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平成24年03月09日

平成21年度食の安全・安心フォーラム基調講演概要

演題:「安全な食品の選び方・食べ方」

講師:食生活ジャーナリスト 佐藤 達夫さん

改めまして、今ご紹介をいただきました佐藤達夫と申します。今日はよろしくお願いいたします。

 

【日本の食品は「安全」である】

今日のテーマはご覧のように「安全な食品の選び方・食べ方」となっておりますけれども、実はこの「安全な食品の選び方・食べ方」というのは「安全な」で切れます。「食品の選び方・食べ方」に安全な方法と安全じゃない方法があるというお話を今日はしたいと思います。

これが安全な食品で、これが安全な食品じゃないというふうに私は考えていません。賞味期限の違反問題や残留農薬の違反事件などがありますので、世の中には安全じゃない食品がたくさん出回っているんじゃないかと思っている方がいらっしゃると思うんですが、私は基本的には日本で安全じゃない食品が売られているとは考えていません。

こう言うと、多くの方が「いや、そんなことはない。心配だ。私たちの身の回りには安全じゃない食品だらけだ」というふうによくおっしゃいます。私の母も、会うたびに安心して食べられる物が何もない、老後の健康が心配だ、と言うんですね。

その背景には、消費者の多くが健康を心配しているということと、それからもう一つは、私たち日本人が長生きになったということ、この二つがあるようです。

今、日本人は世界で一番の長寿ですよね。女性の平均寿命が86歳、男性も79歳を超えました。女性はずっと世界1位で、男性も1位グループです。

「日本人の女性の平均寿命が今年86歳になりました」と発表があると、ここにいる女性の皆さんが平均で86歳まで生きるということを発表されたのかなと思っている方もいらっしゃるかも分かりませんが、それは勘違いなんですね。

皆さんよく「平均寿命、平均寿命」と言います。私も最初使いましたが、厚生労働省が毎年発表しているのは、実は「平均余命」なんですね。ある年齢の人が平均で何年生きられるかというのを出したのが平均余命。

じゃ、「平均寿命」とは何なのかと言うと、0歳児の平均余命のことを「平均寿命」と特別に言っているんです。ですから、今年生まれた女の赤ちゃんが平均で86歳まで生きますよという意味なんですね。

じゃあ、今年生まれた赤ちゃんのよりも、自分が何歳まで生きるのかを知りたくなりますよね。たとえば60歳の平均余命は、女性では28年、男性で23年なんです。つまり、60歳の人の平均寿命と言うとおかしいんですが、60歳の人の平均寿命は、60プラス28で88なんです。今60歳の人は、女性で88歳、男性でも60歳を過ぎた人は83歳まで生きるということになります。

平均寿命を大きく左右する出来事は何だと思いますか。平均寿命というのは、さっき言ったように0歳児の平均余命ですよね。そうすると、一番大きく作用するのは赤ちゃんの死亡率なんです。それから二つ目は、若者が大量に死ぬと平均寿命が短い、つまり戦争です。

でも、日本やアメリカやヨーロッパのように、もう戦争がほとんどない、それから赤ちゃんがほとんど死なない、そういう国では、寿命を左右するのは医学、それからもう一つが食生活ということになります。

医学の影響はとても大きいと思います。アメリカの医学と日本の医学はどっちが進んでいると思いますか。私は、同じか、アメリカがちょっと上だと思います。でも、医学が平均寿命を大きく左右するとすると、アメリカのほうが平均寿命が長い、あるいはほとんど同じぐらいのはずですよね。でも、アメリカは平均寿命で行くと多分25位とか26位で、結構低いんです。医学がこんなに発達しているのに、アメリカはどうして低いんだろうか。そこで出てくるのが食習慣ですね。日本人の平均寿命が長いのは食習慣のせいだろうというふうにアメリカ人は考えています。それでアメリカに日本食の大ブームが起こるんです。

こんなに日本人が長生きなのは、日本人の食べている物がすごくいいからです。その中には安全性も入っています。日本人はこの条件の中でとても長生きをしている。私たちが食べている物はとても安全だと考えていいのです。

 

【賞味期限と消費期限】

最初に、賞味期限と消費期限についてお話をしたいと思います。

基本になるのは「食品というのは時間がたてばどんな物でも必ず腐る」ということです。逆に言うと、食品を腐らせない方法はたった一つです。腐る前に食べればいいんです。

消費期限と賞味期限の差は分かりますよね。「味」の方の字が付いた賞味期限、それから「消費」者の消費期限、二つの期限表示があります。消費期限というのは、これは足の速い物、腐りやすいものに付いている期限ですから、これを過ぎたら安全に食べられるという保証はなくなりますという期限です。安全のための期限です。賞味期限は、「味」という字が付いていることで分かると思うんですが、腐るか腐らないかではなくて、おいしく食べられるかどうかを保証する期限です。

この二つなんですが、これを決めるのは誰だと思いますか。これは生産した人、メーカーが決めています。もちろん、メーカーも適当に決めているわけではなくて、きちんと分析をして、消費期限であれば、ここまでなら安全に食べられるという期限を出します。それから賞味期限であれば、やはり科学的なデータを基にして調べて、ここまでであれば品質の保証ができる、という期限を自分たちで決めるんです。

