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平成24年03月09日

 食の安全・安心セミナー(平成19年度)基調講演

「食の安全情報を読み解く」 講師:科学ライター  松永 和紀さん

 皆様、はじめまして。科学ライターの松永です。どうぞよろしくお願いいたします。私は女性でもあり、主婦でもあり、中学生の子どもがいるお母さんでもあり、今日は朝から子どものお弁当を作ってきました。冷凍食品は使いませんでしたが、時間がない時は冷凍食品も使います。そういう普通のお母さんです。一方で、科学ライターをしておりまして、いろいろ取材をしています。

 今日は、どんなお話をしようかなということを、2週間ぐらい前、県の方と打ち合わせをしました。その時には、健康食品と添加物というようなお話をしましょうかと。赤福の質問も出たりするかも知れませんねというようなお話をしていたんです。

 ところが、1月30日ですから、もうその打ち合わせをしてしばらく経ってからですが、ギョーザの話が出まして、皆さん、もう世間は大騒ぎで、テレビ、週刊誌、新聞も大変な書き方、報道の仕方をしました。今日はやはり皆さんの一番関心が高いであろう中国産のギョーザの話を少しまとめてしようというふうに思います。おそらく今日の私の話は、皆さん多分びっくりされると思います。あまりにもテレビとか週刊誌で言っていることと違うなと。でも、こういう見方もあるんだよということをぜひ皆さんに気が付いていただきたいんですね。

 科学ライターとして、今のギョーザの報道を見ると、非常におかしなことになっていると思います。その報道に引きずられて、おかしな現象がたくさん起きています。一番おかしいのは、いろんなところが検査を一生懸命やっていることなんですね。とにかく検査をして、安全性を確認しましょうというような動きで、行政もですし、それから生協さんとかも、いろんなものを検査しています。

 で、何の検査をしているかと言うと、あの問題になった工場で作られたギョーザとか、それから他の冷凍食品ですね。それだけですとよく理解できます。やっぱりあそこがもしかしたら犯罪の現場になったかも知れない。何か事故が起きて混入したかも知れない。だからあそこの工場で作られたものは全部検査しましょうと。その考え方はいいと思うんですが、今は違うんですね。中国産は恐いから、とにかく中国産のものは何でも検査しようという方向になって、生協さんがもうありとあらゆる中国産の食品を検査しています。

 さらには、もっとおかしなことには、今度は国産も検査しないといけないんじゃないかという動きになってきて、某生協にお話を聞きましたら、何と国産ギョーザの検査をすると。国産ギョーザに残留農薬とかが含まれていないか検査をするということが決まったというんですね。そこでの共通項というのは、「ギョーザ」という、ただ1点なんです。原材料は全部日本産で、日本の工場で作られていて、あの中国の話との共通項は「キョーザ」であると。それ以外の何の意味もないのに、国産ギョーザだから検査をするというところに行っています。

 これはやっぱりおかしいですね。何のための検査かわからない。検査というのは、皆さん簡単にお考えになっていますが、非常にお金がかかるものです。そんなものに、例えば生協さんが組合員さんからいただいたお金をそういう検査に注ぎ込むというのは、果たしてそれは適切な行為なのか、行政が検査を適切にするというのはどういうことなのかということを、やっぱりここで皆さんにちょっと立ち止まって、ぜひ考えていただかなければいけない時期にもう来ているんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、今日はギョーザを中心にいろいろなお話をいたします。科学的に見ればこんなにおかしいんだということをご説明します。どうしてメディアがそういう報道をしてしまうのかという理由をお話します。メディアはそうなんですが、私たちはそれに対して何とか対処していかなければいけませんので、情報を取捨選択すると、何を考えて情報を選び取っていけばいいか。そして、食にとって本当に重要なことって何なのかということを最後にご説明しようというふうに思います。

 ギョーザの話は今動きつつあり、理解されるのにちょっと難しいかも知れませんが、関心を持って聞いていただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

 さて、「誤解がいっぱい 中国製ギョーザ報道編」としました。配布資料とこれはだいぶ中身を変えています。配布資料は1週間以上前にお渡ししなければいけなかったので、詳しいことを書いていません。この1週間ぐらいのこの事件の動きに沿った内容にしてありますので、こちらのほうを見てください。

 私は今一番思うことは、食品テロ、犯罪ですね。この防止策と残留農薬を管理しますということは、同じ土俵では考えてはいけない。同じ方法ではできないということを、ぜひ皆さんに知っていただきたいということです。

 さて、誤解その1。おそらく皆さんが持っておられる誤解を一つずつ考えていきます。メタミドホス、日本では使用が禁止されている農薬だというふうに最初に報道されました。非常に毒性が強いと報道されましたので、おそらく皆さんは中国でしか使われていない危険極まりない農薬であるというふうに思っておられると思います。

 ところが、実は違うんです。日本では確かに農薬としては未登録です。この農薬を商品として売りたい企業がないので、登録がないということなんです。実は、アメリカとかカナダとかでは農薬として売られて使われています。どういうものに使われているかと言うと、ジャガイモとかトマト、カナダも菜種とかブロッコリーに使われています。オーストラリアでも使われています。諸外国が使っているんですけれども、中国は有機リン系の農薬は厳しく規制していこうということで、2008年1月には使用禁止ということにしました。この現象だけを見ると、実は中国のほうが進んでいるように見えますね。諸外国は使っているわけです。ただ、使い方は、中国は非常にゆるい形で使われていたようです。諸外国は使い方、使う回数が非常に厳しくコントロールした中で使っているようです。

 ともかく皆さんに知っていただきたいのは、特段、危険極まりないものが使われたということではないということです。しかし、報道では、日本では使用禁止というふうに言われましたので、ものすごく危ないものが入ってしまったという印象になってしまいました。

 次の誤解その2というのは、使う量というところにかかってきます。このメタミドホスの問題は1月30日に問題が発覚しました。この時にテレビ、新聞は、野菜の残留農薬が原因かと騒いでいました。皆さん、思い起こしていただきたいのですが、この頃には中国の農家の方が農薬をものすごく丹念にたっぷりと畑に撒いているシーンとか、それから中国の主婦の方が農薬を洗い落とすような洗剤をわざわざ使って農薬を洗い落としていますというようなシーンとか、それからドクロマークが付いた農薬とか、おどろおどろしい、中国ではこんなに農薬がたくさん畑で使われているんだというシーンばかりがたくさん流れたというふうに思います。多分皆さん、ここの印象が非常に強いというふうに思います。

 マスコミは、野菜の残留農薬が原因かと騒いでいたんですが、実はその時点で他の人たちは誰もそれは思っていなかったんですね。野菜の残留農薬が原因ではないと考えていました。行政も、それから食品業界の方もそういうふうに考えていました。私も同じです。私は、1月30日の夕方にある新聞社のデスクから電話がかかってきて、「どう思う?」と聞かれたので、これは野菜の残留農薬が原因じゃないと。工場で間違って入ってしまったか、あるいは犯罪で故意に入れられたか、どちらかだと思うというふうに答えました。

