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平成24年03月09日

平成19年度三重県食の安全・安心フォーラム 基調講演2

基調講演2

「多幸之介が語る!食品添加物の安全性」
 講師 千葉科学大学教授 長村 洋一さん

皆さん、こんにちは。
 今、前に中野さんが素晴らしいお話をされまして、そこをもう少し僕は裏付けの話をさせていただこうと思います。
 何回も申し上げますけれど、ある意味で消費者の皆さんは、ごく一部の人の扇動的な言葉とそれに乗ったマスコミの宣伝によって騙されているというふうに、僕は申し上げたい。最近いろいろなことがあって、このスライドを作ったんですが、本当の意味で、最後の中野さんの話と同じで自給率39%の国が何をやっているのか、それを国民みんながこれは本当に必要として要求してよいことか、そんな消費者の要求故に業者はどんな状況に追い込まれているか、そして、そういう状態というものをこの国民全体が許しておいていいのかということを本日は申し上げたい。
 さて、このスライドは犬吠崎の灯台の絵ですが、千葉科学大学というのは千葉県の銚子市にありまして、とんでもない大田舎にあります。しかし、この犬吠埼の灯台というのは非常に意味が大きいのです。大きなアンテナが横にあるんですが、沖ゆく船と絶えず交信し、かなり広域な太平洋の領域について船の安全を司っているんです。
 今、自分のやっております健康食品管理士認定協会というのと、もう一つNPOで日本食品安全協会を立ち上げたんですが、要するに食の安全・安心ということに関して本当の意味でいわゆる沖の船の安全を守るための灯台的存在になろうということでやっております。
 もう一つは、単純な理由ですが、銚子の市長さんからどこへ行っても銚子の宣伝してくださいと言われたので、犬吠埼からスタートしました。銚子は大変素晴らしいところなので皆さん是非一度遊びに来てください。
 それでは早速始めさせていただきたいと思いますが、先ほど中野さんの話にもありましたが、食品添加物の危機管理というところで何を考えるかと言いますと、要するに使用したことによって得られる利益と、それからその利益があったとしても、害があってはいけない。その害というのはどれぐらい危ないんだろうなということを考え、何をどれぐらい取るかというところの決定をしなければなりません。
 これ問題はまさに科学の、まったく科学の領域なんですね。ところが、科学的には解決している問題であっても、もう一つ非常に問題になりますのは、これに関する情報がいい加減に伝えられた時、これが社会を大きく混乱させることです。食品添加物について言いますと、この危険性の問題においては、人類が滅亡するだとか、子孫代々奇形の人がたくさん出てくるとか、たくさんの人が発がんするなどということは起こらないと言い切って良い状態であります。そして、量的に考えたら起こり得ないようなことを種にして騒ぎ立て食品添加物を追放しようとしている人たちがいます。食品添加物は添加物としてなくてはならない大切なことがたくさんあるんです。だけど、とんでもない大袈裟なことが言われて、今は無添加が最高の世界になってきてしまっている。これは日本の非常に奇妙な現象です。
 ですから食品添加物をめぐって何が一番問題かと言いますと、正しい情報の伝達が行われていない。要するに食品添加物の一番危険なことは何かと言ったら、「情報が正しく伝わっていない」、これだと思います。
 たまたま僕は、今年の7月から8月にかけてハンブルグ大学へ招聘教授として呼ばれましたので行ったんですが、実は金・土・日・月ぐらいの休みをもらえましたので、しょっちゅうあちこち歩いてまいりました。そして、1ヶ月ちょっといる間に5,500キロを車で旅行しました。
 その中で非常におもしろかったのは、南ドイツのシュロスリンダーホフという、非常にきれいなお城の、このすぐそばのホテルに宿泊した時ににおもしろい物を発見したのです。この写真は人工甘味料です。向こうは糖尿病の方が非常に多いものですから、よくコーヒーなどの出る店には人工甘味料が置いてあります。私は日本には日本発の非常にいい、アスパルテームという人工甘味料があるものですから、ドイツの甘味料は何を使っているのかなとラベルを見てみました。そうしたら、何と「チクラマート」と書いてありました。チクラマートというのは日本語で「チクロ」です。そこで、昔ドイツで聞かされた日本がチクロを禁止にした時の話を思い出したのです。
