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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第233号

答申

1 審査会の結論

 実施機関は本件審査請求の対象となった公文書のうち、当審査会が非開示妥当と判断した部分を除き、開示すべきである。

2 審査請求の趣旨

 審査請求の趣旨は、審査請求人が平成16年9月28日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成15年4月1日から同年12月31日期間における伊勢警察刑事課関係の捜査費(調査費)及び食料費支出に関する文書の写し」の開示請求に対し、三重県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成16年10月12日付け会発第492号で行った公文書非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。

 なお、開示請求のあった食糧費支出に関する文書については、平成16年10月12日付け会発第493号で公文書不存在決定を行っている。本件審査請求は、本決定の取消しを求めるものであって、食糧費支出に関する文書については異議がないものとして、以下のとおり判断する。

3 本件対象公文書について

 本件審査請求の対象となっている公文書は平成15年4月1日から同年12月31日までの伊勢警察署捜査費支払証拠書類のうち刑事課の個別執行に係る「捜査費支出伺」、「捜査費支払精算書(添付書類を含む。)」、「捜査費立替払報告書(添付書類を含む。)」、「捜査費交付書兼支払精算書」、「捜査諸雑費支払伝票(添付書類を含む。)」(以下「本件対象公文書」という。)である。

4 実施機関の非開示理由説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書は条例第7条第2号(個人情報)、条例第7条第4号(公共安全情報)に該当し、非開示が妥当というものである。

(1)捜査費の概要

ア 捜査費の性格

 捜査費とは、犯罪の捜査等に従事する警察職員の活動のための諸経費及び捜査等に関する情報提供者、捜査協力者(以下「情報提供者等」という。)に対する諸経費で、緊急を要し、又は秘匿を要するため、通常の支出手続(口座振込みなど)を経ていては警察活動上支障を来す場合に使用する経費で、現金経理が特に認められているものである。

 なお、これら捜査費に係る文書の中には、秘匿内偵捜査に係る情報があり、特に捜査協力者からの情報は、「完全秘匿」を前提に入手したものである。

(ア)捜査関係者からみた秘匿性

 捜査協力者等から情報を得るという行為そのものが、犯罪捜査の生命といえる手法であり秘匿を前提としている。

 このことは内偵型捜査に代表されるように、完全に秘匿裡に捜査を進めることが前提でなければ捜査活動は成り立たない。

(イ)捜査協力者からみた秘匿性

 確度の高い情報を提供する協力者の中には、暴力団等犯罪企図集団に身を置く者や、それら集団と何らかの関係を有している者が多く、捜査機関への情報提供は「組織への裏切り」や「密告」を意味することから、この関係は完全なる秘匿が前提条件で、一部でも開示すること自体今後の捜査に支障を及ぼすおそれがある。

イ 捜査費の具体的な使用例

(ア)犯罪捜査等に従事する警察職員の活動のための経費

 a 聞込み、張込み、尾行等に際して必要となる交通費、飲食費、入場料、遊戯代、電話代等

 b 早朝、深夜の捜査等に際して必要となる交通費、補食費等

(イ)捜査等に関する情報提供者等に対する経費

 a 情報提供者等に対する現金又は物品による謝礼

 b 情報提供者等との接触に際して必要となる交通費、飲食費等

ウ 捜査費の執行の流れ

(ア)取扱責任者から取扱者への交付

 取扱者(警察本部においては担当課長等、警察署においては警署長。以下同じ。)は、継続中の捜査の進展状況や今後予想される事案等を踏まえて、翌月の所要額を警務部会計課長を経て取扱責任者(警察本部長)に申請する。取扱責任者は、各取扱者の申請内容と県下の犯罪情勢等を総合的に勘案して交付額を決定し、各取扱者に交付する。

(イ)個別の執行手続

 取扱者は、捜査費の執行の必要が生じたときには、捜査員に捜査費を交付し、捜査員は債主(情報提供者、飲食店等)に対して所要の支払いをした後、取扱者に支払精算書(領収書等添付書類を含む。)を提出して精算を行う。

 また、捜査費の執行について、捜査員が日常の捜査活動(情報収集、聞込み、張込み、尾行等)において使用する少額で多頻度にわたる経費(以下「捜査諸雑費」という。)については、あらかじめ一定額が概算交付される仕組みがとられており、これについては、中間交付者(警察本部では担当課長補佐等、警察署においては担当課長。以下同じ。)を経て捜査員に交付され、支払い後の精算も中間交付者を経て行う。

