水産普及だより 第 25-9号 平成25年11月21日
~ヒロメ養殖 出荷に向けて~
いよいよ寒さが身に染みる季節になって参りました。冬の海藻であるヒロメは、水温が20℃以下になると活発に生長するようになります。徐々に海の温度も下がり、ヒロメにとっても良い季候になってきており、種糸に付いた幼胞子もより海藻らしい姿になってきました(右写真:2013年11月21日撮影;10倍拡大)。12月には管理用水槽から外の生簀に移すこと(沖出し)で、生長を促し、出荷に向けた仕上げにかかります。
海水温の状況
本来であれば、11月初旬にはヒロメ種糸を沖出しして、12月には出荷準備を済ませる予定だったのですが、今年は海水温が高めで推移したため、沖出しが遅れています。当水産室が実施している毎月の尾鷲湾観測の11月14日時点における観測結果によると、尾鷲湾の海水温は表層で23.7~23.8℃と平年より2℃以上も高い状態で推移していました。
水温が高いと、ヒロメの生長が遅くなったり、海藻を食べてしまう藻食性の水棲動物が活発になるなど、ヒロメにとって良いことは何もありません。実際に11月の初旬に数十mの種糸を試験的に沖出ししたところ、生長が弱った上にニジギンポなどの藻食魚についばまれて、ぼろぼろになってしまいました。11月21日現在、海水温が20℃台に下がり落ち着きを見せてきたところで、再び少量の予備を試験的に沖出ししています。今回は、念のため周りを網で囲って天敵の進入を防いでいます(右写真:2013年11月21日撮影)。
なお、外に出したヒロメの方が、管理用水槽に入れているものよりも見た目よく生長しているようなので、もう間もなく全ての種糸を沖出しし、本格的な仕上げにかかる予定です。
ヒロメに限らず、水産養殖物の出来不出来は、海水温などの周辺環境に大きく左右されます。その海水温も天候や黒潮の蛇行などの様々な要因によって変動し続けます。今回は、水産をはじめとする第一次産業に関わる一員として、自然には勝てないということを改めて実感しました。水産養殖をより安定的に行っていくためには、海の動向をよく観察し、先読みをしなくてはならない、ということを痛感する一件でした。