 実は、僕は約30 年近く前にデュッセルドルフの糖尿病研究所に3年間ぐらいいたんですが、その時ちょうど日本がチクロを禁止したしばらく後だったんです。ところが、ドイツはチクロを禁止していなかったんですが、アメリカとイギリスと日本は禁止にしたのです。ここには何か非常に意図的な感じがするんですが、この3国は今も禁止しております。禁止にした理由は、動物実験による極めて異常な量の投与による発ガン実験の結果を重要視した結果でした。どれぐらい異常な量かと言いますと、毎日、体重50キロの人がご飯茶碗1杯ぐらいチクロを10年以上食べ続けると、10万人に4人ぐらい膀胱ガンになる人が増える可能性があるというネズミの実験だったんです。
 ところが、この実験結果も現在は結局おかしかったということになっております。禁止にしたアメリカにおいてすらNIH、ガン研究所などいくつかの機関全部が「チクロに発ガン性はない」という結論を出しております。
 だけど、その禁止にした時には、ドイツではチクロを使うにしても実際には数10 ミリグラムという耳かき1杯くらいしか使用しない。従って、ご飯茶碗一杯くらいを毎日食べてはじめてわずかな発がん性の認められるようなものを少量用いて発がんの可能性はほとんどないと考えたのです。そして、膀胱ガンの発ガンの可能性は確かに100%否定できないけれど、使ったほうがいいだろうと結論付けたのです。なぜ使ったほうがいいかと言うと、糖の代用となることです。その頃も今もそうですが、ドイツではいかに糖尿病の患者さんを減らすかということは大きな課題です。日本もメタボリックシンドローム対策で来年から特定健診という行政指導が行われますけれども、ここでもいかにして糖尿病の患者さんを増やさないようにするかが非常に大きな課題になっています。糖尿病の予防には糖の摂取をいかに抑制するかが大きな問題でありますが、ドイツではチクロがカロリーゼロで糖の代用になるということ、要するに糖として取らなくても済むことの大切さのほうを結局採用したわけです。
 私はこのドイツでの経験を踏まえて、どれぐらいの危険性のところで何を取るかといった問題は、科学の問題なので科学者に任せていただきたい。ところが、最近はマスコミと、マスコミに乗ろうとしている一部の研究者と、さらに訳も分からず恐い、恐いと言えば、みんなが喜んでくれるといった心理でこういう問題を扱ってもらっては困るというのが私の考え方です。
 今回の講演で申し上げたいのは、誤った情報によって迷信ができてしまったという、この日本の奇妙な現象といろんな角度から申し上げたい。
 まず食品添加物で恐れられていること。発ガン性が・るんじゃないか。これは実は日本独自で許可しているものについては、ないとは申し上げません。先ほど中野さんのスライドの中にもあった「アカネ色素」というのは、つい最近禁止になったわけです。あれは、なぜ日本はそんなものがあるかと言うと、まさに天然志向の中から出てきた。日本は、平成7年に食品衛生法を改正しまして、その時に食品添加物として多数の化合物を許可したのです。その中に既存添加物という非常におもしろい集団があって、これは何かと言うと、その時まで使われていて、天然から取った物、これは全部一応安全かも知れないということですべて許可したんです。
 ここ数年の間で、不許可になった食品添加物のほとんどがこの既存添加物の中から出ております。ですから、今後も出る可能性は否定はできない。それは何の中にあるかと言うと、合成着色料ではなくて、天然着色料です。このことをよく理解しておいていただきたい。
 決して天然着色料が安全で、合成着色料が危ないということではない。合成着色料はものすごく詳細な実験をやって、極めて安全であるというデータが出たから、合成着色料として許可されているんです。それを、後から申し上げますが、石油から合成された、石油からできたような物を食べているんだよと。皆さんはちょっとした薬を飲まれても、何を飲まれても、歯磨きで歯を磨いても、あれはほとんど石油からできているんです。化学物質というのは、化学の構造でできたものは、天然であるか、天然でないかということは、直接は関係がないんです。
 不純物が入っているか、入っていないかというところに問題がある。この不純物というのは、天然のものが安全で、化学合成のものは危ない、というのは間違っています。例えばこの四日市は非常に喘息ということで有名ですが、このへんはやはり科学というものを信頼しすぎて、何でも素晴らしい、要するに素晴らしい良い物ができてくるという中で、心理的に構成された、そういうところで「科学万能」という感じというのが、僕らの育つ頃は多分そうだったと思います。要するにバブルのすべての種だったんです。でも、そこでやった失敗に基づいて、今は随分いろんな安全策というのが講じられているわけです。