(2)条例第7条第2号(個人情報)に該当

ア 「捜査費支払精算書(添付書類を含む。)」、「捜査費立替払報告書(添付書類を含む。)」及び「捜査諸雑費支払伝票(添付書類を含む。)」には、情報提供者等の住所、氏名等が記載されており、これらは、特定の個人を識別することができる情報であると判断し非開示とした。

イ 「捜査費支出伺」、「捜査費支払精算書(添付書類を含む。)」、「捜査費立替払報告書(添付書類を含む。)」、「捜査費交付書兼支払精算書」及び「捜査費諸雑費支払伝票(添付書類を含む。)」に記載されている警部補以下の階級にある警察官の氏名に係る情報は、公にすることにより、私生活上の権利利益を害するおそれがあると知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名であると判断し非開示とした。

(3)条例第7条第4号(公共安全情報)に該当

 本件対象公文書の個別執行に関する文書は、個々の捜査員の活動を費用面から具体的に表すものとして、文書の枚数そのものが、条例第7条第4号に該当し、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報であり、部分的なマスキングにはなじまないものとして全てを非開示としたものである。

 さらに、本件開示請求対象公文書は、開示請求日が平成16年9月28日、開示請求対象期間が「平成15年4月1日から同年12月31日」の期間であり、請求日と開示請求対象期間が近接し、かつ、伊勢警察署刑事課における捜査継続中の事件情報を含む文書に対する開示請求であることからも、そもそもその公文書全体が非開示とされるべき性格のものと言える。

ア 捜査費支払証拠書類の枚数を非開示とする理由

 本件対象公文書の全てを条例第7条第4号に該当する情報とした具体的理由は、枚数そのものが、捜査活動の活発状況、特定期間の当該警察署における捜査活動の集中度を推測させるほか、月別枚数を比較することで、当該警察署における捜査の進捗状況を推測させる。

 また、常習犯等が、事件の発生が少ない小規模警察署や暴力団事件、汚職事件、暴走族事犯等の専門的捜査を行う所属における捜査費支払証拠書類の枚数を月別に分析することにより、特定の事件捜査に係る捜査着手時期から捜査終結までの進捗状況などの推測が可能となり、その捜査員個々を尾行することにより、捜査状況や立ち寄り先などから協力者等が把握されるおそれがある。

 他方、当該枚数は、警察が犯罪の事実を認知・把握していないという事実も明らかにすることになる。

イ 犯罪者等の情報収集の実態

 捜査の対象者は、犯罪者のほか暴力団、犯罪常習者、極左・極右暴力集団、暴走族等の犯罪を繰り返し敢行している個人や団体(以下「常習犯等」という。)であり、これらの常習犯等は、日常的に捜査機関の動向を監視し、警察署の捜査体制、捜査員等関係者の氏名・住所・家族構成、捜査車両、捜査員の私有車両の登録番号などのほか、捜査員の筆跡や携帯電話番号までも掌握することに懸命であり、公文書開示請求により個別執行に関する捜査費支払証拠書類に係る情報を得れば、新聞等の報道による情報や他の犯罪者、自己の周辺者等から得られた情報と照合・精査することにより、犯罪者自らが敢行した特定の事件捜査の進捗状況が明らかになるおそれがあり、証拠隠滅や今後の犯罪敢行のための有力な情報を提供することとなる。

ウ 開示した場合の具体的捜査への支障

(ア)事件の発生が無い警察署で開示請求があった場合

 捜査費の執行が皆無であった場合(小規模警察署においては、月単位で捜査費の執行がないこともある。)、当該警察署管内において犯罪を敢行した者は、開示請求を行い、捜査費の執行がなかったことを知れば、自ら犯した犯罪を迷宮入りさせるための手段・方法を考え、証拠隠滅等を図るための精神的余裕と時間を得ることになるため、警察が犯罪の事実を認知・把握していないという事実を明らか(不存在決定)にすることはできない。

(イ)取調べを受けた共犯者等が開示請求した場合

 検挙されていない共犯者等は、参考人として自らの取り調べ段階で入手した詳しい捜査状況等と公文書開示請求により得た捜査費の執行額の変動を把握することにより、当該事件の進捗状況を推測し、余罪等の発覚を防ぐための手段・方法を考え、証拠隠滅等を図るための精神的余裕と時間を得ることになる。

