一日一魚今月の本

魚魚魚!おすすめの一冊!

魚好きなら読んでみたい面白い本を紹介

 尾鷲市大曽根浦在住の作家甲斐崎圭氏の最新作。1月26日の発売だからまだ湯気がたってほっかほっかである。
 「釣った魚は食べる。これが釣魚に対しての礼儀、仁義ということではあるまいか。さて、釣った魚をどう料理して食べるか。これまた釣りの楽しみのひとつであろう。そしてもうひとつ、心がけておきたいのは手早くさばくということである。これは料理するときばかりでなく、釣った魚を処理するときにもいえることである。チャッと釣って、チャッと処理して、ササッと料理して、そして一所懸命に喰らう・・・・。これで釣・料・食の三大喜悦の完成である。」と述べる氏が実際に釣った魚を縦横無尽に料理し、そして喰らう。特筆すべきは一魚三餐。例えば、岸壁で釣ったアジは、「アジのちらしずし」「四川風アジの炒め物」「中アジのサラダ風マリネ」と料理され、また、幸いにして釣り上げたマゴチは、「マゴチオランディーズソース」「マゴチの薄造り梅肉味」「マゴチの酸辣醤造り」と至極の料理へと仕立てられる。魚の持ち味を活かし、和洋中何でもござれで、あるときは漁師料理となり、また瞬時にオリジナル料理へとバリエーションが広がっていく。大曽根浦の氏の家でよくご馳走になる魚料理が「魚の美味い喰い方教えます!」と惜しげもなく詳細に披露されている。樋口一成氏の写真も見事で美味しそうである。釣り師必見、魚好き必見の一冊。

「男の釣魚料理」 の写真

「男の釣魚料理」
甲斐崎圭著 樋口一成写真
(株)コスミック出版
1,680円(本体1,600円)


玉村富男の絵魚紀行の写真

「玉村豊男の絵魚紀行」
玉村豊男画・著
2,300円+税

 エッセイスト・画家・農園主・ワイナリーオーナーである玉村豊男が全国魚の旨いところ、さらにフランスやギリシャまで出かけ、美味しい魚を求め描き食い尽くす旅の本。「毎日山を眺めていたら、海へ行って魚の顔が見たくなった」と巻頭に書き、表紙の副題も「来た、描いた、食べた」となっていることが本のすべてを語っていると言えよう。玉村豊男さんは、近年その画業が再評価されている日本画家玉村方久斗の末子として東京に生まれているが、鉛筆と水彩で鯛を描き、ヒラメ、ウマヅラハギ、メバル、オコゼ、白ミル貝、イラブチャー、ミーバイ、グルクン、アバサー、ウニ、ホヤ、キンメダイ、スルメイカ、イセエビ、マアジ、ウルメイワシなどをいそいそと描き、待ちかねたように描いた魚をお腹に入れる。さらにフランスではラスカル、ルージェ、サンピエールを、ギリシャではガルーパ、ロブスター、タコなどを描きたいらげる。その絵は透明感があり、瞬時にその魚のおいしい特徴を表現している。さらにはグルクンのところで書いた文章もすばらしい。
 『それにしても、グルクンの青は、どの瞬間から赤に変わるのだろうか。・・・中略・・・・・・・・
 青は、生と死のはざまにある儚い色である。もともと、青は天上の色であり、地上の色ではない。「青い鳥を探す」とは、この世にないものを探す、という意味だ。
 遠くに見える山は青いが、近づけば青くない。海が青いのは、空の青を映しているからである。はるか彼方にあるものだけが青く、その青に近づいて青が現実となるとき、すでにその青は消えている。』
 すばらしい!

