基本事業目的評価表22702 畜産業を支える技術開発の推進

主担当:農水商工部農業経営室  室長 近藤和夫
電 話:059-224-2354

基本事業の目的

畜産業を支える技術が、開発され、技術移転されています。

各種データ



目標項目
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
目標
達成状況

下:実績値
上:目標値
下:実績値
上:目標値
下:実績値
上:目標値
下:実績値
上:目標値
下:実績値
畜産業を支える技術開発件数 
 
7件 
7件 
8件 
9件 
0.89 
9件 
7件 
6件 
7件 
8件 
研究成果公表件数 
 
37件 
37件 
39件 
40件 
1.00 
35件 
40件 
45件 
53件 
44件 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  20062007200820092010
予算額等(千円)  35,082 32,901 34,436 32,003 28,866

2010年度の取組概要

 畜産研究所は「県民しあわせプラン」を推進するため、「産業としての畜産を盛んにする」「県民の健康・安全・安心に貢献する」「循環型社会の実現に貢献する」ことを研究開発の基本目標として、県民(消費者、畜産業者、畜産関係団体)の視点に立った技術開発を推進するため、次の3テーマを設定し、時代の要請に応じた試験研究を実施しました。
(1)産地間競争力を高める技術開発 (2)安全安心を確保するための技術開発 (3)循環型社会の実現に貢献する技術開発
 平成22年度は、重点的な研究として「牛肉のおいしさ成分研究事業」、「耕畜連携による粗飼料生産と乳牛への給与技術の開発」「牛胚活用新技術開発」を、競争的研究プロジェクト推進事業として「自給飼料を基盤とした国産畜産物の高付加価値化技術の開発」「麦立毛間水稲直播栽培を導入した省力的飼料用稲−麦二毛作栽培技術の開発」「低・未利用食品残渣の高度利用技術の開発」に取り組むとともに、他に4課題の研究事業に取り組みました。開発された技術等は、行政・普及と連携のもと積極的に技術支援し、実用化しました。

評価(成果や課題、その要因)

・基本事業の二つの数値目標のうち、技術開発件数は8件と目標の9件を達成できませんでしたが、成果情報、学会発表、学術雑誌への論文投稿、成果発表会、現地実証試験、技術支援等による研究成果の公開などの発表件数は44件で目標の40件を達成しました。
・産地間競争力を高めるための研究では、「これからの三重県ブランド肥育牛生産技術の開発」で、よりおいしい牛肉の生産をめざし、エサだけでなく、飼料添加資材や飲み水についても検討しました。また「牛肉のおいしさ成分研究」では、牛肉のうま味成分の分析および官能評価等による味覚判定により「おいしさ」を総合的に解析しました。
 「地鶏肉の美味しさ向上に関する研究」では「みえ特産鶏」のブランド力アップのため、品質向上のための諸条件を究明し、客観的な肉質評価法を検討しました。
「牛胚活用新技術開発」では、受精卵段階での性判別技術やクローン技術を使い優良牛の遺伝形質の継承に取り組みました。また飼料専用イネの利用性、経済性、生産物の品質を確認するための試験を豚・鶏で行いました。
・畜産物の安全・安心を確保するための研究では、「強制休産時におけるストレス低減技術の開発」としてアニマルウェルフェアに対応した強制休産方法の検討に取り組みました。
・循環型社会の実現をめざした研究では、「耕畜連携による粗飼料生産と乳牛への給与技術の開発」で流通性に優れる家畜梱包堆肥を用いて、圃場における作業性および堆肥の散布精度の調査を実施し、塊状になった梱包堆肥でも既存の堆肥散布機で支障なく散布できる解体装置を開発し、特許出願を行いました。「自給飼料を基盤とした国産畜産物の高付加価値化技術の開発」「麦立毛間水稲直播栽培を導入した省力的飼料用稲−麦二毛作栽培技術の開発」では、稲麦発酵粗飼料や飼料用米等を活用した発酵混合飼料による牛乳生産技術を開発することで飼料自給率をめざしました。「低未利用食品残さの高度利用技術の開発」では、飼料米のソフトグレイン化による低コスト化と豚肉生産技術の開発に取り組みました。