 そこの中で、食品添加物は化学合成されているという、化学合成されて用いられている食品添加物はごくわずかで、ほとんどが天然物です。天然物と言っても、天然から抽出したということではなくて、もともと我々の体の中にあるような成分なんです。なぜそうなるかということは、食品というのは、よく考えていただいたらお分かりになると思いますが、我々が食べる物なんです。食べる物は何かと言ったら、みんな我々と同じ生き物なんです。動物を食べ、植物を食べ、あれはみんな生き物です。生き物というのは我々と大体同じ成分でできています。その生き物をいかにおいしく食べるか、安全に食べるかという時に、生き物の成分を少し変形させた形というのが食品添加物です。そのどこが悪いか、よく考えていただきたい。
 キレる子どもができるとか、化学合成物は体に悪いとか、味覚音痴になってしまうとか、食べられないような汚い物を食べさせられる、それから手抜き料理に使われて、食文化がダメになる。要するに、今ある一部の人たちはお母さん方に、「あなた方は食品添加物のだしの素なんか使っちゃいけませんよ。あれでは子どもはダメになりますよ」とすごい勢いで言われて、やっぱり感化されるお母さんがおられるんです。なぜかと言うと、共稼ぎで一生懸命やっていて、どうしても自分の子どもの面倒がみれないお母さんに、「あなた、味噌汁に煮干のだしも使わずに、だしの素なんか使っちゃダメですよ。そんなことをしたら子どもはダメになりますよ」と言われると、そうかなと思って、実行されている人がいます。そして、非常に苦労しているという人に僕は「使っちゃいけないんでしょうか?」と市民講座が終わった後で質問を受けたことがありますが、「どうぞお使いください」と言ったんです。
 それから混ぜ合わせによる影響の恐怖、これもいろいろなデータが実際にあります。一般の人々に正しい知識が伝わっていない。無意味な危険を扇動する人たちがいて、無知な学者が根拠のない恐怖を煽っている。これもまた時間があったら話をさせていただきます。
 そして、結局、多分ここに集まっておられる方もそうだと思うんですが、もったいないという、今本当に考えなくちゃいけない日本の問題に真剣に取り組んでいる人が、こういった情報に惑わされてしまう。これが僕は非常に大きな問題だと思います。従いまして、非常に真面目な消費者が「無添加がいい」「食品添加物は恐い」、そういうことになっているために、業界が、僕は明らかに必要のない無添加に迎合し始めている。と言うか、もうしているというのが現状です。
 例えば「化学調味料不使用」なんて、全くくだらないいな話です。それから、あるコンビニのホームページには、「保存料を完全に排除しました」と書いてあります。このホームページもよく見てみますと、「厳しい規制があって、加工食品などに使用する物は、化学的な実験によって安全性を確認した上で厚生労働省に認可を受けています。しかしその一方で、食品添加物を不安視するお客様も少なくありません」とかいてあります。
 実はこれは多分どこのお寿司屋さんかお分かりになると思いますが、たまたまここの上層部の人とつい最近話をする機会があって、その方に僕のやっております健康食品管理士認定協会の会報誌を一度読んでくださいということで、僕の書いた記事をあげました。そうしましたら、「本当に消費者の方がこういうことを理解していただければ、私たちもこういうことはやらなくて済むんですけど」と言っておられました。
 安全とか非安全といったことは科学の問題であって、感情の問題ではないんです。だけど、感情で納得したいのがやっぱり安全の問題でもあります。なぜこうなってしまったか。結局は無知に基づく結果だと思います。これは先ほどの中野さんの講演の中にもこういうことをあらゆる方向からおっしゃっていたように思います。それからもう一つはやっぱり公害、水俣病とかイタイイタイ病だとか森永ヒ素ミルク事件とか、ああいった化学物質に基づく非常に恐い事件が昔あったというのも、「化学物質、恐いよ」と言われると「そうだね」という気持ちになる大きな原因だと思います。
 もう一つは、食文化に対する時代錯誤であり、世界を見ないで自分勝手に安全ということを騒いでいる島国の現象じゃないかなと思います。それから、世の中に警鐘を鳴らす正義感に燃えたマスコミの人たちがそれを支えていると思います。「どうせなら無添加、良いですよね」と言われると、何となく化学物質だから入れないほうが良いだろうという、先ほどの中野さんの「何となく気持ちが悪い」いうところに上手に迎合してしまうと、やっぱりないほうが良いというふうになってしまうということであると思います。
 僕は、こうした問題のすべては食品添加物の無知に始まっていると思います。無知な人が一般市民に不安を煽っている。僕は、今一番悪い本はこれだと思っています。最近、僕が話をしている情報というのが流れているということをある程度聞いたんですが、そのことから最近どういう言葉に変わってきたかと言うと、「食品添加物、これ、命がないですよね」と言われた。ここへ逃げ始めたので、これで終わりになってきたなと思うんですが、要するに、もうこれは新興宗教集団になります。この先生の本に感激されて、この先生の売っておられる自然のお塩を使って、私たちは健康家族になりました、病気も治ってしまう、病気にならなくなったと言う。こういう具合にして妙な健康食品が世の中に出る時と同じ状態になっています。