例えば賞味期限を例にとってお話すると、11月18日に作って、いろんな試験をした結果や今までの経験で12月31日まではおいしく食べられると分かったとしましょう。そうしたら、賞味期限を「12月31日」と書けばいいようなものですよね。でも、もしそのギリギリの「賞味期限12月31日」と書くと、食べ物だから12月30日ぐらいでちょっと味が変わっているものが出ちゃう可能性がゼロとは言えない。そういうことが起こらないように、本当は12月31日まで大丈夫であっても、その7割とか8割の12月15日とか手前を書くんです。ですから、賞味期限の前後のものは全部全然大丈夫です。

お年寄りとか小さな赤ちゃんとか病人、これは絶対にダメですよ。でも、大の大人は多少期限が切れたぐらいでは大丈夫です。

私はそれよりも、期限が切れたからと言って、食べ物をいたずらに捨てていいのかということのほうが、問題だなと思います。例えば賞味期限、これは先ほど言ったようにおいしく食べられるかどうかの期限ですから、過ぎたって全然大丈夫なんですけれども、最近の消費者の中には賞味期限が切れたら全部捨てるという人がいます。いろんな事件が起きると、気持ちは分からなくもないですが、そんなことはすべきではないと私は思います。

この間、30歳代ぐらいの若いお母さんから、まったくそのとおりだと思ったと言われました。実は、私は今までは期限の切れた物は捨てていましたと。でも、食べ物というのは、口に入れれば食品だけれど、捨てた瞬間から同じ物がごみになる。ですから、食品を確かめもしないで、期限が切れた、あるいは近づいたぐらいで捨ててはいけないというふうに、その若いお母さんはおっしゃっていました。腐る前に食べれば、それは食品ですから、いたずらに数字だけを見て物事を判断して捨ててしまうようなことをしては、いけないんだろうと思います。

 

【食品添加物について】

消費者の人が食品に付いている表示などで一番よく見るのは期限表示で、2番目に見る表示が食品添加物だそうです。

私は最初に日本で売られている食品は世界一安全だというふうに言いましたが、それは生鮮食品も加工食品も含んでいます。加工食品には添加物が必ずと言っていいほど使われています。でも、私は、食品添加物も日本の法律を守って使ってあった場合は、健康を害さないという考えをしています。

食品添加物に関する情報と言えば、2年ぐらい前にある食品ジャーナリストと称する人が書いた本で大ベストセラーがありました。この著者は添加物を売っている商社に勤めていました。そこで、その食品添加物がメーカーでどんなにずさんな使われ方をしているか、自分の目で見てきた。食品の裏側の隅々まで知っているという触れ込みで、本を出しました。

私も、その本が出た時に、食品の裏側を知り尽くした人が添加物のずさんな使い方を初めて暴露するという本だということで、じっくり読んでみました。そして、「非科学的な記述が多いので読むに値しない」という印象を抱きました。

その本の中で、例えば明太子の作り方はこう書いてあります。「次々と袋を開けて、白い粉をザーッと混ぜ込み、タラコを浸けるための調味液料を作ります」

「次々と袋を開けて」、ここはちょっと嫌ですよね。でも、1袋じゃ足りなかったら、次々と袋を開けざるを得ません。次の「ザーッと混ぜ込み」、これも考えてみると、ザーッと混ぜ込むと危険でしょうか。逆にそうっと丁寧に混ぜ込んだら危険じゃなくなるんでしょうか。そんなことはない。

私たちが知りたいのは、元のタラコが何キログラムで、そこに何グラムの食品添加物を加えたので、食品添加物の濃さが何%になって、この何%の食品添加物はそのタラコを食べた人の健康を害するのか、害さないのかを知りたい。でも、そういうことはここには一切書いてありません。

でも、「次々と袋を開け、白い粉をザーッと混ぜ込み」という表現でもって、明太子をよほど恐い物に表現しています。これはやっぱり私は科学的じゃない、フェアじゃない書き方だと思います。

ついでに、もう一つ紹介すると、ミートボールの作り方というのがあります。

「あるメーカーが端肉を大量に仕入れてきました」、端肉というのは、大きなところからステーキ用のお肉を取った余りのところとか、あるいは骨のところに付いているお肉で削ぎ取らないと使えないようなお肉、これを端肉と言います。彼はこう書いています。「端肉に廃鶏」、廃鶏というのは、卵用の鶏で、卵を産まなくなった鶏です。「端肉に廃鶏、大豆蛋白、化学調味料などの添加物を使ってミートボールを作って売った」とあります。

この人は、この本の数ページ後に同じ物をこう書いてあります。「ドロドロのクズ肉に添加物をジャブジャブ投入して作ったミートボール」、読者は最初の「端肉に廃鶏、大豆蛋白、化学調味料などを加えて作ったミートボール」という記述はすっかり忘れてしまい、「ドロドロのクズ肉に添加物をジャブジャブ投入して作ったミートボール」のほうだけを覚えている。端肉とクズ肉は違います。私は、端肉は立派な食べ物だと思います。私は端肉をクズ肉と言い換えて、食品添加物の悪さをこんなに大げさに言う人は信用しない。