 そうじゃなかったのはマスコミだけだったんですね。そこが見えてなかったのは。どうして食品業界とか行政の方たちが、犯罪か事故で入ってしまったと言うかというと、やっぱりこれは量の問題なんですね。汚染されている量の話です。たくさん入っていたので、残留農薬ではないというふうに皆さん思っていたわけですが、そのたくさん入っていたから残留農薬ではないと考えるためには、実はこのグラフを理解していただかないといけないんです。

 これは、化学物質の毒性の出方を理解していただくためのグラフで、用量反応曲線と言います。これは農薬とか添加物とかの話の時に必ず出てくるグラフですが、どうですか、これ、ご覧になったことがあるという方、この中ではどれぐらいいらっしゃいますか。

 ありがとうございます。関係者の方は皆さんこれを分かっているという感じですね。一般の方はご覧になったことがない方もいらっしゃるということだと思います。これは、どんな化学物質も、量が増えていくと体への影響が大きくなっていくということを示すグラフなんです。逆に言うと、量が非常に少なくなると、もう体への影響は出てこない。少しずつ少しずつ増えていくと、あるところで体への影響が表れて、どんどん、どんどん大きくなって、最終的にはこんなに強い生体影響を持つようになって、致死量に至るということなんですね。最終的にはたくさん与えると死ぬということです。

 この関係を使って、農薬とか添加物は利用されているわけですが、実はこの関係というのは、どんな化学物質にも当てはまります。ということは、砂糖や塩でも同じなんですね。塩をたくさん取ると具合が悪くなって、あまりにもたくさん取りすぎると死にます。それから砂糖も同じです。砂糖と言うと、皆さん「えっ!」と言われますが、砂糖も一定の量までは毒性はないんですが、一定の量を過ぎると毒性が表れてきて、たくさん食べすぎると死にます。これは、砂糖とか塩とかは人体実験はできませんので、動物で確かめられています。マウスとかラットで、たくさん食べすぎると死にますよということが確かめられています。

 同じように、水もそうなんですね。水も飲みすぎると死にます。水の場合は、時々ニュースになっています。たくさん飲みすぎて、水中毒で亡くなりましたというニュースがあります。昨年、2007年ですが、もしかしたら覚えておられるかも知れませんが、アメリカで小さい子どもを持ったお母さんが、水飲みコンテストに出て、賞品がゲーム機だったので、その賞品が欲しくて、お水をたくさん飲んで頑張った。で、大変悲しいことに、飲みすぎで水中毒で亡くなってしまったという事故が、去年、新聞とかテレビで伝えられました。そういうこともあります。水も同じなんですね。

 この関係というのが、今、塩、砂糖、水、全部ご説明しましたが、農薬についても当てはまりますし、メタミドホスについても当てはまります。メタミドホスも、量が少ない間は影響がなくて、だんだん増えていくと影響が出てきて、最終的には致死量に至るということなんですね。おそらく、今回の中国製の冷凍ギョーザに入っていたものというのは、体への影響が出ているわけですから、例えばこのあたりぐらいの量は食べたであろうというふうに言われています。

 じゃあ、残留農薬、農薬を野菜で使った時の残留農薬のレベルってどのくらいなのと言うと、一般的にはこのADI(一日摂取許容量)よりもはるかに低いところ、ゼロに非常に近いところで使われているんですね。だいたいこのあたりのレベルにあります。中国の場合は、農薬はきちんと使われていないかもしれないです。少し残留のレベルが多かったかもしれない。でも、今までの検出の状況を見ていると、やっぱりせいぜいこのあたりぐらいまでしか検出されていません。ギョーザに入っていた量、このぐらいと、ここらへんの通常の残留農薬というのを比較すると、あまりにも量的に違うので、「あ、これは野菜の残留農薬のせいではないよね」ということを、食品業界とか行政の方たちというのは、最初の段階で、1月30日の最初の段階でもう分かっていたんですね。それを科学的にもう一回考えてみると、実はメタミドホスというこの殺虫剤というのは、ある程度かなりきちんと調べられていまして、先ほどの致死量がどのくらいかということが分かっています。ラットにメタミドホスを食べさせると、ラットの体重1㎏当たり16mgを与えると、その実験に使ったラットの半分は死ぬということになります。ラットと人とイコールではないですが、だいたい似たような量で亡くなるだろうと考えられています。そうすると、これを単純計算すると、体重50㎏の人は800mg食べたら死ぬかもしれないというのがメタミドホスなんですね。

 一方で、メタミドホスは、農薬としても利用するということで、一日摂取許容量というのが国際機関によって定められています。この一日摂取許容量というのは、どういうふうに求めるかと言うと、動物実験で毒性が出ない量を求めて、それの通常は100分の1、メタミドホスの場合はいろいろ理由があって、25分の1を掛けたものが一日摂取許容量というふうに定められています。

  メタミドホスは、この一日摂取許容量までは毎日食べても大丈夫だろうなということが科学者の見解です。この量は、体重50㎏の人の場合は、毎日0.2mgは食べても大丈夫だよという量なんですね。残留農薬というのは、通常はこれよりはるかに低いレベルにあります。

 この急性参照量はちょっと難しいんですが、これも一応説明しておきましょうかね。これは体重50㎏の人が1日にたまたま0.5mgを食べてしまったという程度ならまあ大丈夫でしょうというような量なんですね。これらの数字は皆さんは忘れていただいていいんですが、理解していただきたいのは、この曲線の間隔なんですね。残留農薬としてあるのはせいぜいここらあたり。ギョーザとして入っていて、症状が出たのがこのあたり。このあたりのこの距離感というのをぜひ理解していただきたいんですね。ここを理解していただいて考えると、農薬の使い方というのが少し分かってくるのではないかというふうに思います。

 農薬が危ない、危ないとおっしゃる方がよくやるテクニックというのは、このくらいの量を動物に投与して、動物でいろんな症状が出たという実験を紹介して、だからこのあたりの使用レベルでも危ないですよというのがテクニックなんですね。だけど、使う量が違えば生体への影響というのも異なりますので、それはナンセンスなんです。

 ところが、今回のギョーザの問題というのは、実はメディアが同じことをしていて、こちらのギョーザの高濃度の汚染と、それから野菜の残留農薬の汚染とをゴッチャにしてしまって、「メタミドホス」「危ない」「恐い」、それがさらに発展して、「中国産は危ない、恐い」というストーリーに作ってしまったというのが現状だろうというふうに私は思っています。

 さて、ちょっと話が難しかったですね。たくさん食べるとよくないけれども、量が減ると影響は出なくなるんだよというところだけちょっと頭に入れておいていただきたいんですね。

