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米田 奈緒子先生

 

ふぁす
米田 奈緒子先生


人の言葉の発達について考えてみよう

 まず、赤ちゃんは1歳くらいで物の名前を覚えますよね。「マンマ」のようにすべての物に名前があると知って、どんどん名前を覚えて、「マンマ、ちょうだい」のように言葉を増やしていきます。爆発的に言葉の数が増えますが、それだけではありません。独り言のように、自分一人でお喋りをします。それはやがて、自分の頭の中で話すようになります。それは、「思考」です。人の言葉には「外言」つまりコミュニケーションのための言葉と、「内言」つまり思考としての言葉があるのです。しり取りなどの言葉遊びは、思考の元となる言葉の数を増やします。また、一件無駄に見える「おしゃべり」を繰り返して、人は時系列に話したり、物事の仮定をしたり、高度な思考ができるようになると言われます。
 コロナ時代でステイホームな毎日ですが、家族でおしゃべり、楽しんでいてくださいね。直したり、指摘したりしなくていいのです。話すことの楽しさを味わい、きままに、自由に話すことが大切です。「語り(ナラティブ)」となって、自身の思考をまとめ、高度な能力となってお子さんの言語思考能力になります。おしゃべりは大切なんです。
内言と外言
 ふぁすでは、このほかYouTube公式チャンネルにて 「ぷちゼミ」を配信しています。 一話3分程度の発達心理学のミニ講座です。 家事・育児・通勤・通学の隙間時間にどうぞ! 一般社団法人家庭教育研究センターFACE - YouTube  
ぷちゼミ


聞く力を伸ばそう

 今回は聞く力について考えてみましょう。子どもの知能検査をしていると、見分けることに比べて聞き分けることが苦手な子に出会います。知的に低くないのに、聞き漏らしが多いために、質問に正しく答えられず、残念な結果になってしまいます。
 もちろん、子どもは大人ほど語彙がありませんから、例えば「汚職事件」を「お食事券」と聞き間違えるかも知れません。それは当然のことで笑い話で済ませられますし、やがて漢字熟語を覚えていくことでしょう。けれども、例えば「一年は何ヶ月ですか?」と聞かれて「365日」と答えてしまうようなタイプのお子さんは、一年が365日であることを知っているわけです。一年が12ヶ月ということも知っているかもしれません。なのに、答えは不正解です。聞かれた質問を最後までしっかり聞き分けられないために起きる失敗です。
 スクールカウンセラーの頃、先生が国語の授業で落語のCDを用意しながら、「最近の中学生って、落語を聞いても笑わないんですよ。」とつぶやいていたことがありました。お話を聞いてもどこがおかしいかわからないようなのです。確かに、現代っ子はテレビ、パソコン、ゲームなど「目から入る情報が多く」「耳から入る情報」に鈍感になっているようです。そこでオススメなのが、まずは「カルタ取り」や「しりとり」などの遊びです。最初は勝たせてあげてください。やる気になって、やるほど得意になります。次には、逆さ言葉遊びをしてみてください。「『ス・タ・レ』逆さ言葉なんだ?答えはレタスでした。」というように。最初は「い・か」くらいから始めると良いかもしれません。段々文字数を増やし、「ホットケーキ」の逆さ言葉「キーケトッホ」ができるようになる頃には、聞き漏らしが減るかもしれません。様々な遊びの中で、聞くことに注意を払うゲームをたくさんしてみてください。コロナ禍はまだ続きそうです。ステイホームのストレス発散にも「ムーホイテス、逆さ言葉なんだ?」


