現在位置:  
  1. みっぷる広場
  2.   >  家庭教育応援Web講座
  3.   >  家庭教育応援Web講座志治先生

志治 優美先生

 

志治優美先生


「イライラが抑えられない」と落ち込むあなたへ

 本当は子どもや家族をこんなに愛しているのに、なぜだかイライラしてしまう。夜にはベッドの中で反省の毎日。ニコニコ笑顔の明るい家庭のはずだったのに…。
 実はこんなことを思う人は多いのです。『ニコニコ子育て』本やSNS情報があふれているということが何よりの証拠です。あなただけではありません。とはいうものの、心穏やかに子育てしたいですね。
 まず「きもち」について考えてみましょう。気持ちというものは心から湧いてくるものです。気持ちに良いも悪いもありません。しかし、あまり持ちたくない気持ち、つき合うのが苦手な気持ちはあります。自身の怒りや悲しみ、また他人から訴えられる怒りや悲しみをどうしていいかわからないと感じることは多いです。特に怒りとうまく付き合えたらいいなと思います。
「怒りの仮面」(*1)という言葉があります。怒りは第2次感情とも言われます。たとえば寂しい(第1次感情)という感情を持ったとき、寂しがらせた人や出来事に怒り(第2次感情)を感じるということです。
 あなたが怒りを感じたとき、その仮面をずらしてみて仮面の下にある第1次感情に目を向けてみてください。最近、怒ったのはどんな出来事がありましたか?例えば「子どもがテーブルの上にカップのお茶をこぼして喜んでいる。何度も大声でダメといってもきかない。いつもいつも、なんで私を困らせるの!」って、よくあることだと思います。この怒りの仮面をずらしたら…『私のいうことをきかないなんてバカにしてるの!』という子どもにまで見捨てられたような気持ち。『こんなこともわからないなんてこの先、大丈夫かな』という心配。『今、きちんとしつけておかないと』という自分への強迫感が見えます。
 誰があなたを責めるの?責められて辛い気持ちが怒りとなったとき、その怒りの矛先が子どもや自分に向かってしまってはいませんか? どうしても子どもに向かってしまうときには、少しその場を離れる方法があります。タイムアウトという方法です。また自分をなだめる方法もあります。それらを予め準備しておくことも大事なことです。「今度イラっときたときにはこうしよう」と。
 私の中から湧いてくる気持ちは私のもの。自分のものなので、きっとうまく付き合えますよ。

(*1 「怒りの仮面」森田ゆり:エンパワメントセンター主宰)


仲裁から仲介へ

 「子どものケンカに親は口を出すな」という言葉があります。お友だちとのケンカに口出しすると、親同士の問題にすり替わったりということもあります。 何より、子ども自身で大きなトラブルを回避し、暴力的にならずに、相手もOK、自分もOK なコミュニケーションを学ぶ機会を奪うことになるということです。
 おとなは子どもに善悪を教えるため仲裁役になってしまいがちです。仲裁することでその場は収まりますが、子どもの顔をみてください。「にっこり笑って、握手で仲良し」となっているでしょうか。そして、また同じようなことが起きて「何回言ったらわかるの!?」ということも、よくあることです。
 子どもに善悪を教えるのは必要なことです。では、善悪の基準とは何でしょう?時代、環境、文化、相手との関係性などによって変わっています。変わらないことは互いに安心かどうかだと思います。
 悪いことをして、人に恐れられる存在でいる人、人を意のままに動かしていい気になっているように見える人、果たして本当に安心しているのでしょうか。安心した生活を送っている人は、他の人と無用な競争をしたり、勝負をする必要はありません。
 そこで、子どもに伝えたいことは『私もOK・あなたもOK』の安心できる対等な人間関係です。それを育むには、まず「私の気持ちを聴いて」という思いをかなえることです。率直に気持ちを伝えていいのだという経験を積むことです。
 ケンカが起きたとき、子どもは相手に何をされたかを訴えます。相手側も同様に何をされたかを訴えます。されたことは事実として、何があったからその行動につながったのかを聞いてみてください。
 例えば、「Aちゃんにたたかれた」という訴えに、「Aちゃん、何があったの?」と出来事と気持ちを聴いてみてください。聴いたことをAちゃん自身で相手に伝えるよう促してください。Aちゃんが自分のことを、相手に言葉で伝えられたことで自分の気持ち、自分の行動がよくわかるようになります。そして、気持ちを伝える別の方法が浮かびます。そうすると素直に「ごめんなさい」が言えます。
また、Bちゃんにも同じように「どんな気持ちになった?」と気持ちに注目するように声をかけてください。「その気持ちを言葉で伝えて」と、二人の間を仲介する役目をおとなが担うのです。暴力的にならずとも、自分の気持ちが伝わるということを子どもは学びます。
 仲裁役となってどちらかを裁くより、仲介役となって気持ちを口にする練習の方が、コミュニケーション力が育つのです。


