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平成24年03月09日

平成22年度食の安全・安心フォーラム 講演概要

演題:「知っておきたい食の安全・安心について」
  ~おいしく安全に食べるためにわたくしたちができること~

講師:内閣府食品安全委員会 技術参与
                   戸部 依子 さん

  ご紹介ありがとうございました。はじめまして。内閣府食品安全委員会事務局の戸部と申します。よろしくお願いします。

  今日は、「おいしく安全に食べるためにわたくしたちができること」ということで、食品の安全・安心についてということですが、私たちも食品の安全・安心を守るために、私たち消費者、もちろん私のような行政も一緒にそれぞれが役割を担って、また「消費者のみなさんも非常に大事な役割を担っている一人ですよ。」ということを、わかっていただこうかと思って話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 普段、食事というのは、それほど意識して召し上がっているかどうかはわかりませんけれども、「安全な食べ物ってどれ?」ということで、ここにいくつか食べ物を出させていただいております。
 「安全な食べ物ってどれ?」ということで、「どれが好きですか?」という質問ではなくて、「この中で安全な食べ物ってどれでしょう?」ということなのですけれども、これはひとつひとつ見ていくと、実は当たり前に安全に食べられるものではなくて、私たちは安全にこれらのものを食べているということがわかります。

 お米ですけれども、生で食べるとお腹をこわします。だから、炊いて食べますよね。納豆ですが、納豆ダイエットなどというものが一時期流行りました。これは全ての人ではありませんが、みなさんご存知の方もいらっしゃるかもわかりませんけれども、高血圧の方で血栓防止の薬を使っておられる場合は薬の効果に影響を与えます。納豆をたくさん食べ過ぎると効かなくなるので、非常に注意しなければいけない食べ物のひとつです。
 この下にいきますと、トマトです。トマトは一見、安全なように思われるかと思いますけれども、実は今、私たちが食べているトマトというのは、特に心配する必要はありませんが、もともとの原種のトマト、これにはトマチンというアルカロイド、毒物が入っています。それを私たちが食べられるように品種改良をしてきたという経緯があります。
 なので、もともとのトマトに含まれている、原種に含まれていたトマチンという成分は、私たちが今食べているトマトにも入ってはいますが、非常に量が少ないので、何10キロも食べないかぎりは具合が悪くはなりません。トマトも生きていかなければならないので、自分を守るために毒素を出すのです。
 このとなりにいきまして、パン。ベーグルですけれども、これは小麦アレルギーの人だとか、あるいは牛乳アレルギーの人といった方には、やはり少し気をつけなければいけないものということです。
 この下にいきまして、卵です。卵もみなさんよくご存知かとは思いますけれども、生卵というのは新鮮なものでないと食中毒になったりしますから、加熱をして食べると安全に食べられるということです。
 あと、フグです。フグはもうみなさんもよくご存知のように、テトロドトキシンという毒素を含んでいますから、危険なところは取り除いて、私たちは少しドキドキしながら食べているというようなところでしょうか。
 かき氷とかお酒ですけれども、これは食べ過ぎ飲み過ぎは良くないということで、私たちはもともと安全な食品というものがあるのではなくて、健康に悪い、影響が出ないように注意、工夫をしているというような状況であるということです。

 今申しましたように、安全な食品を探すのではなく、安全に食べるということが、まず基本として大事だということです。例えば、ここにおにぎりの例を出していますけれども、焼き鮭のおにぎりをおいしく安全に食べるためには、どんなことに気をつける必要があるでしょうかということです。いかがでしょうか?
 みなさん、いろいろなことに気を遣っておいしい味で食べられるようにということで、普段、無意識のうちにされているでしょうし、先ほどの滝村さんのようなパパ料理の方は、きっとどうやったらおいしく食べられるかというような工夫をされているかと思いますけれども、みなさん、それぞれ気をつけていらっしゃる部分というのが、いろいろとあると思います。

 ここに、おにぎりの成り立ちのようなことを考えて書いてみましたけれども、ご飯はお米だとか水とか塩加減だといったようなこともありますし、そこで使う海苔とか、間に挟む鮭、あとはつくり方。つくった後の保存の仕方。食べる時の食べ方などというのもあります。
 これをもっと細かく見ていくとこのようになりまして、これはザッと書いたところなのですけれども、お米については少し詳しく、もとに遡ってお米の育て方などというところも書いております。
 鮭ですと、鮭が何をエサに食べていたかだとか、どういう水域だったかということでも、おいしさはひょっとしたら変わってくるかもしれないのです。海苔ですけれども、みなさんのお手元には、香りということを書き忘れていたのでここに足しましたが、海苔の香りなどというものも、おにぎりをおいしく食べるためには結構、大事なことかもしれません。
 そういったようなことで、いろいろなことを私たちは意識するしないに関わらず、いろいろなことに気をつけて食べているということがわかります。

 しかし、自分で工夫できないこともあります。例えばお米の育て方とか、そこでどういう農薬を使っているのかとか、肥料というようなところまで、なかなか私たちが自分でコントロールするというようなこととか、調べるということは現実的ではないです。

 そこで大事なのは、やはり私たちが直接タッチすることはできませんけれども、食べるものが一体どのようにつくられてきたのかということを考えてみることです。
 例えば農作物でしたら生産現場から、例えば加工品になる場合ですと、工場に行って、そこで加工されて、お店に運ばれて、店に並んでいて、それを私たちが買うと。そしてそれを食べるというようなことで、「フロムファームトゥテーブル」というように言われていますけれども、こういったチェーンということで、いろいろな人の仕事と仕事、例えば人と人がつながって、それぞれの人たちがそれぞれの役割、責任を担うことによって、私たちの食べるものというのは、おいしく、また安全に守られているということです。