(ウ)殺人事件等重大事件の未検挙被疑者等が開示請求した場合

 重大事件を敢行した者は、新聞報道や被疑者等周辺者の取り調べ等で入手できる捜査情報と、公文書開示請求により得た捜査費執行額の変動を把握することによって、特定期間における捜査員の集中(動員)の度合いや捜査の進捗状況を推測し、自ら犯した犯罪を迷宮入りさせるための手段・方法を考え、証拠隠滅等を図るための精神的余裕と時間を得ることになる。

エ 捜査の継続・終結や時間経過の長短による開示・非開示判断の困難性

 捜査は、継続事件については、捜査期間の長期化に伴い捜査体制が縮小されるからといって捜査終結とは言えず、日常の警察活動を通じ、時効に至るまで捜査活動は継続されている。解決事件にあっても、検挙された被疑者からの情報等により、突き上げ捜査や検挙者以外の被疑者への捜査が継続されている。

 これらのことから、事件の継続・終結の別や、犯罪発生後の時間的経過の長短により、個別執行文書の開示・非開示の判断をすることは極めて困難である。

オ 継続中の事件に係る文書

 当該文書は、捜査活動を費用面から表すものであり、一の執行に関する情報それ自体が捜査に関する情報であるばかりでなく、これを事件ごとに一連のものとして捉えれば、事件ごとの捜査体制、捜査方針、捜査手法、捜査の進捗状況といった各種捜査情報を反映している文書であり、これら文書を公にすれば、被疑者等事件関係者が逃走、証拠隠滅、更なる犯罪等を図るおそれがあるといわざるを得ず、犯罪捜査等に支障を及ぼすおそれが強い。

カ 終結事件に係る文書

 当該文書については、事件が終結しており、これらを開示しても検挙被疑者による逃走証拠隠滅のおそれがないとされるが、当該検挙事件からの余罪捜査や事件関係者への突き上げ捜査については未だ継続的に行われている。

 故に、終結事件に係る文書でも、文書に係る情報を一連のものと捉えると、事件ごとの捜査体制、捜査方針、捜査手法、捜査の進捗状況等の各種捜査情報が反映した情報であることから、開示によりどのような事件に対して警察がどのような方針をとり、どのような捜査を進めていったかという分析が可能となり、犯罪企図者等には極めて有力な情報となり、今後捜査の裏をかいた犯罪を敢行するなど犯罪捜査に支障を及ぼすおそれがある。

 これは、特に開示請求日と開示請求期間が近接するほど、捜査状況が反映され、犯罪捜査に支障を及ぼすおそれが強いといえる。

キ 情報提供者等の情報

 個別執行情報の中には、情報提供者等の住所、氏名など個人を特定できる情報が記載されている。

 被疑者等の事件関係者及びその周辺者にとって、これら情報提供者等は被疑者自らの犯罪を暴き、当該被疑者事案に伏在する事案を露呈させる「敵」であり、嫌がらせに止まらず、身体的にも危害が加えられるおそれがある。

 したがって、情報提供者等においては、自らに関与する情報が完全に秘匿されるものであるとの期待と信頼を前提として捜査協力等に及ぶものであることから、これら情報の秘匿が協力の条件であり、これらの情報が公になることにより、捜査協力者等自身に前述の不安等を生じさせ、接触や協力そのものを拒むなどし、あるいは以後の警察に協力しようとする者までにも「明日は我が身」と萎縮効果を及ぼすおそれがあり、ひいては捜査に重大な支障が生ずるおそれがある。

5 審査請求の理由

 審査請求人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。

 捜査権の乱用であると言わざるを得ない。

 開示請求対象文書のすべてが捜査に支障をきたす文書とは考えられない。また、氏名を明かすことによりプライバシー侵害があるなら氏名のみマスキングすればよい。

 本件と同様主旨の開示請求に対し、部分開示決定を行っている。捜査費の現金出納簿及び証拠書類が捜査費支出に関する文書の一部分であるなら、少なくとも捜査費支出に関する現金出納簿及び証拠書類の部分開示は保証されるといえる。

