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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第41号

答申

1 審査会の結論

 本件対象公文書(別紙)の非開示決定の取消しを求めるとの異議申立人の請求は棄却すべきである。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成8年7月11日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った、別紙の文書(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県議会事務局総務課長が7月22日付けで、議会が実施機関でないため受理できないとして、開示請求書を返戻したのは条例の解釈を誤った違法な非開示決定であるので、その取消しを求めるというものである。
 なお、本件対象公文書のうち、旅行命令簿には公務のため旅行を命じられた職員の職・氏名、用務、用務先、旅行期間及び所要金額等が記載され、また、食糧費支出命令書には会議・懇談等の(食糧費支出の)理由、債権者(利用飲食店)名及び支払額等が記載され、債権者からの請求書、会議・懇談等の出席者名等に関する文書が添付されている。

3 異議申立ての理由

 異議申立人が異議申立書等で意見陳述している異議申立ての主たる理由は、次のように要約される。

(1) 県の予算の調整権と執行権は、知事に専属し(地方自治法(以下「法」という。) 第149条)、議会はその権限を有しない。法第180条の2において、委員会に普通地方公共団体の長の権限の一部を委任する規定があるが、議会に委任する規定はない。従って、知事の予算執行権を議会に委任することは法的根拠がなく、できない。
 三重県の「委員会などの職員に対する知事の権限の一部委任に関する規則」にも、議会の職員に予算執行権を委任する規定はない。従って、三重県知事が議会の職員に対し予算執行権を委任する法的根拠は全くない。
 議会事務局が議会の予算執行に関する文書(支出負担行為書、支出命令書など)を作成しているのは、知事の補助として行っているに過ぎない。従って、議会事務局がこれらの予算執行に関する文書を事実上保管しているとしても、知事の補助として知事のために保管しているもので、これらの文書は、知事部局の職員が作成し、保管している公文書と解すべきである。

(2) 支出命令書は、知事が出納長に支出を命令するものであるから、支出命令書は出納長が保管すべきものである。三重県は、1、2年前まで出納長が保管していたが、現在は、議会事務局が事実上保管しているとのことであるが、出納長の補助として便宜上保管している(出納長の保管場所が狭いなどの理由)と解すべきである。出納長は、知事部局の職員であるから、支出命令書は知事の保管する公文書である。

(3) 元々、予算執行権が知事の専権である以上、どのように考えようと予算執行に関する文書は、知事の責任で作成し、保管する公文書であることは、間違いないことである。

 以上のことから、本件対象公文書は実施機関である知事部局が作成し保管している公文書であるので、議会が実施機関でないことを理由に開示請求に応答することを拒否するのは、条例の解釈を誤った違法な処分である。

4 県側の非開示(不受理、不作為)理由説明要旨

 本件については、情報公開制度に関する業務を総括する生活文化政策課行政情報室(平成10年4月、生活課情報公開室に名称変更)を所管課とし、議会事務局総務課を参考人として、審査を進めた。
 以下、知事・議会を合わせて、「県側」ということとする。

 県側の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書の開示請求を不受理としたというものである。

(1) 異議申立人が開示請求した時点では、議会は情報公開の実施機関ではなかった。

(2) 議会は、執行機関と独立・対等の関係を有しているという意味において、執行機関と同一に論ぜられるものではなく、その独立性について、最大限の配慮がなされなければならない。このことは予算執行についても同様であり、執行機関が議会の事務処理に予算面から介入、容喙してはならないものである。

(3) 情報公開の運用面においても、各種委員会の予算執行文書が公開請求された場合、予算執行権が知事に専属しているからといって知事が当該請求に対する決定を行っているわけではなく、それぞれの委員会が決定している。いわんや、執行機関とは独立・対等の関係にある議会においては、なおさら決定に関する独立性が求められる。

(4) 条例第2条第2項に規定する「公文書」の要件を満たさない文書は、情報公開制度の対象外、すなわち条例に基づく公文書公開請求権の範囲外ということになり、条例第5条の規定による請求があったとしても、これを受理することができない。
 本件対象公文書は条例の実施機関でない議会の文書であって、「公文書」の要件を満たしておらず、不受理とせざるを得ないものである。

(5) 本件対象公文書のうち「旅行命令簿」は、議会事務局職員が、その資格において作成した文書であって、そもそも異議申立人の請求の対象とはならない文書である。
 また、本件対象公文書のうち「食糧費に関する資料(支出命令書及び添付書類)」も議会事務局職員が、予算執行の手続として支出に必要な事務を行うため、作成又は取得した文書であり、実質的には議会の文書であるといえる。