食品添加物のこういう大げさな情報に惑わされて食品添加物を毛嫌いしていると、そういう人が陥る誤りというのがあります。例えば食品添加物の法律の基本はこうです。「食品添加物は、加工食品に使った場合に使った物を書きなさい」と。もし使っていない物を書くと、これは使っていない、これも使っていないと書かなきゃいけないので、とても書き切れない。

でも、世の中には使っていない物を書いてあるケースもあります。代表が保存料ですね。「保存料不使用」というのは随分見ると思います。使っていなければ書かなければいい。でも、保存料だけは、使っていないと「保存料不使用」と書いてある。

「保存料を使っていませんので、開封後はなるべく早くお召し上がりください」と、ここまで書いてある物はいいんです。それは、保存料を使っていないので腐りやすいですから、封を開けたらなるべく早く食べてくださいと、消費者に対する正しい情報提供です。でも、それが書いてなくて、ただ大きい字で真っ赤に「保存料不使用」と書いてある物、これは信用できない。

私は買い物をする時に裏の表示は見ません。なぜかと言うと、全部安全だと思っているからです。でも、時々見るのは、不使用表示を見た時です。法律で決められていないのに、このメーカーは何でわざわざ「不使用」と書いてあるんだろうと。それが不思議でならないので、その場合だけ裏を見ます。そうすると、保存料は使ってありません。でも、ほとんどの場合、食品の保存性を高めるための他の食品添加物、例えば酸化防止剤とかpH調整剤とか、そういうものが使ってあります。

私は、保存料と酸化防止剤とpH調整剤を比べてどちらが安全でどちらが安全じゃないかという話をしているんじゃないですよ。法律を守っていれば全部安全だと思います。でも、保存性を高めるための違う添加物を使ってあるにもかかわらず、「保存料」という名前の添加物を使っていないだけで、表に大きく「保存料不使用」と書くのはフェアじゃない。私は、そういう食品は買いません。それは安全じゃないから買わないんじゃないです。フェアじゃないから。もしかしたら、こういうずるいことをする会社は、私の知らないところで違うずるいことをしているかも知れない。なので、保存料を使っていなくても、「保存料不使用」と書いていない、普通の物を買います。

もう一つあるのが、着色料ですね。これも「無着色」あるいは「着色料不使用」と書いてある物を時々見かけます。ハムとかソーセージ、お魚類、動物性蛋白質などです。豚肉などを切って冷蔵庫に入れておくと茶色くなりますよね。あれは豚肉中の血液が酸化して茶色くなるんですが、そういうのは当たり前のことなんです。

加工食品で作ってから長い時間経っているのにあんなにピンク色なのはなぜなのか。それはピンク色に着色してあるからです。でも、時々、無着色というのがあります。無着色なのに真っ茶色になっていなくて、やっぱり同じようにきれいなピンク色をしている。私はそれの場合も裏を見ます。着色料は使っていないんですけれども、発色剤を使っているんです。発色剤というのは無色透明ですから、着色料ではありません。でも、肉の色を保存する、きれいな色を出すために使う添加物です。私はそういう物は買わない。

くどいようですけれども、発色剤と着色料を比べて、どちらが安全で、どちらが安全じゃないかという話はしていません。法律を守った範囲内で使ってあれば、両方とも安全だと私は思っています。でも、発色剤を使ってあるのに、着色料を使っていないだけで「無着色」と書くのはフェアじゃない。やっぱりそのメーカーなりその商品は、もしかしたら私の知らないところで他にずるい、フェアじゃないことをしているかも知れないので、それは買わない。普通の物を買います。

食品添加物の変な情報に惑わされて中途半端な知識を持っていると、そういうところに目が行かなくなって、誤った食品の選択の仕方をするのではないかというふうに思います。

 

【農薬について】

それから、食品添加物と同様に、消費者の人にもう一つ嫌われるものが農薬です。農薬というのは、日本の農薬取締法を守って使えば、私は、それを使って作った野菜は安全だと思います。

ただ、農薬は、やっぱり嫌われていますね。昔は農薬を使っていなかったとか、自然に作れば農薬は要らないとか言う方がいらっしゃいますが、そうでしょうか。そもそも野菜というのは、植物ですよね。植物は逃げられませんから、歩いてくる動物がくれば食べられ放題です。ですから植物は、動物に食べられない工夫がもともとしてあります。例えばトゲが生えていて手が出しにくいとか、高いところになっているとか、あるいは動物にとって毒を持っていて、それで食べられないようにしている。

代表的なものはジャガイモです。ジャガイモはすごい毒を持っていました。それを人間が改良に改良を重ねて、食べられるようにした。ジャガイモだけじゃありません。いろんな植物を改良に改良を重ねて、いろんな工夫をして毒を少なくして、私たちは食べているんです。ですから、野菜というのは人間が手を加えて毒をなくした食物、食品です。

毒をなくしたということは、人間や猿にも食べやすくなりましたが、これはおそらく他の昆虫にとっても同じでしょう。ですから、人間が改良を重ねた野菜というのは、害虫には弱いです。農薬を使わないでまともにできるわけがない。