 今、申し上げましたように、いろいろな人が関わっているということです。ここに書きましたように、いろいろな人が関わっているわけですが、消費者も、非常に大事な役割を担っているということが言えます。
 食材が採れて、加工されて、お店に並んで、そこから先は、私たちもきちんと扱わないと安全に食べることはできないというようなことで、「みなさんも大事な一人ですよ。」ということです。
 直接ではありませんが、専門の方とかマスコミといったような人たちが、こういうことを客観的に見たり、あるいは専門家の人たちが、こういったところの安全性を調べたり、あるいはマーケティングなどというところの調査をしたりというようなこともしますので、いろいろな人が関わっています。
 「いろいろな人が関わっているので、いろいろな考えがありますよ。」という話は後ほどしますけれども、消費者も大事な役割を担っているというお話を少ししていきたいと思います。

 食中毒の状況を少し見ながら、私たち消費者もすごく大事な役割を担っているということを説明してみたいと思います。
 これは、施設別の食中毒の発生状況ということで、平成21年度、この21年度は非常に食中毒のデータ上、特別な年だったわけです。というのは、食中毒による死者が0だったのです。統計上なので実際にどうだったのかというのは何とも言えないですけれども、原因が食中毒で亡くなった人がいなかったというだけで、直接の原因が食中毒の人がいなかったというだけのことです。
 なのでわからないですけれども、こういうデータをとる中で、今まででいなかったというのは、まずひとつの大きなニュースなわけです。

 さて、施設別に食中毒の発生状況を見た時に、一番多かったのが飲食店によるもの。というのが、50%少しです。その次、結構、不明というのも17.6%ということで2割弱が不明ということになるわけですが、それを除くと次に多いのが家庭ということです。約1割は、家庭で食中毒が起きているということは、やはり家庭での取り扱いというものも大事ですということです。
 それから旅館等々、あとはやはりいろいろなところがあるということなのですが、ここでまずやはり家庭で1割くらい起きているということでございます。
 その原因を見てみると、カンピロバクターとかノロウイルスということが多いということで、これは結構、生食に関するものです。後で、もとになっている食材の話はしますが、カンピロバクター、ノロウイルスといったようなところで、生食によるものが多い。
 その次が、サルモネラということで、先ほどの卵などというものも代表的な食材になるわけですけれども、こういったところが多いということです。

 月別に見てみますと、今11月ですから、この緑の部分です。冬はやはりノロウイルスが非常に多くなっていますので、これからの時期はノロウイルスに気をつけないといけないということです。
 ノロウイルスは寒い時期でも結構長生きするので、冬が多いということと、牡蠣とかホタテといったようなものがおいしくなる季節でありまして、たくさん食べるので、こういった時には多くなっているというようなことです。

 年ごとの推移を見てみますと、軒並み減ってきている傾向にはあるわけですけれども、大きい食中毒の事故が多い時はボコッと山ができていたりするので、私たちが安全に食べられているというのは偶然ではなくて、やはりきちんと守られていることというようなことが大事であるということがよくわかります。
 衛生状態が比較的整っている我が国であっても、食中毒が多くなる年もあるということで、常に気をつけていないといけないということが言えると思います。

 食中毒の原因菌と原因となる主な食品というものを、もう一度ここで確認してみたいと思います。先ほど食中毒の原因菌として多いのが、ノロウイルス、カンピロバクター、サルモネラということで、O157というものも結構あったりするわけですけれども、この原因となる食材、一体どのようなものがあるかというと、まずカンピロバクターは鶏ですね。
 鶏肉、鶏わさなどといって結構生で食べるものがあるわけですけれども、こういったものだとか、ノロウイルスですね。二枚貝ですね。牡蠣とかホタテといったようなもの。サルモネラ、卵ですね。
 あとO157、腸管出血性大腸菌ということで、生肉というものがこれでは多いわけですけれども、牛肉。ユッケだとかタタキで食べることが多いかと思いますが、こういったものです。馬刺しといったようなものも食べます。これらは食文化であったりするので、非常にこれは扱いの難しいところだとは思うのですけれども、この食文化とリスクというものをどのように私たちが捉えるのかという、ひとつの課題であるのではないかというように思われます。
 ここに、予防法ということで少し書いてみました。見ていただいてわかるように、概ね加熱するとリスクが下げられるというようなことです。なので、生で食べる時には、それなりの確率で食中毒が起こるということを確認しておいていただければというように思います。

 今申し上げましたように、こういった食中毒というのは、ここに書きましたように加熱をするということによって、私たちはある程度自分で防ぐということができるわけですが、みなさんもご存知のように、農薬だとか食品添加物というのは、消費者のみなさんが食べる時には、自分で注意したり工夫したりできるものではないというところで、やはりみなさんも心配なのではないかというように思います。
 なので、農薬や食品添加物は使わない方が良いのではないかということなのですけれども、お店に並ぶ量、あるいは価格の面だとか、そういった一定の供給量というのを考えた時には、それらを全くなしにするというのは、非常に難しいのではないかというようなことです。
 全く農薬を使わずに育てようとすると、結構虫に食べられてしまったりというようなこともありますし、それなりの手間隙をかければ無農薬でもつくれたりというようなことはありますけれども、そこそこ高くなってしまうとか、収穫量が少なくなってしまうというようなことも、現実にはあるということです。