 健康食品の問題は非常にいろいろ、どうして出てくるか。何の効果もないようなものが、どんな病気も治してしまう物になる、そのメカニズムは、今この先生がやっている行動から見事に分かるんです。自然のお塩、これを使いなさいと。この本の中にちゃんと最後に買い方を載せている。つい最近消したみたいですけど、21版までの本にはちゃんと裏の一番最後のところにこの先生が売っている塩を買う方法が書いてある。それで、この先生の書いておられる塩を買って、健康家族になったという人に会ったんですが、それで「私はもうみんなに勧めているんですよ。あの先生のあんな素晴らしいお話を聞いて」という。これはもう一種健康食品なんかでものすごい詐欺まがいの大きな集団になっていく、ああいうものが育ち上がるところの基本的なパターンと見ました。
 要するに、皆さんに「危ない」という妙な情報を煽ることによって、自分の世界へ引き入れてしまう、その手法であります。
 これを真似した本が、これが漫画本であるために、最近、高等学校なんかの食育だとかそういうところでお薦めの教科書になっています。さっきの本の一種の漫画本です。これは描いている人は別なんですが、描いてある内容はまったく一緒です。後で二、三、この漫画本に描いてある内容をお見せします。
 食品添加物というのは、結局、ちゃんと食品衛生法第4条第2項に書いてあります。安全な食生活と、利点としては豊かな食文化ができるという点です。ところが、問題点は何かと言うと、安全性に対する不安と食文化の破壊ということが言われているわけです。
 そこで、この豊かな食文化の創生と言われているのと、食文化の破壊、要するに利点と問題点があるわけです。そこを利点を問題点に変える最大因子というのは何かと言うと、これは量の問題なんです。量の問題を無視して科学を論ずると、本当に意味のない話になります。それをこれから・A三、申し上げます。
 まず、「LD50」という言葉があります。これは専門的な言葉でありますけれども、例えば100匹のネズミにある量の物質を飲ませたら、そのうちの50匹が死んでしまうという、そういう量を「LD50」と言います。
 これは実験をいろいろ動物実験をやったりする時に決める、大変重要な数字なんですが、食塩、これは調味料というものに入ります。酢酸は調味料になったり添加物になったりいたしますが、カフェインとかカプサイシンとかこういったのは化合物になります。
 ここの中で毒性が一番強いものというのはカプサイシンで、これは何かと言うと、トウガラシの中に入っている辛い成分です。だから、トウガラシはやっぱりある量を食べ過ぎたら危ないんですよ。キムチぐらいは全然大丈夫ですけれど、真面目に激カラに挑戦して、いわゆるトウガラシがどれだけ食べられるかとやって、食べ過ぎて死んだ人が本当にありますから、カプサイシンというのは相当の毒性を持っております。
 今、コンビニが一生懸命追放している、コンビニその他が追放しているソルビン酸という保存料は、10.5 グラム/キログラム、体重1キログラムの人は10.5グラムぐらい食べると100人のうち50人の人が死にますよという量です。食塩は3.9グラムです。酢の成分では3.3グラムです。はるかにお家にある物のほうが毒性は強いわけです。これはまた後で問題にしたいと思います。
 まず、このソルビン酸という化合物ですが、保存料です。これは今、ものすごい勢いで追放されておりますものですから、ほとんどの食品から追放されたものです。量の概念のない扇動家の無知によって、僕はこれが起こったと思っています。
 先ほどの本の中に1日摂取容量(ADI)というのはこういうふうに書いてあります。「ネズミにAという添加物を100グラム使ったら死んでしまった。じゃあ人間に使う場合は100分の1として1グラムまでにしておこう。大雑把に言えばそのように決めているんです」と。こういう書き方を平気でしている人の文章というのは、科学の世界ではムチャクチャな話であります。
 これはどういうことかと言いますと、Aという添加物を100 グラム使ったら死んでしまったというのは、これは死ぬ量を致死量と言います。要するに人なり動物を殺してしまう量ということです。致死量の100分の1が本当に食品添加物で使われているならば、僕ももう先頭に立って反対運動をやりますよ。だけど、そういうことじゃないんです。ここのところをこんないい加減なことを言っている人が、何が本当の意味で必要なものに関する安全だとか安全でないということを論じていいかということであります。よく考えていただきたい。