(6) 公文書の保管、管理は、将来における利用等の行政上の便宜等を考慮してなされるべきものであり、最終的な予算執行権の所在とは別次元の問題である。特に、本件対象公文書のような予算の執行に関するものについては、当該機関における施策の立案、予算要求、事業の執行等の資料として重要な意味を有するものである。このため、支出負担行為の確認、支出命令の審査等の出納事務手続が終了し、出納局に置かれていた本件対象公文書等について、平成8年4月以降、事務の合理化、効率化を図るため、会計規則運用方針の一部改正を行い、議会はもとより、知事部局以外の実施機関においても、自らの会計に関する公文書を手元で保管、管理できるようにしたものであり、この事実は異議申立人も認めるところである。こうして、本件対象公文書は、三重県議会事務局規程に基づき議会が現に保管、管理しているのである。
 以上(1)~(6)で述べてきたように、本件対象公文書は実施機関でない議会の文書であるので、当該文書に対する開示請求に応答しないことは違法ではない。

5 審査会の判断

 当審査会は、本件について審査した結果、次のとおり判断する。

(1)基本的な考え方について

 条例の制定目的は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、判断することとする。

(2)処分の存在について

 異議申立人は平成8年7月11日付けで本件対象公文書の開示請求を行っているが、その請求先は知事と議会になっており、両者に宛てたものであると認められる。
 この請求に対しては、7月22日付けで議会事務局総務課長が、議会は実施機関ではないため、開示請求書を受理できないとして返戻している。一方、知事の処分は行われていない。したがって、知事の処分は未だ不存在(不作為)の状態が継続しているとみることもできる。
 もっとも、議会事務局総務課の不受理理由説明書及び口頭による理由説明、生活文化政策課の口頭による理由説明、並びに異議申立人の異議申立書、意見書及び口頭意見陳述をふまえて、県側の一連の対応を振り返って検討すると、実施機関でない議会の文書に対する開示決定を議会とは独立の関係にある知事が行うことは不可能であるというのが県側の基本的立場であるともうかがわれ、議会事務局総務課長名による「議会は実施機関でない」とした通知は実質的にみれば、議会による不受理処分であると同時に知事による対象文書の不存在を理由とする非開示処分とも解することができる。
 議会は実施機関でないので、開示請求書を返戻したことに違法はない。
 知事に対する開示請求に対しては、正式の応答がなく、形式的には改めて知事に処分を求めることも可能であるが、本審査会としては、先に述べたように実質的見地から、議会事務局総務課長名による「議会は実施機関でない」とした通知を、便宜上議会による不受理処分であると同時に知事による非開示処分であるととらえた上で、その非開示理由(本件対象公文書は議会の文書であって、実施機関が作成・保管した公文書でないので公開できない)の妥当性を検討する。