 昔、飢饉の頃は、人が亡くなるということがあったわけですけれども、近年は不作ということはあっても、それで人が亡くなるということはないということは、やはりある程度、農薬といったようなところの貢献があるのではないかというところです。しかし、やはり心配は心配といったところで、それではどうしたらいいのかと。
 そこで、その食品の安全性に関する新しい考え方ということが必要になってきます。これは日本だけではなくて、欧米で取り入れられている考え方ですが、先ほども申しましたように、食品の生産から消費までの各段階で安全性を確保しましょうと。まず、これは大事な大前提です。それぞれの段階できちんと安全性を確保しましょうということです。
 それで、最初に言いましたように、どのような食品にもハザードが存在します。ハザードというのは、例えば食中毒だと食中毒の原因菌ですね。先ほど言いましたようなサルモネラだとかカンピロバクターだとか、あるいは私たちの体には必要ではない農薬だとか添加物といったようなものです。そういったものが存在して、そこから生まれるリスクというものあるということが前提で、それをどのように管理していくかというところをきちんと整理して、みなさんで意見を出し合っていきましょうというのが、このリスク分析手法というように言われているものです。

 もう少し詳しく話をしてみたいと思います。その食品のリスクというのは、一体何なのだろうということですけれども、まずハザードに出会う機会、例えば私たちが何か食べ物を食べた時に、その食中毒原因菌に出会う確率のようなものです。これが、1,000人に1人であるものとか、5、6人に1人であるものというようなことなのですけれども、それでは出会ったら必ずそれは問題なのかというと、そうではない。出会うことによってどうなるかというところも加味しなければいけないということです。
 お腹が少し痛くなるだけとか、少し2、3日お腹をこわすという程度から、お医者さんに行かないといけないというものとか、また運悪く死んでしまうというような、いろいろな程度があるということです。
 なので、例えば1,000人に1人、「それって結構あるような確率じゃない?」と言っても、それが出会ったところで少しお腹が痛くなるくらいだったらリスクはそれほど大きくないけれども、2億人に1人と言われているけれども、その2億人に1人の人が死んでしまうとなると、やはり怖いと思ったりするというようなところで、このハザードに出会う確率とその程度、両方を加味したものをリスクというように呼びます。

 このリスクなのですけれども、日本語には、なかなかならないのです。多分、ヤバイというものが一番しっくりくるのではないかという感じなのですが、要はリスクがあるから危険ということではない。「少しマズイかもしれないな。」みたいな、そのような状況のことです。

 食品においては、最初に言いましたように、ゼロリスクというようなものはない。私たちは、意識するしないに関わらず、リスクを下げて安全に食べられるように日々、工夫しているのだということです。
 少し例を出しながら説明をしていきたいと思います。どのような状態でどれだけ食べても安全な食品というものは、世の中には存在しないということです。簡単に言うと、「食べすぎは良くないですよ。」ということなのです。
 例えば、ビタミンAというのは、必須栄養素というように言われています。なので、足りなくなると夜盲症になったり皮膚が乾燥したりというようなことが起こりますし、多く摂りすぎても脱毛とか食欲不振とか肝障害といったようなことが起こるということです。
 「水は大丈夫なんじゃないの?」と思うのですが、実は水も、足りないのが脱水症状になるというのはわかりますが、摂りすぎても水中毒という言葉があるように良くないということです。例えば、トイレに行かずに水を8リットルくらいずっと飲み続けると、死んでしまった人がいます。なので、いくら何とかの天然水といっても飲みすぎというのは、非常に良くないと。8リットルというのは極端な例なので、そうそう起こることはないですが、リスクというのはそういうことです。そうそう8リットルも飲むというようなことはないけれども、もし飲んだとしたら、かなりの確率で死んでしまうというようなことです。ですから、基準とかルールをつくって、それを守って私たちは安全に食べる必要があるということです。

 今申し上げましたことを図にすると、このようなことになります。まず、私たちの体に必要なものというのは、多すぎても少なすぎてもいけないというように言いましたが、こちらの横軸に、摂る量、食べる量。縦軸に、体への影響の程度というものを表すと、足らなくても致死量なのだけれども、少しずつ摂っていくとちょうど良いくらいになって影響が非常に少ない。
 しかし、それをまた超えると、多くなると致死量に至ってしまうと、このようなバスタブのような絵が描けるということですから、私たちは体に影響が出ない量というところでコントロールしていかなければいけないということです。これは先ほどの、例えばビタミンAの話をしましたが、それがこういったところに該当するわけです。

 一方、私たちの体に栄養源として必要ではないもの。例えば、農薬とか食品添加物は私たちの体の栄養にはなりません。基本的には要らないものです。けれども、そういったものであっても必要である場合もある。
 そういうものはどのように考えるのか。多すぎたら良くないので、許容できる量にとどめましょうということで、これらのような私たちの体に必要がないものについては、こちら右半分のグラフで表現することができます。
 やはりこれも同じで、私たちの体に影響が出ない量のところ、ここでコントロールしていきましょうということであります。

 こういった量を保っていくための仕組みとして、先ほども言いましたが、リスク分析という手法が使われています。リスク分析には3つの要素があるということです。この3つの要素というのを覚えていただきたいと思います。こういったリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションという、この3つの要素ということです。
 これらについては後で説明しますが、先ほどから何度も言っていますけれども、どのような食品にもリスクがあるという前提で、科学的に評価をして妥当な管理をすると、体にも影響が出ないようにルールをつくってきちんと守りましょうということです。
 その考え方の基本として大事なものが、量と作用量の関係ということです。先ほどグラフを出しましたけれども、こういうことです。量が少なければ影響が出ないけれども、ある一定の量になると何らかの影響が出て、さらに多くなると致命的な影響が出ると。なので、量が少なくて影響がないところに留める必要があるということです。先ほどの右半分の図です。
 こういったところに留めておく必要があるということです。この右半分の部分だけをグラフで出してみますと、このようになります。横軸が体に入る量で、縦軸が健康への影響の程度です。少ない量だと影響がない、少ないですが、だんだん多くなると、どんどん影響が出てきて、致死量に至るということです。こういうことです。