それから、田んぼや畑というのは、これは普通の土地ではありません。人間が畑用に作り出した特別の土地です。ただ地面があるからと言ってそこにお米を植えたり、ただ地面があるからと言ってそこに麦を植えても立派なものはなりません。やっぱり麦は麦畑、お米は田んぼという、人間が特別に作り出した環境の中に植えるからきちんとなる。これは特殊な土地ですから、やはり化学肥料がないとまともなものは育たない。農業というのも特別な土地に、改良に改良を重ねた特別な植物を育てているんです。自然のものではありません。

自分たちの家庭菜園で自分たちが食べるだけ、あるいは親戚の人にあげるだけであれば、これは無農薬で有機で作ったよと言って孫にあげれば、娘さんと孫は喜ぶかも知れない。

でも、素人の家庭菜園では、このトマト、もうちょっとで収穫だなと思う頃に虫に食べられている。そのため、虫が付きそうになると、慌てて農薬を買ってきて撒くんですね。

これは安全でしょうか。私は、素人が慌てて使った農薬よりも、プロのお百姓さんが、これはいつこうやって何回撒けば安全ですと、実験で確かめられている方法どおりに撒いて使った農薬のほうが安全だと思います。

それからもう一つ、農薬に関連して忘れてはいけないことがあります。それは、日本は今、食糧自給率40%だということですね。これはお米も入れて全部そうなんですけど、農薬や化学肥料を使って、さんざん工夫をして作って自給率40%です。もし、農薬や化学肥料を使わなかったら、私は自給率はもっと格段に落ちると思います。あるいは、それを落ちないようにしようとすると、格段に価格が高くなると思います。

食べ物というのは、お金持ちだけじゃなくて普通の生活をしている人にあまねく行き渡らないといけない。適正な価格で、すべての人が飢え死にをしないように、世の中に行き渡るというのが最低限の食べ物の条件だと思います。必要以上に安全な作り方をして、ごく一部の人が高い値段でしか買えないような物を作るほうがいいとは、私には思えない。

私は、適正な方法で適正な量の農薬も化学肥料も使うべきだと思います。日本の農薬取締法は、この間、ネガティブリストからポジティブリストに変わって、世界一厳しいものになっています。この厳しい農薬取締法を守って作った物は安全です。

ただ、何度も言うようですけれども、添加物や農薬が体にいいからどんどん食べましょうとは言っていません。でも、食べる量とか安全性とかを考えた場合には、法律を守って適正に使うべきだというふうに言っています。

 

【「ガン予防の7ヵ条」とは】

それでも、最近、ガンも増えているし、それは食品添加物や農薬のせいなんじゃないかと思っている方がいらっしゃるかも知れない。

多分皆さんが農薬や食品添加物と病気との関係で一番気にするのは発ガン性だろうと思います。発ガン性に関しては、私ももちろん気になります。ここでちょっと皆さん配付資料の「ガン予防の7ヵ条」というのをご覧ください。これは国立ガンセンターの、どうすればガンを予防できるかということをずっと研究している先生が、自分でいろんな情報を調べて、日本人のために、あるものと発ガン性との関係をつぶさに調べた。噂で言っているものも信用せずに、関係があるかないかを科学的に調べて、これは発ガン性が明らかにあるというものだけを出しています。

1番、野菜と果物を毎日合計400グラム以上食べる。合計で400グラム以上食べている人は、食べていない人に比べてガンになりにくいと、明らかに証拠があるそうです。

2番目、塩分を最小限に抑える。できれば9グラム以下。厚生労働省は10グラム以下と言っていますが、ガンとの関係では先生は9グラム以下としています。

3番目、定期的にウォーキングをする。定期的にウォーキングをする人とウォーキングをしない人を比べたら、定期的にウォーキングをする人のほうが明らかにガンになる率が低いという証拠があるそうです。

4番目、標準的な体重を確保する。これは下に「BMI」と書いてありますが、体重(㎏)を身長(m)で2回割ります。これがBMI。22が理想なんですけど、「21~27」と書いてあるんですね。結構太いです。

5番目、熱すぎる食べ物はできるだけ避ける。火傷するような熱い物を何度も何度も食べちゃいけませんよということで、熱い物好きぐらいの人は関係ないそうです。

6番目、お酒は日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本以内、どっちかですからね。

7番目、煙草は吸わない。

先生は1から6までを実行すれば、ガンの3分の1は予防できる可能性が高まると言っています。それと7番は、たった一つ実行するだけで、1から6までを実行したのとほぼ同じ、ガンの3分の1を予防する可能性が高まると、言っています。ですから、1から7までを実行するとガンの3分の2を予防する可能性が高まるわけです。

ここに書いてあることは、先生が研究を重ねて明らかにガンと関係があることだけを書いたんです。ですから、これを実行すべきです。でも、もう一つ言いたいのは、ここに書いていないことです。ここに書いていないことの中で、多くの人が心配していることが二つあって、それが食品添加物と農薬です。先生は食品添加物と農薬のことを知らないわけではありません。調べに調べたと思います。でも、農薬や食品添加物はガンとの関係が得られなかった。得られれば8番目に、なるべく無農薬の野菜を食べましょうとか、加工食品はなるべく食べないようにして、無添加の食品を食べましょうというふうに書くはずです。でも、書いていないということは、調べたんだけれど、証拠は見られなかったということです。