 1日摂取量というのはどういうふうに決められているかと言うと、膨大な実験結果をもとに、一生の間毎日摂取してもまったく問題が発生しないというふうに科学的に類推される量であります。こう言うと必ず言われます。「科学は万能ではありません」、そのとおりであります。では、それを万能でないということを前提にして、止めてしまわなければならないほど、食品添加物は危険な物であるかということは、よく後から考えていただきたい。
 無作用量というのがその根拠になっております。化学物質というのは、こういうふうなんです。量をどんどん多くすれば多くするほど、例えば保存量なら保存量としての有効性というのは増えていきます。だけど、量が増えてまいりますと、ひどい時には死んでしまいます。死なないまでもひどい中毒を起こします。だけど、ある量以下になった時には、絶対何も起こらないようになっているんです。化学物質というのは、必ずこういうところの量がある。ここが非常に小さいものは毒性が強いと言われています。例えばよくご存知の青酸カリなんていうのは、ちょっと飲んだだけでも死んでしまう。あれはなぜかと言うと、この作用量、致死量というのが非常に低いところにあるからです。 どんな物でも、致死量というのは存在するんです。例えばお酒だって飲みすぎれば死んでしまいます。あれはアルコールが致死量を超えるから死んでしまうんです。だけど、少量だったら作用量で良い気持ちになる。だけど、入っているか入っていないか分からないような量では酔っ払うこともできないわけです。
 要するに、化学物質というのは、量を問題にせずにその作用を論じてはいけないんです。これはやってはいけないことなんです。科学の世界というものを論ずる時には、絶対にその量の問題を考えなければいけない。そこを無しにして物を論じてはいけないということです。その作用量というものの最大の作用量というのが決まりまして、その100分の1をADIと決めております。
 今、本の著者は何と言っているかと言うと、致死量の100分の1がADIだと、こういう考え方をしているわけです。これはムチャクチャな話であります。
 実際にADIから厚生労働省が計算をして、じゃあ1日の使用許可量というのはこれぐらいにしたらいいだろうということで、現実に使われているのはこれぐらいの量なんです。それでもちゃんと保存料としては有効性があるんです。
 実際にこれを東京都のホームページで見ますと、例えば問題になっているソルビン酸なんていうのは、ADIに対して1日1.08%ぐらいしか普通の人は取っていないんです。ということは、これは何を意味しているかと言いますと、これぐらいの量を取った、もしもコンビニのおにぎりの中に入っている1グラムか2グラムの例えば昆布の中のソルビン酸で死のうと思ったら、何トンというようなおにぎりを食べないと死ねないということであります。本当によくよく考えていただきたい。
 ところが、それをちょっと加えておくだけで、物が腐らなくなってくる。それをやっぱり安全のために止めるべきかということをよく考えていただきたい。食品添加物というのは、無意味に添加されているわけじゃないんです。例えば食品を製造して放置したらどうなりますか。腐ってしまいます。どうしてですか。微生物が発生するからです。微生物の発生を抑制できませんか。保存料を加えればできます。でも、保存料の添加によって何か健康に障害が起きる可能性と、保存料を止めた時の食中毒の可能性はどっちが高いですか。それはもう問題なしに食中毒の可能性のほうが及びもつかないぐらい高いです。
 微生物は、ある時間からは「対数増殖期」と言って、急激に増殖します。「そう言われても、何かやっぱり化学物質ですから恐いですよね」と言う。ところが、よく考えていただきたいのですが、ソルビン酸というのは、ナナカマドという植物から取った非常に簡単な化合物なんです。保存料の中にあります、例えば安息香酸なんていうのは、よく保存料で使われるんですが、これは何かと言いますか、もともと何で分かったかと言うと、例えば作った寿司を熊笹に包んでおくと長持ちをする。なぜかと言うと、あそこの中に安息香酸が入っているからです。そうしたら、安息香酸の入っていないような新しい食品を作った時に、ちょっと入れておいたら、長持ちする。そうした人間の知恵をムチャクチャなことだろうかということをよく考えていただきたい。
 「それでも私はやっぱり保存料が恐い」とおっしゃる。しかし、その人たちには「冗談を言っちゃいけない」と申し上げます。サルモネラ菌とかこういった菌の食中毒を防ぐために保存料というのはできてきたんです。それらの使い過ぎによる弊害だとか、公害だとか、そういうところから食品添加物の排斥運動というのが起こったんです。これは一つはやっぱりある非常に大きな団体が全国展開してやってきた運動というのが大きな源でもあるんですが、そこの団体が最近は非常に反省をしています。