 理解していただきたいのは、ギョーザは130ppmという濃度のメタミドホスが入っていたということです。通常は、野菜の残留農薬というのはせいぜい1ppmとか、0.1ppm、0.何ppmとか、そのぐらいです。さらに、ギョーザというのは、野菜をそのまま入れているわけではないですよね。野菜を材料として使い、それからお肉とかいろんなものを混ぜて、その前に野菜は水洗いをしますよね。メタミドホスは水溶性なので、水洗いをすることによっても幾分取れますし、それから混ぜて加工して加熱してという中で、少しずつメタミドホスは分解していくわけです。そうすると、どれほど野菜に残留農薬としてたくさんメタミドホスが入っていたとしても、絶対に130ppmという数字にはなり得ないんです。そこがやっとわかって、「残留農薬の線は消えました」ということで、マスメディアの方たちもやっと納得したわけです。

 その間、多分4、5日かかっています。マスコミが「あ、これは残留農薬じゃない。もしかしたら事故か犯罪だ」というところまで切り替わるまで、少しタイムラグがあるんですね。でも、ちゃんと数字を見てみれば、最初の日に分かっているんです。ですので、皆さんにやっぱり賢くなっていただきたいのは、その4、5日を短縮する力をつけていただきたい。この数字はどうなのかということを自分で考えて、最初の日に「これは大変だ、もしかしたら犯罪かもしれない」という危機感をそこでパッと持っていただきたいということなんですね。

 繰り返しになりますが、メタミドホスを食べたか食べないかが重要ではないということです。メタミドホスをどれだけ食べたかが重要。少々残留農薬が入っていて食べても、影響は出ないです。ただ、ギョーザみたいに130ppmも入っていて食べると、すぐに急性の症状が出る。お子さんは意識不明になるほどの被害を受けるということです。

 誤解その3。「誤解」というふうにもうあえて書きました。中国産食品は恐いのか。実は、私の答えは、皆さんと同じであり、皆さんとまったく違う、両面あります。私は、まったく恐くないというふうに断言できます。でも、とても恐いとも断言できます。これは実は種類が違うんです。恐さの種類が。そのことをちょっとゆっくり話していきます。

 まず、まったく恐くない理由。これは、実は中国産というのは、全体を見ると違反率というのは決して高くありません。違反率というのは、食品衛生法違反です。アメリカは1%、ベトナムは1.2%。他の国に比べて中国は0.6%で、決して高くないです。いろんな国を混ぜた平均は確か0.74%だったというふうに思います。ですので、中国はむしろ低いです。これが2006年のデータです。この数字が物語っているのは、中国産というのは結構質がいいじゃないかということなんですね。実際に中国産に係わっている日本企業の方にお伺いすると、非常に厳しく生産指導をしています。日本の企業が行って、農家と契約をして、日本向けの野菜をきちんと作らせて、その野菜を使って加工食品も作っていると。その結果が、中国0.6%という非常に低い数字だというふうに私は見ています。

 ところが、これは去年、「中国産が危険だ、危険だ」というふうにメディアが報じた姿とまったく違いますよね。中国産がこんなに危ないという話が散々報道されました。どこにズレがあるんだろうとよく考えていただきたい。私が見るに、やっぱりメディアはトリックを使っているというふうに思います。

 どういうトリックかと言うと、実は中国産というのはピンからキリまであるんですね。非常に質の高いものから、もう下は大変な状況のものがある。あれだけ経済格差が大きくて広い国で、いろんな暮らしのレベルの方がいらっしゃる。キリになると、例えば側溝に溜まった油を食用油に転用して売っているというような話になるというふうに思います。それは中国内のキリの話です。そういう形ででも油を欲しいという人たちがいるのも中国の一つの姿なんですね。一方で、日本向けのものすごく厳しい衛生管理の下で日本向けの食品を作っているのも、それも一つの中国の姿なんですね。ピンからキリまである中で、日本に入っている中国産食品のほとんどはピンのものなんです。それはどなたに聞いてもそうだというふうに言います。最も良いものが日本に入っている。

 ところが、メディアが報じるのは、キリの姿を映し出して、それが日本に入って来ているような報道をしてしまうんですね。そこは全然イコールじゃないのに、こんなひどい食品がある。側溝の油が売られている。それが日本に入ってきているように装った報道をたくさんして、だから中国産は危ないというふうにトリックで報じてしまったんですね。それがあるから、ここの数字との乖離が出てきてしまっている。

 これは、繰り返し言いますが、どこをどう切ってもやっぱりこうなんですね。一番良いものが日本に入ってきているという現状は確かにあったというふうに思います。先ほど中国産のものを買うか、買わないかというふうに聞かれた時に、「買う」というふうに答えた方は4人か5人いらしたんですね。その方のお顔を見ると、その状況を知っている方なんです。行政の方であったり、検査機関の方であったり、中国産の質がいかに高いかということを、自分の仕事の中で知っている人は、「いや、買いますよ」というふうに意思表示されて、そのことを知らない方は昨今の「中国産、危ない」報道を信じておられるので、「買いません」ということになるわけです。

 ただ、「中国産の違反件数は多いじゃないの」というふうに必ず言われます。週刊誌に違反リストというのが載ると。あれはすごいと思う。あれを一つひとつ見ると、とても中国産は買えないわという気持ちになるというふうにおっしゃられます。その時には、やはりよく考えていただきたいのですが、実は中国産の違反件数が多いのは、輸入件数が圧倒的に多いからなんですね。日本に対して実に細々と日本仕様のものを、いろんな種類のものを作ってくれているというのが中国です。ですので、輸入される農産加工食品をどのくらいの国が作ってくれているかと言うと、やっぱり中国は42%も作っている。畜産加工食品は34%、水産加工食品はやっぱり中国が42%を占めている。つまり、こういう細々とした加工食品を、完全に日本は中国に頼りきっているわけですね。この数全体が多いので、それ掛ける0.6とした時に、違反件数はやっぱりすごく大きく見えてしまうわけです。だけど、割合は決して他の国に比べて高くないということです。

 この状況を見ると、中国って頑張ってくれているんだ、経済格差があれだけ大きな中で、日本に対しては一生懸命作ってくださっているんだということが少し多分わかってくるんだろうというふうに思います。

 ところが、今回の問題が起きてしまった。どう整理したらいいのかという話ですよね。実は私も、今回の問題が起きて、恐くなりました。今までは中国産のことをあまり気にしていなかった。それは、良いものを作ってくれているという確信がありましたから、それほど気にしていませんでした。でも、今は恐くなりました。それはどうして恐いかと言うと、これは食品テロが起きたのかも知れないと思ったんですね。犯罪が日本に向いているのかも知れない。先ほどから繰り返し言いましたけれども、経済格差がものすごく大きくなっている。それから対日感情はどうも悪くなってきているようだ。日本に反発している人たちがいるようだ。そうすると、日本向けの工場で何かしてやろうという人が出てくるかも知れない。その一つの例が今回のギョーザの事件だったのではないかなというふうに思うんですね。