社会性発達のお話

 今日は「社会性発達」のお話です。人は生まれてから生きていくために、人と関わる様々な能力を身につけていきます。初めに育ててくれる人との関係が作られますが、次にその養育者の声や表情を手がかりに、活動を広げていきます。養育者の反応を手がかりにすることを「社会的参照」と言います。
 ギブソンという心理学者は、底抜けガラスの端にいる赤ちゃんが、どのように行動をするかを観察しました。生後半年くらいのハイハイができる赤ちゃんは、すでに「高さ」を認知できているので、ガラス張りの崖を怖がります。その時に、崖の向こうからお母さんがどんな表情をするかで行動が変わるということを報告しています。もし、お母さんが怖がる表情をすると、赤ちゃんは止まります。ニコニコと安心している表情をすると、少し考えて、ハイハイして来るのです。このように、赤ちゃんはお母さんの表情を手がかりにしているのです。
 そして経験を積んで、幼児になる頃には、親のイメージを持ち続けられるようになるので、親から離れて幼稚園や保育園に行って過ごすことができるようになります。小学生になる頃には、親が怒りそう、悲しむだろうというようなことも大体わかるようになり、その基準になる人が先生などにも広がっていきます。それらは実は、乳幼児期に「社会的参照」が習得された証拠なのです。パッと親の顔が思い浮かぶって、大事なことです。
 そのような経験が積み上げられなかった子は、どうなるでしょう?
 危険なことや人を困らせる行動かどうか思い迷うことなく、身勝手な行動をしてしまうでしょう。子どもが親を見た時、親の反応がなかったら? いつも怒った顔してる? 沈んだ表情してる? スマホばっかりしていて、そもそも目が合わない?とても恐ろしいことだと思いませんか。
 お母さん(主たる養育者の方)どうか、お子さんのそばで、一緒に体験し、見守って、反応を返してあげてください。今からでも遅くありません。


道徳発達の話

 近代日本の政府が初めて作った教育のルールの中に、「道徳」というその当時の価値観を表す授業があったようですが、これからお話しする「道徳」はそれとは全く別の社会性発達の話です。
 子どもの心の中には、正義や協調性、他者との良好な関係を作るためのシステムが作られて行きます。それもステージ毎に発達していくのです。
 例えば、アメリカの心理学者R.コールバーグは、このように唱えています。小学生低学年では「先生や親に褒められることが正しいこと、つまり『良い子』」を正義と捉えていますが、中学年では「皆で決めたルール」が行動規範となります。更に高学年になると、同世代の仲間と秘密を持つことも出てきます。仲間への忠義心の優先を「正義」と感じる時期がある、ということになります。学齢期の子どもたちのトラブルの多くが、実は、この道徳水準の違いからくるものです。兄弟喧嘩を親から見ると、どちらも正しい時がありますね。上の子と下の子の道徳水準のレベルが異なることを、親は知っています。「友達との約束」を優先する上の子(高学年)と「お母さんと過ごすこと」を望む下の子。それぞれに心の発達を遂げています。
 コールバーグの後継者でハーバード大学の研究者セルマンは「社会性の発達は葛藤を通してしか身につけることができない」と言っています。なんでも大人が介入してしまうと、子どもには本物の社会性は身に付かない、ということになります。「はい、仲直り」「お互い謝って」と一瞬で解決しようとしていませんか?時に迷い、間違い、後悔する、そのことそのものが実はとても大切です。失敗する権利は子どもにあるということが「子どもの権利条約」にも謳われているのですが、忙しい大人たちは、なかなか子どもの迷いや失敗に沿う時間が取れないことが、昨今の社会性発達不全の原因とも考えられます。
 どうか、大人のみなさん、子どもの発達を急ぎすぎないでください。


日本語を丁寧に身に付けよう

 人の言葉の発達についてもう少しお話します。生まれてしばらくすると赤ちゃんは、呼吸する時や泣く時に、一緒に出る音を自分の声として意識して発するようになり、それが言葉の元になります。毎日のケアの中で言葉を掛けられ、生後半年の赤ちゃんは、喃語と呼ばれる「うっくん」「ばばば」のような言葉の元を、養育者と同じイントネーションで発することがわかっています。母語の誕生です。つまり、話すことができないうちに、すでに耳はできていて、頭の中には言葉が生まれていると言えます。人の聴覚は胎児期にほぼ完成しているので、おそらくお腹の中にいた時から赤ちゃんは聞いています。たくさん話しかけてあげて下さいというアドバイスはこのような理由によるものです。
 そして1歳頃に「まんま」のように意味のある言葉を話すようになる頃には、1000語くらいの言葉を理解していると言われるのです。人より話し始めが遅くて心配な親御さんも聞いて理解することができていることもあるので急がないでください。そして言葉を添えて一緒に遊ぶことがとても大切です。お母さんのおしゃべりは美徳です。「夕焼けがきれいね。」「もうすぐ桃の節句だね。お雛祭りのことよ」と季節やイベントに合わせておしゃべりをすることが子どもの情操に良いだけでなく、言葉の発達を促します。
 小中学生になっても、生活の中から社会や科学の知識を身に着けていくことは大切です。帰省や旅行の折には、史跡や文化遺産に足を運んで、社会見学をすることをお勧めします。「総合的な学習」を学校だけにお任せしないで、ちょっとしたお買い物や散歩の時間を作ってお子さんと過ごす中で、日本語の誤りを修正することもできるでしょう。例えば花が散ることを表現する時に、桜は散る、椿は落ちるというように、本来日本語は美しく、とても表現が豊かです。親子で学ぶという毎日は、とても刺激があって楽しいものですよ。お試しください。
言葉の発達