6 審査会の判断

(1)基本的な考え方について

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。

 条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。

 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2)本件対象公文書について

 当審査会は、本件事案についてインカメラ審理は行わず、本件対象公文書と同様の様式例を提出させ記載内容等について実施機関から説明を受けた。当該記載内容等は次のとおりである。

ア 捜査費支出伺

 捜査費支出伺は、取扱者が捜査員(または中間交付者)に捜査費を交付する際に作成する書類であり、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影、支出伺年月日、支出する捜査費の総額、捜査費の交付を受ける捜査員(または中間交付者)の所属名・官職・氏名、支出伺内訳欄の官職・氏名、金額、支出事由、交付年月日が記載されている。

イ 捜査費支払精算書

 捜査費支払精算書は、捜査員が取扱者に自らが執行した捜査費の精算をするために提出する書類(執行内容に応じて領収書、レシート等が貼付される)であり、支払精算年月日、取扱者名、支払者である捜査員の官職・氏名・印影、概算受領年月日、既受領額、支払額、差引過不足(△)額、支払額内訳欄の支払年月日、支払事由、金額、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影、返納(または領収)年月日、領収印欄の印影が記載されている。

ウ 捜査費立替払報告書

 捜査費立替払報告書は、捜査員が一時的に私費を立て替えた場合に作成する書類(執行内容に応じて領収書、レシート等が貼付される)であり、立替払交付年月日、取扱者名、捜査員の官職・氏名・印影、立替払いした捜査費の総額、立替払内訳欄の支払年月日、金額、債主名、支払事由、備考、立替払いしたことを証する年月日、取扱者確認印欄の印影が記載されている。

エ 捜査費交付書兼支払精算書

 捜査費交付書兼支払精算書は、中間交付者が各捜査員に捜査諸雑費を交付したとき及び中間交付者が取扱者に捜査諸雑費を精算したときに作成する書類であり、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影、精算報告年月日、取扱者名、中間交付者の官職・氏名・印影、概算受領年月日、既受領額、交付額、支払額、返納額、内訳欄の交付年月日、官職、交付者名、交付額、支払額、返納額、確認印の印影が記載されている。

オ 捜査諸雑費支払伝票

 捜査諸雑費支払伝票は、捜査員が捜査諸雑費を執行した都度、作成する書類(執行内容に応じて領収書、レシート等が貼付される)であり、支払報告年月日、支払者としての捜査員の官職・氏名・印影、内訳欄の支払年月日、金額、支払先、支払事由が記載されている。

 また、審査請求人は、本件と同様主旨の開示請求に対し部分開示決定を行っていると主張する。しかしながら、審査請求人が同様主旨とする開示請求においては、「いくつかの特定の県警察本部の課及び警察署の捜査費の現金出納簿及び証拠書類」につき開示請求が行われており、現金出納簿が対象として明記され、特定の県警察本部の課あるいは警察署全体の捜査費に係る文書が対象となっている。

 これに対し、本件開示請求においては、「伊勢警察刑事課関係の捜査費支出に関する文書」が対象であり、「伊勢警察刑事課関係の捜査費」と対象が限定され、また、実施機関の説明によると、本件開示請求の際に受付窓口において、審査請求人が知りたいのは、個々の捜査員の支出負担行為である等と確認しているとのことである。

 実施機関は、これらを踏まえ対象公文書を特定したのであって、審査請求人が同主旨とする開示請求と対象文書の範囲が異なるものとなっても、これを不当とすることはできない。

(3)条例第7条第2号(個人情報)の意義について

 個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。

 しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。 

 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。

(4)条例第7条第2号(個人情報)の該当性について

 実施機関が条例第7条第2号に該当するとして非開示とした情報は、情報提供者等の住所、氏名等、警部補以下の階級にある警察官の氏名に係る情報である。

 情報提供者等の住所、氏名等について、これらの情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報であり、条例第7条第2号本文に該当することは明らかである。また、条例第7条第2号ただし書により非開示情報から除くとされている「法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」あるいは「人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれの情報にも該当するとは認められず、非開示が妥当である。

 次に、警部補以下の階級にある警察官の氏名に係る情報について、実施機関は、公にすることにより、私生活上の権利利益を害するおそれがあると知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名であると主張している。

