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地方財政の充実及び強化を求める意見書
地方公共団体には、急激な少子高齢化の進展に伴う子育て・医療・介護等の社会保障制度の整備、人口減少下における地域活性化対策、脱炭素化を目指した環境対策、行政のデジタル化の推進等、極めて多岐にわたる新たな役割が求められている。
一方で、地方公務員等の公共サービスを担う人材の不足は深刻であり、様々な政策課題に対応しなければならない現場は疲弊している。
政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2024」において、地方公共団体の安定的な財政運営のため、地方一般財源の総額について、引き続き前年度を下回らないよう実質的に同水準を確保することとしている。
しかし、行政需要が増大する一方、人員体制が不足する現状に鑑みれば、現行の地方一般財源の総額から一歩踏み出した水準を確保するなど、より積極的に地方財政の充実及び強化を図ることが求められる。
よって、本県議会は、令和8年度の政府予算編成及び地方財政対策において、社会全体として求められている賃上げ基調にも相応する人件費の確保まで含めた地方財政を実現するよう、国に対し、下記の事項を実現するよう強く求める。
記
1 社会保障の充実、地域活性化、DX化、脱炭素化、物価高騰対策、防災・減災、地域公共交通の再構築等、増大する地方公共団体の財政需要を的確に把握するとともに、これを支える人材を確保するための人件費を重視する観点から、現行の水準にとどまらず、より積極的に地方財源の確保及び充実を図ること。
2 子育て対策、地域医療及び介護の確保、生活困窮者の自立支援等、より高まりつつある社会保障に対する財政需要が地方公共団体の一般行政経費を圧迫していることから、引き続き地方単独事業分も含め、社会保障経費の十分な拡充を図ること。特に、これらの分野を支える人材の確保に向けた地方公共団体の取組を十分に支える財政措置を講じること。
3 地方交付税の法定率を引き上げるなど、臨時財政対策債に頼らずに、より自律的な地方財政の確立に引き続き取り組むこと。また、地域間の財源偏在性の是正に向けては、所得税及び偏在性がより小さい消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、より抜本的な改善を行うこと。
4 減税政策を検討するに当たっては、地方財政を毀損することがないよう、あらかじめ「国と地方の協議の場」を活用するなどにより、特段の配慮を行うこと。また、減税を実施することにより地方公共団体の減収が見込まれる場合には、確実にその補填を行うこと。
5 地方財政計画に「地方創生推進費」として計上されている1兆円については、現行の財政需要において不可欠な規模となっていることから、より明確に恒久的財源として位置付けること。また、その一部において導入されている行政改革の努力及び取組の成果に応じた算定方法は、標準的な行政水準を保障するという地方交付税制度の趣旨に反することから、今後採用しないこと。
6 会計年度任用職員においては、令和6年度から勤勉手当の支給が可能となったものの、今後も当該職員の処遇改善及び雇用確保が求められることから、引き続きその財政需要を十分に満たすこと。
7 諸手当の支給水準が国の基準を超えている地方公共団体に対する特別交付税の減額措置については、地域手当が減額措置の対象から除外されたものの、期末手当、勤勉手当等はいまだ減額措置の対象のままであることから、地方公共団体の自主性を尊重し、これらの手当を対象とした減額措置を早期に廃止すること。
8 地方公共団体情報システムの標準化の取組を推進するに当たっては、その移行に係る経費のみならず、その移行の影響を受ける他の情報システムの改修経費及び大幅な増額が見込まれる情報システムの運用経費を含め、必要な財政措置を講じること。また、戸籍等への記載事項における氏名の振り仮名の追加、マイナンバーカードの健康保険証利用、マイナンバーカードと運転免許証の一体化等、DX化に向けた制度の改正に伴い、地方公共団体において情報システムの改修、事務の負担及び人件費の増大が見込まれる場合には、必要な財政措置を講じること。
9 地域の活性化に向けてその存在意義が改めて重視されている地域公共交通については、公共交通専任担当者の確保を支援するとともに、こども・子育て政策と同様、普通交付税の個別算定項目に位置付け、一層の施策の充実を図ること。
10 人口減少に直面する小規模地方公共団体を支援するため、段階補正を拡充するなど、地方交付税の財源保障機能及び財政調整機能の強化を図ること。
11 地方公共団体が行う事業においては、労務費の適切な価格転嫁が果たされるよう、必要な財政措置を講じること。
以上のとおり、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年6月30日
三重県議会議長 服部 富男
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
厚生労働大臣
国土交通大臣
デジタル大臣
内閣府特命担当大臣(こども政策)
内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
内閣府特命担当大臣(地方創生)