 中国って、今大変な時代なのねと思って見るわけです。日本は安全だな、安心だな、まだ中国は混乱しているんだなというふうに思うんですが、ふと30年ぐらい前の日本を思い浮かべて見ると、何だ、昔の日本も同じようなことをやっぱりやってきたんじゃないのかしらと思わざるを得ないんですね。それは、日本にやっぱり、今は食品は非常に安全なものになっていますが、ちょっと前は非常に深刻な食品の事件というのがたくさん起きているわけです。森永ヒ素ミルク事件であったり、カネミ油症事件であったり、これは故意の投入ではないですね。施設の不備で食品にヒ素とかPCBとかが混じってしまって、食べた人が大変な健康被害を受けた。それから、1970年代になると、青酸コーラ事件というのが起きています。どうでしょうか。お年を召した方はおそらく覚えてみえるだろうと思います。自販機の下にあったコーラに青酸が入っていて、それを飲んだ高校生でしたかね、亡くなりましたよね。あれはやっぱり誰かのイタズラだったというふうに思いますが、確か犯人は捕まってないですね。これが70年代です。それから80年代の初めにはグリコ・森永事件というのが起きています。グリコのチョコレートにやっぱり青酸が仕掛けられていて、そういう脅迫事件がありました。だけど、これも犯人が見つかっていないんですね。

 思い起こせば、こういう食品の事件・事故というのは日本でたくさん起きているわけです。そういうことをきちんと解決して、社会がきちんと良い仕組みを作ってきて、今の日本があるわけですよね。そう考えると今の中国というのは、昔、日本が通ってきた道を今ものすごい急成長をして、追ってきているのではないかしらというふうに、思わざるを得ないんですね。

 そうすると、私たちは、「・・綜Yは危険」と切り捨てていいんだろうかと。そこはやっぱり思わざるを得ない。私たちは、多分こういう事件があった時、私も青酸コーラ事件とか覚えていますが、おそらく日本って何て危ない国なんだと、青酸が混じったコーラがポンと置かれているなんて、どんな恐ろしい国なんだと、おそらく欧米とかで言われていたに違いないわけですね。そう考えると、今、「中国産、恐い」という行動は、やっぱりちょっとそこで一歩立ち止まって、自分の行動って何なんだろうと考えてみてもいいんじゃないかと思うんですね。

 逆の立場になってみてください。もし70年代の青酸コーラ事件と同じように、日本の食品に青酸カリが投入されていて、どなたかが亡くなるかして、「日本の食品は危ない」と海外のメディアから、日本産は危ないんだと、日本産は輸出させるなというふうに海外のメディアに言われたら、あなたはどう思うか。そこをやっぱりちょっと考えていただきたいんですね。日本の食品は危ないんだから、全部青酸カリの検査をしろと。そうでないとうちの国には入れさせないというふうに、よその国のメディアに言われたらどうだろうかと。そう言われたら、「いや、あれは犯罪者がやったことです。他の真面目な日本人が作っている、良い日本産の食品と話をゴッチャにしないでください。犯罪と日常の食品生産の中で真面目にやっていることはきちんと分けて考えないとダメでしょう」と、必ずどなたも言い返されると思うんですね。そこをゴッチャにするなと。「日本の食品は全部青酸カリの検査をしないと」。何てバカだと。怒るとともに多分笑うようなことだと思います。

 でも、逆に私たちは、今、中国産に対して同じことをしているんですね。天洋食品というあそこの工場でもしかしたら犯罪が行われていたかも知れない。その犯罪を犯罪としてきちんと対処して、再発防止をしていただかなくてはいけない。しかし、そのことと他の工場でできている中国産の加工食品とか中国産の野菜とか、それぞれ中国の方たちが真面目に一生懸命作っておられるものまでも、それは危ない、信用できないというふうに言っていいのかどうか。そこはやっぱり皆さんにちょっと考えていただきたいです。そうするとおそらく、少し消費行動というのが冷静になる。変わるまで行かなくてもいいんです。結局、中国産は買わないでもいいんです。だけど、冷静になって、相手のことを思いやって、その先、私は何ができるのかということを、そこから考え始めることができるわけですよね。今みたいに、中国産は危険だと、そこでピシャッとシャッターを下ろしてしまうような状態というのは、最も悪いというふうに思います。

 その誤解を広めてしまったのはマスメディアですよね。最初の段階で残留農薬という説を振りまいて、農薬がものすごく乱用されているようなイメージを、日本向けでも何でも全部に対して農薬を乱用しているようなイメージを作り上げてしまって、皆さんのきちんとした思考を妨げるようなことをしてしまった。

 その結果、出てきている誤解その4。食品テロを輸入検査強化で防げるのかということです。今、この再発防止策として検討されているのは、輸入検査を強化しろということですね。輸入検疫を厳しくしなさいというふうに言っています。テレビでも、それから新聞でも書いてあります。それが果たして役立つのか。そのことをもう一回皆さん、冷静に考えていただきたいです。

 よく考えてください。輸入検査というのは、必ず抜き取り検査です。たくさんあるものの一部を抜き取って検査をして、それは問題ありませんねということを確認する。問題があったら、その抜き取ったロット全体を輸入停止にしたりとか、いろんな対処をするわけです。ともかく分かることは、抜き取ったものがどうなのかということだけなんですね。抜き取ったものが大丈夫でも、もしかしたら、同じロットの他のところで汚染されているかも知れないわけです。現状は、メタミドホスの汚染が見つかっているのは1万袋の中に、どうも今日の数字も合わせると20袋ぐらいみたいですね。その製造日に作った1万袋の中の20袋ぐらいしか、どうも汚染されていないようです。現状ですね。ちょっと正確な数字は分かりませんけれども。

 そうすると、1万、ここに積んである中のパッと抜き取ってその20に当たる確率というのはどのぐらいなのかということを考えていただきたい。そこまで行くと、こういう犯罪とか事故による、非常に偏在した局所的な汚染というのは、輸入検査をどれほど強化しても見つけることはできないということは、多分皆さん、お分かりになっていただけると思います。

 私は輸入検疫強化と言っているのは、ある意味、国のポーズなんだろうなというふうに思っています。それは、あまりテロ対策としては意味がないんだということを絶対皆さんには気がついていただきたいわけです。

 日本は、今、食品テロ対策というのはほとんど実際には行われていない状況です。ところが、実はよその国ではやっているところがあるんですね。例えばアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)、日本の食品安全委員会みたいな機関ですが、ここは食品テロ対策として、消費者に対する注意喚起をしています。

 何が書いてあるかと言いますと、まず真っ先に書いてあるのは、パッケージに気をつけなさいということなんです。パッケージが怪しいもの、破れていたり、蓋が開いていたり、ちょっと形がおかしくなっていたりというものは、もう消費者は食べないでくださいということが、消費者に対するまず最大の注意喚起として出されているわけです。思い出してみると、今回のギョーザでも、汚染された食品の中には穴が開いていたものがありました。ですので、この情報が日本の消費者にきちんと伝わっていれば、今回の健康被害の一部は免れたかも知れないんですね。自分の力で、消費者の力で防げたかも知れない。おかしい。これ、穴が開いている。生協に持って行って、「絶対これ、おかしいから調べてよ」と言えたかも知れないわけですね。おそらく、消費者がこれから自衛する時にまず考えなければいけないのはこれだろうというふうに思います。犯罪を防止するためには、まず自分で身を守る。