 この本は敬愛する高橋忠之さんから直接いただいた本のなかの1冊。何と高橋流伊勢海老料理が100点ほど掲載される。その料理の見事さとともに名付けた料理名に心奪われる。「花心の譜」「ひとひ、われ海を旅して」「静風唱」「東海旭光」「朝の花束」「昇華」「日は麗らかに志摩のくに」「和みは潮の」「残照」「土を知る生命」「夕茜」「月魂」「空と風と星と詩」「朧にすぶる花々」「四季の風音」「青想」「多島海」「一波こゆれば」「万古清風」海への憧憬」といった感じだ。料理のことはよくわからないが、見ていて楽しい本。これはもう料理本の域を超え、まるごと1冊詩集といっていいだろう。さらにあとがきを読むと完膚無きまでにノックアウトされる。『料理は芸術と同じ特質を追求する。その特質とは、「技術的修練、着想の独創性、伝統への忠実」である。そしてそのなかに「驚き」と「歓び」がうったえられなくて、果たして芸術といい得るであろうか』 高橋忠之のフランス料理 伊勢海老の写真

「高橋忠之のフランス料理 伊勢海老」
高橋忠之著
3,200円   柴田書店


甲斐崎圭の釣魚満腹!
「甲斐崎圭の釣魚満腹!」
甲斐崎圭
1,714円+税 桃園書房
 この地にもなじみの深い作家甲斐崎圭氏が月刊「つりmagazine」に連載したものを中心に本にしたもの。「釣った魚は料理して食べる。いや食べるために釣る。私の釣りにはそんな想いが、ある。」全国各地の港で知り合った漁師さんに教えてもらった漁師料理や、オリジナル料理66種を紹介している。「アオリイカのめかぶ和え」「アナゴの落とし」「アンコウのへか鍋」「イラのしゃぶしゃぶ」「小いわしの塩辛」「カツオの腹皮の即席塩辛」「コノシロの巻きずし」「べんちょうの背越し」「イカゴロの味噌漬け」「ヒラソウダガツオのサラダ」「トラギスのてんぷら」「ヒメの姿造り」「メジナのづけ丼」などの興味深い魚料理が目を引く。ぜひ一読し、実際に食べてもらいたいものである。


1996年2月から1997年2月の1年間、週刊ポストに連載された「湘南偏屈美味礼賛」を加筆訂正して発刊したもの。週刊誌にて発表されたものであるから、文章的にも内容的にもあまり深みが感じられないが、魚に対する思い入れ、うまい魚を食べるぞという意気込みが小気味いい本である。はじめに掲げられた「サカナに関する常識を疑うことの楽しさへ誘う」という言葉にそれは如実に表れている。「葉山名物"ハコフグの味噌焼き"を知っていますか」とか、「ウチワエビは形はダサイが味は伊勢エビより甘い」といった話など興味深い。
 また、この地でおなじみのメヒカリも「見てくれは悪いが絶対おススメのサカナである。」と紹介されている。  赤ムツに至っては「角栄が愛した"人生の出世魚"を雪国で発見」と大変なタイトルである。百聞は一見にしかず、何はともあれ一読されてはどうか。魅力的な料理人たちにもであえますよ。


「魚味絶賛うまい魚はここにいる!」
軍則貞則
1,500円+税 小学館



「サメを食った話」
川口祐二
1,500円(税込み)光出版印刷(株)
 著者は南勢町役場に勤務後、現在「愛洲の館」館長。次々と地域に根ざした企画展を開催。その企画展が「学術面で地域文化の活性化に貢献したこと」と、著述家として「生活者の立場で環境問題に関し、文筆をもって積極的に表現した」ため、「三銀ふるさと三重文化賞」受賞した。また昨年7月には第10回「田尻賞」を受けている。
 さて、「サメを食った話」は「浜の庶民文化を伝えていきたい」とする川口さんの姿勢そのものの本である。特に「海を味わう」の第1章では、ボラのすし、カツオの塩煮、鰹節、サメを食った話、磯の魚などなつかしい漁村の風景が実感を持って書かれている。伊勢地方では”さめんたれ”というサメの干物を食べることは前から知っていたが、前志摩地方の祝いの席で”さめなます”を食することはこの本で初めて知ったのである。”さめなます”はネコザメに限るそうだ。歴史、文化を伝えていきたい、とするだけでなく川口さんは環境問題にも警鐘を鳴らす。