 本件対象公文書におけるこれらの情報は、捜査活動において捜査費または捜査諸雑費を執行した捜査員(警部補以下の階級にある警察官)の氏名、印影であり、条例第7条第2号本文に「公務員等の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるもの又はそのおそれがあると知事が認めて規則で定める職にある公務員の氏名」は非開示情報として規定され、「三重県情報公開条例第7条第2号の規定に基づき知事が定める職に関する規則」(平成13年三重県規則第12号)に「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる警察の職員の職及びこれに相当する警察の職員の職」が定められていることから、これら氏名、印影は、非開示が妥当である。

(5)条例第7条第4号(公共安全情報)の意義について

 公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために行政に課せられた重要な責務であり、情報公開制度においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。そこで、犯罪の予防・鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行、その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示としたものである。

(6)条例第7条第4号(公共安全情報)の該当性について

 条例第7条第4号の該当性について、実施機関は上記4(3)のとおり主張し、本件対象公文書全てを非開示としている。

ア 実施機関は、金額に関する情報について、執行金額の多寡または変動により捜査活動の活発状況、進捗状況が推測され、被疑者等が自ら犯した犯罪を迷宮入りさせる等の手段、方法を考え、証拠隠滅等を図るための精神的余裕と時間を得ることになると主張している。

 確かに、執行金額の多寡により捜査活動の活発状況を推測される可能性はある。しかしながら、これら個別の執行金額を開示することで、特定事件が明らかとなるものではなく、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。

 また、捜査費支出伺に記載されている支出伺内訳欄の金額等の情報を開示することで、捜査員の人数が明らかになるが、捜査費を支出した捜査員の人数が明らかになるだけで、特定事件に対する捜査体制等が明らかとなるものではなく、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。

 したがって、金額に関する情報を開示することにより、犯罪の捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めたことには相当の理由があるとはいえず、条例第7条第4号に該当するとは認められず、次の情報については開示すべきである。

  • 捜査費支出伺に記載されている情報のうち、支出する捜査費の総額、支出伺内訳欄の金額
  • 捜査費支払精算書に記載されている情報のうち、既受領額、支払額、差引過不足(△)額、支払額内訳欄の金額
  • 捜査費立替払報告書に記載されている情報のうち、立替払いした捜査費の総額、立替払内訳欄の金額
  • 捜査費交付書兼支払精算書に記載されている情報のうち、既受領額、交付額、支払額、返納額、内訳欄の交付額、支払額、返納額
  • 捜査諸雑費支払伝票に記載されている情報のうち、内訳欄の金額

イ 取扱者名、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影、中間交付者の所属名・官職・氏名・印影については、実施機関の説明によると、取扱者は警察署の署長、補助者及び出納簿登記は警察署の副署長、中間交付者は警察署の担当課長であって警部以上の職にある者ということである。

 したがって、これらの情報は、捜査員に係る情報ではなく、また、会計手続き上におけるものであることから、これらの情報を開示しても、犯罪の捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めたことには相当の理由があるとはいえず、条例第7条第4号に該当するとは認められず、次の情報については開示すべきである。

  • 捜査費支出伺に記載されている情報のうち、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影、捜査費の交付を受ける中間交付者の所属名・官職・氏名
  • 捜査費支払精算書に記載されている情報のうち、取扱者名、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影
  • 捜査費立替払報告書に記載されている情報のうち、取扱者名、取扱者確認印欄の印影
  • 捜査費交付書兼支払精算書に記載されている情報のうち、取扱者欄の印影、補助者欄の印影、出納簿登記欄の印影、取扱者名、中間交付者の官職・氏名・印影

ウ また、実施機関は、枚数そのものが、捜査活動の活発状況、特定期間の当該警察署における捜査活動の集中度を推測させるほか、月別枚数を比較することで、当該警察署における捜査の進捗状況を推測させ、他方では、警察が犯罪の事実を認知・把握していないという事実も明らかにすることになり、また、常習犯等が、事件の発生が少ない小規模警察署や暴力団事件、汚職事件、暴走族事犯等の専門的捜査を行う所属における捜査費支払証拠書類の枚数を月別に分析することにより、特定の事件捜査に係る捜査着手時期から捜査終結までの進捗状況などの推測が可能となり、その捜査員個々を尾行することにより、捜査状況や立ち寄り先などから協力者等が把握されるおそれがあると主張している。

