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感染症法に基づく獣医師の届出基準

目次

  1. エボラ出血熱
  2. 重症急性呼吸器症候群
  3. ペスト
  4. マールブルグ病
  5. 細菌性赤痢
  6. ウエストナイル熱
  7. エキノコックス症
  8. 結核
  9. インフルエンザ(H5N1)
  10. 届出様式

第1 エボラ出血熱

1.定義

エボラウイルスによる熱性疾患である。

2.対象となる動物

サル

3.動物における臨床的特徴

出血斑が胸部、上腕内側及び大腿部に認められる。一般に、血小板の減少及び肝機能の高度の障害(GOT、GPT及びLDHの上昇)が認められる。また、解剖時には広範な出血病変及び実質臓器の壊死が認められ、病理組織学的には肝の巣状壊死、好酸性細胞質内封入体及び網内系の壊死が認められる。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル又はその死体についてエボラ出血熱の病原体診断又は血清学的診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。
なお、ウイルスの検出感度は、末梢白血球及び肝臓が高い。

検査方法 検査材料
電子顕微鏡でのウイルス粒子の検出による病原体の検出 血液若しくは唾液又は肝臓、脾臓その他の臓器
蛍光抗体法、免疫組織化学法又は抗原捕捉ELISA法による病原体の抗原の検出 血液若しくは唾液又は肝臓、脾臓その他の臓器
PCR法による病原体の遺伝子の検出 血液若しくは唾液又は肝臓、脾臓その他の臓器
ELISA法又はウェスタンブロット法による病原体に対する抗体の検出 血清

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況からサル又はその死体がエボラ出血熱にかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第2 重症急性呼吸器症候群

1.定義

SARSコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群である。

2.対象となる動物

イタチアナグマ、タヌキ及びハクビシン

3.動物における臨床的特徴

SARSコロナウイルスを実験的に感染させたハクビシンでは、発熱、元気消沈、攻撃性の消失及び白血球数の減少が認められ、また、そのうち少数の個体では、下痢及び結膜炎が認められる。イタチアナグマ及びタヌキの臨床的特徴は明らかではない。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、イタチアナグマ、タヌキ若しくはハクビシン又はこれらの死体についてSARSコロナウイルスの病原体診断又は血清学的診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
ウイルス分離による病原体の検出 血液、糞便若しくは尿、鼻腔洗浄液若しくは咽頭拭い液等気道からの検体又は臓器
PCR法による病原体の遺伝子の検出 血液、糞便若しくは尿、鼻腔洗浄液若しくは咽頭拭い液等気道からの検体又は臓器
中和試験又はELISA法による病原体に対する抗体の検出 血清

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況からイタチアナグマ、タヌキ若しくはハクビシン又はこれらの死体がSARSコロナウイルスにかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第3 ペスト

1.定義

ペスト菌による全身性疾患である。

2.対象となる動物

プレーリードッグ

3.動物における臨床的特徴

プレーリードッグがペスト菌に感染した場合の潜伏期間に関するデータは存在しないが、ジリスに対する感染実験の成績から2日から7日程度と考えられる。当該実験では、接種部位の所属リンパ節に腫脹を呈する個体が認められている。また、鼻出血が認められる場合がある。プレーリードッグは、ペストに対して極めて感受性が高く、致命率はほぼ100%である。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、プレーリードッグ又はその死体についてペストの病原体診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
菌分離による病原体の検出 血液又は肝臓、脾臓、リンパ節その他の臓器
PCR法による病原体の遺伝子の検出 血液又は肝臓、脾臓、リンパ節その他の臓器

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況からプレーリードッグ又はその死体がペストにかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第4 マールブルグ病

1.定義

マールブルグウイルスによる熱性疾患である。

2.対象となる動物

サル

3.動物における臨床的特徴

特徴的な臨床症状は出現しない。解剖時には筋肉、胸膜下、心筋等における広範な出血病変が認められ、病理組織学的には肝の巣状壊死、好酸性細胞質内封入体及び網内系の壊死が認められる。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル又はその死体についてマールブルグ病の病原体診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。なお、ウイルスの検出感度は、末梢白血球が高い。

検査方法 検査材料
電子顕微鏡でのウイルス粒子の検出による病原体の検出 血液又は肝臓その他の臓器
蛍光抗体法又は抗原捕捉ELISA法による病原体の抗原の検出 血液又は肝臓その他の臓器
PCR法による病原体の遺伝子の検出 血液又は肝臓その他の臓器

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況からサル又はその死体がマールブルグ病にかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第5 細菌性赤痢

1.定義

赤痢菌による急性感染性大腸炎である。

2.対象となる動物

サル

3.動物における臨床的特徴

臨床症状は、人のそれに類似し、水様性、粘液性、粘血性又は膿粘血性の下痢及び元気食欲の消失を呈し、ときに嘔吐を呈する場合もある。発症した個体は、数日から2週間で死亡することが多い。病巣は大腸に限局しており、粘膜の肥厚、浮腫、充血、出血及びフィブリン様物質の付着又は糜爛が認められる。また、無症状で赤痢菌を保有するサルも存在する。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル又はその死体について細菌性赤痢の病原体診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
菌分離による病原体の検出 糞便又は直腸スワブ