構成する事務事業



事務事業
事業目的
予算額等
(千円)
取組内容とその結果
貢献度
A 畜産関係県単経常試験研究費
(畜産研究所)
県内の畜産農家が抱える課題解決のため実施する研究事業で、技術開発と農家での開発技術実証を目的とします。 
21,697 
県内の畜産農家が抱える課題の中から、ブランド肥育牛飼養にかかる新技術、飼料専用イネの穀実を用いた豚肉、鶏卵肉生産技術、地鶏肉の美味しさ向上技術と、採卵鶏の強制休産時のストレス緩和技術について研究を行いました。
その結果、牛肥育後期の麦ワラサイレージ給与が稲ワラ給与と比べ、肉質について遜色ない結果でありました。また、モミ米を飼料の10〜30%配合して豚・鶏に給与しても生産性に影響がないことが確認できました。さらに地鶏肉の雌雄、部位別で味覚バランスは異なるものの、飼育期間の違いによる大きな影響はありませんでした。なお、それぞれの試験課題において、技術開発のための重要な知見が得られました。 
B 耕畜連携による粗飼料生産と乳牛への給与技術の開発費
(畜産研究所)
三重県の酪農経営は輸入飼料への依存度が高いため飼料自給率が極めて低く、さらに、生乳生産調整や輸入飼料急高騰により危機的状況にあります。加えて、輸入飼料の安全性やふん尿処理に起因する畜産環境問題が懸念されています。したがって、資源循環型農業の構築という観点から、地域で粗飼料生産を請け負う外部組織(コントラクタ)や混合飼料(TMR)を調製供給するTMRセンターの組織を育成し、粗飼料自給率を高めることが喫緊の課題です。畜産研究所では、これら組織への技術移転を目的に、耕畜連携を前提として、堆肥を用いた水田での飼料作物生産技術を開発し、自給飼料を多用したTMRの新しい利用技術の開発と乳牛の飼養技術を確立します。 
2,388 
自給飼料多給のためには自給粗飼料(サイレージ)の品質向上が不可欠です。また、コントラクタがサイレージを生産供給する場合にも高品質なものを生産する必要があります。そこで、サイレージの品質向上を目的に新たな添加剤の効果について検討しました。飼料用ヒエおよびトウモロコシにサイロガードを添加してもサイレージ発酵品質の改善効果は認められませんでしたが、ソルガムでは、発酵品質に顕著な差は認められないものの、サイレージ開封後の好気的変敗は抑制されました。今後、普及センターへの情報提供とともにサイレージ生産農家に対して伝達を行う予定です。 
C (重)牛肉のおいしさ成分研究事業
(畜産研究所)
三重県産和牛肉が、消費者の三重県ブランドに対する期待を裏切ることのないようにするため、おいしさを追求する技術が開発され、肥育農家へ技術移転されています。 
1,268 
・精肉業者と協働して分析用の三重県産和牛肉を収集し、遊離アミノ酸等のうま味成分の分析を行い、おいしさ要素を総合的に解析するためのデータを蓄積しました。
・熟成(2週間)により牛肉中各遊離アミノ酸含量は、ほとんどの項目で上昇するため、総アミノ酸含量も上昇し、おいしくなる要因として裏付けられました。
・精肉店等の保存環境等の違いが牛肉中遊離アミノ酸含量に影響を及ぼすことがうかがわれました。
・脂肪酸組成と異なり、牛肉中遊離アミノ酸含量は血統による差があまり見られませんでした。
・遊離アミノ酸総量が増加するほどうま味が増えますが、脂肪交雑(霜降り)の度合いが過大になると遊離アミノ酸総量、特に甘味に関係するアミノ酸が、減っていく 傾向があることが分かりました。 
D 研究交流・研究プロジェクト推進事業(再掲)
(科学技術・地域資源室)
地域の産業・人的資源を活用した独自の研究・技術開発の活性化をはかり、その成果を実用化するためには、企業等の事業者・生産者と、大学等の高等教育機関及び公設試験研究機関との密接な連携による研究プロジェクトの実施が効果的です。その具体化に向け、産学官が連携した国等の研究プロジェクトへの応募と競争的研究資金の獲得を目指した取組や獲得後のスムーズな事業運営の支援を行います。 
261,077 
・国及び国の関係機関、民間財団等が公募する競争的研究資金制度やその活用事例に関する情報を得るため、地域科学技術に関する会議や各種公募事業説明会に参加するとともに、情報の共有をはかりました。
・国等の競争的研究資金に88件申請しました。
・前年度からの継続研究事業27件、本年度からの新規研究事業27件を実施しました。
・獲得した競争的研究資金の効率的な予算管理を進めました。
・獲得した研究プロジェクトを本事業に位置づけ、一括して予算に計上するなど、契約事務等の円滑な運用を行いました。
・産学官の研究者等の連携研究交流の推進と競争的資金の獲得をめざすため、三重県の各研究所が主体となった13の連携研究会を設置・実施しました。
・大型研究プロジェクトの立案及び申請に向けた育成試験を4件実施しました。 
 
