基本事業目的評価表32503 感染症対策のための調査研究・試験検査の推進

主担当:健康福祉部健康危機管理室  室長 西中隆道
電 話:059-224-2359

基本事業の目的

調査研究や試験検査の成果等が、感染症対策に活用されています。

各種データ



目標項目
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
目標
達成状況

下:実績値
上:目標値
下:実績値
上:目標値
下:実績値
上:目標値
下:実績値
上:目標値
下:実績値
調査研究成果件数 
 
4 
4 
4 
4 
1.00 
5 
9 
4 
5 
6 
試験検査実施件数 
 
1,700 
1,700 
1,800 
1,800 
1.00 
1,620 
2,019 
2,181 
2,292 
2,352 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  20062007200820092010
予算額等(千円)  1,994 1,461 1,221 889 500

2010年度の取組概要

・感染症の予防及びまん延防止対策並びに適切な医療を推進するため、2課題の研究(性感染症予防に関する研究、セラチアに関する研究)、新型インフルエンザをはじめとする感染症関連情報の収集・解析・提供、行政検査等を行い、感染症予防対策の推進に対して技術的・科学的根拠を提供しました。
・調査研究については、論文・学会発表等により情報発信し、その発信件数は6件で、目標値を達成しました(目標値4件)。
・試験検査については、感染症の予防と拡大防止のための行政検査(微生物学的検査、抗体検査、抗生物質検査など)及び食中毒をはじめとした有症苦情など健康危機発生時の微生物学的検査等を延べ2,352 件実施し、目標値を達成しました(目標値1,800件)。
・研究員の技術力維持・向上のため、研究会、技術研修、会議等に参加し、試験検査や調査研究に必要な技術力の確保とともに新たな関連技術情報の収集と動向把握に努めました。

評価(成果や課題、その要因)

・平成19〜21年度に実施した性感染症予防に関する研究から明らかとなった課題を踏まえ、平成22年度事業「エイズ対策に向けたパートナー検診の推進に関する研究」で関係医療機関を対象としたアンケート調査や先進的に推進している機関のベンチマーキングを実施しました(得られた成果を平成23年度から実施する性感染症予防に関する研究事業で活用します。)。また、セラチアに関する研究では、本菌を消毒液、点滴液に接種し、経時的にサンプリングして、菌数の変化を計測しました。その結果、セラチア・リクファシエンスは、過去の院内感染事例の原因菌として報告されていないが、充分に原因菌となりうる可能性が示されました。
・性感染症の定点サーベイランスは他の都道府県でも課題が指摘されており、性感染症予防に関する研究については、厚生労働省研究事業「国際的な感染症情報の収集、分析、提供機能およびわが国の感染症サーベイランスシステムの改善・強化に関する研究−STI(性感染症)サーベイランス戦略」の研究班から評価を受け、研究協力を継続しました。
・試験検査実施件数は2,352件で、21年度実績値(2,292件)を60件上回りました。2,352件の内訳は、平常時の検査が1,901件(21年度2,215件)、問題発生等の緊急時の検査が451件 (21年度77件)でした。
・腸管出血性大腸菌による大規模食中毒の検査への迅速な対応協力とともに、平常時における感染症関連の微生物学的検査や抗体検査等各種行政検査に対して的確に対応できました。
・新興感染症や世界的な大流行が懸念されている高病原性鳥インフルエンザの変異や流行の兆候を察知し、迅速な情報提供を行うため、国内はもとより海外の感染症発生動向情報にも注意を払っています。

構成する事務事業



事務事業
事業目的
予算額等
(千円)
取組内容とその結果
貢献度
A 健康危機管理科学的対策費(再掲)
(保健環境研究所)
食の安全をはじめとする県民の健康不安の払拭に寄与するため、分析技術力の維持・向上、国の保健衛生行政の動向等の把握に努め、健康危機管理に対応する科学的根拠に基づいた的確な情報を提供することを目的とします。 
905 
地方衛生研究所全国協議会等の会議・研究会や各種技術研修に参加し、他の地方衛生研究所との連携の強化を図るとともに、国等の保健衛生行政の動向や新たな技術情報の把握、技術の習得に努めました。また、ISO9001品質マネジメントシステムを運用し、食品衛生検査業務の継続的改善を図りました。 
 
