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情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第359号                             

答申

1 審査会の結論

 実施機関が行った決定は、妥当である。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成22年1月6日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定企業に関する廃棄物の処理及び清掃に関する法律、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律及び三重県産業廃棄物税条例に係る許可申請、登録申請及び認定申請等の一切の情報」の開示請求(以下「本請求」という。)に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、異議申立人(開示請求者ではない者)の情報が含まれる文書を対象公文書として特定し、平成22年2月17日付けで開示請求者に対して行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、条例第17条第2項に規定する第三者である異議申立人が取消しを求めるというものである。

3 本件異議申立てについて

 実施機関は、本件対象公文書中に異議申立人等の情報が含まれていることから、条例第17条第2項の規定に基づき、異議申立人等に対し意見照会を行ったうえで、本決定を行った。
 実施機関は本決定を行うと同時に、異議申立人等に対し、条例第17条第3項の規定に基づき本件対象公文書を開示する旨を通知したところ、「①食品循環資源の排出事業者の名称、所在地及び1日排出量、②収集運搬事業者の名称及び許可番号」を非開示とすることを求めて異議申立てが提起されたものである。
 なお、本請求を行った開示請求者には、平成22年3月3日付けで、本件異議申立てに係る決定に至るまで開示を停止する旨の通知がなされている。

4 実施機関の説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定が妥当というものである。
 本件対象公文書は、農林水産大臣から再生利用事業者の登録に関して通知された文書中の「食品循環資源の搬入に関する計画書」であり、条例第7条第3号ただし書ハに該当するとの判断から開示するとした情報は、産業廃棄物の処分を異議申立人に委託した排出事業者の名称及び排出量等の情報である。
 当該情報は、異議申立人の事業に関する情報で、営業上の顧客情報に該当することから、条例第7条第3号に規定する法人情報に該当し、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
 しかし、本件と同種の情報を非開示とした処分について、三重県を被告とした訴訟が提起され、平成9年6月津地方裁判所においてその処分を取り消す判決があった。その後も同種の情報を開示した決定に係る三重県情報公開審査会答申第168号、第318号等において、産業廃棄物処理に関する情報は、人の生命、身体、健康に深く関係した非常に公益性の高い情報であり、地域住民の不安等を払拭するためには、産業廃棄物の排出事業者の名称及び排出量等の具体的な搬入の実態等を明らかにすることが求められており、当該情報を開示することによって、当該法人を取り巻く市場環境に影響を及ぼす可能性は否定できないものの、産業廃棄物処理という事業には、事業者の運営によっては地域住民の生活環境等に重大な影響を与える危険性があることも事実であり、当該事業の特質から非開示により保護すべき利益よりも地域住民の健康等の公益が優先されると判断せざるを得ないことから、開示すべきであるとした実施機関の決定は妥当であるとされている。
 このことから、産業廃棄物処理業の一般的性質上、当該事業の及ぼす社会的影響やその責任において、事業者は取り扱う産業廃棄物の排出事業者の名称及び排出量等を公にすることで、住民等の不安感を取り除き、ともすれば抱かれがちである産業廃棄物処理を行う事業者に対する社会的偏見を払拭し、正しい理解を得ることは事業者にとっても有益であることから、開示は妥当である。

5 異議申立ての理由

 異議申立人が、異議申立書、意見書及び意見陳述で主張する異議申立ての理由は、総合すると次のとおりである。
 異議申立人は、産業廃棄物処分業の許可及び登録再生利用事業者の登録を受け、食品の製造や調理の過程で生じる食品残渣を回収し、飼料としてリサイクルする事業を営み、その後関連会社で、その飼料をエサにして家畜を育て、その食肉を元の食品メーカー等へ循環させる等の循環型モデルを構築している。
 本件対象公文書に記載された情報のうち、特に「産業廃棄物の排出事業者の名称、所在地及び排出量」は、産業廃棄物処理業を営む異議申立人にとって、顧客情報として営業上の秘密の核心をなすものであり、これが何人にも公開されると、競合他社等が通常一般に入手できない異議申立人の顧客情報を容易に入手し、取引実態を把握することが可能となり、その結果、対抗的な事業活動が行われ、競合他社が価格競争等において不当に有利になるなど、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益が脅かされることになる。
 確かに、県民等からみて、産業廃棄物処理にかかる情報が、人の生命・身体・健康に深く関係した情報であることを否定するものではないが、健全で適正な企業活動の自由を保障するため、これらの情報は当事者間における営業上の秘密として、非開示により当然保護されるべきであって、異議申立人やその取引先企業の事業活動によって危害や支障が現実に発生し、又は将来発生することが確実な状況でもないのに、漠然かつ抽象的な県民等の利益を理由として開示されることは到底容認できない。
 実施機関は、津地方裁判所判決や過去の審査会答申により、あたかも産業廃棄物に関する情報はすべからく明らかにすべしとの裁判所等の方針があるかのように主張しているが、最高裁判所の判例のように確定された社会的・法的判断ができあがっているものではないから、個別事案のそれぞれのケースに応じて比較衡量を具体的にすべきである。
 また、住民の健康などの公益に対する客観的、具体的な侵害の危険性は全く存しないにも拘わらず、このような公益性を広く解する見解を許せば、実施機関に裁量権を広く与えることとなり、公正な自由競争を阻害する危険性を拡大することになる。
 加えて、異議申立人は、取引先である排出事業者と機密保持条項が存在する契約を締結しているため、本件対象公文書が開示され、排出事業者の名称等が公になった場合、機密保持条項に違反するとして、契約を解除され、損害賠償等の請求、または訴訟等の問題になることも予想され、経営上のリスクが非常に高い。
 以上のことから、非開示により保護される利益が開示により保護される利益よりも大きいことは明らかであり、条例第7条第3号ただし書イ又はロに規定する場合と同程度の開示の必要性があるとも到底言えず、本件処分は違法・不当である。