子どもの話を聴く

 うちの子に「今日は幼稚園どうだった?」と訊くと「忘れた」というくせにこっちが忙しいときに限って「ねえ、ねえ」とうるさいのよね。―こんなことって、よくありますね。
 すぐに聴けるといいのだけれど、そんなときばかりではありません。「後で聴くから、ちょっと待ってて」というのもやむを得ません。でも本当に「ちょっと」ですよ。そして、待つ目安を伝えてください。「お鍋の火を止めてから、聴くね」「お風呂の中で聴くね」。そしてその時間になったら、必ず聴いてくださいね。
 「待っててくれてありがとう。さっきのお話聴かせて」。子どもの話す気が失せてしまったとしても「何かいいことあった?」などと聴きたいという気持ちが伝わるような声をかけてください。

   幼い子どもは時系列で話せないということがありますが、言い直しをさせることは不要です。話し方の練習ではありません。わからなければ質問をすればいいことです。

 聴く側はまず気持ちを聴いてみましょう。何があったのかの前にどんな気持ちになったのかに耳を傾けましょう。大人でもだれかに聴いて欲しいと思うのは、私の気持ちです。その気持ちがよく伝わるためにこんなことがあったのと出来事を話しています。うまく話ができないといって途中で注意されると話す気が失せるのは当たり前。

   初めから「今日はちょっと悲しいことがあったの。それはね…」と気持ちから話してくれるといいのですが、なかなか気持ちの言葉が出てこない子がいます。そんなときには「そんなことがあったら悲しいね」と返してみると「うん、悲しかった」や「ちょっとイヤな気持ちだった」などと教えてくれます。気持ちが伝わらないと話すことをあきらめてしまったり、怒りの気持ちが湧いてくることにもなります。

 日頃から家庭の中で『気持ちの言葉』を出してみてください。「おはよー。気持ちいいね」「そんなことがあると悲しい」「ドキドキする」。そうすると「グズグズ言ってないで、どうしたいのかはっきり言いなさいっ!」と声を荒げることがほんの少しだけど減りますよ。


ガマンのおねえちゃん、おにいちゃん

 つい最近まで甘えていたのに、妹や弟が生まれると、途端に「おねえちゃんだからね」「おにいちゃんだものね」と言われる。子どもも「だって、わたしおねえちゃんなの」「おにいちゃんだからね」とちょっと誇らしい気持ちになります。
 でも、時々はおねえちゃんやおにいちゃんを辞めたくなる時もあります。せっかくブロックを高く積むことができたのに、赤ちゃんがハイハイでにじり寄ってくる。壊されるのがいやだからとガードしてもニコニコ笑ってやってくる。抱っこして遠ざけようとしたら、暴れる赤ちゃんの足が当たって崩れるブロック。あるときには、触らせてくれないと大きな声で脅してくる。上手にママやパパの顔を描いて、あと少しで完成というところで、いつの間にか持っていたクレヨンでくしゃくしゃにされる。悔しくて悲しくて泣けてくる。
 「まだ小さいからしょうがないよ」「おねえちゃんだから、ちょっと我慢してね」「お兄ちゃんのくせに泣かないの」と親の声がかかる。そんなとき「赤ちゃんだから小さいってことは知ってるよ。だから我慢して怒らなかったよ。邪魔をされたくないから、クレヨンをかしてやったのに」というのが、上の子の言い分ではないでしょうか。
 上の子が優しい子に育って欲しいとの、親の思いはわかります。また子どもも褒めて欲しいのでいい子でいたいのです。しかし、いつもいい子ではいられません。そんな場面では「偉いね。いい子だね」という評価の言葉の代わりに「ありがとう」と言い換えるのはどうでしょう。譲ってくれてありがとう。我慢してくれてありがとうの感謝の気持ちを伝えるのです。
 また、「ブロックを壊されてイヤだったね。「せっかくうまく描けたのにかわいそう。悲しいね」と、一旦、親が代わりに気持ちを口にしてみることが大事です。相手が誰であれ、いやなものはイヤなのです。相手の事情を考えて、いつも譲って、自分を後回しにしていくことは決して美徳ではありません。自分の持った気持ちが注目されないでいたり、否定されると、自信が持てなくなります。
 自分の気持ちを知ること。そしてそれを口にすること。更に、その気持ちに共感されることで、自身の肯定感が高まります。
 後で上の子と二人の時間を作って、他の誰にもじゃまされず、この子だけに絵本を読んだり、抱きしめたりしてみてください。一人ひとりに愛してると伝えてください。  