 私たちの、例えば風邪薬などというのは、この辺りの量(体への影響が出始めるが、摂るのをやめると影響がなくなる量)でコントロールされています。風邪薬というのは、私たちの体に影響がないと効果がないわけですから、この辺りです。
 けれども、病気が直って飲むのを止めると、また体の影響がなくなるというようなことです。この辺りになってくると、副作用が出たり、後遺症が出てしまったりというようなことがあります。

 ここで、クイズです。「しらゆき姫は、なぜ息を吹き返したのか。」ということなのですけれども、みなさん、しらゆき姫のお話はご存知ですよね。いじわるのお妃さまに、しらゆき姫が森に置いていかれてしまって、ある日、この時は優しそうなおばあさんが来て、「このりんご、おいしいわよ。」「まあ、ほんとにおいしそう。」と言って食べて、バタンと倒れる。小人たちが「かわいそうに。」と言っているところへ王子さまが来て、しらゆき姫は息を吹き返すという話なわけですけれども、あれはなぜ息を吹き返したのかということなのです。
 今のグラフを思い出していただくと、わかるかと思いますけれども、おそらくあのりんごの中に入っていた毒の量というのがどの辺りかというと、多分この辺り(体への影響が出始めるが、摂るのをやめると影響がなくなる量)なのです。なので、あの話では王子様が来なくても、多分、しらゆき姫は息を吹き返していたでしょうというお話です。
 これは、消費者団体のみなさんの集まりで話をしたら、「それは子どもたちにとてもよくわかるから、今度、子どもたちにもこの話をするわ。」と。「止めておいてください。あの話を全然夢のない話にしないでください。」ということを言ったのです。
 こういったようなことで、体から出てしまえば影響がない量の毒だったのだろうということなのですが、農薬とか添加物は、体に影響が出てしまっては困るので、もっと少ない量のところでコントロールをしなければいけないということです。

 

 それでは体に影響が出ない量というのは、一体どのように決めているのだろうかということです。農薬、添加物というと良くないというイメージが非常にあって、やはり怖いもの。もちろん、私たちの体には必ずしも必要なものではないということがあります。
 体にとって必要ではないということなので、できるだけそういったものはあまり摂りたくないという気持ちもあり、そういった恐怖感というものが先にあるわけですけれども、体に影響が出ない量というのは、どのように決めていくかということです。
 このグラフを先に書いてしまっていますが、実はこれを書くためには、農薬のある成分と考えてください。それを動物の実験で決めます。いろいろな濃度のものを与えて影響が出る量、どのくらいの量を与えるとどうなっていくかという実験をするわけです。
 このようにもう致死量などがわかっているところは、そのようなことの実験はしませんけれども、大体この辺り(影響がない量から致死量の間)です。いろいろな動物を使って実験をするわけですが、いくつも動物の種類と実験の種類をされて、一番少なかった量で影響が出なかった量というものを決めます。
 これは結構、動物によって違っていたり、実験によって結果が違ってきたりするのですが、安全をとって一番少ないところをひとつ決めます。悪影響が出ない量。無毒性量と言っていますが、その量を決めます。ここはもちろん人で実験することはできないので、動物実験ということになります。

 これを人に置き換えた時にどうなるかということですが、動物と私たちは違います。私たち人間にとっても赤ちゃんからご高齢の方、健康の人、病気の人、いろいろな人がいます。
 なので、人のばらつきもありますから、動物と人の違いを、まず10分の1にとって、人の間のそういう違いを10分の1とって、この動物の実験で悪影響が出ない量というのがまとまって、それの100分の1を、人がある物質を一生涯、毎日摂取し続けても健康に影響が出ない量というものを決めます。
 だから、これは実験データではなくて、動物実験から人と動物、人の個人差を考慮して算出する量ということです。だから、私たちが農薬の使われた作物を一生涯、毎日摂取し続けても、体に影響が出ない量というところで、そういう計算によって求められています。
 実際に使われる農薬の量、その作物に使われる量というのは、もっと少ない量です。この量は、どうやって決めるかというと、私たちが例えばトマトな・辜gマトだけ食べるということはないですよね。トマトを食べたり大根を食べたりほうれんそうを食べたり、いろいろなものを食べたりします。
 なので、そういったいろいろなものを食べるということを考慮して食べる量と、そして実際に農薬でしたら例えば、病気だとか防虫に効く量といったようなことを加味して、いろいろなものを食べてもこのエリアを越えないように量を決めていくわけです。なので、こちらの使用基準、残留基準というのは、実際に私たちが食べものを食べている量ということも加味して決めるということをします。

 先ほどから残留基準、使用基準というように言っていますけれども、一体これはどのくらいの量なのかというのが、気になるところだと思います。特に、こういった残留量という単位が、PPMとかいう、少し普段は使わない、普段使うのはせいぜい%くらいですよね。けれども、PPMという非常に小さい単位のことを言っているので、一体どのくらいの濃度のことなのかが非常にわかりにくい。
 これを計算してみますと、小学校の高学年のプール。一番長いところが25メートルのあのプールですね。あそこに水をいっぱい張りまして、その中にコップ半分くらい、75グラムくらいの農薬を溶かして、そのくらいの濃度のことです。
 トマト100グラムあたりに換算してみると、およそ0.3グラムの1万分の1くらいの量ということです。だから、かなり普段とはかけ離れたくらいの量であるということがわかると思います。