6 審査会の判断

 実施機関は条例第7条第3号(法人情報)ただし書ハに該当するので開示が妥当であると主張していることから、以下、同号ただし書ハの該当性について検討する。

(1) 基本的な考え方

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。
 条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
 一方、開示請求に係る公文書に第三者に関する情報が記載されているときに、当該第三者の権利利益を保護し開示の是非の判断の適正を期するために、開示決定等の前に第三者に対して意見書提出の機会を付与すること、及び開示決定を行う場合に当該第三者が開示の実施前に開示決定を争う機会を保障するための措置についても定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して判断する。

(2)条例第7条第3号(法人情報)の意義について

 本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。
 しかしながら、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは不当な事業活動によって生ずる影響から県民等の生活又は環境を保護するために公にすることが必要であると認められる情報及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書により、開示が義務づけられることになる。
 また、「公にすることが必要であると認められる」とは、当該情報を開示することにより保護される人の生命、健康等の利益と、非開示とすることにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が後者を上回る場合をいうものである。

(3)条例第7条第3号(法人情報)本文の該当性について

 本件対象公文書は、農林水産大臣から再生利用事業者の登録に関して通知された文書中の「食品循環資源の搬入に関する計画書」であり、当該文書に記載された「①食品循環資源の排出事業者の名称、所在地及び1日排出量、②収集運搬事業者の名称及び許可番号」を開示することとした実施機関の決定について、異議申立てが提起されているものである。
 排出事業者は、本件異議申立人からすれば、自らの営業活動によって開拓した商取引相手であって、商業上重要な顧客情報であると解される。したがって、排出事業者に関する情報を開示した場合、競合他社等が容易に異議申立人の顧客情報を入手することが可能となり、対抗的な事業活動が行われるなど、異議申立人が不利益を被る可能性は高いと認められることから、条例第7条第3号本文に該当する。

