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性犯罪の実態に即した刑法の更なる改正を求める意見書

性犯罪の実態に即した刑法の更なる改正を求める意見書

 性犯罪は、被害者の人格及び尊厳を著しく侵害し、心身への深刻な後遺症を、長期間にわたって残す悪質かつ重大な犯罪である。その悪質性及び重大性に対して、これまでの刑法の規定では不十分であるという声が高まったため、平成29年6月に、明治40年に刑法が制定されて以来110年ぶりとなる性犯罪に関する大幅改正を行う「刑法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)」が成立した。この改正法により、「強姦罪」の名称が「強制性交等罪」に改められ、性犯罪の構成要件が見直されるとともに、懲役の下限が3年から5年に引き上げられる等の罰則が強化されたほか、「親告罪」規定の撤廃、監護者による性行為は暴行・脅迫がなくても処罰される等の改正がなされた。
 また、この改正法案の議決に併せて、改正法の施行に当たり、政府及び最高裁判所に格段の配慮を求める附帯決議が衆議院及び参議院で採択されており、さらに改正法附則第9条においても、「政府は、この法律の施行後3年(令和2年)を目途として、(中略)性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」こととされている。
 一方で、改正法にも不十分な点があり、例えば以下の問題点が指摘されている。
・ 強制性交等罪の構成要件には「(加害者の)脅迫又は暴行」の行為、また準強制性交等罪の構成要件には「(被害者の)心神喪失又は抗拒不能」の状態が必要とされ、その立証には高い壁があること。
・ 監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(以下「監護者わいせつ罪等」という。)において、一般に、離婚した父母、祖父母、おじおば、教師、スポーツの指導者、雇用主等は監護者とされず、これらの地位を利用した性犯罪を取り締まることに限界があること。
・ 単独による性犯罪と違い、集団による性犯罪は暴力の圧・侵襲の度合が著しく大きく、また後遺症も著しく深刻になるにもかかわらず、改正法により、法定刑の引上げに伴い集団強姦罪を廃止したことは、集団による性犯罪のより強い悪質性及び重大性を軽視していること。
 加えて、平成31年3月には、被害者の同意のない行為だと認定されながらも、抗拒不能な状態ではなかったといった論旨の無罪判決が出るなど、性犯罪に関する裁判において無罪判決が相次いだ。このことをきっかけに、同年4月より、当事者によるフラワーデモが全国的に展開され、三重県においても9市で行われている。また、当事者団体(一般社団法人Spring、令和2年8月16日~9月5日、5,899回答)及び報道機関(NHK、令和4年3月11日~4月30日に、寄せられた被害件数38,383件。詳細は分析中)において、性被害実態調査アンケートが行われており、国民の意識が高まりつつある。このことから、性犯罪の実態に即した刑法の更なる改正が求められている。
 よって、本県議会は、性犯罪被害の実態や実態調査結果等に基づき、国において、下記について刑法の見直しの検討が行われるよう、強く要望する。

1 性犯罪における公訴時効の撤廃又は延長の特例を創設すること。
2 性交同意年齢(現行13歳以上)を引き上げること。
3 不利益を示唆しての強要等による、不同意の性行為に対し、客観的に類型化した新たな刑罰を創設すること。
4 優越的な地位にある者がその地位を利用した性行為に対し、監護者わいせつ罪等が適用できるよう、その対象を広げるとともに、その法定刑を通常の強制わいせつ罪等に比べて加重すること。
5 集団による強制わいせつ及び強制性交等の行為に対し、新たな刑罰(致死傷による加重刑も含む。)を創設するとともに、その法定刑を通常の強制わいせつ罪等に比べて加重すること。
6 障がい児、障がい者の特性に配慮した規定を創設すること。
7 法制審議会(部会も含む。)及び性犯罪に関する有識者会議等における性暴力被害当事者並びに性暴力被害の現場で支援に携わる法律家及び支援者の比率を引き上げること。

 以上のとおり、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


   令和4年6月30日

三重県議会議長 前野 和美


(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
法務大臣
内閣府特命担当大臣(男女共同参画)

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