 確かに、上記6(6)ア、イに掲げる情報を開示すると、枚数が明らかになり、捜査費の執行状況によって捜査活動の活発状況を推測される可能性はある。

 しかしながら、枚数がわかることによって、直ちに特定の事件捜査の進捗状況が推測、把握されるおそれがあるとはいえず、また、警察が犯罪の事実を認知・把握していないという事実を明らかにすることに繋がるとまではいえない。また、上記6(6)ア、イに掲げる情報を開示することによって、捜査員個々の尾行に繋がり、捜査状況や立ち寄り先などから協力者等が把握されるおそれがあるとは認められない。

 したがって、枚数を非開示としたことは、犯罪の捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めたことには相当の理由があるとはいえず、条例第7条第4号に該当するとは認められないことから、開示すべきである。

エ 上記6(6)ア~ウに掲げる情報以外の次に掲げる情報については、これらの情報を開示すると、報道等の情報及び被疑者等の事件関係者自らが知り得る情報等と比較・分析することにより、特定事件捜査に係る捜査体制、捜査方針、捜査手法、捜査の進展状況といった各種捜査情報の動向が推察される可能性があり、被疑者等の事件関係者が逃走、証拠隠滅等を図るおそれがあるなど、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあると認められる。終結した事件であっても、これらの情報は事件毎の捜査体制等の各種捜査情報が反映された情報であることから、犯罪企図者等にとっては、警察の捜査体制等の分析のための情報となり、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあると認められる。また、情報提供者等の情報も含まれており、これらの情報を開示すると情報提供者等が特定され被疑者等事件関係者から嫌がらせだけでなく、身体的にも危害が加えられる等のおそれは否定できず、また、情報提供者等自身に前述の不安等を生じさせ、接触や協力そのものを拒むなどし、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあると認められる。

 したがって、これらの情報を開示することにより、犯罪の捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めたことには相当の理由があることから、条例第7条第4号に該当すると認められ、非開示が妥当である。

  • 捜査費支出伺に記載されている情報のうち、支出伺年月日、捜査費の交付を受ける捜査員の所属名・官職・氏名、支出伺内訳欄の官職・氏名、支出事由、交付年月日
  • 捜査費支払精算書に記載されている情報のうち、支払精算年月日、支払者である捜査員の官職・氏名・印影、概算受領年月日、支払額内訳欄の支払年月日、支払事由、返納(または領収)年月日、領収印欄の印影
  • 捜査費立替払報告書に記載されている情報のうち、立替払交付年月日、捜査員の官職・氏名・印影、立替払内訳欄の支払年月日、債主名、支払事由、備考、立替払いしたことを証する年月日
  • 捜査費交付書兼支払精算書に記載されている情報のうち、精算報告年月日、概算受領年月日、内訳欄の交付年月日、官職、交付者名、確認印の印影
  • 捜査諸雑費支払伝票に記載されている情報のうち、支払報告年月日、支払者としての捜査員の官職・氏名・印影、内訳欄の支払年月日、支払先、支払事由

オ 執行内容に応じて捜査費支払精算書等に貼付されている領収書、レシート等についても、発行された形式によって捜査活動の拠点等が識別される等、上記6(6)エに掲げる情報と同様に、開示することで、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあると認められるのであって、領収書、レシート等を開示することにより、犯罪の捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めたことには相当の理由があることから、条例第7条第4号に該当すると認められ、非開示が妥当である。

(7)結論

 よって主文のとおり答申する。

7 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙「審査会の処理経過」のとおりである。

別紙

審査会の処理経過

年月日 処理内容
16.10.25 ・諮問書の受理
16.10.29 ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼
16.11.22 ・非開示理由説明書受理
16.11.24 ・審査請求人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提出 依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 
18. 1.31
 
・書面審理
・実施機関の補足説明
・審議                  
(第238回審査会)
18. 2.17 ・審議                  
(第239回審査会)
18. 3.14 ・審議
・答申                  
(第242回審査会)

三重県情報公開審査会委員

職名 氏名 役職等
※会長 岡本 祐次 元三重短期大学長
※会長職務代理者 早川 忠宏 弁護士
※委員 丸山 康人 四日市大学総合政策学部教授
※委員 竹添 敦子 三重短期大学教授
委員 豊島 明子 三重大学人文学部助教授
委員 樹神 成 三重大学人文学部教授
委員 渡辺 澄子 三重中京大学短期大学部教授

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

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津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
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