(4)条例第7条第3号(法人情報)ただし書ハの該当性について

  廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)は、廃棄物の排出の抑制、適正な再生、処分等を行い、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律であるが(同法1条)、廃棄物のうちでも、産業廃棄物は、排出量が多量で危険物等が含まれる場合があり、その不法投棄事件も発生していたこと等から、同法は排出事業者に、①産業廃棄物の最終処理の責任を負わせ(同法11条1項)、②産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、知事の許可を受けた事業者に委託する義務を課すとともに(同法12条3項)、③マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、その処理の状況を自ら把握、管理することを義務付ける(同法12条の3)など、排出事業者等の責任等を厳格に規定している。
 また、産業廃棄物の処理について、廃棄物処理法では、これを業とする者(収集運搬事業者、処分業者)に知事の許可を義務付けると共に(同法14条1項及び6項)、施設の許可基準(同条5項1号及び10項1号)、事業者の能力面及び不適格事由の有無の検討(同条5項1号及び2号並びに10項1号及び2号)、生活環境の保全を全うするための規定(同条11項)等を規定している。
 これらは、産業廃棄物の処理は社会にとって必要不可欠な事業であるが、何らの規制を加えることなく自由競争に委ねるならば、同事業が適正に行われない場合もあり得るものであり、県民等の健康・生活等へ重大な影響を及ぼすなど、取り返しのつかない事態になるのを避けるため、廃棄物処理法で、排出事業者等の責任等を定め、許可権限等を知事に委ねたものであるということができる。
 さらに、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(所謂「食品リサイクル法」)は、食品廃棄物等の発生の抑制等を図り、食品循環資源の再生利用等の促進を目的とした法律であるが(同法1条)、同法は、食品循環資源の肥飼料化等を行う事業者について主務大臣の登録制度を設け(同法11条)、廃棄物処理法の特例等(運搬先の許可不要)の措置を講じている(同法21条1項)。
 一方、条例7条3号ただし書ハは、法人に関する情報であっても「公益上公にすることが必要であると認められるもの」については公開の対象となる旨規定している。これは、法人に関する情報には、当該法人の利害関係を超えて、県民生活に少なからざる影響を与え、又は与えうるものがあり、公益上公開するのが相当であると考えられるものがあるが、その場合には、公益と一方これを公開されることによる法人の不利益とを比較衡量した結果、なお公益の方が大とされたものを、条例7条3号の例外として公開の対象とする旨定めたものである。
 異議申立人が主張するように、本件対象公文書に記載された情報のうち、特に「産業廃棄物の排出事業者の名称、所在地及び排出量」は事業者の顧客情報として営業上の秘密の核心をなすものであり、開示されることにより、競合他社等による対抗的な事業活動が行われる等、異議申立人の競争上の地位その他の事業活動に不利益を与えるおそれがあることは十分に理解できる。
 しかしながら、産業廃棄物は、排出量が多量で危険物等が含まれることがあり得るため、それらが不適切に処理された場合には、環境自体の汚染のほか、県民等の健康・生活等への影響や財産的価値の毀損等、地域的・時間的に非常に広範で、かつ深刻な悪影響を及ぼす可能性がある。また、このような環境等への悪影響は、すぐに明らかになるとは限らず、相当期間の経過後に発覚することも想定され、一度発生すれば、事後的に原状回復することは困難で、多額の社会的費用等が必要な事態になると認められる。
 以上のように、産業廃棄物処理については、廃棄物処理法で各事業者の責任等を厳格に定めてはいるものの、その事業の一般的性質上、各事業者の運営状況等によっては、県民等の健康・生活等や自然環境等に重大な影響を及ぼす危険性があることは否定できない事実であり、同法の趣旨や制定経緯、産業廃棄物処理業に内在する社会的責任、社会情勢等に照らして総合的に勘案すると、非開示により保護されるべき法人の事業活動上の利益よりも、開示されることによる県民等の公益の方が、当該法人の利害関係を超えてなお優先され、公開を認めるのが相当であると判断せざるを得ない。
 なお、異議申立人やその取引先企業の事業活動に起因する危害や支障が現実に無く、かつ、将来に亘って発生する可能性が極めて低かったとしても、各事業者個別の活動状況等を考慮し、公益上の観点から開示の是非を判断することは、その具体的な判断基準も存しない中で、かえって競争上不公平な扱いをするおそれがあり相当ではない。
 すでに、三重県では、平成21年度以降、すべての産業廃棄物処理業者に対し「三重県産業廃棄物の適正な処理の推進に関する条例」により、過去一年間の産業廃棄物の処理実績について毎年報告義務を課すと共に、今回争点となっている「産業廃棄物の排出事業者の名称、所在地及び排出量」を含めた当該報告内容のすべてを一般の閲覧に供し、開示請求がなくとも県民等が必要とする情報として積極的に情報提供しているところである。
 その他、異議申立人は、当該法人の事業上の特質・安全性等を縷々主張するが、異議申立人の主張する事情をもって、上記判断を左右するほど重要な要素として勘案することはできない。
したがって、条例第7条第3号ただし書ハに該当し、開示するとした実施機関の決定に誤りはないと判断される。

(5)異議申立人のその他の主張について

 異議申立人は、排出事業者との契約において、異議申立人に機密保持義務が課せられており、排出事業者の名称等は機密に当たり、非開示とすべき旨主張する。
 しかしながら、実施機関は、条例第7条の規定により、開示請求の対象となった公文書に記載されている情報のうち、同条各号に規定されている非開示情報を除いて、当該公文書を開示することが義務づけられている。本件対象公文書を実施機関に提出した異議申立人が、排出事業者との契約において機密保持義務を負っているとしても、第三者である実施機関は、当事者間で効力を有する当該契約に拘束されることはないから、異議申立人の主張は、採用できない。

(6)結論

  よって、主文のとおり答申する。

7 審査会処理通過

 当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

別紙1

審査会の処理経過

年 月 日 処理内容  
22. 3. 8 ・諮問書の受理                                            
22. 3.12 ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼  
22. 3.26 ・理由説明書の受理  

22. 4.12

・説明書に関する意見書の受理  
22. 4.27 ・意見書に対する補足の理由説明書の受理  
22. 5.14 ・補足の理由説明書に対する意見書の受理  
22. 7.16

・書面審理
・異議申立人の口頭意見陳述                             
・実施機関の補足説明
・審議

          (第343回審査会)

 
22. 8.20

・審議                                          

(第346回審査会)

 
22. 9.17

・審議          

(第348回審査会)

 
22. 10.15

・審議                                       
・答申          

    (第349回審査会)

 

 

三重県情報公開審査会委員

職名  氏名   役職等   
※会長

岡本 祐次  

元三重短期大学長
※委員 川村 隆子 三重中京大学現代法経学部准教授  
委員 樹神 成 三重大学人文学部教授

※委員

竹添 敦子 三重短期大学教授
委員 田中 亜紀子

三重大学人文学部准教授

(平成22年9月30日まで)

会長職務代理者   早川 忠宏 三重弁護士会推薦弁護士
委員 藤本 真理

三重大学人文学部准教授

(平成22年10月1日から)

※委員 

丸山 康人 四日市看護医療大学副学長

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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