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令和5年第2回定例会11月定例月会議 請13

受理番号・件名 請13 「再審法改正を求める意見書」提出について
受理年月日 令和5年11月22日
提出された
定例会
令和5年第2回定例会11月定例月会議
紹介議員 龍神 啓介、辻󠄀内 裕也、吉田 紋華、芳野 正英、中瀬 信之、山崎 博、山内 道明、稲森 稔尚、田中 智也、小島 智子、藤田 宜三、村林 聡、長田 隆尚
付託委員会 総務地域連携交通常任委員会
請願要旨

(要 旨)
 「再審法改正を求める意見書」(別紙参照)を提出していただきたい。

(理 由)
 やってもいない犯罪で有罪とされる「えん罪」は、犯人とされた方や御家族の人生を破壊し、時には生命さえ奪いかねない、最大の人権侵害である。このようなえん罪被害者を救済するための制度が「再審」であり、その手続を定めた法律のことを「再審法」と呼んでいる。具体的には、刑事訴訟法第四編「再審」がこれに当たる。
 しかし、現行法には、再審請求手続の審理のあり方に関する規定はほとんどなく、裁判所の広範な裁量に委ねられている状況にある。このように、「再審のルール」が存在しないことから、えん罪被害の救済に向けて充実した審理を行う裁判所がある一方で、職権行使に消極的な裁判所もあるなど、事件を担当する裁判官によって再審請求手続の審理のあり方に大きなばらつきが生じている。これでは適正・公平な裁判とはいえない。
 その中でも、とりわけ大きな問題となっているのが証拠開示の問題である。過去の多くのえん罪事件では、警察や検察庁といった捜査機関の手元にある証拠が再審段階で明らかになって、それがえん罪被害を救済するための大きな原動力となっている。捜査機関の手元にある証拠の中には、請求人(元被告人)の無実を示すものが含まれていることも少なくない。しかし、現行法では、そのような証拠を出させる(開示させる)ことを定めた明文の規定がなく、この点も裁判所の広範な裁量に委ねられているため、請求人(元被告人)の無実を示す証拠が裁判所に提出されず、えん罪被害が救済されないことも起こり得る。例えば、滋賀県で発生した湖東事件では、再審開始決定が確定した後になってようやく、警察が再審開始決定確定まで検察官に送致していなかった証拠が開示され、その中に事件性を否定する重要な証拠が含まれていた。これらの証拠について、裁判長は「そのうち一つでも適切に開示されていれば、本件は起訴されていなかったかもしれません」とコメントしたのである。このような不正義を放置しておくことはできない。
 しかも、いったん裁判所がえん罪の疑いを認めて再審開始決定を行っても、検察官がこれに不服申立てを行う事例が相次いでおり、えん罪被害者の速やかな救済が妨げられている。現在の再審制度は、裁判のやり直しをするか否かを審理・決定する再審請求手続と、やり直しの裁判で改めて有罪・無罪を判断する再審公判の2段階の手続となっている。つまり、再審請求手続というのは、裁判のやり直しをするか否かを決定する前さばきの場にすぎない。したがって、再審請求手続において再審開始決定、つまり裁判のやり直しを命じる決定がなされたのであれば、有罪判決の正当性に疑いが生じていることになるので、速やかに再審公判の手続に移行し、公開の法廷において、改めて有罪・無罪の判断を行う審理を行うべきであって、再審開始決定それ自体に対する不服申立てを認めるべきではない。
 検察官の不服申立てがなされると、再審開始決定が出されているにも拘らず、即時抗告審・特別抗告審のため、審理が数年あるいは十年以上の単位で長期化する。これにより、迅速なえん罪被害者の救済が実現されず妨げられている。例えば、袴田事件では、第2次再審請求審において、2014(平成26)年3月27日、静岡地方裁判所で再審開始決定がなされたが、この決定が今年3月に確定するまでに実に9年を要した。
 えん罪被害者の中には、例えば名張事件や日野町事件のように、えん罪を晴らすことができないまま亡くなった方もいるし、大崎事件(95歳)や袴田事件(86歳)のように、相当の高齢となっている方もいる。このように、えん罪被害者の救済には、気が遠くなるほどの時間がかかっているのが実情である。
 そこで、日本弁護士連合会は、2019年(令和元年)10月4日に開催された人権擁護大会において、再審請求手続における全面的な証拠開示の制度化と、再審開始決定に対する検察官の不服申立て禁止を含む再審法の改正を求める決議を全会一致で採択した。また、2023年(令和5年)2月17日付けで刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書を取りまとめ、同年7月13日付けで改訂し、法務大臣宛てに提出した。
 当会も、2023年(令和5年)5月26日付けで再審法改正を求める総会決議を全会一致で採択した。
 えん罪被害者を一刻も早く救済するために、再審法改正には、もはや時間の猶予はない。
 以上の理由から、再審法は速やかに改正されるべきだと考える。
 そこで、別紙再審法改正を求める意見書(案)を参考に「再審法改正を求める意見書」を提出していただきたく請願をした。

(別 紙)
再審法改正を求める意見書(案)
 
2023年(令和5年) 月  日  

内閣総理大臣 岸 田 文 雄 殿
衆議院議長  額 賀 福志郎 殿
参議院議長  尾 辻 秀 久 殿
法務大臣   小 泉 龍 司 殿
三重県議会          
議長 中 森 博 文   

 えん罪は、国家による最大の人権侵害の一つである。えん罪被害者の人権救済は、人権国家を標ぼうするわが国にとってはもちろん、地域住民の人権を護る義務を有する地方自治体にとっても重要な課題といえる。また、三重県内においては、名張市で過去に名張毒ぶどう酒事件が発生しており、現在、第10次再審請求が係属している。
 ところで、えん罪被害者を救済するための制度としては「再審」がある。しかし、その手続を定めた法律(刑事訴訟法第四編「再審」)には、再審請求手続の審理のあり方に関する規定がほとんどなく、裁判所の広範な裁量に委ねられている。このように、いわば「再審のルール」が存在しない状態となっているため、再審請求手続の審理の進め方は、事件を担当する裁判官によって区々となっており、再審請求手続の審理の適正さが制度的に担保されず、公平性も損なわれている。
 その中でも、とりわけ再審における証拠開示の問題は重要である。過去の多くのえん罪事件では、警察や検察庁といった捜査機関の手元にある証拠が再審段階で明らかになって、それがえん罪被害者を救済するための大きな原動力となっている。したがって、えん罪被害者を救済するためには、捜査機関の手元にある証拠を利用できるよう、これを開示させる仕組みが必要であるが、現行法にはそのことを定めた明文の規定が存在せず、再審請求手続において証拠開示がなされる制度的保障はない。そのため、裁判官や検察官の対応いかんで、証拠開示の範囲に大きな差が生じているのが実情であって、このような格差を是正するためには、証拠開示のルールを定めた法律の制定が不可欠である。
 しかも、再審開始決定がなされても、検察官がこれに不服申立てを行う事例が相次いでおり、えん罪被害者の速やかな救済が妨げられている。しかし、再審開始決定は、裁判をやり直すことを決定するにとどまり、有罪・無罪の判断は再審公判において行うことが予定されており、そこでは検察官にも有罪立証をする機会が与えられている。したがって、再審開始決定がなされたのであれば、速やかに再審公判に移行すべきであって、再審開始決定という、いわば中間的な判断に対して検察官の不服申立てを認めるべきではない。
 よって、えん罪被害者を一刻も早く救済するために、再審法を速やかに改正すべきである。
 ゆえに、国におかれては、再審法を速やかに改正するよう強く要望する。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出するものである。
 
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