 もうひとつ事例を挙げてみます。
 これは11月1日に北海道で春菊の残留基準がオーバーしたという例で説明してみます。春菊に使われる農薬、クロルフェナピル、この名前は覚えなくてもいいのですけれども、とにかく春菊に使われていた農薬が、残留基準量とオーバーしましたという事例です。残留基準値が0.01PPMのところを、検査してみたら0.67PPMだったということで、残留基準に対して67倍ということです。
 「67倍も?」と思うのですけれども、それではそれがどのくらいなのかというように見てみると、この農薬は、私たちが一生涯毎日摂り続けても大丈夫な量というのはどのくらいの量かというのを見てみると、体重1キログラム1日あたり0.026ミリグラムだったということなので、例えば50キロの人だと、1日1.3ミリグラムを一生涯摂り続けても問題がない量ということです。
 これを春菊に置き変えてみるとどうなるかというと、まず残留基準値が0.01PPMということなので、残留基準の上限ですね。それが残留している春菊は、どのくらいなのかというと、体重50キログラムの人が、残留基準値0.01PPMの残っている春菊を120キロ毎日一生涯食べ続けても、問題はない量ということです。
 なので、毎日120キログラムなど食べ続けることは、もう絶対に無理だということがわかると思いますし、今回、残留基準値オーバー、残留基準の67倍も、0.67PPMも検出された春菊を、仮に、この春菊を人が毎日1.8キログラム生涯食べ続けても、健康への影響はないというように考えられるということですから、使用基準、残留基準というところは、かなり少ない量のところの話だというところが感覚的にわかっていただけるかと思います。

 とは言いましても、食事というのは毎日するものなので、少ない量だとはいえ、私たちの体の中にどんどん溜まっていっているのではないかという心配も、もちろんあるというように思います。
 私たちの体に科学物質が入る経路というものを、少しここで見てみたいと思います。食べ物として入るものというものももちろんありますし、鼻からも結構、気体として入ってくるし、皮膚からも吸収されるものがあると。
 このような経路で、いろいろなものが私たちの体の中に入ってきているということなのですが、それではこれが体の中に入ったら全部どんどん溜まっていくのかというと、そうではないのですということなのです。
 例えば、食品とともに入ってきた場合、腸管を通って素通りして便とともに排出されるというケースもありますし、一旦、吸収されて全身に行くというものもありまして、その後、全身に行った後、また血液を介して肝臓に行って代謝、分解、合成されると。その後、また腎臓から尿とともに排出するということで、体の中に入ったものが全て蓄積されるわけではないということです。
 私たちの体というのは、吸収、代謝、排泄といったような機能が働いているので、むしろこういった機能がきちんと働くように食生活を送るということもすごく大事だということです。

 今、心配しなければならないのは、体に吸収された量と、外へ行く量の程度がどうなのかということです。

 先ほど、このリスク分析には3つの要素があるというように言いましたけれども、このリスク評価とリスク管理というものは、今、私たちの食品安全行政というものを考えた時に、ひとつひとつそれぞれの機能として独立しているということが非常に大事なことです。
 というのは、先ほど言いましたように、もう一度話してみますが、この動物実験をして影響が出ない量を求めて、それから100分の1の量のところを、人が一生涯食べ続けても影響が出ない量だと言いましたけれども、これは、要は実験で、計算で客観的に出てくる値なのです。
 かたや、こちらの使用基準とか残留基準というものは、私たちが実際に食べている量だとか、農薬が使われる量だとか、農薬の効果といったようなところも加味します。決める順番として、右から左にずっと決めていきましたが、これはこの順番で決めないといけないわけです。
 これを逆に決めると大変なことになります。このくらい使用基準とか残留基準とかから決めていくと、要は効果があるからもう少したくさん使うとか、そのようなことになってきてしまうと困る。人の健康に影響が出ない量を超えてしまうようなことがあってはならないので、この順番というのは、右から左に決めるというのはすごく大事なことです。

 もうひとつ大事なことは、今言いましたように、この人に影響が出ないように決めるまでの仕事と、それに基づいて使用基準、残留基準を決めるということを別々にやるという、別々の仕事としてやるということがすごく大事です。
 これを一緒にやってしまうと、お互いさじ加減のようになってしまうと、また人の健康に影響が出ないようにというのが守れないということになってしまいます。なので、ここをきちんとわけるということが大事なわけです。

 とはいえ、やはり本当にそのような実験が正しいのかどうかとか、それでもまだ心配だというようなことがあります。もちろんそうです。
 例えば、無農薬でできるのであれば、「やはり私はそういうものを選びたい。」という人もいらっしゃるでしょうし、「有機栽培という方法だってあるのだから、そういうことを進めていくべきだ。」という意見もあるかもしれません。
 なので、そういったものは何も否定するものではなくて、選択肢として残していかなければいけないものですし、かたや、安全なのに安全ではないというように心配して食生活を送るというのも、やはりあまり幸せなことではないということから、今度はリスクコミュニケーションというところが大事になってきます。

 

 最初に、食に関わる人たちにはいろいろな人がいると言いましたけれども、やはりそのいろいろな人たちがいれば、いろいろな見方があります。
 なので、そのようないろいろな見方を大事にしていくというのが、リスクコミュニケーションという機能のひとつです。今いろいろと話をしましたが、やはり「いろいろなことが心配だわ。」ということだと思います。例えば、農薬の話でいうと、「みつばちが減っているのも、どうも農薬が影響しているというように報道されていたけれども、あれは本当かしら?」といったようなこととか、あるいは、「子どもには、やはり農薬を使っていない野菜を食べさせたい。」という人がいたりしますし、安全性の実験、先ほども話しましたけれども、動物実験で確認しているとは言うけれども、本当にそれは人にあてはまるのかどうか、単純に100分の1で良いのかどうかといったような議論もあるかもしれません。こういったようないろいろな心配が、やはりなくならないということです。