 FDAは、折々こういう注意喚起をしているんですが、非常におもしろいなと思ったのは、ハロウィーンの時の注意喚起なんですね。ハロウィーンってご存知ですか?子どもたちが各家庭を回ってお菓子をもらう、秋頃行われる子どもたちのお楽しみの行事ですよね。そこでFDAが何を注意しているかと言うと、「手作りのお菓子は食べるな」という注意を出しているんです。つまり、手作りのお菓子は誰かに毒を混ぜられている可能性があるかも知れないわけですね。ですから、手作りのお菓子よりは、きちんと大きなメーカーが、きちんと作ってきちんと封をしたもののほうが安全だというのが、FDAの判断なんです。日本人の感覚にしたら、ちょっと逆ですよね。手作りで愛情のこもっているものを、来た子どもたちにあげるというのはとても良い行為のように、日本人はついつい思ってします。私もそう思います。で、ご近所のお子さんに手作りのものを食べさせたりとかします。だけど、食品テロ、アメリカみたいにテロに直面している国からいくと、それはだめなんですね。ある意味、世界のグローバリゼーションの中での食品というのはそれほど厳しい事態になっているんだということを、やっぱり日本も知らなくてはいけない、日本人も知らなくてはいけないだろうというふうに思います。

 ところが、残念ながら、こういう情報というのは全然今のところ伝えられていないんですね。誰も報道していないですね。その代わりに報道しているのは、輸入検疫を強化しろと。絶対に確率論的に見つけ出せないものにお金をかけろというふうに言っているのが、これが多分ギョーザに関する今の報道の現状だろうというふうに思います。

 いろいろ申し上げましたけれども、やっぱり繰り返し言うんですが、検査強化と言いますけれども、そのコストは誰が払うのかということを考えなくてはいけない。輸入検疫を強化する時に、そのコストはどうするのか。結局は私たちの税金から払われるわけです。で、その結果、検査員が増えたり、検査の金額が増えて、検査の数が増えたりということをしているわけです。

 それであるならば、やっぱり効果的に集めた税金は使っていただかなくてはいけない。ですから、これから皆さんは、本当にそれが的確な施策なのかということをチェックして、国の動き、行政の動きを見ていくということをしていかなければいけないだろうというふうに思います。残念ながら、メディアにその力がないです。

 ちょっとここからメディアの問題ということでお話しします。どうしてメディアが「中国の毒」と報道してしまうかということ、どうして的確な情報提供ができないか、私なりに考えてみました。

 言えることは、やっぱり先ほどのグラフですね。化学物質が量によって毒性の大きさが変わってくるという、あのグラフをそもそも多くの報道関係者は理解していないというところがあります。ですので、メタミドホスがあったとか、なかったとかでニュースにしてしまっています。非常に微量の検出でも「出た」という形で、今、ニュースが出ています。

 それから、検疫制度を知らないし、学んでいないということがあると思います。検疫制度が抜き取り検査である、その仕組みをきちんと分かっていれば、おそらくその1万袋の中の20袋しかないような犯罪を、輸入検疫を強化することで見つけろというような論理にはならないはずなんですよね。でも、検疫制度がどんなものなのか、本当のところを知らないので、安易に言ってしまっています。

 よく言われるのが、186万件の輸入食品のうち、何と20万件しか検査していないんですよと。たったの1割しか検査していません、それ以外は素通りですよと。検査を増やさないといけません、せめて7割、8割まで検査を増やしていただかなくてはと、キャスターやコメンテーターとかがよく言っている。だけど、繰り返しになりますが、それでも抜き取り検査なんです。その検査をたとえ100%にしたところで、それは大きなロットの中から、何tというようなロットの中から十数㎏を抜き取ってサンプリングして、そこの残留農薬を調べているだけなので、検査の割合を100%にしたところで安全が守られるわけではないです。そういう輸入制度の仕組み、検疫制度の仕組みということをやっぱり知った上で考えていかないといけないだろうというふうに思います。

 でも、それをメディアはしないです。どうしてしないかと言うと、今ですと、「国産は安全、中国産は危険」という単純な二元論のほうが理解しやすいし、受ける、視聴率につながる、週刊誌も売れやすい。すごいですよね、今の中国叩き。週刊誌とか女性誌とか、ものすごい中国叩きを今やっています。あれは、ああいう作りのほうが記者には書きやすいというのもありますが、やっぱりあのほうが売れるんですね。残念ながら。「中国産が危ない」というのは、どうも私が思うに、読者の劣情を刺激するところがあります。これは、中国との歴史的な経緯があるんだろうと思います。それから、今、お隣の国で非常に急激に伸びている、とても急激に成長している、ものすごく大きな脅威となりつつある国であるということで、いろんな複雑な思いが、お年を召した方も、若い方も、両方あるわけですね。そういうところが「悪い」という記事は、やっぱり受ける。そういう特集をすると、週刊誌の販売部数が伸びるというような傾向は、どうも昨年あたりからずっと続いているようです。

メディアというのは、やっぱり受けるものを提供します。売れる情報も流します。たとえ本質であっても、売れない情報は流しません。なかなか流しません。ですので、どうしても問題のある報道ばかりになってしまうんですね。で、何度も繰り返し言いますけれども、問題のある報道に引きずられて、無駄な施策を誘導します。不利益を被るのは、税金を納める私たちです。

 ここでギョーザの話は一区切りにしようと思います。あともう20分ぐらいですので、ちょっとギョーザの話から離れて農薬の話をもう一回改めて考えてみたいと思います。

 今回、メタミドホスが大騒ぎになりましたが、今回の誤解の根底にはやっぱり農薬に対する無理解があるんだと思うんですね。農薬はイコール恐いものであると。そこから思考停止状態になってしまうんです。農薬の意味をもう一回考えていただきたい、もう一回本当のところを知っていただきたいというふうに思います。

 そこで、改めてもう一回、皆さんが抱いている農薬のイメージと実際の現実がどのぐらい違うのかということを表にしてみました。おそらく皆さんの農薬に対するイメージというのはよくないだろうと思います。農薬は危険であると。すべての生き物を殺してしまう、白い粉とか液剤がもうもうとあたりが見えないぐらい、これはまさしく、最近ずっと報道されている中国の姿ですね。農家は農薬を使いたがる。農薬に良いところなんて何にもないと。これがおそらくイメージだろうというふうに思います。

 実際に、30年ぐらい前はこれが現実でした。実際そうだったと思います。農薬は非常に危険でした。どうかすると、昼前に散布した農家の方が、夜、具合が悪くなって亡くなってしまうとか、それからうっかり農薬を指にちょっとつけてしまって、それをまたうっかりして口に入れてしまって、その結果亡くなったりとか、そういう農薬がらみの死亡につながるような事故がたくさんあったようです。30年前、40年前ぐらいは本当に大変な状況だったようです。