コミュニケーション能力を育てる

 ある育児雑誌の調査によると、親が子どもに「将来、身につけて欲しい能力」は群を抜いて多かったのは「コミュニケーション能力(協調性)」だそうです。それに次いで「環境適応能力(柔軟性)」「忍耐力(ストレス耐性)」となっているそうです。なるほど、どれも安心して自由に生きるには大切なことです。

 コミュニケーションとは、互いに思いや考え、価値観などを伝えることです。双方向に行われることです。自分の意見を相手に伝えることと相手の意見を聴くことです。自分は遠慮して、相手の思い通りになることではありません。
 コミュニケーション能力を育てるには、意見を聴かれる経験があるということが重要です。そして、その意見を尊重されること。思い通りにならなかったとしても、なぜかなわないのかの説明をされることは欠かせません。そのように双方向のやりとりを学びます。
 「今度の休みにはでかけようと思うけど、どこへ行きたい?」 
 「上野動物園!」
 「え、上野動物園は遠すぎるよ」
 「だって、行きたいもん。パンダとかライオンとか見たい」 「そうか。パンダとかライオンが見たいのね。でもね、上野動物園は遠いから次の日の幼稚園をお休みすることになるよ。パンダはいないけど、東山動物園でライオンを見ようよ」
「パンダ見たかった」
「見たかったね」
 もし、ここで子どもが泣いたり、すねたりしても、それを言い聞かせたり、叱ったりする必要はありません。子どもは思いが叶わないから悲しくて仕方がないです。その気持ちは理解できる、共感できるものだと思います。
 「そんなに泣くんだったら、もうどこへもつれていかないよ!」という言葉で泣くことをやめる子どもはいません。もうこの言葉でおとなの側がコミュニケーションを台無しにしてしまうのです。そして、物事を解決する方法として“おどし”が有効であると教えていることになるのです。

 意見や思い、望みを聴かれる経験が意見形成の機会となり、他者に意見や思いを伝えることができます。このやりとりが日常的にできていれば、自分の意見を通すために攻撃型にも受け身型にもなる必要はないのです。
 「わたしもOK.あなたもOK」の対等なコミュニケーションが対人関係のトラブルを回避する一番の方法なのです。


自分に優しくすることを目指しましょう

 もうすぐ夏休みですね。これだけ暑いとお外にも出かけられません。この長い夏休み、子どもも退屈でいろいろ考えて遊ぶのですが、親にとっては褒められたことばかりではありません。
 「牛乳の紙パックは一体、どんだけ入っているんだろう?」
 「テイッシュペーパーを一旦、全部出してみて、元通りに畳んで箱に入れられるか?」
 「クレヨン1本でどれだけの紙を塗りつぶせるか?」
 一度はやってみたいことばかりですね。しかし、こんなことを子どもがやっていたら「なんて、いたずらするの!!」と怒鳴りつけてしまいます。子どもがわけを話しても、「そんなのただの言い訳。なんで私を困らせようとするの!?」とな ってしまいます。
 どうしてこうなるのでしょう。もしかしたら、ほかのストレスに捉われてしまっているのでは。
 あなたが子どもの頃「もっとちゃんとしなさい」と言われ続けていたとしたら、ちゃんとしている自分を証明したいと思っているのかもしれません。また、子どもの頃に自分の意見を聴いてもらえてなかったとしたら、子どもに考えや意見を持つ力はないと思っているのかもしれません。
 今のあなたはどうですか?時間通りに事を進めないとだれかがあなたを責めますか?あなたがふざけて、子どもと大笑いすると叱る人はいますか?
 
 どうぞ、自分を大切に、自分に優しくしてください。
 まずは自分に優しくすることを一つ見つけてください。たとえば、月曜日には自分への贈り物として花を買う。花を買えたら、自分をほめる。毎日寝る前に、「今日もがんばった。えらいね」と自分をねぎらう。それが1週間できたら、特別なアイスクリームを食べる。そして、アイスクリームを食べながら、あと1週間続けようと思う。
そうやって、自分に優しくする癖をつけてみましょう。
 
 だからといって、こどものいたずらが全部許せるようになるわけではありません。しかし、なぜ子どもがやってみたのかを聴くことはできます。


-->
子どもの喪失体験

 どんなに小さな子どもにも喪失体験はあります。
 例えば、ペットの死、祖父母の死、引っ越し、親の離婚など。これまであったものが失くなってしまうことです。長く病気で患っていたペットの死であったとしても、心の準備があったとしても目の前から消えてなくなるわけです。 その喪失感は大人同様です。むしろ、体験が少ない分、対応しがたいものです。  そんなとき、大人はどのような対応をするでしょう。「コロちゃんは天国へ行ったから、もう痛くなくなったよ。よかったね。今度はもっとかわいいワンちゃんを買おうね。だから、泣かないで」。
 わが子が悲しみの中にいることは、親として耐えがたいものがあります。 なぜ、「泣かないで」なのでしょう。子どもの悲しむ姿を見るのが辛いから? まだ幼いので、こんな思いをさせたくないから?
 