 それでは、どのようなことを検討したり考慮したりすべきでしょうかと言いますと、大抵はこのようにまとめられるのです。生産者はこうすべき、専門家はこうすべき、行政はこうすべき、消費者はこうすべきとか、流通業者の人はこうというようなことで、「誰々はこうすべき。」といったような話になると、これで結構きれいにまとまったように思うのですけれども、「はい、じゃあ、これはこの人たち、きちんとやってね。」という話ではないということです。
 こうやってお互いに「誰々がこうすべき。」みたいな話になって、実際にこの真ん中にある、「この農薬とか添加物とかの安全性は一体どうなのか。」「この食品の安全性はどうなのか。」というところは二の次になって、責任の押し付けあいのようになってしまうと、やはりこれは良くないですよね。
 なので、もう少し冷静にまとめてみましょう。「誰がどうすべき」となっている看板を架け替えてみましょうというのが、これなのです。先ほどと書いてあることは変わらないですが、看板が「どんなことが心配なのか」というものに替わっています。
 例えば、環境への影響はどうなのかとか、安全性評価の方法はこれで良いのかとか、リスクコミュニケーションについてどう考えるかといったようなこと、あるいはその食べ方との関係とか、人への影響はどうなのかといったようなこと、このように整理して、こういう議論すべきことを、もう少しきちんと真ん中に持ってきて、お互いがわかっていること、わからないこと、教えたいこと、知りたいこと、いろいろありますけれども、こういったことについて自分たちはどうしていくかというようなことの意見を交換するということが大事ということです。この場が、リスクコミュニケーションということです。

 私のリスクコミュニケーションは7年くらいやっていますけれども、意見交換会をすると、なかなかこうはならなくて、先ほどのようにお互いが「こうすべき、ああすべき。」というような話になって、ここまでなかなか話がいかないというようなことがあって、非常に苦労している状況なのですけれども、事実をきちんと見て、それぞれの立場でどのようにしていくかということを、議論していくということが大事です。
 その時に大事なことというのは、いろいろな視点があると言いました。これは一番上に山を書いていますけれども、これは遠くから見ると山に見えるのですが、もう少し近くにいってみるといろいろな木があることもあるし、山は笑っていたが、1本ずつ見ていくと病気の木も見えたりする。
 足元を見ると、どんぐりがあったり花が咲いていたりするということです。見方が違えば見えるものが変わってくるということです。なので、「この山は健康だよ。」と言っている人もそれは正しいし、この生えている木の中に病気の木があるというのも本当だし、足元にどんぐりが落ちているということも本当なのだけれども、これを一斉に全部言うと、みんなの言っていることが違って話が合わないということになります。
 ですので、山が見えている人は、もう少し近寄っていく努力をしなければならないし、足元が見えている人は、もう少し離れて全体を見渡すということも必要になってきます。なので、いろいろな角度、距離、離れないと見えないもの、近くでないと見えないものがあるということです。

 リスクコミュニケーション、いろいろな人の意見を出し合うことですが、その意見の出し方も上手に出していかないと話が合わないということです。
 もう少ししたら季節になりますが、クリスマスツリーの準備をしているというように考えてみてください。リスクコミュニケーションの目指す姿というものが、クリスマスツリーをきれいに飾るということを例えて考えてみていただきたいと思います。
 ここにある星とか靴下とかリボンというものが、それぞれの意見だとします。これは今、3人で一生懸命に飾り付けをしていますが、まずこの人たちはもう少ししたら離れて、「ああ、ちょっとそこに星がかたまっている。」とか、「もうちょっとここには靴下を飾った方が良い。」というような意見が、同じような意見ではなくて、いろいろなものがバランス良く出ているかどうかというのを見ると思いますし、今こっちばかり飾っているけれども、実は裏側もきちんときれいに飾らないと木が倒れてしまうかもしれないというような見方もあると思います。
 この真ん中の人は脚立に乗っていますが、これも大事で、自分たちが今、手の届くこと、自分がわかることばかり言っていると、手の届かないところには何も飾りが付かなくなってしまいます。ですから、これは例えば、情報を得るとか学習するとか、実際に体験してみるということで、今まで自分の手が届かなかったところに飾りを付けることができる。今まで少し考えが及ばなかった意見が見えるようになるという意味では、こういういろいろな情報を得ていくということがすごく大事です。こういったようなことで、バランス良くみんなで意見の出し合い、情報の交換、聞き合うというようなことが、リスクコミュニケーション上は大事ということです。

 そこで、リスクコミュニケーションの合言葉ということなのですが、お互いの意見をよく聞く、そして伝える、そしていろいろな見方や考え方があるということをよく知りましょう。誰がではなくて、何をどうするかということを議論していくことが大事ということです。

 

 今日、いろいろな話をさせていただきましたけれども、ここに書かせていただいたように、リスクコミュニケーションの主役、「みなさんもそのうちの1人ですよ。」ということで、自分の役割があります。食品には何かしらのリスクがあるということです。安全に食べるためのルールをつくって、そしてそれを守りましょうということ、そして量と影響の程度という考え方です。バランスが良いということです

 私たちが、日々の生活でできることというのは一体何だろうというと、安全でいうと、まずは食中毒にならないように注意しましょう。バランスの良い食生活。心配になったらいろいろなところから情報を入手しましょうということです。今は食品に関していろいろな情報がありますけれども、それらをあまり過大に信じないことです。
 何かが体に良いと言われたら、それを買いに行くとかそればかりを食べるということではなくて、バランス良く情報を集めましょうということです。そして、少し先ほど滝村さんの話もありましたけれども、「知産知消」という話がありました。生産の実態を知る努力というものが今、とても大事だと思います。非常に距離が遠くなっているので、そういうチャンスがあれば、生産の実態を知るということも、私たちにとってはすごく大事なことです。

