家畜の病気への備え(平成24年3月)
(三重発!食の安全・安心情報メールマガジンVol.171、172より)
前編
★★ 家畜の重要な病気(口蹄疫)への備え ★★
平成22年の春から夏にかけて宮崎県で口蹄疫の大規模な発生(292戸、牛豚等211,608頭)がありました。全国から家畜防疫員や防疫補助員が応援に派遣されましたが、終息まで4か月かかりました。今回は、口蹄疫の基本的な事項と家畜伝染病予防法の改正の概要を紹介します。
口蹄疫とは
牛、豚、山羊、羊等の偶蹄類家畜が感染するウイルス性の病気です。国境を越えてまん延し、発生国の経済・貿易・食料の安全保障に影響を及ぼし、防疫には多国間の協力が必要となる「越境性動物疾病」とされています。感染すると、多量のよだれ、発熱、食欲低下、乳量低下がみられ、口、蹄、乳頭等に水疱(水ぶくれ)がみられます。感染を防ぐワクチンはありません。
発生状況
オセアニアと北米以外の世界各地で発生がみられています。日本では、明治41年に発生の記録があり、平成12年に92年ぶりに発生しました。
発生を防ぐための取り組み
近隣諸国では、口蹄疫が継続して発生しているため、海外からの進入防止に重点的に取り組んでいます。空海港における靴底消毒、車両消毒、発生国からの肉製品の国内への持ち込み禁止等を行っています。また、国内の畜産関係者は、発生国への渡航を可能な限り自粛するよう求めています。
発生したときの防疫対応
県の対策対応マニュアル、国の防疫指針に基づき、発生農場や関連する農場の患畜や疑似患畜は殺処分されます。防疫作業は、県職員、市町、警察署、畜産関係機関等が協力して行います。人には感染しませんが、防護服を着用し、ゴーグル、マスク、手袋をはめ万全の体制で作業をします。
牛乳や牛肉は安全です
発生が起こると、牛乳や牛肉が安全かどうか心配になると思います。食品安全委員会の見解は、口蹄疫は、偶蹄類の家畜や野生動物が感染する病気であり、人が感染することはなく、仮に口蹄疫にかかった家畜の肉を食べたり牛乳を飲んだりしても人体に影響はないとのことです。冷静な対応をお願いします。
家畜伝染病予防法改正の概要
平成22年は、口蹄疫と高病原性インフルエンザの大発生があったため、平成23年4月に家畜伝染病予防法が改正されました。強化された内容の概要は以下のとおりです。
(1) 水際検疫強化による、海外からの侵入防止
(2) 一定症状発見時の届け出の義務化
(3) 殺処分家畜の全額補償
(4) 所有者の殺処分家畜の埋却地の確保の義務化
(5) 家畜の飼養頭羽数、飼養衛生管理状況の年1回の知事への報告の義務化
ペットとして家きん(ミニブタ、烏骨鶏、合鴨等も含む)を飼育している方も(5)の年1回の届出が必要です。
後編
★★ 家畜の重要な病気(高病原性鳥インフルエンザ)への備え ★★
高病原性鳥インフルエンザは、昨年は多数の県で発生がありました。三重県でも、紀宝町と南伊勢町の養鶏農家で、2月16日と2月26日に発生がありました。幸い今年は、国内での発生はみられていません。理由はよく解りませんが、渡り鳥が免疫を持ったのではないかという説もあります。
今回は、高病原性鳥インフルエンザの基本的な内容の説明をします。
○高病原性鳥インフルエンザとは
家畜伝染病予防法(家伝法)では、鳥インフルエンザを3つに分類しています。
1.高病原性鳥インフルエンザ:国際機関が作成した診断基準(多数の鶏を短期間に死亡させる病原性を持つ)により判定されるA型インフルエンザウイルスの感染による家きん(鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥、七面鳥)の病気。
2.低病原性鳥インフルエンザ:H5またはH7亜型のA型インフルエンザウイルスの感染による家きんの病気(1.を除く)
3.鳥インフルエンザ:1.2.以外のA型インフルエンザウイルスの感染による鶏、あひる、うずら及び七面鳥の病気。
高病原性鳥インフルエンザに感染すると、元気消失、食欲・飲水欲の減退、産卵率の低下、呼吸器症状、下痢、神経症状などを呈し、多数の鶏が死亡します。感染を防ぐ有効なワクチンはありません。
○発生状況
世界各地で発生がみられています。日本では、平成16年に山口県で79年ぶりに発生があってから、平成17,19,21,22年に家きんで発生しました。平成22年度は、9県24農場183万羽で発生がありました。動物園や公園のハクチョウでの発生もあり、死亡した野生のカモ、ハクチョウ、猛禽類、ナベヅルからウイルスが分離されました。
○発生を防ぐための取り組み
ウイルスは、渡り鳥等の野鳥が運んできて、野生動物や人・物が農場内に持ち込むと考えられています。このため、家きん飼育場では、野鳥が農場内に侵入しないように防鳥ネットの設置、車両や人(長靴)の消毒、立ち入り制限等の飼養衛生管理を徹底してます。また、家畜保健衛生所が各家きん飼養農場を巡回指導するとともに、定期的な定点モニタリング検査(抗体検査、ウイルス分離検査)の実施により監視体制を構築しています。
○発生したときの防疫対応
県の対策対応マニュアル、国の防疫指針に基づき、発生農場や関連する農場の患畜や疑似患畜は殺処分されます。防疫作業は、県職員、市町、警察署、畜産関係機関等が協力して行います。鳥インフルエンザは、滅多なことでは人に感染しませんが、防護服を着用し、ゴーグル、マスク、手袋をはめ万全の体制で作業をします。
○卵や鶏肉は安全です
発生が起こると、卵や鶏肉が安全かどうか心配になると思います。食品安全委員会の見解は、ウイルスが胃酸で不活化されること、鳥と人ではウイルスの受容体が異なることから、卵や鶏肉を食べて人に感染することはないとのことです。冷静な対応をお願いします。