 ですので、それはいけないということになりまして、農水省も、それから農薬企業も、農薬に対して非常に改善を施したわけですね。で、実は現実の農薬というのは、もう今はものすごく大きく変わっています。一つは安全性評価の仕組みが非常に厳しいです。具体的に申し上げると、農薬を登録する時に、申請に必要な毒性に関する試験成績というのはこれだけあります。28種類あります。これをよく見ていただきますと、発ガン性試験とか繁殖毒性試験とか、催奇形性試験とかもあるんですね。こういうものをクリアして、問題ありませんということがわからないと、農薬としては製造とか使用が認められないという仕組みになっています。

 今、農薬の話をすると、若いお母さんなんかは、やっぱり農薬はガンになるんじゃないかしらとか、農薬をずっと食べていると、奇形の子どもが生まれるんじゃないかしらというようなことをやっぱり今でもおっしゃるんですね。でも、そのことについては、私は自信を持って、「それはありません」というふうに言える。それはなぜかと言うと、こういう形で試験があって、問題がないということがきちっと確認されているからなんです。だから断言して「大丈夫です」というふうに言えるわけです。

 昔は、この必要な試験というのがもっとうんと少なかったんです。だんだん、だんだん増えていって、今ではもう28種類になりました。最近は、この環境影響に対する試験を増やしていきましょうという流れが非常に強くなっていっていますので、さらにおそらくこの必要な試験成績というのは項目が増えていくだろうというふうに思います。人によっては、化学物質の中で農薬が一番安全という確認がされた上で使われているというふうに言われているほど、厳しい評価が行われているというのが現実です。

 いろいろあるんですが、もう一つ、ぜひ知っていただきたいのは、農家は農薬を使いたがっているわけではありませんということです。当然なんですが、農薬は非常に高いので、農薬を安易に使うと生産コストが上がります。農家の方はそれだけ儲けが減りますので、農家の方も極力農薬は使いたくないんです。それに農薬散布するということは非常に重労働ですので、そんなことをわざわざしたくないです。ですので、今の農家の方というのは、減農薬に一生懸命努力しておられます。

 それからもう一つ、皆さんに理解していただきたいのは、やっぱり農薬は理由があるから使われているということです。省力化とか安定経済に非常に大きく貢献している、これは疑いようのないことだろうというふうに思います。ちょっと考えていただければお分かりになると思いますが、無農薬とか有機で日本の人口1億3千万人の食料を賄うことは無理です。地球の65億人の食料を賄うことは無理です。やっぱり科学技術も上手に使って、食料を生産しないと、もう食料は賄えない、足りない状況に今の地球というのはなっています。ですので、私は農薬のことをもっときちんと研究して、もっと良い農薬を作って、安心して使えるようにしてくださいというふうに農薬企業の方にはいつも言っています。

 それから、もう一つ、皆さんのとても大きな誤解としてありますので、昔の農薬と今の農薬は違うんだよということを、このグラフで見ていただきたいと思います。これは、どういう性質の農薬がどういうふうに推移しているかということを表したグラフなんですね。特定毒物というのが毒性値が一番強くて、上に上がって行くにつれて毒性が弱くなって行きます。

 これをよく見ると、特定毒物という非常に危険な農薬というのは、昔は一定数使われているんですね。このぐらいは使われているということです。これが毒物ですね。これが特定毒物ですね。かなりの数が50年代、60年代使われています。だからこそ大騒ぎになって、『沈黙の春』という小説が出たり、それから新聞に『複合汚染』という小説が載ったのが75年です。多分、『複合汚染』を読んで、農薬と食品添加物の害に目覚めたと言うか、刺激を受けたという方もここにはたくさんいらっしゃると思うんですが、あの小説が取り上げた時代というのは確かに毒性の強い農薬というのはたくさんあったんですね。で、問題をいろいろ引き起こしました。でも、『複合汚染』が出たから、農薬企業は反省したから、農水省も反省したから、農薬って変わってきているんです。

 どういうふうに変わってきているかと言うと、昔はほとんどなかった普通物が、毒性の非常に低い普通物が、ここですね。最初は普通物がちょっとあって、戦後の混乱期ですので、効かない農薬ということで普通物がちょっと売れて、だんだん減っていったんですが、今また増えて、今では毒性の非常に少ない普通物が農薬の8割を占めるまでになっています。この頃にたくさん使われた特定毒物という非常に毒性の強い農薬は、もう今はゼロです。ありません。ですので、ここで使われていた、ここでイメージした農薬と、現在使われている農薬というのは、もう丸っきり違うものになっているんですね。そこがどうも皆さんに理解していただけなくて、一言で「農薬」と。この時代にあって無農薬でないとダメよと言いながら、イメージしているのはここの農薬という、そういう非常に混乱した状況にあるのが今の状態なんですね。

 ですので、やっぱりこの事実を知っていただきたいんです。そこから先、「やっぱり私は無農薬」とか、「いや、農薬を使ってもいい」とか、その判断は個々にすることなんですね。それぞれが自分のお考えで判断して、自分の買いたいものを買えばいい、自分の作りたいものを作ればいいということです。ただ、この誤解に基づいて判断することは止めてくださいということをぜひ皆さんにお願いしたいんですね。

 どうして誤解に基づく判断を止めていただきたいかと言うと、その誤解はどうしても農家を、消費者の誤解というのは農家を苦しめるものになってしまうからです。私はよく言うんですが、農家と消費者の間には暗くて深い川がある。溝ではなくて、ものすごく深い川があるんだと。で、今のところちょっと越えられない状況になっているんだというふうによく申し上げています。

 これは消費者、「虫食いのない、きれいな野菜じゃなきゃ嫌だ」と。「でも、農薬は嫌だ」と。これはもう消費者共通の願望ですね。一方で、農家の方は、本音はこういうふうに思っています。「ある程度は農薬を使わなくちゃ、きれいな野菜なんてできないよ」と。「私たちは、消費者のために農薬を吸い込んだり、皮膚につくのを我慢して使っているのに」と。実は心の中でそう思っているんですね。

 こう思っているというのは、実は残留農薬に比べて、農家の方が吸い込む、皮膚につける農薬というのは圧倒的に量が多いからです。もう当たり前ですよね。農薬を背負って、手元で散布しているわけです。そうすると、どうしても跳ね返ったり、吸い込んだりして、農家の方はある程度農薬を体の中に取り込んでしまいます。だけど、消費者が食べるのは、散布してから1週間とか2週間とか経って、それから収穫されて店頭に並んで、その間ずっと農薬はどんどん分解していくわけですよね。さらに水洗いをして、ある程度また農薬が取り去られて、それから加熱調理して、さらに農薬が分解されて、それでも残っている農薬を消費者は食べているわけです。

 ということは、消費者が食べている残留農薬と、農家の方が摂取している農薬というのは、比較にならないぐらい農家のほうが多いわけですね。ですので、農家の方にしてみたら、「あなたたちがきれいな野菜を欲しがるから、私たちは農薬を使っているのに、どうして私たちはあなたたちに責められなくてはいけないの?」と、ものすごく割り切れない思いを抱いているんですね。だけど、言えないんです。それは、消費者の方が「お客様」だからです。お客様は神様なので、本当のことをなかなか言えない。その気持ちはどこに向かうかと言うと、私みたいなところに来るわけですね。「松永さん、もう言ってよ!」「消費者にちゃんと僕たちの気持ちを伝えてよ!」というふうに、もう本当によく農家の方にこのことを言われます。ですので、私はこういうところで言うわけですけれども、ぜひここの溝、川を乗り越えていただきたい。