 ということで最後ですが、「この赤と青の長さはどうでしょうか?」ということなのですが、みなさんいかがでしょうか。「どうなんだろう?」と思った時に、「あ、これは右の方が長く見えるけれども同じなのよ。」というクイズ、過去にやったことを応用するということもすごく大事なことなのですけれども、まずは自分で測ってみることが大事ということです。
 なので、食の情報についても同じです。まずは自分で確かめてみるということをやってみましょうということであります。私の話は以上です。どうもありがとうございました。何か質問がございましたら、お願いします。

(会場A)

 昔、体操したり、例えば陸上競技だとかをやった時には、「水を絶対に飲んではいけない。」というようなことが言われていたのですけれども、最近は、「水を飲まないとダメだよ。」というように変わってきているのですよね。
 これは私の考えですけれども、多分、血中濃度がドロドロになって明らかにいけないということだと思っているのです。そのようなことがひとつと、牛乳は病院食などにもしょっちゅう出ていたのですけれども、最近は牛乳が害になると。たくさん飲んだらどうなるかわかりませんけれども、そのように言われだしたのです。どの辺りから言われ出したのかはわかりませんけれども、本当に牛乳はダメなのか。たくさん飲めばダメなのか。その辺りを教えてもらいたいと思います。

(戸部依子氏)

 ありがとうございます。2つ、もうひとつありますか?

(会場B)

 先ほどの牛乳の件なのですけれども、娘に、「孫にたくさん飲ませたら?」ということで言うのですけれども、子どもは、娘の方が「今は学校の方があまり勧めなくなった。」と言うのです。それは、何か今、狂牛病が出てきているという話で、少し控えているという話を娘によく聞くのです。それはどういうところから出てきているのかと、少しお聞きしたいと思います。

(戸部依子氏)

 はい、ありがとうございます。まず最初の、昔は「陸上をする時は絶対に水を飲んではいけない。」、だけど今は「飲まなければいけない。」というように言われているのだという件なのですが、詳しくないのでよくわかりません。すみません。
 スポーツと、どうなのでしょうね。その時の状況にも寄るのでしょうけれども、昔は水を飲みすぎると、それで体が逆に疲れてしまうとかいうようなことがあったのかもしれないですね。

(会場A)

 水を飲むとかえって体に悪いと。だから、例えば私は柔道をやっていたのですけれども、柔道の練習中には、どれだけ汗をかいても水を飲んではいけないと。だから、マラソンでも走っている時に水を与えると、転んでいくから水を与えてはいけないというような教えを、40年以上前ですけれどもプログラムであったのです。
 最近は、そのような運動中でも水を飲ませないと、かえって血液がドロドロになって危ないからというようなことなのですけれども、本当にどちらが正しいのか。

(戸部依子氏)

 そうですね。みなさん、何かご存知の方はいらっしゃいますか?多分、だから体の中のバランスがなくなるのでしょうかね。ごめんなさい。水のことはわかりません。

 牛乳の件なのですけれども、確かにおっしゃるように、牛乳は良くないというような本が出されたりといったようなことがあるのですけれども、今日は話をしなかったのですけれども、いろいろな分析技術が上がってきて、今まではわからなかったことが結構わかるようにはなってきているのですが、それが完璧にわかっているわけではないのです。
 何かごく微量なものが測定されるようになったりとか、新しい今までわからなかった病気の原因としていろいろな新しい知見がどんどん出てきて、それが今、錯綜している状況だと思うのです。なので、何か良くないものが出てきたら、「これは良くない。」という情報がすごく出てきてしまうのですけれども、牛乳も特に害があるということではないと思うのです。
 だから、たまたま調べたらこういうもの、何かの原因になる物質が牛乳の中にも入っていたというようなことが見つかった時に、そこだけクローズアップして報道されたりすると、どうも牛乳はよろしくないというようになるし、なりがちだと思うのです。私は、牛乳の中のどれがそれで、どれがどれだということを今ここで申し上げられないのですけれども、特に牛乳それ自体が、昔と今と比べて非常に今は悪くなっているということでは決してありません。なので、そういった情報の偏りがあるのではないかというように感想として持っています。

 次の、牛乳をお孫さんに飲ませたらどうかという提案について、狂牛病のことがあるとか、学校では今あまり勧めないというようなことがあるということなのですが、学校給食というものも、そのスタートが非常に栄養状態の悪い状況の時に、子どもたちにはきちんと栄養を摂らせましょうということで、牛乳がきちんと付くというようなことが歴史的にあって、今は特に栄養状態が悪い子どもがいない中で、「牛乳を必ずしも絶対に飲むようにしなければいけない。」という風潮ではないのではないかというように思いますが、先ほど申し上げたように、牛乳が特に悪いということではないのです。
 何か牛乳の食事の中で占める必要性のようなものが、昔と今では少し変わってきているのかもしれません。他にたくさん栄養を摂っているので、逆に牛乳を摂ったらひょっとしたら摂りすぎになってしますような子もいるかもしれませんし、なのであえて「牛乳を飲みましょう。」というようには勧めてはいない時代になってきているのではないかというように思います。
 あと、BSEとの関係ですが、今は狂牛病ではなくて、BSEと言っていますが、それと牛乳というのは全くご心配はなくて、異常プリオンが溜まる部位、すなわち、特定危険部位というものに牛乳は入っていないので、BSEと牛乳の関係というところは、ご心配はないというように申し上げられるということです。以上です。

(会場A)

 ありがとうございました。

(戸部依子氏)

 他には。はい。

(会場C)