 だけど、保存料を添加しなくても、実際に食中毒は発生していないじゃないですかと。確かに医術的な方法でかなり発生の抑制はできますが、これには限度があります。無添加により食中毒の発生の確率は確実に上昇しております。限りなく安全な保存料まで廃棄して、昔に戻すということは、やっぱり愚かなことじゃないかなと思います。
 食品添加物というのは無意味に添加されていません。要するに保存料を添加しないと、消費期限・賞味期限、これはまた後で『赤福』の話をさせていただこうと思っていますが、消費期限・賞味期限が短くなります。保存料は添加されていないと、消費期限とか賞味期限が短くなってしまいます。
 短くなることによって、現実的に発生する大きな問題があります。実は僕は今千葉におりますけれども、2年半前まで愛知県の豊明市にあります藤田保健衛生大学に33年間、アルバイトも入れると38年間勤務しております。それで、その関係からよく名古屋市に引っ張り出されまして、名古屋市のいろんな委員をやったんですが、その中の一つとして生ごみの資源化検討会、これは一昨年開催されました愛知万博がエコを大きく扱っていたものですから、その関連でこの資源化検討会というのがありまして、去年の3月に解散したんですが、去年の3月までこれをやっておりました。
 その時に非常に大きな問題になったのは何かと言うと、生ごみというのは、要するにどこを抑えなくちゃいけないか、これ、見ていただくと分かりますように、日本の食品廃棄物の量はこうなんです。事業系だとか産業廃棄物よりも、家庭から出てくる生ごみというのが一番多いんです。約60%なんです。で、ここの中で一つ大きな問題になったのが消費期限・賞味期限なんです。中には、勿論僕もそうなんですが、消費期限・賞味期限が切れても、一応自分で確認して、大丈夫だと思ったら次々と食べています。それゆえに健康なのかも知れませんが、健康を保っています。
 問題はやっぱ・闖チ費期限・賞味期限が来るとそれで捨てられる物が随分増えてくる。今のコンビニなんかも、無添加にすることによって、やっぱり消費期限・賞味期限が短くなります。ですけれど、お客さんの安全のためにはこれはもうやむを得ないということで、全部廃棄しているわけです。
 愛知万博の時にも、いくつかのパビリオンは、実はセブンイレブンの回収した消費期限切れの弁当でメタン発酵させて燃料電池で電気を供給していました。そういう形で非常にこの時に問題になりましたのが、消費期限・賞味期限によるごみの廃棄をどうするか。市が率先して、消費期限・賞味期限が切れても安全ですから食べましょうと、行政のほうから言うこともできませんし、ここらへんでもうどうしようかという話にしかならなかったんですが、現実にこの問題は非常に大きいんです。
 もう一つ問題になりますのは自給率です、平成17 年は40%だったんですが、去年は39%、穀物全体では28%、主要自給率25%という、日本はこういう国であるわけです。そして、ちょっと見ていただきたいのですが、平成19年5月14日、これはたまたま取った時が世界の人口が65億9,000万、昨日(11月9日)もう一回やってみましたら、66億 3,000万に、もう要するにものすごい勢いで世界の人口は増えているんです。増え方をみますと、こういう言われ方をしているんです。この数年、非常に伸びが悪いとしても、2050年には70億、多く見積もる人は100億を超えると言っています。そして、中間で見ている人は90億ぐらいになるというふうに言っています。これぐらい人口が増えて、そして現実に何が起こっているかと言うと、世界中で3人のうち1人は飢餓、要する腹が減っている。そして、3人に 1人が今日食べるのがやっとで、3人に1人が食べても太らない。これが日本と言うか、いわゆる先進国と言われている部分ですが、去年の実績では、150万人が餓死したと言われています。ということは、約5,000人の人が毎日飢えて死んでいく。こういう現実があるわけです。
 ですから、ちょっとこれは僕の考えたある会話でありますが、決して現実にあった会話ではありませんが、食の安全を考える立派な日本人に、「保存料を加えないために食を捨てることになっても、安全のためには仕方がないですね」と。こういうふうに言っているのが、今、食の安全を考えている日本人の姿であります。でも、そこに難民の子どもたちが「死にそうです。何でもいいから食べ物をください。少しぐらい保存料が入っていてもかまいませんから食べさせてください」と。でも、食の安全を考える立派な日本人は、「私たちの安全のためです。その要求には答えられません」と。まともな科学者、僕だと思ってください。「保存料に問題ないですよ」と。でも、この人たちは何て言うかと言えば「私たちは、科学者には絶対騙されません」と。こうして日本では大量の食料が今も捨てられています。