 それには、お互いに相手の本当の姿を知らないといけないですね。農家の方が使っている農薬は30年前、40年前の農薬と全然違うし、適正な農薬取締法に沿ってきちんとした使い方をしているということを消費者の方に知っていただきたいし、農家の方も逆に、ちょっと消費者はきれいな野菜を欲しがっているという、ある意味、思い込みがあるのも事実なんですよね。消費者はそこまで望んでないというのもあるのに、きれいなものを作ってくださるという、そこにもう農家にとっての思い込みもありますので、やっぱりお互いに相手の姿を知ることから、次のステップに進んでいくことができるのではないかなと、私は思っているわけです。

 こういうお話をすると、どうしても農薬推進派というふうに私は受け取られてしまうところがあります。一応お断りしておくと、必要最小限の農薬は使っていただいていいのではないですかというのが私の意見です。ですから、過剰な農薬は使わないでくださいというふうに、農家の方には申し上げています。

 ただ、また最近、状況が変わりつつあります。とても大きいのは地球温暖化だと思います。気温がものすごく今上がってきていますので、実際に病害虫が死なずにそのままずっと増え続けるというケースが出てきているんですね。九州などで聞くと、昔は冬場に死んでいた害虫が、暖かいものだから、そのまま冬場に生き残ってしまって、春にものすごい数に増えて、野菜に襲い掛かるというようなケースというのがやっぱり出てきているそうなんです。

 そういう地球の大きな激変の中で、その虫を手で取りなさいとか言っても、それは限界があるわけです。ですから、そういう時は科学技術をうまく利用して、きちっと農薬も使って、農業をしていただいて、食料を頑張って作っていただくという考え方も、やっぱりこれからは必要になるのではないかなというふうに私は思っています。とにかく現実を見ましょうということですね。

 残念ながら、そういう現実を見てくれないのがメディアなんですね。こういう農業現場の現状、あるいは地球温暖化に苦しんでいる農家の声というのは、なかなかメディアに届かないです。届いたとしても、専門知識とかもないので、なかなか理解できないというところがあります。

 それから、どうしてもメディアはやっぱりセンセーショナルなものが欲しいんですね。何とかが悪いとか、何とかが危険というようなもののほうが、興味を引きますので、どうしてもそういうニュースのほうが視聴率が上がります。「大丈夫だった」というニュースはやっぱり興味を引かないんですね。ですので、どうしても過剰に過剰に打っていくことになってしまいます。

 さらに、受けるニュースというのは単純な二元論ですよね。どうしても多くの人たちは結論だけを欲しがります。先ほどの中国産のギョーザのような、いろんな角度からお話しして理解していただくと、「あぁそうか、輸入検疫じゃ意味がないんだ」ということは多分少し皆さんに理解していただけたんじゃないかなというふうに思いますけれども、あそこの理解に至るには、いろんな情報を提供しなければいけないわけです。だけど、ワイドショーでは、コメンテーターが「けしからん!たった1割しか検査していない。もっと上げなくちゃ」という、非常に単純にバサッと切って、それで終わりなんですね。どうしてもそういう非常に単純な話に終始して、きれいに終わってしまうのがメディアですので、そここそが食品報道の問題点なんだということを、ぜひ皆さんには理解していただきたいんです。

 それから、コスト意識がないということも非常に大きな問題としてあります。検査をしろと言うけれども、誰がその検査代を出すのかということを誰も言ってないですね。そこに気が付いていただかないといけないです。

 もう時間がないので、ここらへんは飛ばしますね。メディアの問題も散々言いましたので、もう同じことなんですが、ぜひ皆さんに心がけていただきたいのは、「食の読み書きそろばん力をつけましょう」ということです。受け身を脱していただきたい。ぜひ学んでいただきたい。報道だけを見て、あぁそうなんだと納得するのではなくて、「ここの裏には何があるの?」「どうしてこんな単純なことを言っているの?」ということを考えて、調べていっていただきたいんですね。次の一歩を踏み出していただきたい。そんなに難しいことではないと思います。

 で、私は「食の読み書きそろばん力をつけよう」というふうに言っています。「読む」というのは、情報収集するということ。「書く」というのは、情報を発信するということ。で、情報を発信するというのは、別に書いて新聞に投稿しなさいという意味ではないんですね。単純に「書く」と書きましたが、例えばご近所で世間話をする時にも、「ちょっと何か最近のギョーザの話っておかしくない?」「何か違和感あるのよね」と、そういう話をし出すだけで、多分全然違うんだと思うんですね。多くの方がそこで目を開かされるということが出てくるというふうに思います。

 そういう時に必ず重要なことは、きちんとそろばんをはじくということですね。そろばんなしできれい事を言っても、持続できない。きちっとそろばんをはじいて、誰がお金を出すのか、私はそのお金を払えるのかということを常に考えながら、自分の次の策ということを考えていくということが、多分重要であろうというふうに思います。

 食の読み書きそろばん力を付けるのはそれほどやさしいことではありません。やっぱりちょっと皆さんに努力していただかなくてはいけないだろうと思います。それは、一つは化学的な知識については少々勉強が必要ということです。先ほどのグラフ、量によって毒性の大きさが変わっていくというようなグラフは、やはり何かの資料がないと分からないことですね。で、あのグラフは、例えば食品安全委員会の出している用語集とか、農水省が出している農薬についての冊子とか、いろんなところに載っています。おそらく三重県の配布物、パンフレットの中にもああいうものを説明したものがあるはずです。

 そういうものを読んで、少し化学物質の性質ってこんなものなんだ、こういう考え方に則って量とか使用回数とかを規制して、農薬とか科学物質というのは利用されているんだということを、やっぱりここでちょっと勉強していただきたいんですね。その基礎があれば、今度テレビを見た時、新聞を見た時、週刊誌やインターネット、いろんなものがありますけれども、そこでそういうことに対する情報の見方が多分変わってくると思います。「それってちょっと浅くない?」とか「あれ、こっちと矛盾してるよね?」というところに気が付くようになってくると思います。

 おそらくここに来られている皆さんは、そこに何らかの違和感があるから、こういう講演会に来られているんだと思うんですね。もう少し先の情報が欲しいということで来られているんだろうと思うんですね。そうすると、そこをまた一つのきっかけにして、次の情報収集、次の深い思考というところに踏み出して行っていただきたいわけです。最初の一歩を踏み出すということがとても多分大事なんだろうというふうに思います。たくさんの情報がありますけれども、まんべんなく聞いて、判断していただきたいんですが、その際に一つ言えることは、やっぱり行政情報は信頼度が高いということです。食品安全委員会とか農水省とか厚生労働省とかのウェブサイトとかをぜひ見ていただきたいし、資料も見ていただきたいです。そういうことが手に入らないということであれば、自治体に尋ねてみるのがいいというふうに思います。ちょっとお話を聞いて、「これは本当のところはどうなんですか?」とお尋ねされると、自治体の方は、答えられることは多分お答えしてくださいますし、分からないことは調べて連絡しますというふうに言っていただけると思います。それが多分自治体の職員が育つ一つのきっかけにもなるんですね。皆さんのアプローチによって、自治体の職員も「あっ、知らないことがあったんだ。勉強しよう」ということで、また知識を集めて、それを多くの市民に還元していくという動きにつながりますので、実は、皆さんが自治体に働きかけるということはとても大事だろうというふうに思います。で、三重県はきちんと答えてくださるだろうと、私は信じています。

