水産普及だより 第 27-3号 平成27年9月14日
~魚へんに秋と書く~
9月初旬のとある朝、いつものように現場回りに出たところ、島勝大敷でなにやら水揚をしている様子。普段より遅めの水揚時間に、これは大漁か?と思い市場に入ると、確かにたくさん魚が揚がっていました。近づいて見てみると、いくつか並んだ水槽の中にぎっしりとイナダの姿が。聞けば、近隣の長島でもイナダが大漁だったとのこと。
写真1 島勝市場の水槽 写真2 同水槽内のイナダ (平成27年9月4日撮影)
イナダとは、一般にブリの子どもで40cm以下のものをそう呼びます。ブリは出世魚で、モジャコ、ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリと名前が変わっていきます。ブリの呼び方は地方によっても変わり、尾鷲周辺では、アブゴ、ツバス、ハマチ、ワラサ、ブリと呼ぶことが多いようです。 他の地域の呼び方も多様性に富んでいて面白いので、興味のある方は是非調べてみて下さい。さて、名前が変わるのは、様々な理由があります。姿形の変化や、味わいの違い、住む場所が変わる…など。ブリの場合、名前に当てられた漢字を見るとその一端が見えてきます。ここで本日のタイトルに戻ると、魚へんに秋で、鰍。これでイナダと読みます。ちなみに「鰍」は「カジカ」とも読み、イナダもカジカも秋に漁の旬を迎えることからこの字を当てられたようです。 (蛇足ですが、イナダの旬は夏~初秋です。)
この日の夕方、早速スーパーに並んだイナダを購入し食べてみました。(大漁になるとお値段も手頃になるのがありがたいところです) 程良い脂があり、身がしまっていてさっぱりした味わいの肉質で、 薄く味付けした煮物にすると、煮汁まで美味しくいただけるあっさりした煮魚になりました。
~旬のさかな~
別の日、現場回りというか、尾鷲のとある小型定置網に乗せてもらったときの話です。網起こしを手伝っていると、網の中に光る姿が。
写真3 尾鷲市内小型定置網の水揚風景 (平成27年9月6日 撮影)
中身はゴマサバ、ヒラソウダ、マアジ、そしてイナダが多数、その他雑魚といった様子でした。水揚げ後、脂がのった大きなマアジとイナダの多くは活魚水槽に入れられ、生きたまま出荷されて行きました。
またまた夕刻に、この日水揚された、大アジを食べてみました。刺身にして醤油に脂が浮くほど、塩焼きにするとこぼれ落ちた脂に引火するほど、しっかりと脂がのっていて、とても食べ応えのあるマアジでした。普通、マアジは初夏が旬ですが、大きなマアジは今が旬で、冬にかけてどんどん痩せていく途中、まだ今の時期はよく脂がのっているようです。
本来、和食のなかでも特に魚食文化には、その時期に捕れたものをその時期に食べる、ということが根底にあって、今回は図らずとも旬のさかなに触れる機会が連続し、改めて「旬」のありがたみを実感できました。皆さんは旬の食材、食べてますか?