 食品添加物は、本当に無意味に添加されているのではなくて、保存料を添加することによって、消費期限・賞味期限が長くなります。人類がやっと発見したこんな物質を無意味なバッシングで廃棄しても良いか。むしろ僕は、安全な保存料をさらに開発して、世界の食料事情を安定化させることを考えるべきじゃないだろうかというふうに考えています。
 保存料を添加して食料を捨てるというようなことを自給率39%の国民が考えて実行してもいいことか、こういうことをちょっと考えていただきたい。本当の食育というのは、世界の食料事情を考えることのできる人間を育てることから始まるというふうに思います。
 もう一つ話をしたいんですが、食品添加物の意見としまして、発色剤の亜硝酸ナトリウムというものがあります。これは一般人が気になる問題で、発ガン性を含めた安全性があります。ハムなどの発色剤として使用されます亜硝酸ナトリウムが発ガンの可能性がある。これは本当であります。しかし、ここでも量をちょっと考えていただきたいのですが、野菜は1キログラム当たり、グラム単位1,000ミリグラム以上硝酸が入っている物がたくさんあります。その硝酸のかなりが体の中で亜硝酸に変化します。ところが、野菜摂取量の多い人ほどガンになりにくいという、非常に膨大なデータがあります。
 亜硝酸の毒性量のナンセンスを申し上げますが、1日350グラムぐらいの野菜を食べると、500~150ミリグラムぐらい、平均250ミリグラムぐらいの硝酸を食べます。この硝酸は体内で100ミリグラム近く亜硝酸に変化する可能性があります。
 ところが、使用限界まで亜硝酸が添加してあるウィンナーソーセージを3個食べると、約50グラム食べます。0.5ミリグラムぐらいの亜硝酸を食べることになります。だけど、我々は野菜から250ミリグラムぐらいもともと取っているわけです。
 もう一つ申し上げたいのは、実はそのソーセージというのは非常においしそうな色で、ボツリヌス菌中毒を防ぐということがあります。この問題なんですが、これはヨーロッパではもう1000 年を超えるハムの歴史を持っております。このハムを作る時に食塩を使います。この食塩で北ドイツのある地方の岩塩を使ったソーセージは、色がきれいで、そしてボツリヌスの中毒が出ない。どうしてだろうか調べて行ったら、亜硝酸が出てきたんです。それが、亜硝酸がこのハムの発色剤として使われている大きな原因なんです。ボツリヌスの中毒というのは、嫌気性菌でありますので、滅多に起こらないんですが、起こった時にはよく死者が出る、すごく危険な菌なんです。古い方と言っては申し訳ないんですが、今から17、8年前に熊本のカラシレンコンで十数名の方が亡くなったことがありましたが、あれはボツリヌスです。で、滅多に起こらないんですが、起こった時には大変な事件になるんです。ですから、業者の人はそういうことをよく知っている。知っているから、どういうことが起こっているかということをちょっと後でお話しますが、ボツリヌス中毒を防ぐもの、そんなものを止めるというふうに意味が変わってきたんです。
 例えば量を考えない毒性論というのはナンセンスであり、海水には20マイクログラム/リットルというレベルでヒ素が入っています。ヒ素というのは中毒を起こします。だけど、海で泳いだり、海の魚を食べたりしてヒ素中毒になった人はいないんです。漁師さんでヒ素中毒になった人もいないんです。どうしてか、量が少なすぎるからなんです。
 ところが、もう一回見ていただきたいのですが、通常、例えば数十ミリグラムしか使用しないビタミンCを、酸化防止剤ビタミンCを10 グラム以上取ると腎結石を起こす可能性があると。科学的にはこれはあり得ないことです。ADIの2%ぐらいしか摂取しないソルビン酸を成長抑制、肝臓などに影響があると。これも科学的にあり得ない。化学反応というのは分子と分子の出会いで起こるんです。要するに化学反応というのは絶対にその分子と分子が出会わなかったら起こらないんです。
 ある物質が存在するということは、そのままその物質の作用が発現することにならないんです。先ほども、例えば海の水にしても、ヒ素が入っていても、ヒ素の入った水に触っても、飲んでも、ヒ素中毒にならない。なぜか。これは実はヒ素の濃度が低すぎるからです。ところが、そういうのを「生物濃縮」と言いまして、そういうものの中に一部生物濃縮と言いまして、この三重県産の名物には申し訳ないんですが、いわゆるヒジキにはヒ素が随分蓄積するんです。ヒジキの中のヒ素の量というのは結構多いんです。だけど、誰も騒ぎ立てない。なぜかと言えば、ずっと食べていて何も起こらないからです。そこらへんをよく考える必要があると思います。