私は、添加物や農薬が体にいいからどんどん食べるとは言っていませんよ。でも、私たちが健康のためにしなければならない、あるいは健康のためにしようとすることというのは、世の中にいっぱいありますが、だからと言って全部実行するわけに行きません。その中から自分でいくつか選択して実行しなきゃいけない。であれば、ものには順序がありますから、科学的に明らかになっているもの、効果の高いもの、これを先に実行すべきです。

ですから、もし皆さんも本当にガンを予防したいと思うのであれば、最初に実行することはもう誰が見ても明らかですよね。7番です。7番が何かの事情でどうしても実行できない場合はしょうがないから1から6までをなるべく多く実行する。それを実行した上で、さらにやれることが何かないかなと思えば、農薬を避けたり添加物を避けたりするのもいいかも知れない。でも、その逆はダメです。煙草は吸うわ、お酒は大量に飲むわ、すごく太っている、あるいは逆にすごく痩せているわ、野菜は食べないわ、運動はしないわ、そういう生活をしていて、農薬や食品添加物だけ気をつけてもガン予防の効果は極めて低いと思います。

 

【遺伝子組換え食品について】

はじめに遺伝子の話をちょっとします。遺伝子というのは、私たちの体の細胞の中にあって、私たちの体にはだいたい60兆の細胞がある。でも、最初は細胞は卵子1個ですね。その卵子が精子と結び付くことによって細胞分裂を始めて2個になり、2個が4個、4個が8個、8個が16個、32個と増えていって、最後に60兆の細胞になる。でも、ただ分裂するだけでなく、途中から私たちの細胞は分化していきます。あるものは皮膚になり、脊髄になり、脳になりというふうに、見事に分化してこういう体になります。でも、最初は同じ1個ですから、いつ誰が命令するのか、不思議ですよね。それは、1個の細胞の核の中にその設計図が組み込まれているんです。その設計図というのが遺伝子。ですから、遺伝子は60兆の細胞の中に全部入っている。これは人間以外の動物も植物も同じです。ですから、動物も植物も細胞の中には全部遺伝子が入っています。

私たちが食べている物というのは、皆さん、「食品、食品」と言っていますけれども、元は生物の体です。先祖の猿の時代から、植物や動物の体を食べていますから、その食べてきた植物や動物の遺伝子が私たちの体の中に入り続けている。

でも、大原則があって、私たちは食品として食べた物の遺伝子の影響を受けない。これは遺伝子組換えの植物であっても、組換えの植物でなくても同じです。

今、遺伝子組換え植物はものすごく嫌われています。しかし、健康を害するか害しないかという1点で見れば、健康を害しないという研究のほうが圧倒的に多いです。でも、健康を害しないからと言って、遺伝子組み換えはこの世に存在していいか。これは別ですね。例えば環境を害するかも知れない。それから宗教的に、あるいは倫理的に遺伝子を人間が勝手に操作してもいいのか。これは別の問題です。議論の余地があると思います。

でも、遺伝子組換え作物を食べると健康を害するのかということについては、科学的に結論が私は出ていると思います。100年後、1000年後、大丈夫かと言われると、それは分からない。でも、基本的に今の科学では大丈夫だと、そういうふうな結論が出ていると、私は考えています。

例えばインドや中国では、いろんな遺伝子作物の研究をしています。今、インドが一番熱心にやっているのは米なんです。米というのは、実は主食の中で小麦よりも食べている人が多いんです。ですから、米の遺伝子組換え作物で、例えば収益がいいとか、台風に強くてたくさん取れるとか、おいしいとか、そういう研究を絶対しているはずです。私は、日本でもきちんと研究はしてもらいたいと思っています。

ただ、買う人は遺伝子組換え食品かどうか知りたいですね。選択ができる。表示はしてもらいたい。大豆を例に取ると、日本は、今、大豆をほぼ100万トン消費しているらしいです。そのうちの95%がアメリカやカナダなど外国から入ってきています。アメリカやカナダは今、遺伝子組換え大豆の作付け面積がほぼ8割に達しています。8割に達しているアメリカから大豆が大量に入っていますから、日本に遺伝子組換え大豆が入ってきていないわけがない。でも、私たちが納豆や豆腐やみそなどを見ると、「遺伝子組換え大豆ではない」と書いてありますよね。あれは嘘なんでしょうか。嘘ではありません。

じゃあどこに行っているのか。一つは植物油です。大豆油というのは、大豆から蛋白質を取り除いて、油だけを搾ったものです。遺伝子は細胞の中の蛋白質を作るんですね。だから油と遺伝子は関係がない。ですから、遺伝子組換え大豆を原料としても、表示をしなくてもいいという法律になりました。ですから書いていないだけであって、大豆油の多くは遺伝子組み換え大豆を原料としています。

それからもう一つ、醤油も原料としては大豆をとても多く使います。しかも、醤油は油と違って蛋白質のほうを使いますね。でも、醤油は作る過程で蛋白質は100%完全にアミノ酸まで分解されてしまう。醤油の中に蛋白質は入っていません。アミノ酸に分解されています。完全に分解されてしまうので、遺伝子とは関係ないということで、醤油も表示を免れました。醤油も遺伝子組換え大豆を使ってあっても「使った」という表示をしなくてもいいことになっています。