(3)条例第2条第2項の該当性について

 本件対象公文書が、条例にいう「公文書」に当たるか否かについて検討するに、条例第2条第2項は、「この条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書……であつて、実施機関において管理しているもののうち次の各号に定めるものをいう。(1)文書、図画及び写真については、決裁又は供覧の手続を終えたもの……」と規定しており、これによれば、公文書に当たるためには、
①実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であること、
②実施機関において管理しているものであること、
③決裁又は供覧の手続きを終えたものであること、
の3つの要件を充足することが必要である。
 まず、異議申立人は、予算の執行は、議会に係るものについても知事に専属しており、本件対象公文書は、知事部局に併任された職員によって、その補助執行として作成、取得されるものであるから、知事が職務上作成、取得した文書であり、また、文書の管理も同様に知事の補助執行としてなされているから、知事の管理する文書に当たると主張する。
 確かに、予算の調整・執行権限は知事に専属し、知事がその最終責任を負うものであるが、知事の権限が及ぶことと、知事がこれらの事務につき作成、管理される文書について、条例にいう実施機関としての立場に立つか否かは別個の問題であると言わざるを得ない。
 すなわち、条例第2条が開示の主体を、知事のほか、公営企業管理者、各種委員会等を各実施機関として、これらが開示・非開示についての独立の判断権者となることを予定し、また、開示の対象となる公文書の要件として、実施機関の職員が職務上作成、取得していることに加え、実施機関において管理している文書であることを要求しているのは、開示をするか否かの判断を、当該文書の作成、取得に関与し、かつ、その文書を現実に保管、保存する機関に行わせることによって、対象文書の記載内容が条例所定の非開示事由に該当するか否かの判断及び不服申立て等への対応を遅滞なく、かつ、的確になさしめるという趣旨に出たものと解すべきである。従って、条例第2条第2項にいう、文書の作成や管理の意義を、具体的な担当部署における文書の作成・取得過程及び現実の保管・保存状況を離れ、その本来的な作成権限あるいは一般的な指揮監督権限の帰属という観点から理解するのは失当と言わざるを得ない。
 ことに、条例第8条第4号及び第5号は、当該情報を公開することにより、県の機関が行う事務事業に一定の支障が生じることを非開示事由としているが、これらの非開示事由に該当するか否かの判断は、当該文書の作成、取得過程に関わり、また、それを現に管理していて、その内容を把握している機関においてこそ的確になしうることは明らかである。
 そこで、以上の一般的見地から、本件対象公文書について個別に検討してゆくことにする。
 まず、本件対象公文書のうち「旅行命令簿」は、議会事務局職員に対して旅行命令を発するための文書であり、当該旅行命令権自体が知事にはないことから、併任事務吏員の専決権限外の事項に属する文書であることは明らかである。従って、「旅行命令簿」は併任事務吏員が作成したものではなく、議会事務局職員がその立場において作成したものであると認められる。それ故、「旅行命令簿」は、実施機関である知事部局の作成、保管している公文書には当たらず、情報公開請求に応じないことは違法でない。
 次に、本件対象公文書のうち「食糧費に関する資料(支出命令書及び添付書類)」は、議会の支出に関して作成された財務会計上の文書であり、知事には支出関係の権限があると認められる。それ故、本文書は実施機関である知事の指揮監督の下で、知事部局との併任職員によって作成された文書であるということができる。また、本来、財務会計上の権限と文書管理の権限は同じであるべきであるから、知事部局において保管されるべき文書であるということができる。三重県においても、従来、議会支出関係文書は知事部局において保管されていたところである。
 ところが、三重県出納局長通達(会計規則運用方針の改正)により、平成8年4月以後、議会支出関係文書は議会が管理することになり、本文書も、開示請求の時点では、知事部局から議会に移されて、知事部局による管理下になかったことが認められる。議会に文書の管理権を移した根拠が通達であったとしても、それは独立性を有する議会が議会活動と実質的に関連する文書を管理することが妥当との判断でなされたものであり、そこには違法性は認められない。本件開示請求は、こうして、実施機関である知事部局の作成、取得した文書であるが、その後実施機関でない議会により現在保管されている文書に対してなされたものということができる。実施機関である知事の現実の管理下にない議会文書について開示請求が出た場合、知事は公開請求に応じるべきか否かが問題となるが、先に述べた一般論に照らしても、知事には、適法に議会に移された文書を取り寄せてまで公開する義務はないと言うべきであるから、本件「食糧費に関する資料」は、実施機関が保管している文書でないが故に、条例第2条第2項にいう「公文書」には該当しないと言うべきである。
 なお、異議申立人は、これらの予算執行に関する文書についても、実施機関としての知事の指揮監督が及ぶ以上、知事が管理権を有すると主張するが、前述のような情報公開条例上の実施機関と管理の意義に照らし、採用しがたい。
 したがって、開示請求時点での現行の条例と文書の管理状況を前提とする限り、本件対象公文書の開示請求について、その判断の前提となる条例所定の公文書は存在しないが故に、開示請求に応じられないとの県側の対応は違法ではない。

(4)結論

 よって、本件対象公文書の非開示決定の取消しを求める異議申立人の請求は理由がないから、これを棄却すべきである。

6 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙審査会の処理経過のとおりである。

〔本件対象公文書〕
議会事務局総務課に係る

  • 平成7年度以降平成8年6月末までの旅行命令簿
  • 平成8年4月以後6月末までの食糧費に関する資料(支出命令書及び添付書類)

別紙

審査会の処理経過

年月日 処理内容
 8. 8.22 ・議会事務局総務課から諮問書受理
 8. 9. 1 ・議会事務局総務課に対して不受理理由説明書の提出依頼
 8.10. 2 ・不受理理由説明書受理
 8.10.18 ・異議申立人に対して不受理理由説明書(写)の送付、
意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
 9. 9. 1 ・異議申立人からの意見書受理
 9. 9. 1 ・異議申立人の口頭意見陳述の聴取
・審議               (第72回審査会)
 9.10. 8 ・審議               (第73回審査会)
 9.10.20 ・審議               (第74回審査会)
 9.12. 2 ・審議               (第76回審査会)
 9.12.16 ・審議               (第77回審査会)
10. 1.20 ・審議               (第78回審査会)
10. 3.16 ・議会事務局総務課から不受理理由説明説明の聴取
・審議               (第80回審査会)
10. 5.11 ・審議               (第82回審査会)
10. 5.26 ・審議
・答申               (第83回審査会)

三重県情報公開審査会委員名簿

職名 氏名 役職等
会長 岡本 祐次 三重短期大学教授
会長職務代理者 夏秋 幹 三重テレビ放送㈱代表取締役社長
委員 谷 信子 県商工会議所婦人会連合会会長
委員 今井 正彦 弁護士
委員 曽和 俊文 関西学院大学教授

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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