水産普及だより 第 25-10号 平成25年12月09日
~銚子川ウナギ標識放流~
2013年12月6日、銚子川環境保全会の主催でウナギの標識放流が行われました。12月4、5日には、東京大学農学生命科学研究科生態システム学専攻の海部健三特任助教をお招きし、ウナギについての講演会および標識の付け方の説明を行っていただきました。尾鷲農林水産事務所 水産室としてもそのお手伝いに行って参りましたので、ここでご報告します。
ニホンウナギについて
2013年2月、ニホンウナギが環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されました。ウナギをよく食べる日本人にとって、いつの日かニホンウナギが食べられなくなるのではないかという不安が日本中を駆け巡ったのは記憶にも新しいことかと思います。
そんなウナギの生態についてはよく分かっておらず、産卵場やおおよその回遊経路などが分かってきたこともごくごく最近のことです。今回、放流する銚子川においても、ウナギがどのように生活しているかは、ほとんど知られていません。ウナギを銚子川に放流すれば、単純に放流した時は数が多くなりますが、その後にどの程度の効果が続くのかは全くの未知数です。そこで、今回は標識を付けたウナギを放流することで、そんなウナギの秘密に迫っていこうという運びになりました。
標識について
今回使用した標識は、イラストマー蛍光タグと呼ばれるシリコン標識です。右写真のように、ヒレや表皮の透明な部分に無害な蛍光シリコンを注入し、外から目で見て放流魚だと分かるように印を付けます。注入したシリコンはその場で凝固して残り続けるので、後日捕獲されたときにいつ放流した魚だと判別がつきます。また、注入する場所は腹ビレなので、食べるときには取り除くため、人体への影響はありません。
ニホンウナギは、繁殖できるようになるまで数年間は川に居続けます。そのため今回の標識魚と、今後新しく入ってきたウナギ、またはもっと昔からいるウナギとを区別することで、同じ川の中でウナギがいつ頃、どのように移動するか、といった情報を集めることが出来ます。また、標識放流は来年、再来年も続く予定です。
再捕について
最後に、ここをご覧の皆様にお願いです。
この度ウナギの標識を行いましたが、これは全国的にも実施例は少なく、これから将来のウナギを「資源」として考えた際に、貴重なデータとなります。漁獲された銚子川のウナギを見かけた際には、お腹のヒレに注目していただき、蛍光グリーンの標識が見られた場合には、銚子川環境保全会や尾鷲農林水産事務所などの関係団体にご報告をお願いします。
繰り返しになりますが、捕獲されたウナギの大きさや重さ、胃の中身(食べているもの)などの情報は、今後ウナギの生態の解明に重要な情報となります。その情報の集積によって、この先ウナギ資源をどう守っていけば良いか、という命題に解答を得られる可能性があります。少なくとも銚子川において、ウナギ資源を管理するためのヒントは得られると考えられます。
ニホンウナギをこれからもおいしく食べ続けていくためにも、皆様のご協力が必要不可欠です。これからウナギを食べるときには、ウナギの資源を守ろうとしている方々がいらっしゃることを、ふと思い出していただければ、と思います。
※連絡先:
|
紀北町役場 海山総合支所 産業建設室 産業振興係 電話: 0597-32-3903 FAX: 0597-32-2331 E-mail: okumura-yu@town.mie-kihoku.lg.jp |
尾鷲農林水産事務所 水産室 漁政課 電話: 0597-23-3512 FAX: 0597-23-0683 E-mail: nakasm06@pref.mie.jp |