本件異議申立ては非開示部分に対して改めて提起されたものである。
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書中の非開示部分は条例第7条第3号(法人情報)に該当し、非開示が妥当というものである。
(1) 条例第7条第3号(法人情報)に該当
宗教法人法第25条第4項の規定に基づき宗教法人が所轄庁に提出する書類(以下「提出書類」という。)は、同条第2項により宗教法人が事務所に備えなければならない書類の写しであり、事務所備付け書類の閲覧については、同条第3項により、信者その他の利害関係人であって、閲覧することに正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものではないと宗教法人が認める者のみに、閲覧が許されているものである。
したがって、土地、建物にかかる種別や数量、基本財産の総額といった登記事項等の公知の事項を除く、資産の増減、預貯金等の法人の財産にかかる情報については、公にすると正当な利益を損なうおそれがあり、また、憲法で保障された信教の自由に基づく当該法人の権利を害するおそれがあるため、非開示とした。
5 異議申立ての理由
異議申立人は、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈・運用を誤っているというものである。
普通財産はすでに判明しているので、非開示とする必要はない。ただ、ペイオフ対策を知りたいだけであり、これは、実は為されていない。土地、建物の数量を公開する以上、ペイオフ対策に関する部分は当然公開せられるべきと考える。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方について
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2) 条例第7条第3号(法人情報)の意義について
本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。 法人等に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは著しく不当な事業活動によって生ずる支障から県民の生活を保護するため公にすることが必要であると認められる情報、及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書きにより、常に公開が義務づけられることになる。
(3) 条例第7条第3号(法人情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号(法人情報)に該当するとして非開示としたのは、宗教法人法第25条第4項の規定に基づき提出される財産目録の土地、建物にかかる種別、数量、基本財産計を除く法人の財産にかかる情報のそれぞれの欄である。
異議申立人は、普通財産はすでに判明しているので非開示とする理由がないと主張しているが、自らが当該宗教法人の信者という立場で知り得ている情報であり、宗教法人法第25条第3項において、宗教法人の事務所備付け書類に対する閲覧請求権者を「信者その他の利害関係人」に限定しており、公にされている情報とは言えず、当該法人の内部管理情報であると認められる。
したがって、これらの情報を開示することにより当該法人の信教の自由が損なわれるおそれは否定できず、当該法人の正当な利益を害すると認められ、本号に該当する。
また、本号ただし書きに該当し公益上開示すべきとまでは言えず、非開示が妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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15. 8.18 | ・諮問書の受理 |
15. 8.20 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
15. 9.17 | ・非開示理由説明書の受理 |
15. 9.17 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
15.12.12 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第188回審査会)
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16. 1. 9 | ・審議 ・答申 (第190回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
※委員 | 冬木 春子 | 三重短期大学生活科学科助教授 |
会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。