私は、さっき言ったように、遺伝子組換え大豆が健康を害するとは思っていないので、使った物は「使った」と書いて欲しい。それで消費者ももっと冷静に選んで欲しい。遺伝子って見ただけで何も言わずに買わない。日本は過激な反応をするので、表示をしていない物が世の中に出回るんだと思います。私はきちんと表示をして欲しいと思っています。同時に、消費者の人ももっと冷静に判断をして欲しいのです。

 

【「バランスよく適量」な食生活を】

最後に、時々、健康を目的願望だと考えている人がいて、もう健康のためなら何をしてもいい、というような人がいる。健康は目的じゃなく手段です。私たちは人生で何かやりたいことがあって、それをするためには健康が手に入らないとできないので、健康は人生の目的を達成するための一つの手段だと思うんです。ですから、健康だけを追求して、人生の目的を見失うようなことは、本末転倒だと思います。

最初に「安全な食品の選び方・食べ方」で、「安全な」で切って、「食品の食べ方・選び方」が安全だという方法があるんだと言いました。「安全な食品の」で切ると、食品を安全なものと安全じゃないものに分けてしまう。農薬を使ったものは安全じゃないとか、添加物を使ったものは安全じゃないとか、単純に分けてしまうと、私は食品の選択を間違うことになるだろうと思います。

自分の考えで、あるいは自分の知識、自分の得た情報だけで安全だと思われる物だけを神経質に選んで、それを大量に食べて太って病気になる人が山ほどいる。それから、安全であるという物を選びすぎて、偏食になる人が山ほどいる。私はそうじゃなくて、基本的に世の中にある物は全部安全だと考えています。それを食べたからと言って、すぐ病気になるような、あるいは長い間食べ続けたからと言ってそれが原因で病気になるような安全じゃない食品というのは、日本にはそうあるものじゃないです。すべての物が基本的には安全だと考えて、そしてそれをバランスよく選び適量に食べる。これが健康に人生を送るための一番大きなことだと思います。

健康のためには何をどれだけ食べればいいか、その答えは「バランスよく、適量に」、これを言うと皆さんは怒るんですね。そもそもどうやればバランスがいいのかと言われますが、「コマ型バランスガイド」って見たことないですか。こういうコマの形をしていて、ここに食品がいっぱい並んでいます。上のほうに野菜とかがあって、下のほうに塩とか砂糖がある。これを「コマ型バランスガイド」と言って、今、厚生労働省と文部科学省と農林水産省で進めています。このとおりに食べればバランスがいいんです。

子どもにはこれを覚えさせてくださいね。子どもはこれから長い人生、このコマ型バランスガイドを身に付けるか、身に付けないかでは大きな違いが出ると思います。基本的にバランスのいい食事を身に付けるということは、長い人生のすごい財産になります。

でも、そんなに子どものように長い人生ではない人はこれを覚えていると間に合いませんので、厚生労働省がこの「コマ型バランスガイド」を出す前に提唱していた、「1日30食品を摂ろう」ということを実践すればいいと思います。このほうがずっと簡単ですよね。

厚生労働省は「1日30食品」よりも「コマ型バランスガイド」のほうが健康になれるという証拠が高いので変えたと言っています。

私は、簡単にバランスを取るためには「1日30食品」でいいと思います。30数えていくと、どうしても野菜が増えるんです。お肉や魚で10とかは無理ですから。「1日30食品」というのは「野菜をたくさん食べましょう」ということにつながります。ですから、「コマ型バランスガイド」を覚えられない人は30を数えるだけでいいんです。完璧ではありませんが、数えないよりはずっといい。

それからもう一つ、適量ですね。自分の食べている量が適量かどうかというのを栄養計算する必要はありません。じゃあ何で知るか。体重計に聞いてください。毎日同じ状態で、1日1回体重計に乗ってみて、減らさなきゃいけない人が減っていなければ、あるいは増えてはいけない人が増えていれば、誰が何と言っても食べすぎ。

ですから、バランスよくというのは30食材、どれだけ食べればいいかというのは適量というのを体重計に聞く。この二つの方法で食べすぎ、あるいはバランスの崩れ、これを整える。これが大事です。健康のために安全な食品だと思うような物を自分の知識で選びに選んで、正しくない食生活をするようなことがあってはいけないと思います。

 

【質疑応答】

(会場1)

ガンの予防の7ヵ条のところで、硝酸塩濃度が高い物を食べると発ガン性があるということを聞いておりますが、それはどのようにお考えになられますか。

(佐藤)

硝酸塩の濃い物を食べると体の中のニトロソアミンという発ガン性のある物に変わって、それがガンの原因になるんじゃないかということで、例えば食品の保存料に使われている硝酸塩、亜硝酸塩、それは実験でこれとこれを合わせると発ガン性のある物質ができるという実験があるんですね。ただ、硝酸塩などは農薬を使う、使わないに関係なく、普通の野菜の中に実は食品添加物で使われている物の何倍も入っているんです。それを避けようとすると、野菜を避けないといけません。今まで野菜を食べてきて、それが原因でニトロソアミンができてガンになったという、明らかな証拠はないんです。