子どもの体調に気をつけて

 こんにちは。梅雨が明けて蒸し暑い夏がやってきました。そして台風の季節でもあります。
 みなさん、調節性起立性障害という言葉を知っていますか?保護者の皆さんが子どもの頃にはなかった診断名ですが、今は小児科で診てもらえる体調不良です。正確に言うと病気ではなくて、体質のような発達の途中で起きる不調なのですね。「血圧」「血糖値」「貧血」などを測定して診断します。ずっと立っていると倒れてしまう子や、朝起きれなくて学校に遅刻しそうになる、という子の中には、このような体質を抱えている子もいるのです。
朝起きられないお子さんを見ていると、親としては学校で何かあったのかしらと心配になってしまいますが、心理師からは、まず小児科受診をして、この調節性起立性障害ではないかと診てもらってください。もし不調があれば、体調を整えるお薬を処方してもらえることもありますし、診断書も出してもらえます。そうすると理由不明の不登校ではなく、病気として休むことが勧められます。発達の途中で起きる体調不良なので、特効薬というのはないのですが、逆に体の急成長が止まると自然と治るので、散歩したりして、体調を整えるようにしてください。
 頭痛や腹痛も急成長期の体の中の成長痛のような場合もあります。放っておいても良くならないし、サボっているわけでもないので、まずは小児科のドクターに診てもらうことをお勧めします。
またこの時期に意外と起きているのが、脱水です。子どもは寝ているうちにも脱水を起こしやすいので、ひとまず起こして水分を取らせることで、頭痛などが軽減することもあります。低血糖が起きているときには、少しシロップの効いたホットケーキなどもお子さんの心と体を元気にしてくれます。忙しい朝の食事などの生活をちょっと考えてみてください。元気に過ごしていることが一番大事ですよね。元気があればバリバリ頑張れる。
 蒸し暑く食欲も落ちがちですが、お互いに声をかけあって、良い睡眠と食事を心がけてください。スクールカウンセラー歴12年、三重県教育委員会不登校支援アドバイザーのなっきーからのお願いでした。


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社会で活躍する人が子どもの時からしていること!?

 今日は親心をくすぐる興味深いお話を紹介します。アメリカのスタンフォード大学で新入生の学部長とアドバイザーを務めたジュリー・リースコット・へイムズさんの講演から。
 彼女によると、ハーバード大学の研究の結果、子どもが大人になって社会で成功するために、家庭で一番重要な教育活動は「家事の参加」であるとわかった、と言うのです。スタンフォードやハーバードというと、世界有数のエリート大学ですので、彼女の講演の対象は、当然アメリカでも教育熱心な家庭の保護者でしょう。日本と同じように、我が子をエリートにしたくて、お勉強やスポーツ、習い事など、毎日子どものために走り回ってお金と時間と愛情を注いでいる保護者達に彼女はこう話しています。

 「子どものためと思って、コンシェルジュや秘書やドッグトレーナーのように我が子を管理監督してはいないでしょうか。成績や結果を全てと思い込み、失敗したら自分は価値がないと感じでしまう子育てをしてしまっている。」

  塾やお稽古に追われ、お手伝いの時間など無駄と思ってしまう保護者は多いと思いますが、家事を手伝うことは、「自分の存在が全体の向上に役立つこと」を子どもに教えるのにとても良い機会です。自分のことだけやって大人になった成績の良い人よりも、家事ができる人は結果的に出世しているということなのだそうです。なるほどそう言われれば確かにそうですね。
 またもう一つ、管理されて追い立てられた人は自分で計画することができず、人に管理されることになってしまうということ。更に成績や結果が出せないと必要のない存在と感じるようになってしまうこと。激しい競争社会を勝ち抜いていく真のエリートは、自分のことだけでなく会社や社会全体を良くしようと考え動ける能力を持っている人で、それを教育できる現場は、なんと家庭にある、ということなのですね。
 