 この出会いというのをうまく言っているのが、この坂本冬美さんの「いつまで待っても来ぬ人と死んだ人とは同じこと」、要するにどこかにいるのは違いないんだけど、会えない人というのは死んだ人、要するにいない人と一緒だと。これは非常に名言だと思います。
 で、科学の世界で存在するのかしないのかのみを問題にして、量の有する意味の分からない人は、経済の世界で言えばお金のないのが分からない人と同じなんです。100円か100ドルの区別がつかない人は経済を論ずる資格はない。これは絶対ないです。皆さんも、100円か100ドルか分からない人に株の投資の話をお願いするか、よく考えていただきたい。
 科学の世界で量を無視した議論をする人というのは、これは科学について論ずる資格がない。科学というのは、要するに言ってみればフィジカルズの世界と言われる。要するにすべてが数量化した中で物を論ずるんです。そこの中に数量化された物の中で物を論じているところに、ある現象、あるかないかだけで論じたら、これはもう科学ではないんです。
 もう一回ちょっと見直していただきたい。要するにこういう致死量と無作用量の区別をしていない人が、この食品添加物が危険だと騒いでいる、この現実をよく考えていただきたい。無作用量と致死量の区別もなしにある添加物があるかないかだけで危険だということを騒いでいる愚かしさ、これは1円の持つ力と1億円の持つ力を区別できない人に経済学の指導を受けているのと同じであります。でも、実際これがマスコミをあげて騒いでいる実態だというふうに僕は感じています。
 追い詰められると、こんな業者も出てくるんです。例えばこれ、「うちのハムは無添加で、白菜エキスが添加してあります」と。何かすごく健康にいいのかしらと思うんですが、さて、何だったろうかとちょっと見て行きたい。これは本当の話です。僕が今いる千葉県で起こった問題なんですが、あるハムを作っている人が、白菜エキスを添加する、これについてちゃんと業者のほうも、白菜エキスが健康のためにではなくて、硝酸を加えない、硝酸が入っていないよということを言うために加えるんだよというのをご自分もよく分かっているわけです。ですから、やっぱり厚生労働省のほうに一回伺いを立てて欲しいということで、千葉の健康福祉部のほうへ言ってきたんです。
 そこで返事が来ておりますが、「発色剤の用途名の併記が必要と返してよろしいか」、これは千葉県のほうが出した問い合わせです。厚生労働省の回答は、結局、県のとおりで差し支えないと。要するに業者としては「硝酸を加えた」と書くと、添加物を使った、何か食品添加物の恐いものを加えたというふうになりますが、だけど、「白菜エキスを加えた」と言ったら良いわけだと言うんですが、白菜エキスの中にはものすごくたくさん硝酸が入っているんです。加える目的は何だったかと言うと、「硝酸を加えた」と書かないために白菜エキスを添加した。結局、結論はどうなっているかと言うと、「白菜エキス(発色剤)」として記載すれば販売してもよろしいという許可を得たんです。でも、やっぱりこれでも結構消費者は騙せるだろうと思います。白菜エキスに何で「発色剤」と書いてあるんだろうなと。でも、こっちは亜硝酸が入っていなくて白菜エキスだから、こっちのほうが安全なのかなというふうに感じる可能性は十分あるかなと思います。
 もう一つ、消費者に追い込まれた業者は今何をやっているか。例えば「保存料は使用していません」と書いてあるコンビニのおにぎりなんかは、ご覧になられたらほとんど書いてあります。はっきりと「保存料は使用していません」と。今、無添加というのは、あるコンビニが大々的に始めたために、それに追随しようとしていろんな業者が動いております。
 ちょっと見ていただきたいのですが、「保存料は入っていません」と書いてあるんですが、必ずそのオニギリに「pH調整剤」が書いてあります。pH調整剤でよく使われているのは酢酸ナトリウムです。保存料はソルビン酸カリウムなんです。そうすると、実際に均一調整剤として酢酸を使おうとしますと、こっちのほうがソルビン酸よりたくさん要るんですが、このどちらも毒性を問題にしてもほとんど意味がないのですが、単純な比較だけで見たら、実はこちらのほうが毒性は強いんです。でも、皆さんが「保存料は嫌」と、そういうことを言えば、こうせざるを得ないんです。
 業者も、いくら何でもまったく無添加にして、そしてどんどん腐らせて、物を捨てるという、これは経済的に見ても悪いことですし、やっぱり人間の倫理という考え方からしても、やっぱりおかしなことではないかと思います。
 ということで、あとまだいろいろ続いておりますけれど、時間もオーバーしておりますので、これで終わらせていただきます。どうも失礼いたしました。

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