  いえいえ、大切な人、物などをなくしたとき悲しいと思うのは、正常なことです。それを感じさせずに励ますことの方が発達に影響を及ぼします。
 私たち大人も同じく、悲しみを忘れるために忙しくしたりします。それで本当に忘れられたでしょうか。大切なものの代わりはありますか。
  悲しみから落ち着くには、「TIME」「TEAR」「TALK」の3つのTが必要と言われています。時間が解決すると言われますが、「TIME」だけではできません。
 涙を流し、誰かと悲しみを分かち合う時間が必要です。
 大人が悲しみを我慢し、涙を人に見せずに一人で泣く姿、忙しくしてごまかす姿を子どもは真似をします。大人が3つのTを使う姿を見せてください。

 喪失は死だけではありません。引っ越しなどこれまでの友人、家、目に映る光景などこれまでのものを失くしたことが片付いて、やっとこれからの新しい環境が楽しみになるのだと思います。
 妹におもちゃをとられたお姉ちゃんに「新しいのを買ってあげるから、妹にあげたら」は、そうは簡単には通用しないということです。


 
「ダメ!」をなくす方法

 子どもが親の望まない行動を繰り返し、毎日毎日、何回子どもに「ダメ!」を言わなければならないのかと困ってしまうことがあります。「なんで、わからないんだろう」「どうすれば言うことをきいてくれるのだろうか」という方、一度試してみてください。
  子どもを叱るのではなく、提案するのです。こちらの望みを子どもに伝えてみるのです。その伝え方は、行動の選択肢を子どもに提示し、子どもに選んでもらう方法です。
 
 例えば、部屋の中を走り回って困るときには―
 「危ないので、お外で走るか、お部屋の中でダンスをするかにしましょう。 どっちがいい?」とその行動をやめて欲しい理由と子どものやりたいこと(体を動かしたい)を尊重し、代わりの案を2つ出して、子どもに選択してもらいます。

 代わりの案を考えるには、
 ①場所を変える ②行動を変える ③道具を変える ④時間を変える のはどうでしょう。

 では、練習です。

 ・ぬいぐるみを投げて遊んでいる 「ぬいぐるみがかわいそうだから、クッションでぬいぐるみのおうちを作って遊ぼうか。それとも風船飛ばしをする?」

 ・夕食の前にお菓子をねだる 「お腹がすいたのね。もうすぐごはんができるから、小さいおにぎり作ろうか。それとも今日のごはんはデザート付きにしようか」

 このように「ダメ!」と言わなくてもいい方法があります。そしてもうひとつの方法として、「明確なルール」を予め作っておくのです。このルールは、決して一方的でないことです。お互いが守れるルールです。そのようなルール作りについても考えてみましょう。

参考:スター・ペアレンティング(N)女性と子どものエンパワメント関西


 
乳児期に「基本的信頼感」を獲得

 心理学者E・H・エリクソンは、人間の一生を8段階に分けて、それぞれの発達段階での心理的課題や課題の達成によって成長していくものだとしています。
  以下は、エリクソンの「心理社会的発達理論」で提唱されている「8つの発達段階」です。

・乳児期(0~1歳半)
・幼児前期(1歳半~4歳)
・幼児後期(4歳~6歳)
・学童期(6歳~12歳)
・青年期(12歳~20歳)
・成人期(20~40歳)
・壮年期(40~65歳)
・老年期(65歳~)

 乳児期(0~1歳半)は、授乳などのお世話をしてもらうことで、基本的な「信頼感」を獲得していく時期です。周りの大人に養われて頼っていくうちに、他人を信頼できるようになる。結果、希望を得られるといわれています。
 しかし、この時期に十分なお世話をされず、頼ることができない場合は、周りに不信感を持つようになる傾向にあるとされています。

  赤ちゃんは自身に起きた問題―暑い・寒い・お尻が汚れた・おなか減ったなどを泣いて知らせてくれます。そうすると周りのおとながすぐに駆け寄り、声をかけながら優しいまなざしで、温かい手で手当てをします。そのような扱いをしてくれる人を信頼するのは当然のことです。
 赤ちゃんからの働きかけにおとなが呼応することで、愛着(アタッチメント)というものができるということです。
 このような子育てをしようと思うと、ワンオペ育児では難しいことです。その難しいことに挑戦している親を、うまくできないことがあったとしてもだれが責めることができますか。
 どうぞ困っている親御さんは周りの人に助けを求めてください。
 あなたからの働きかけに呼応する人たちと繋がり(アタッチメント)、 あなた自身の安心が優しいまなざし、温かい手を作り出すのです。