B セラチア・リクファシエンスの細菌学的特性の解析費
(保健環境研究所)
平成20年夏、これまで注目されていなかったセラチア・リクファシエンスによる院内感染事故事例が発生しました。これまでセラチア・リクファシエンスによる院内感染が報告された例はなく、そのため消毒液や点滴中での動態、ヒトに対する病原性等の解明はなされていません。そこで、本研究では、点滴液、消毒液中の本菌の動態を解明し、院内感染のリスクを低減するための基礎資料とします。 
382 
院内感染事例で分離した株の
1 種特異的遺伝情報が保存されている16s DNA及びハウスキーピングGene のうち少なくとも1領域のDNA塩基配列を解析します。
 腸内細菌科では同定用のとしてtoxR領域ターゲットとしたPrimerだけしか報告されていなかった。そこで、toxR領域及び細菌同定に最も利用される16s-RNAのほぼ全長をPCRにより増幅し、シーケンスを行い、現在得られたデータをデータベースと照合を行っている。
2 本菌を消毒液、点滴液に接種し、経時的にサンプリングして、菌数の変化を計測します。
 温度条件、接種菌量を変えても、セラチア・リクファシエンスの菌数の変化は、他のセラチア属細菌と同等の増殖能を示すとともに、消毒液に対する感受性も同等であった。
3 発育促進物質を消毒液に添加して、菌を接種し、経時的な菌数の変化を計測し、2の結果と比較し発育促進物質の違いによる、菌の動態の変化を調べます。
 1mL当たり数個の菌を接種し、20℃で保存した場合のみYeast extract、Soytone peptoneの添加により、若干の菌数の増加が見られた。 
 
C エイズ対策に向けたパートナー検診の推進に関する調査研究費
(保健環境研究所)
平成19年度から3ヶ年計画で実施した「性感染症予防推進戦略的サーベイランス研究事業」による性感染症4疾患患者全数把握調査結果を基に患者の発生動向等を分析し、県内における「HIV患者・感染者」をはじめとする性感染症患者発生リスクを検証します。県内医療機関にその結果を提供するとともに、調査結果の有用性、今後取り組むべき対策等を内容とするアンケート調査を実施し、併せて「パートナー検診」の重要性を周知します。また、「パートナー検診」や「HIV検査」早期受検の勧奨をはじめとする性感染症対策に取り組む先進的な機関をベンチマークするとともに、これらすべての結果を踏まえ、次年度以降のエイズ対策(性感染症対策)に向けた取組を策定します。 
118 
地域の性感染症対策に積極的に取り組む保健所職員、市町の感染症対策担当者、健康危機管理室担当者等をメンバーとしたWGを立ち上げ、以下のことを実施しました。1.平成19年度から3年間実施した性感染症4疾患患者全数把握調査の分析結果から、年齢階級別報告数は男女とも20代が多かったが、女性のクラミジア・淋菌混合感染は10代後半で最多となり、低年齢化が顕著に現れたことなどを報告にまとめました。2.性感染症4疾患患者全数把握調査に協力を依頼したすべての医療機関に、男性の性器クラミジア感染症の16.1%が産婦人科からの報告であったことなど、パートナー検診の重要性を含めた分析結果を送付すると同時に、今後の性感染症サーベイランスのあり方等を問うアンケートを実施し、今後の事業展開に貴重な回答が得られました。3.「パートナー検診」の重要性周知や「HIV検査」勧奨等、性感染症対策に先進的に取り組む2機関(岡山市保健所、聖路加看護大学)を対象としてベンチマーク調査を実施し、今後の事業展開に貴重な助言が得られました。4.これらの成果から、新規事業「新たなSTIサーベイランス確立に向けた先駆的研究(H23〜25年度)」を計画しました。