三重県情報公開審査会 答申第189号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年7月12日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「亀山市環境再生事業に関する補助金交付申請書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年7月23日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件異議申立ての対象公文書
平成16年度環境保全施設整備費補助金交付申請書(以下「本件対象公文書」という。)4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
条例第7条第6号(事務事業情報)に該当
本件対象公文書には亀山市の事業に関する工事費内訳等の詳細金額に関する情報が含まれる。これらの情報から本事業の予定価格を容易に推察することが可能であり、また、開示決定時点では契約事務が市において進行中であるため、契約事務が完了する前に当該情報を公にすることは、適正な契約事務の執行に支障を及ぼすおそれがある。
5 異議申立て理由
本件対象公文書は、補助金交付決定があった時点で全面開示されるべきであり、請求時点では交付決定済であり、事業実施のための委託契約は、シルバー人材センター等と契約済みである。亀山市は工事請負契約に関する工事費の積算額を今でも非公開とするなどの不当な決定を積み重ねてきたが、現在、市情報公開審査会で審査中である。本件補助事業の効果は疑わしく、事業実施は、シルバー人材センターへの違法な契約により請負わせており、問題は大きい。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 条例第7条第6号(事務事業情報)の意義について
本号は、県の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象にされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非公開とせざるを得ないので、その旨を規定している。
(3) 条例第7条第6号(事務事業情報)の該当性について
実施機関が本決定において本号(事務事業情報)に該当し非開示とした箇所で異議申立ての対象となっているのは、本件対象公文書の「補助対象経費所要額明細書」の工種別金額及び「事務費内訳書」の内補助対象事務費及び「工事実施設計書」の単価と金額である。実施機関は、「本件対象公文書には亀山市の事業に関する工事費内訳等の詳細金額に関する情報が含まれる。これらの情報から本事業の予定価格を容易に推察することが可能であり、また、開示決定時点では契約事務が市において進行中であるため、契約事務が完了する前に当該情報を公にすることは、適正な契約事務の執行に支障を及ぼすおそれがある。」と非開示理由を述べており、本号(事務事業情報)に該当して非開示が妥当であると主張している。
他方、異議申立人は、「本件対象公文書は、補助金交付決定があった時点で全面開示されるべきであり、請求時点では交付決定済であり、事業実施のための委託契約は、シルバー人材センター等と契約済みである。亀山市は工事請負契約に関する工事費の積算額を今でも非公開とするなどの不当な決定を積み重ねてきた。」と主張している。
確かに、本件対象公文書は、補助金交付決定があった時点で全面開示されるべきであるとの異議申立人の主張は理解できないわけではない。
しかしながら、実施機関の説明によると本件対象公文書は亀山市から国へ直接申請がなされ、その申請内容が認められた後に情報共有の観点から、国から県へ参考送付されるものであって、県が本件対象公文書の内容を審査・指導する仕組みにはなっていない。さらに、事業主体である亀山市において「工事実施設計書」の工事内容に沿って工事が発注される予定であり、実施機関が本決定を行なった時点では、本件対象公文書の「補助対象経費所要額明細書」及び「工事実施設計書」に記載されている工種のうち、ごく一部の工種しか亀山市においては契約がなされておらず、また、亀山市においては、工事の予定価格について入札等を行なう前には事前公表を行なうことにはなっていない。そのため、「補助対象経費所要額明細書」の工種別金額及び「工事実施設計書」の金額と単価を開示することにより、亀山市で引き続き実施される残りの未発注工事に関する予定価格が容易に推察されるおそれがあり、また、「事務費内訳書」の内補助対象事務費を開示することにより、既に開示されている「補助対象経費所要額明細書」の小計から内補助対象事務費の金額を差し引くことで予定価格が容易に推察されるおそれがあることから、亀山市の契約事務が完了する前に当該情報を公にすることは、適正な契約事務の執行に支障を及ぼすおそれがあるとの実施機関の説明には理由がある。
したがって、本件対象公文書中の、実施機関が非開示とした部分は、本号(事務事業情報)に該当し、非開示が妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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16. 8. 3 | ・諮問書の受理 |
16. 8. 6 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16. 8.19 | ・非開示理由説明書の受理 |
16. 8.24 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
16.12.14 | ・書面審理 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第212回審査会)
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17. 1.18 | ・審議 ・答申 (第213回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
※委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。