 子どもを管理監督することで自身が有能なマネージャーとなった錯覚に酔いしれていませんか?という問いかけです。子どもを自己実現の道具にしては潰してしまいます。お子さんはそこにいるだけで愛され守られる権利があるのです。優秀でなくても、成績が取れなくても。最後にへイムズ先生は、同じくハーバードの研究から「人の幸福感が大学や企業の名前とは無関係」という結果も紹介しています。丈夫で長持ちする心と体を育てることができたら、親の務めは果たせるということなのかしら。みなさん、いかがですか?


プレ思春期(小学校高学年)の子どもとの距離の取り方

 小学生の子どもは入学から卒業までの6年間で、身体も心も知能も急激に成長することはご存じかと思いますが、今日はもう一つ、大きな変化が来ることをお話しましょう。
 それは性への目覚めです。第二次性徴期というのは中学生くらいと思われていますが、身長145㎝体重40㎏というような体格が基本なので、体が大きい子は全体に思春期に入るのも早いです。
 小学生では大人になっていく自分の体のことを頭で考えることも難しいですし、心はまだまだ幼いのに、気分の変調や身体的な違和感に捉われ、それが原因でお休みが増えることもあります。
 子どもの思春期の前振れをプレ思春期などと呼ぶこともありますが、身も心も不安定になりがちです。

 それまで優しい従順だった子、特に男児は母親に対して粗暴になったり距離を置こうとすることがあり、一方で母を求める気持ちがあるので、扱いに困る親御さんが多いと思います。
 女児も女児で生意気になり父親との距離を取りたがります。これは子どもの心が体に合わせて大人になろうとしている証拠ですので、本当におめでたいことなのです。まず親として健康な発達を祝ってください。
 
 その時に大切なポイントをお伝えします。つかず離れずの距離が重要です。あまりに管理監督が過ぎると子どもは窒息しそうなるので、そっと一人になる時間をあげてもいいです。
 けれどそれでお子さんのことを忘れてしまうこともまだ危険です。お子さんが「おかあさん?」と言ってきたとき、「なに?」と言ってあげられる余裕を持っていてください。「なんでもない」「そう。」そんな距離が大事です。

 また学校のトラブルや自分の悩みを打ち明けてきたときも、小さい時とは異なる配慮が必要です。心も知性も経験も積みあがってきているお子さんであれば、自分で解決する能力が備わってきています。
 聞いて整理してくれたり、共感してくれたら、明日自分で解決しようと、考えられる子どもに育っていると信じてあげてください。本人が自分でできない、ということはなんでも手伝ってあげて結構です。
 子どもの悩みを自分の問題と思い込んで、すぐに行動してしまう親御さんが多いですが、それはお子さんが「自分で解決する」という社会に出てから大切なスキルを育てる機会を奪ってしまっていないか、考えてください。

 もう思春期がそこまで来ています。友達や先生と過ごす時間が増えていき、自分の判断や自分の責任で行動できる大人になっていきます。
 見守る姿勢が小学生の高学年の子どもを育てるポイントです。そのような距離にある子どもは、決して荒れたりしません。
 親の期待に答えられそうもないというプレッシャーから身動きとれなくなる子どもも多いです。そろそろうちの親が完ぺきではないのではないか、と冷静な目を持ち始めるプレ思春期の子どもの複雑な気持ちは親子だけでは解決しづらいので、そんな時はスクールカウンセラーや先生と一緒に考えられるといいですね。応援しています。


   
「子どものような」心とは

 子どもたちと暮らしていると、時々純粋な発想に驚かされることがありますね。 その一方で統制の取れなさや、バランスを欠いた行動には、親としてイライラさせられます。子どもって本当にエネルギーが大きいです。
 
 今日はその「子どものような心」について、考えてみたいと思います。英語では、「子どものような」という表現に2種類あるのをご存知ですか。「childlike」 と「childish」という表現です。
 「childlike」の方は「子どものように純粋な」という肯定的な意味で、「childish」は、「子どものように幼稚な」という否定的な意味があるそうで、英語で考えると子どもの心をうまく表現し分けていますね。
 
