「蛭子(ひるこ)伝説」


 古事記などにある「蛭子伝説」によれば、日本最古の神とされる伊邪那岐命、伊邪那美命(いざなぎのみこと、いざなみのみこと)夫妻は、初めての子が生まれつき体が異常に柔らかかったので、蛭のような子「ひるこ」と名付けました。しかし、3歳になっても歩けなかったことから、葦の舟で海に流しまったそうです(神様でもひどいことをするものですが、現在なら児童相談所が介入しているでしょうね)。

  国学者で小児科医でもあった本居宣長は、その症状から「ひるこ」を脳性麻痺か筋萎縮症の障害児と診断しています。

  しかしその後「ひるこ」は、漁民に救われ、のちに七福神の仲間入りをし、大黒様とのコンビで有名な「ゑびす様」としてあがめられました。左図のように大黒様は立っていますが、ゑびす様はいつも座っている姿しか描かれていないようです。
 「ひるこ」は、障害をもちながらも見事な復活を遂げたことから、「リハビリテーションの祖」とも呼ばれています。
          (参考:花田春兆著「日本の障害者」など)。
 
 神話でもあり、真偽のほどは分かりかねますが、古代における障害者観の一端を垣間見ることができるようです。
 ちなみに、伊邪那岐命、伊邪那美命の二番目の子は、淡島(あわしま)と呼ばれていましたが、知的障害を伴っていたとも伝えられています。そして、三番目の子が、天照大神(あまてらすおおみかみ)で、神明神社の総本社である三重県の伊勢神宮に祀られています。