ポジティブリスト制度
「ポジティブリスト制度???」ニュース等で聞いたことはあるけど、具体的には分からない。農薬の残留基準って言われても、その基準がどんなものか想像がつかない。そもそも、そのポジティブリスト制度が私たちの生活にどう関係するの?
ほとんどの方が制度の名前はご存じかと思いますが、制度自体を理解されている方は多くないと思います。
ポジティブリスト制度は、一定の量を超えて農薬等が残留する食品の販売などを原則禁止するという制度です。食の安全を守るためには非常に有効なものなのですが、一方、生産者にとっては厳しい制度になっています。
ここでは、制度に関することだけでなく、生産者の苦労についても勉強してみましょう。
残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)とは???
旧制度では、約280品目の農薬、飼料添加物及び動物用医薬品(以下、農薬等)について残留基準が設定されており、その基準値を超えて農薬等が検出された場合にのみ、食品の流通を禁止するというものでした。
それ故、基準値が設定されていない農薬等が食品から検出された場合に、その食品の販売禁止などの措置ができる制度が求められていました。
こういった問題を解決するため、平成15年5月に食品衛生法が改正され、約800品目の農薬等に残留基準が設定され、残留基準がないものについては人の健康を損なう恐れのない量として一律基準(0.01ppm)を定め、規制することとなりました。これにより、原則としてすべての農薬等に残留基準が設定されたことになります。
農薬等が、これら各基準値を超えて残留した食品については、原則として販売禁止とする制度がポジティブリスト制度であり、平成18年5月29日より施行されました。
検査態勢は???
国内に流通する食品の残留農薬検査については、各都道府県等が監視指導計画で定めた予定数の抜き取り検査を効率的に実施しています。
輸入食品については、輸入時に行う検査の年間計画に基づき効率的、効果的に検査を実施しており、複数の違反が確認された場合などには、輸入の都度、検査を行うこととなっています。
一律基準の「0.01ppm」って???
人の健康を損なうおそれのない量「 0.01ppm」ってどれくらいの量なの?と疑問をお持ちの方は、非常に多いと思います。「ppm」とは、Parts per million 、つまり100 万分の 1 のことです。イメージしやすく言うと、長さ25m、幅10m、深さ1mのプール( 容量 250t )に、スプーン1杯( 2.5g )を溶かした濃度ということになります。つまり、非常に厳しい基準設定になっています。日本以外にも欧州連合で「0.01ppm」、カナダ、ニュージーランドで「0.1ppm」の一律基準が設定されています。アメリカでは一律基準は定められていませんが、運用上「0.01~0.1ppm」で判断するとされています。
これによって食の安全が確保される???
実際に流通・販売される食品全てを検査・分析することは不可能であり、また、対象となる農薬等が不特定多数に上ることからも、検査・分析のみをもって食の安全を全て確保することは難しいと考えられています。しかし、生産者や加工業者に対して、社会責任を明確に示す契機になるものと期待されています。
生産者の苦労
ポジティブリスト制度に移行する以前から、農産物を栽培する際には、各作物に農薬登録のある農薬しか使用することは出来ませんでした。しかし、ポジティブリスト制度が導入されたことによって、さらに厳しい栽培管理が要求されることとなりました。防除暦の見直し、登録農薬および使用条件の再確認等、栽培条件に応じたきめ細やかな管理等が必要となります。
(例)
・農薬の使用基準に基づいて、病害虫発生初期に早期かつ的確な防除に努める。
・隣接する他の農産物および圃場への飛散(ドリフト)低減を心がける。
・農薬の使用履歴(いつ、どの農薬を、どの作物に、何倍希釈で何リットル使用したか)を記帳する。
消費者としての在り方
この制度は、農薬が一定基準以上残留している食品の流通を防止し、食の安全を守る一定の効力を発揮しています。しかし、ひとたび残留基準を超える食品が発見された時に大きな問題となるのが、「風評被害」です。
食品の風評被害の典型的な例として、消費者のリスク関連食品(農産物)の不買行動が上げられます。同じ地域というだけで、関連の無い食品(農産物)にまで被害が及ぶこともあります。問題が発生した際には、その検出された農薬が飛散(ドリフト)によるものなのか、不適正使用によるものなのかといった原因および影響の範囲が特定されます。ニュース・新聞等で正しい情報を取捨選択するとともに、風評被害に惑わされない知識と選択力を身につけるよう心がけてください。
(平成20年度作成)