ですから、野菜の中に入っている同じ物質をたくさん摂っていて、食品添加物のわずかな物を避けるほうがいいという証拠はありません。体の中でそれができれば発ガン性のものになりますよというのは、実験段階ではそのとおりなんですけど、それを毎日の食生活の中に照らし合わせて考えた時に、だからその保存料を食べなければいいということにはならない。もしそれが本当ならば、野菜を避けなければいけなくなってしまう。じゃ、野菜を食べるのとその心配をして食べないのと、どちらが健康にいいかと言えば、野菜を食べるほうが明らかに健康にいい。で、そちらの量のほうが明らかに多いですから、このわずかなほうだけ避けても意味がないと思います。

(会場2)

明太子の製造の過程での安全性についてお聞きしたいのと、それからガンの予防のために1日に野菜・果物を400グラム摂るのは大変だと思うんです。これをもし補足するとしたら栄養剤、例えばビタミン剤、そういうものに依存する可能性が出てくるんじゃないかなと思うんですけど、そのことについてお教え願えたらと思います。

(佐藤)

もしかしたら誤解があったかも知れないですが、明太子を作っている会社が、先ほどこの本では大量に添加物を入れているという話をしましたが、実は、大量に入れているかのような表現方法が間違っているのであって、法律を守って安全だという範囲内でしか使っていません。ですから、明太子に入っている食品添加物が健康を害するということはないと考えていいです。

それから実は、「食品添加物」と称されているものの中で一番多く使われるのは化学調味料です。化学調味料が体に悪いかどうかというのは微妙なところで、化学調味料が悪いとすると、皆さん、毎日料理ができませんよね。

逆に言うと、ほぼ全部の家庭で毎日化学調味料を使っていますから、あるいは加工食品の中にはほぼ全部と言っていいほど入っていますので、それが健康を害するとしたら、日本人の健康状態はもっと悪くなっているはずです。こんなに長生きできるわけがない。

それから、野菜を摂らない場合にビタミン剤でというお話ですよね。厚生労働省は、健康のために野菜を350グラム以上食べましょうと言っていますね。でも、あれをよく見ると、野菜を350グラム食べれば健康になりますとは言っていないんです。これは全然違うことなんです。

それは何の違いかと言うと、基になる科学データが違います。例えばこちらの半分の方たちはこれから毎日野菜を350グラム以上食べ続けてください、こちらの半分の方たちは、野菜350グラム以下にしてください。あとは何をしてもかまいません。そういう条件を出して二つのグループに分けて、それで5年、10年、15年とずっとこの人たちが病気になるか、ならないかを追いかけていって、最終的に何年も経った後に、野菜を350グラム以上食べていた人が健康になって、野菜350グラム以下の人は生活習慣病の人が多くなった。そういう結果が得られれば、「野菜350グラム以上食べ続ければ健康になり、野菜350以下だと病気になる確率が高い」ということを、厚生労働省は堂々と言えるんです。でも、今そういう実験結果はないんです。

じゃあ、厚生労働省は健康のために野菜350グラム以上食べましょうと言っているのは、何を根拠にしているのか。これは国民栄養調査です。最近では「国民健康・栄養調査」と言っていますが、日本の何万人という人を毎年調査して、何を食べたか調べるんです。その調査で日本人が平均的に何を食べているかが分かるんですが、ある時にある栄養学者がこの国民栄養調査のデータを基に国民を野菜が200グラム以下、200~250、250~300、300~350、350~400、400以上、そういうグループに分けたんです。そうしたら、350グラムを境にそれより上の人は、その時、健康だったんです。理由は分からないけれども、厚生労働省はそのデータを基に、健康のために野菜350グラム以上を食べましょうということを言っている。

みなさんは今、野菜を1日350グラム以上食べていますか。食べてないですよね。平均で毎日野菜を350グラム以上食べるのは大変です。

それでちょっと想像して欲しいんですが、野菜350グラム以上食べた人はどういう人かなと。野菜を350グラム以上食べた人というのは、それだけの生活をしているんですね。例えば朝食抜き、あるいは朝はパンとコーヒーだけ、昼はざる蕎麦。夜は宴会とか接待が多い、そういうところで多いのはお肉や魚ですよね。それから外食の多い人、お惣菜を買ってきて家で食べる中食の多い人、中食も野菜が少ない。

それから若い女性で多いんですけど、野菜を気を付けて食べているけれども生野菜サラダばっかりとか。生野菜サラダで350グラムは食べられません。

そうすると、国民健康・栄養調査のときに野菜を350グラム以上食べている人はどういう人かと言うと、朝は抜いたりしない、パンとコーヒーで済ませたりしない、昼をざる蕎麦で済ますようなことはない、夜の宴会接待がない、それから生野菜サラダではなくて加熱して食べている、外食が少ない、中食もそれほど食べていないという人です。こういう人はよほど健康に気を付けている人です。

だから、その人は野菜350グラムがたまたま体に入っていたから健康なのではなくて、その人がもともと健康にすごく気を付けている人だから、病気になっていないんです。ですからその逆、例えば朝は抜いている、昼はざる蕎麦だった、夜は宴会だ、接待だ、それで外食が多い、中食が多い、こんな健康のことをあまり考えていない食生活をしている人が、例えば野菜350グラム入りのジュースをゴクゴクと飲んでも、健康になるわけがないです。