 ただいま、「昔と今との牛乳は変わりません。」とおっしゃいましたね。変わっています。何かと言いますと、環境それから塩。昔と全然違うと思います。それで、いろいろな考え方もあるとは思うのですけれども、今、北海道で広い牧地で牧草だけを食べさせて、牛乳もお肉も安心などを求めて、元通産省かどこかの役人の方が中途退社をされて、「いけない。」ということに気付いて、そういうことに取り組んでいらっしゃる方がいるのですけれども、昔と今と変わらないということはないのです。絶対に変わっています。
 牛乳のアレルギーがありますよね。それはやはり牛乳が全て悪いのではないのですけれども、乳を出してくれた牛が、どういう飼料を与えられているか。どういう環境で飼われているか。そういうことで変わってくると思うのです。
 それから、病気にならないために抗生物質を注射するとか、早く成長させるために成長ホルモン剤を食べものの中に入れるとか、薬品がたくさん投与されています。だから、安心な牛乳というのは、出ていないのではないですか?だから、学校側のそういう対応の仕方というのは、やはり安全のためにそのようにされているのだと思います。

(戸部依子氏)

 はい、ありがとうございます。以上で、まだ?

(会場C)

 まだ、私も書いたことがあるのですけれども、長くなりますので。

(戸部依子氏)

 はい、ありがとうございます。今おっしゃってくださったことはよくわかります。私が先ほど、「昔と今とで何も変わっていない。」と言ったのは、安全性の視点からということが、ひょっとしたら強かったのかもしれません。
 今おっしゃってくださったように、牧草だけを食べさせてつくる牛乳というものも出てきていますし、飼料などもいろいろとそれなりに牧場によって違っていたりしますが、例えば輸入のエサを与えているところもあるでしょうし、牧草だけのところもあるでしょうし、そういった抗生剤を使わずに育ててつくっているところもあると。それはもちろんあると思います。
 どこがおいしいというのも、それぞれ成分バランスが違うので、選択肢としては、それはそれぞれあるというように思いますが、牛乳というものそれ自体が、昔と今とで大きく違っているとか、個々に比べると、ここの牛乳とこういうつくり方でつくった牛乳とでは、成分バランスが違うと思いますけれども、牛乳を食べものという大きな括りで見た時にその安全性は、それほど変わりはないということです。

 安全性について、抗生物質というところで、みなさん、ご心配があるのはわかりますし、十分理解しているというところなのですけれども、抗生物質につきましても、使える抗生物質が決まっているということと、どれだけ残留して牛乳に移行するのかというところも調べております。
 なので、規定量以上のものは、抗生物質が検出されてはいけないということになっていると思いますので、そういったところの関所はきちんと見ているというところで、市販されているものについては、特に危険であるということではないということが言えると思います。

 あと牛乳アレルギーですが、アレルギーというのはたんぱく質がもとになってきていると思うので、そこの部分が変わらなければ、アレルギー反応をおこさない牛乳というのはないと思われます。
 ちょっと今、牛乳の話が出ましたが、今は卵でもそういうことが問題になっておりまして、アレルギーにならない卵というものがあるのですが、そういうことはないのでということで、その辺りはみなさんも気をつけていただけたらというように思います。以上です。

(司会)

 他にご質問のある方は?

(会場D)

 すみません。ありがとうございます。いろいろお話をお伺いしましてありがとうございます。消費者も重要や役割を担っているとおっしゃったのですが、最大のポイント、役割は、改めて伺うと何でしょうか?

(戸部依子氏)

 最大のポイントですか。今日、こちらにお越しいただいているみなさんに、あえて言うことではないかもしれないですけれども、やはりいろいろなところから情報を得て、自分で考えて行動していただくというのが、一番の役割を果たせる場面ではないかというように思います。
 わからないことについては声を揚げて、今みなさんからご意見ご質問をいただきましたけれども、そういった声を出していただくというのが一番大事なことではないかというように思います。

(会場D)

 ありがとうございます。

(会場C)

 今日、数字的にいろいろと分析されてよくわかりましたけれども、ひとつの物質で何ミリ以下だったら大丈夫という規定がありますよね。これは、1種類でどれだけということですよね。だけど、私たちは毎日何種類のものを、野菜も穀類も魚もお肉もいただいていますよね。
 だから、本当にこのようなことを数字だけで「安心なんだよ。」と思わせる、それがすごく国民にとっては誤解というか、間違った解釈、「だから大丈夫なのだ。」と思わせられる。私は、ずっとそういうことに関わってきたのですけれども、一般的に数字だけで、「規定量だから大丈夫。」という安心感を植え付けられているという、私はそういう感覚を持っています。それで、今おっしゃったように、私たちは自分の健康は自分で守るしかないと、結論的にそう思っています。

(戸部依子氏)

 わかりました。ありがとうございます。今おっしゃったように、いつもよく言われることなのです。これは、1つの物質だけのデータなのだけれども、私たちはいろいろなものを食べているので、いろいろな農薬が体の中に入っているのではないか。複合影響はどうなのかというように言われます。
 確かにおっしゃるとおりで、複合をどうやって調べるのかというのは、考えただけでも何通りあるのかというと、すごく大変な量になってしまうので、そこを全部調べきれているわけではありませんし、多分これからも全部を組み合わせて、こうなったらどうなるかというのは、多分できないと思います。
 ただ、食品安全委員会で、多く使われるものについて複合影響を調べたデータというものはありますけれども、その結果は今、先ほどの基準値以下のものについて、何種類かを同時に使った時の影響は非常に少なく、1個ずつの調べたデータをもとに安全性を考えていけば、それと単品と複合品との安全性というところは、それほど違わないというデータが出ていますが、今おっしゃったように心配という部分については、あることは確かなので、そこの部分は我々も認識していかないといけないというように思っています。

(司会)

 他に質問のある方はいらっしゃいませんか?それでは、ご質問等がなさそうですので、これで戸部様の講演を終了したいと思います。 

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