  先生や保育士さんの中に、子どもの心をうまく掴んで指導ができる人を見ていると、子どもと一緒になって遊んだり、何かを発見できるような純粋な好奇心に満ちた人が多いようです。そのような先生は子どもたちからも人気があります。
 児童も中学年以上になるとユーモアのセンスが生まれることはご存知でしょう。ジョークが豊かな先生はやはり人気者。子どもが「面白い」と感じるピュアな心を持ち合わせる人は、子どもと過ごす時間を一緒に楽しむことができます。私たち大人は、そのような「childlike」な気持ちを持ちたいと思います。
 
 一方で大人でも「childish」な姿を見ることがあります。聞き分けがなく、駄々をこねるようないい歳の大人も・・・。理屈をこねるので厄介です。クレーマー気質もそのようなタイプです。
 
 そんな人は子どもの時に、十分に子どもらしい気持ちの表現ができなかったのかもしれません。ですから子どもでいるうちは、悔しくて泣いたり、怒ったり、それ自体が純粋な心でいるので、あまり押さえつけないであげてください。早く大人になってほしい気持ちはわかりますが、子どもの心でいる時間もあげてください。
 
 そして、大人である私たちも、あまりに自分の気持ちを抑え込んでしまいすぎないよう、心の健康を維持すべきかもしれません。「悔しい」「悲しい」「恥ずかしい」というようなネガティブな気持ちを持ってしまう時、「大人だから」と我慢してしまう習慣がついているものですが、それを感じることと、表現することは別なのだと知ると、少し楽になります。
 イライラしている自分を受け入れられないとそれが逆に子どもに伝わってしまうことになります。むしろ「お母さん、すごくイライラしてるんだけど」と言葉にして伝える方が、子どもにもわかりやすいです。感じること自体は人として自然なことです。
 それを一旦意識して、行動と分けることができると、一人の人として子どもたちと出会うことができるでしょう。やってくる夏休み、ぜひ、一緒に遊び、驚き、笑って過ごしてください。


   
心の健康を保つキーワード

 今日はレジリエンス(回復力)とコーピング(対処法)のお話をします。大人の社会に負けず劣らず、現代の子どもたちも、日々様々なストレスの中で生活をしています。その子どもたちが大人になっても元気に働けるような強いメンタルを育てたいと思う親心は当然です。ストレスに強い子どもを作ることは先立っていく親が子どもに残せる大事な教育でもあります。今日はそのためにポイントとなるキーワードを二つご紹介します。

 その一つはレジリエンス、つまり回復力です。レジリエンスは元々、物理学の分野で「外から加えられた力によって変形した物質や物体が、どのくらい元に戻ろうとするか(跳ね返す力)」を表すものでした。近年では、心理学の分野において「強いストレスを体験した際、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる人とならない人の違いはどこにあるのか?」という研究の中で、危機やストレスを乗り越え回復・適応する力である「精神的回復力」を表す言葉として用いられています。(NECソリューションイノベータH Pより)

 レジリエンスを説明するときに、わかりやすい例として、人の心を木に例えると、強い樫の木の大木を想像することが多いですが、実際に強いのは柳をイメージすることなのです。どんなに風が強く吹いても「柳に風」と受け流すこと ができれば決して折れないし、倒れません。柔軟であることが心の健康の大切なポイントです。

 もう一つは、コーピングつまり対処法。レジリエンスが回復する力なのに対して、対処する方法を知っているかということ。避けられない事態を冷静に受け、最小のダメージに留めることができます。自分なりの対処法として、リラックスできる方法を知っていることでそれができるのです。例えば、試験が終わったら美味しいお茶を飲むと自分に言い聞かせて乗り切るというように。「乗り切る」逞しさも必要ですものね。

 私たち心理士は他者の心の苦しさを分け持つために、まずこの二つを身につけています。だからどれだけカウンセリングの話が重くても決してカウンセラー自身が折れることはありません。

 人間いつも元気いっぱいというわけにはいきません。人が生きる社会は常に問題が溢れています。それを無くそうとしても苦しいだけ。どう受け流し、解決していくか、自身のメンタルを健康に保つかということが、これからの時代を生きる子どもたちにも身につけてもらいたいことです。

 できれば互いに傷つけ合わずに、それぞれに心の健康を維持してもらいたいと願います。家庭でできることを提案してあげてください。