私は、野菜ジュースはとっても優れた加工食品だと思います。ですが、野菜350グラム入りのジュースを飲むことは、野菜350グラムを食べることの代わりになると思ったら大きな間違いです。先ほど言ったような三食をきちんと、野菜を加熱して食べるというふうな食習慣が健康に続きます。野菜350グラムの栄養がその人を健康にするのではありません。野菜350グラムを毎日食べるような食習慣がその人を健康にするのです。

先ほどのビタミン剤というのは、野菜ジュースのさらに進んだものです。野菜の栄養素をビタミンにしたもの、あるいは健康食品にしたもの、それを食べて健康になれるわけではありません。やっぱり野菜をなるべく食べるような食習慣です。食習慣が人を健康にする。

糖尿病や高血圧や高脂血症、これ、皆さんよくご存知ですけど、生活習慣病ですね。生活習慣病を予防したり治療したりする、特に予防するためには、生活習慣を直さないといけない。例えば食べすぎ、お酒を飲みすぎないようにするとか、野菜をたくさん食べるようにするとか、そういう生活習慣を改善しないとダメです。

ところが、生活習慣の改善というのは実はなかなか難しいので、生活習慣を改善しないで食べ物ばかりを変更する人が多い。お酒を飲みすぎたことが原因で太っていたり、健康を害していたりする人がいたら、お酒の中身を日本酒から焼酎に変えてもダメです。生活習慣ですから、お酒をたくさん飲みすぎるという生活習慣を変えなくてはいけない、そういうことでお答えにします。

(会場3)

遺伝子組換え作物は例えばアメリカやカナダでよく栽培されていますが、それは、遺伝子を組み換えることによって毒素を持たせ、病害虫が来ないようにしている、とそのように僕の中では理解しているんですが、それは誤った理解ですか。

(佐藤)

遺伝子組換え食品はいくつかありまして、代表的なものが大豆ですね。それからもう一つトウモロコシは、Btとうもろこしというもので、これは土の中にいる細菌なんですが、その細菌を食べると昆虫は死んでしまう。それの遺伝子をトウモロコシに組み込んだわけです。

それはどういうイメージかと言うと、昆虫が変態をします。その変態をするメカニズムの1ヶ所を遮断するんです。ですから、昆虫は育たない。人間は変態しませんから、人間には作用しない。ですから、単に毒が入っているから昆虫が死んで、昆虫が死ぬぐらいだから人間にも影響があるだろうというのは、正しくない理解だと思います。変態をする動物だけに影響する。それは他の動物でも実験をしてありますから。

(会場4)

シュウ酸を大量に摂取すると腎臓結石になると、EUのほうでは基準値が設定されているんですが、国内では設定されていない。自主的に取り組んでいる団体はあるそうですが、国は研究中と伺っておりますが、先生のご意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。

(佐藤)

そのとおり研究中だと思います。証拠がきちんと出ていないものを法律で禁止をしたり制限したりするのは大変なことですから、きちんと証拠が出た時に出てくると思います。

腎臓結石の証拠が加工食品の何かから、あるいは食品添加物から来たものだという証拠はきちんとしていないので、法律で制止はしない、ということだと思うんですね。

自主的に取り組んでいる団体は、もしかしたら、自分のところのものは特に安全だというアピールをしたいのかも知れないですね。

低農薬で例えばお米を作るというのは大変な労力が要る。低農薬だと出したい気持ちは分かるんですが、低農薬がいいということを消費者に訴えるためには、農薬が悪いという大前提がなければいけない。「低農薬がいい」ということを言えば言うほど、消費者は同時に「農薬は悪い」という情報を受け取るんです。そこのところを勘違いして、「低農薬」を強調しすぎるのは、私は生産者としてあまり賢いことではないと思います。言えば言うほど、農薬が使えなくなります。低農薬のほうが健康にいいという科学的な証拠はないんですね。そのことを安易に言わないほうがいいと、私は思います。

(会場5)

私は、冷凍食品の安全性がすごく不安なんですね。家で食材を加工して冷凍して置いておいたら、結構変色もしてきますし、使えなくなることもあるんですね。そのわりに冷凍食品は変わらないし、便利だということなんですが、いかがなんでしょうか。

(佐藤)

市販の冷凍食品の安全性は極めて高いと思います。冷凍することで細菌の増えるのを抑えていますから、他の物より保存料なんかは少ないです。少なくとも冷凍食品のほうが安全性が劣るということはないと思います。

プロが作った物は、作って瞬間に細菌が増えないように、細菌が少ないうちに冷凍しちゃいますので、これで少ないんです。ところが、私たちが家庭で作った物というのは、作った瞬間から細菌数が増えていきますからね。冷凍時間が遅いとどんどん増えていくんですね。ですから、家庭で作った冷凍食品というのは、ある程度冷凍が出来上がっても細菌数は実は多いんです。

一番問題なのは、それを解凍した時です。冷凍したものを解凍すると、新しく作った食品よりもすでに細菌数が多いんです。これを調理場に置いていたり、さらに2回目の冷凍をしたりすると、どんどん細菌数が増えてしまいます。プロの冷凍技術と家庭の冷凍技術は明らかな違いがあると考えてください。

                                         (以上)

                                   (転載・引用不可)

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