 さらに気をつけていただきたいのは、単純な二元論や、極端な主張は信じないということです。それから、その情報は誰のお得になるのかということをぜひ考えていただきたいということです。どこかで誰かがお得になる情報を流しているんですよね。これで自分が儲けようとしているという構図は、今の情報の中にはありますので、そこを見ていただきたいと思います。

 結局、こうすれば大丈夫というものは何もないんです。なかなか難しい。だけど、これをして行かないと、やっぱり私たちは大きな不利益を被ります。ですので、最終的には柔軟な頭と心が重要だということになると思います。

 もう時間がないので、飛ばしますね。本当に心配しなければならないことということで、最近、私が非常に気になっていることを申し上げます。

 これほど安全で贅沢な食を実現している国は他になかったと私は思っています。だから私は食品テロを防げなかったと。平和ボケしていた。だから、生協もJTも、最初にだいぶ前に通報があった時に、これは犯罪じゃないのか、これはおかしいなということを考えられなかったんですね。で、そのまま放置してしまって、変な人の苦情という扱いをしてしまった結果、2次被害、3次被害と、被害が大きく広がってしまったということです。

 ですから、やっぱりもう少し厳しさ、日本人全体に「食」というのはやっぱりなかなか大変なもので、ちゃんと注意していかなければいけないんだよということを意識する必要があるだろうというふうに思います。

 最近どうも気になるのは、食料自給率の話ですね。ギョーザの話が出て、食料自給率がこんなに低いということが改めて皆さん再確認されて、39%しかない。中国にものすごく依存しているのはわかった。だから日本のものを食べましょうという動きに、今なりつつありますよね。それがつながって行けばいい、食料自給率が上がっていけばいいと私は思います。ただ、今みたいな雰囲気で自給率を上げろと言っている間は、多分変わらないだろうというふうに思います。

 なぜかと言うと、皆さんがお考えになっている以上に、農家の状況は深刻です。農家だけではなくて、漁師さんとかも同じです。農家がいかに深刻かと言うと、基幹的農業従事者という、プロ中のプロの農家における高齢者の割合というのは、実はもう6割を切っているんです。日本の農業を支えているのはもうすでにお年寄りなんです。10年後にこのお年よりの方たちが頑張って作ってくれるのかどうか。

 今、私たちは、やっぱり今でも農薬は嫌とかいろんなことを、わがままをある意味で言っていますよね。だけど、もうすぐ農家の方はもう作らないよ、もう今すでに、「あんなうるさいことを言う消費者にはもう作ってやらないよ。自分のところで食べる分だけ作る。消費者はもう中国産を買えばいいじゃないか」と言っている生産者の方はたくさんいらっしゃるんですね。それは消費者に対するいじめではなくて、もう自分たちは頑張れないよという、悲鳴がすでにどんどん上がっているという状況なんですね。そこをちゃんと見ていただかないことには、雰囲気の国産志向では多分何も変わらないだろうというふうに思います。

 雰囲気の国産志向の最も顕著なものがお肉ですね。皆さん、BSEの問題がいろいろ出た時に、国産の牛肉は安全だから食べようと。アメリカ産の牛肉はちょっと止めておこうと、おそらく皆さん思われたと思います。で、一生懸命国産牛肉とか国産豚肉とか国産だから良いと思ってお食べになっただろうというふうに思います。でも、国産の内実はどうかと言うと、飼料はほとんど外国産なんですね。

 私、このグラフをいつも見せてご説明するんですが、「日本はもうお米の国ではありません。トウモロコシの国です」というふうに言っています。お米の消費量は年間に900万tしかないんです。トウモロコシの輸入量、消費量というのは1,600万tなんです。お米よりはるかに多いトウモロコシを輸入しているんですね。そのかなりの割合を飼料として家畜にやっています。その家畜の肉を私たちは「国産牛肉、おいしいね」「国産牛肉、安全だね」と言いながら食べているんですね。

 アメリカ産の牛肉が恐いと言っていますが、トウモロコシのシェアは94%がアメリカです。ですから、私たちは、アメリカ産牛肉を食べるにせよ、国産の牛肉を食べるにせよ、結局はアメリカの掌の上にあって、「飼料にする?牛肉にする?どっちでもいいよ」と、掌の上で転がされているだけなんですね。だけど、その構図が今の現状の国産志向の中では見えないんです。国産牛肉、国産豚肉、国産だったら良いでしょというところしか見えてこないんですよね。

 そうすると、本当の国産を目指すには、飼料をどうするかということを考えなくてはいけない。飼料のことを真剣に考えると、今度立ちふさがるには価格です。飼料の内外価格差というのはものすごいです。国産飼料というのは、もう海外の飼料の何倍、10倍というような価格が付いています。ということは、飼料も国産にすると、お肉はものすごく高くなるということです。もう今みたいにふんだんに食べられるような時代は過ぎ去ってしまうと思います。でも、それをしないと、多分自給率は上がらないんですよね。飼料の割合というのは、現状の自給率を考える上では非常に大きいですから、そこまで覚悟して価格、コストの負担、食費の値上がりということを覚悟しないと、おそらく自給率は上がらないということまで考えた時に、「じゃあ、私は何ができるの?」ということが、私たちの宿題になっていくわけですね。なかなか簡単なことではないです。

 私もやっぱり食費は安いほうが良いです。なかなかそんなに全部国産で高いお金を出してというのは無理です。子どもの教育費もある。親の介護費も出さなきゃいけない。その中でどう折り合うかということを、これからちょっと真剣に考えていかなければいけない時代になってきたなと。そういうことも多分ギョーザ事件というのは浮かび上がらせてきつつある。それほど深刻な状況にあるというふうに多くの方たちがまだ気がついていないと思いますが、そういう深刻な状況の中で、何を次に自分がやるかという、答えはないわけですね。私には答えは出せない。ここから先は皆さんが自分自身で自分のお財布に合った自分の判断をしていただくしかないというふうに思います。

 ちょっと長く喋りすぎました。申し訳ありませんでした。今日のお話で何かご意見がありましたら、ここにメールアドレスも書いてありますので、ぜひご意見をいただければと思います。この後におっしゃっていただいても結構です。「ここはおかしい」「お前の考え方はおかしい」でも良いです。それで議論する中から、次の私たちの取るべき道というのが、多分少し見えてくるのではないかというふうに思いますから、この後どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

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