E 牛胚活用新技術開発費
(畜産研究所)
牛胚性判別技術を畜産現場に応用する事で、高級ブランド牛肥育や繁殖用の雌牛、あるいは増体の優る肥育用雄牛等、希望用途にあわせて受精卵段階で自由に選択し、計画的な肉牛経営や酪農経営での雌牛効率的生産を可能とする目的で、本技術の向上と実用化に取り組む。また、クロ−ン牛の産肉能力実証と高品質クローン胚生産技術の検討では、同一遺伝子を持つ個体を多数生産できる体細胞クローン技術を用いて、高能力牛の細胞からクローン牛を複数生産し、産肉能力の高さや斉一性を検証するとともに、卵丘細胞をクローン胚作出に用いる場合の適切な培養方法を検討し、流産や死亡率の低減可能な胚作出方法を確立します。 
3,313 
牛胚性判別技術については、県の関係機関や家畜共済その他、牛繁殖技術従事者とともに、農家試験や移植技術者への性判別胚配布等、本技術を野外で応用しました。また、本技術の更なる普及に必要と言える性判別胚の保存技術を検討しました。その結果、採胚、性判別から移植終了まで24時間程度の経過で受胎が得られ、低ランク胚も受胎する可能性がある等、野外実証ができました。また、バイオプシー操作時の胚への損傷低減を目的に、性判別濁度値のモニターと並行して変性細胞を用いた性判別子牛生産が可能であることを実証しました。更に、性判別胚由来子牛の効率的生産を目的とした双子生産や分別精液の利用について実証しました。
 体細胞クローン技術については、@高品質体細胞クローン胚作出を目的に、増殖能力が旺盛な卵丘細胞を用いて胚作出を試みました。314個の徐核卵子と卵丘細胞との融合率は58.3%とやや低く、胚発生率も8.0%と低くなってしまいました。卵丘細胞の不適切な凍結保存によってほとんどの細胞が死滅してしまい、胚作出に使用するまでに何代も分裂を要したことが卵丘細胞の品質低下を招き、胚作出成績が低迷した一原因であると考えられました。Aこのため卵丘細胞の生存性高めるための凍結方法について凍結用容器の比較および凍結溶液の比較を行いました。凍結後の生存細胞数はセルバンカーを用いた凍結方法で有意に多い結果となり、精液ストローを使用する場合には凍結溶液の感査時間を適度にとる必要があることが判明しました。Bクローン胚の核となる体細胞の有効な保存方法について検討しました。保存容器としてクライオチューブと1ml用精液ストロー管を比較した。液体窒素内での保管容器の識別のし易さは、クライオチューブがやや優れ、保存容器の収納容量は精液ストローが非常に優れることが分かりました。 
F 畜舎鼠害鳥害等対策技術検討事業
(畜産研究所)
畜舎等で発生するネズミや外部から侵入する野生鳥獣などにより、エサの盗食、糞害等の衛生被害が問題となるほか、鳥インフルエンザや口蹄疫など伝染病などへの懸念もあり、その対策が喫緊の課題となっているため、研究所畜舎において、新資材などを活用した低コストで、効果が高い被害防除・進入防除方法について実証検討を行います。 
200 
畜舎内生息の鼠への有効駆除手法の実証として、忌避剤、粘着シート等、有効と考えられる手法を組み合わせた駆除方法の効果について観察中です。