 ・・・・・自然のしくみには人知の及ばぬところもたくさんある。自然は畏敬すべきものであるのに、現実は逆で破壊し続けているのだから、人間ほど驕慢なものはない。文化だ、文明だというけれど、沿岸漁場の環境一つ保全できなくて何が文化ぞ、と私は腹を立てている。・・・朝夕の浦浜のにぎわいや飛び交う威勢のよい大声をもう一度復活させよう。そのことは漁労文化の継承につながる。沿岸漁場を豊かな海によみがえらせるべきである。海は私たちだけのものでなく、これから生まれ育つ未来の者たちのものであるからだ。・・・・・
 川口さんは発言するだけでなく合成洗剤から石けんへの運動も営々と続けているのである。我々も彼から学ばなければ・・・。


 2月1日に亡くなった四日市出身の芥川賞作家(昭和31年「海人舟」で受賞)、近藤啓太郎の本。1990年発行。私はこれを、偶然にも古本屋で300円で入手した。魚の本が私を呼ぶのである。
 魚と絵と田舎暮らしと犬(紀州犬)についての随筆である。著者は房州鴨川に住み、新鮮な旬の魚をこよなく愛した。その一言一言にはいちいちうなづくことが多く、私の魚に対する考え方もまちがってはいないなと意を強くしたのである。例えは、冬の魚について本から一部紹介しよう。
 ・・・冬が旬の魚は多いのだが、特にうまいのはイワシである。イワシの中でもカタクチが最高だが、これを鴨川ではセグロと言う。そして全長20センチ足らずの大きなものを大セグロと言うが、この煮付も目刺しも毎日食べても飽きがこない。だから鴨川の漁師はセグロを「海の米」と言っているが、12月が最高の旬であろう。1月になるとチュウバと言われるマイワシがうまくなる。冬のタイちり、ブリの照焼、本マグロの刺身も、私は好きである。本マグロはなんと言ってもヅケと呼ばれる赤身、そして中トロがうまいのである。冬の赤ムツの煮付は天下一品であるが、近年ほとんど獲れなくなって悲しい。案外、もう二度と赤ムツの煮付は食べられないかもしれない・・・
 イワシや赤ムツの評価に対し、私はこれを読みながら思わず拍手をしてしまうのである。


「うまい魚と絵があれば」
近藤 啓太郎
1,300円(税込み)
日本経済新聞社



「築地市場のさかなかな?」
平野 文
580円+税
朝日新聞社朝日文庫
 平野文をご存知だろうか。テレビアニメ「うる星やつら」のラム役をつとめた声優である。縁あって東京築地の魚河岸で仲卸業を営む三代目に嫁いだ。さかなについては全く素人だったが、平野氏自身が築地で見聞きし、プロから教わり、食して、また河岸の旦那衆から生きたさかなの話を伝授される。ここで俄然魚に目覚めるのである。その経過が魚を通して、自然体で語られるのが何とも好ましい。
 しかし、次のような文章を目の当たりにすると本来彼女の持つ鋭い感覚に感心させられるのである・・・あくまで私のつたない主観だが、刺身を口にすると、その魚の「味」がわかる。脂ののり、甘味、そして何より、香りだろう。歯ごたえも察知できる。
 塩焼きにする。すると今度は、魚そのものの味が、一段ぐっと引き出てくるように思う。「味」を一歩踏み込んだ、その魚本来の「うま味」がでてくるといえばいいだろうか。脂ののりでも、今度はその濃度と、品格も感じる事ができる(魚の脂にも、品のあるなしがある)。甘味についても、そこにコクのあるものと、そうでないものとがかわってくる。身質のキメも、刺身で食べたときよりも際だっている。

ページのトップへ戻る