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況からサル又はその死体が細菌性赤痢にかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第6 ウエストナイル熱

1.定義

ウエストナイルウイルスによる熱性疾患である。

2.対象となる動物

鳥類に属する動物

3.動物における臨床的特徴

臨床症状は、一般的に無症状の場合が多いが、沈鬱、食欲不振、衰弱、体重減少等の特異的でない症状が見られる場合もある。鳥類に属する動物の中には、運動失調、振戦、転回、不全麻痺等の神経症状を呈するものもあり、カラス等のように感受性が高く、死亡する種類もある。臨床症状を呈する期間は、1日から24日の幅があるが、通常は1週間以内である。血液学的所見及び生化学的所見に特異的なものは認められない。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥類に属する動物又はその死体についてウエストナイル熱の病原体診断又は血清学的診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
ウイルス分離による病原体の検出 総排泄腔拭い液若しくは口腔拭い液、血液又は脳、腎臓、心臓その他の臓器
PCR法による病原体の遺伝子の検出 総排泄腔拭い液若しくは口腔拭い液、血液又は脳、腎臓、心臓その他の臓器
中和試験による病原体に対する抗体の検出 血清

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況から鳥類に属する動物又はその死体がウエストナイル熱にかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第7 エキノコックス症

1.定義

多包条虫及び単包条虫による慢性疾患である。

2.対象となる動物

3.動物における臨床的特徴

感染した犬は、通常、症状を示さないが、まれに下痢を呈する。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、犬又はその死体についてエキノコックス症の病原体診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるものを用いること。
 なお、ELISA法による病原体の抗原の検出により病原体診断を行う場合においては、ELISA法により成虫由来抗原を検出した後、駆虫治療を行い、再度ELISA法により検査を実施した結果、抗原が検出されないときに限り届出を行うこと。

検査方法 検査材料
虫体又はその一部(片節)の確認による病原体の検出 糞便
ELISA法による病原体の抗原の検出 糞便
PCR法による病原体の遺伝子の検出 糞便

2.獣医師は、臨床的特徴若しくは疫学的状況から犬又はその死体がエキノコックス症にかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。

第8 結核

1.定義

結核菌群(Mycobacterium tuberculosis complex、ただしMycobacterium bovis BCGを除く)による感染症である。

2.対象となる動物

サル

3.動物における臨床的特徴

通常、サルは感染が進行した状態で発症し、食欲や元気の消沈、発咳、呼吸困難、下痢等の様々な臨床症状を示し、しばしば突然死を起こすことがあるが、症状を全く示さない場合もある。旧世界ザルでは新世界ザルや類人猿に比べて感受性が高い。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、サル又はその死体について結核の病原体診断をした場合には、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
菌分離による病原体の検出 咽頭・喉頭ぬぐい液、胃洗浄液、気管洗浄液、糞便、病変部の組織
核酸増幅法による病原体の遺伝子の検出 咽頭・喉頭ぬぐい液、胃洗浄液、気管洗浄液、糞便、病変部の組織

2.獣医師は、臨床的特徴又は疫学的状況からサル又はその死体が結核にかかっている疑いがあると考えられ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、当該サル又はその死体について結核に感染していると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合には、(1)にかかわらず、法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
ツベルクリン反応試験
塗抹検査による病原体の検出 咽頭・喉頭ぬぐい液、胃洗浄液、気管洗浄液、糞便、病変部の組織
画像所見 胸部エックス線

第9 インフルエンザ(H5N1)

1.定義

A/H5N1型インフルエンザウイルスによる感染症である。

2.対象となる動物

鳥類に属する動物

3.動物における臨床的特徴

一般に、感染した鶏、七面鳥、うずら等では全身症状を呈して大量に死亡する。その他の鳥類では種類により無症状又は軽い呼吸器症状から全身症状まで、様々な症状が認められる。

4.届出基準

1.獣医師は、次の表の左欄に掲げる検査方法により、鳥類に属する動物又はその死体についてインフルエンザ(H5N1)の病原体診断をした場合には、インフルエンザ(H5N1)を指定感染症として定める等の政令(平成18年政令第208号)第2条において準用する法第13条第1項(同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による届出を行わなければならない。この場合において、検査材料は、同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。

検査方法 検査材料
PCR法による病原体の遺伝子の検出 総排泄腔拭い液、  腔拭い液、血液又は臓器
ウイルス分離による病原体の検出 総排泄腔拭い液、  腔拭い液、血液又は臓器

2.獣医師は、臨床的特徴、血清学的状況若しくは疫学的状況から鳥類に属する動物又はその死体がインフルエンザ(H5N1)にかかっている疑いがあると診断し、又はかかっていた疑いがあると検案した場合は、(1)にかかわらず、病原体診断を待たずインフルエンザ(H5N1)を指定感染症として定める等の政令第2条において準用する法第13条第1項(同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による届出を行わなければならない。

第10 届出様式

発生届様式PDF(76KB) | 発生届様式Excel(34KB)

診断・対応ガイドラインなどは、厚生労働省ホームページ「感染症法に基づく獣医師が届出を行う感染症と動物について」を参照してください。

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