今日のイセエビ(8月21日)
幼生飼育時の注水量試験の結果がでました
7月に実施していた注水量の結果がようやくまとまりました。この実験については、7月2日のこのコーナーで紹介しましたが、体長約5㎜のイセエビ幼生を6水槽に60個体ずつ収容し、新水の注水量を0.3、0.6、0.9 L/分の3段階に設定して約1ヶ月間飼育し、幼生の成長、生残を比較するというものでした。
結果はといいますと、実験終了時の体長は注水量が少ない方が大きくなり、特に0.3 L/分の条件では随分と大きくなりました。これは、注水量が少ない方が餌の流出が少なく、幼生の摂餌量が多くなったことが関係していると推察しています。
実験終了時の体長と注水量の関係
(青丸は実測値、赤丸は2つの水槽の平均値)
生残率はいずれの水槽も95%以上と高く、条件による差は見られませんでしたが、0.3 L/分の条件の1水槽では、幼生の触角腺(人間の腎臓にあたる器官)の壊死が見られる個体が3個体(5%)見られ、少し気になりました。飼育時の水槽内の水質(アンモニア濃度や亜硝酸濃度)には水槽間で差はありませんでした。
イセエビ幼生の触角腺(見にくいですが、真中にある器官です)。触角の根元にあるのでこのように呼ばれ、主に排泄の働きがあるとされています。写真からは分かりませんが、触角腺は体表にある穴から外部と通じており、その穴が詰まったり、内部で細菌が増殖すると壊死が始まります。
以上のことから、イセエビ幼生の注水量は、今まで考えていたより少なくても十分飼育ができると考えられました。この実験は、もう少し繰り返して結果を確認する必要がありますが、飼育コスト削減の可能性を示す結果が得られたと思っています。
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