三重県情報公開審査会 答申第198号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年8月13日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の土地改良区についての検査書類」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年8月27日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 本件異議申立ての対象公文書
「平成9年度土地改良区検査事前提出資料」(以下「本件対象公文書」という。)
4 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
条例第7条第2号(個人情報)に該当
本件対象公文書には、役員の年齢が記載されており、特定の個人を識別することができるため、個人情報に該当する。
5 異議申立て理由
不開示部分である役員の年齢については、土地改良法第13条の法人として事務所備付け帳簿として閲覧させるべき文書であり秘密にすべき理由がない。また、当該土地改良区から提出された文書が真正に作成されたものかどうか確認する必要があることから、開示されるべきである。
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。
(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
今回異議申立ての対象となっている本件土地改良区役員の年齢について、実施機関は、個人情報に該当し非開示が妥当であると主張している。一方、異議申立人は、開示することで個人の権利利益が侵害されるとは考えられず、むしろ公にすることによって、本件土地改良区から提出された書類の作成時において、当該書類に記載の役員が生存しているか否かが明らかとなり、このことにより、これらの書類が真正なものかどうか確認できるのであるから、開示すべきであると主張する。
本件土地改良区の役員の年齢は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報であり、本号本文に該当することは明らかである。土地改良区が役員の就任又は退任に伴い、役員の住所及び氏名を届け出たときは、都道府県知事は土地改良法第18条第17項の規定により、これを公告しなければならないこととされているが、土地改良区の役員の年齢については、土地改良法などの他法令や慣行により公にされている情報とは認められない。また、異議申立人は年齢を開示することで、本件土地改良区からの提出書類が真正に作成されたものかどうかが確認できると主張するが、前述のとおりすでに制度上公にされている情報から、提出書類作成時において当該書類に記載の役員が生存していたか否かは十分確認できるものであり、これら提出書類の真正さを確認できる以上、当該個人の権利利益を侵害してまで公にすべきであるとの特段の事情も認められず、公益上開示すべき情報であるとはいえない。
したがって、実施機関が非開示とした本件土地改良区役員の年齢は、本号(個人情報)に該当し、ただし書にも該当しないことから、非開示が妥当である。
(4) 結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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16. 9. 8 | ・諮問書の受理 |
16. 9.13 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
16. 9.22 | ・非開示理由説明書の受理 |
16. 9.28 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
17. 3.15 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (第217回審査会)
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17. 4.12 | ・審議 ・答申 (第219回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 元三重短期大学長 |
※会長職務代理者 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 三重中京大学短期大学部教授 |
※委員 | 寺川 史朗 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学総合政策学部教授 |
委員 | 竹添 敦子 | 三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。