三重県議会 > 県議会の活動 > 委員会 > 委員会会議録 > 平成20年度 委員会会議録 > 平成20年10月28日 地域間格差対策調査特別委員会 会議録
地域間格差対策調査特別委員会
会 議 録
(開 会 中)
開催年月日 平成20年10月28日 自 午後 3時17分 ~ 至 午後 5時12分
会 議 室 601特別委員会室
出席委員 11名
委 員 長 水谷 隆
副委員長 津村 衛
委 員 水谷 正美
委 員 村林 聡
委 員 青木 謙順
委 員 大野 秀郎
委 員 山本 勝
委 員 中村 進一
委 員 山本 教和
委 員 藤田 正美
委 員 萩原 量吉
欠席委員 1名
委 員 舘 直人
参考人 名古屋大学大学院環境学研究科
都市環境学専攻准教授 加藤 博和
委員会書記 議事課 平井 靖士
企画法務課 石田 学
傍聴議員 な し
県政記者クラブ 1名
傍 聴 者 な し
議題および協議事項
1 格差是正に向けた交通体系について
2 その他
【会議の経過とその結果】
〔開会の宣言〕
1 格差是正に向けた交通体系について
○水谷委員長 ただいまから地域間格差対策調査特別委員会を開会いたします。
本日の委員会は、格差是正に向けた交通体系についてと題して、参考人をお呼びし、現状と課題、そして今後、行政としてどのような取組ができるのか等について調査を行います。
なお、山本勝委員、舘委員は、少しおくれるということでございますのでよろしくお願いします。
本日は、参考人として名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻准教授の加藤博和様にご出席をいただいております。
参考人におかれましては、大変お忙しい中にもかかわらず、本委員会にご出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げますとともに、本日の調査につきまして、よろしくお願いを申し上げます。
それでは、格差是正に向けた交通体系について、加藤准教授からご説明をお願いします。
① 参考人の意見陳述(加藤博和氏)
○加藤参考人 どうも、こんにちは。名古屋大学環境学研究科の加藤といいます。よろしくお願いいたします。
私は、一番の専門分野というのは地球環境問題なんですが、それよりもこのサイドワークとしてやっております地域公共交通の活性化とか充実とかということについてで呼び出されることが多くて、今日もそれでしゃべれということですので、話題を提供させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
タイトルとしては、「地域公共交通をよりよいものとするために自治体がなすべきこと─格差是正に向けた地域公共交通実現と県の役割─」ということでタイトルをつけさせていただきました。
事前にお配りしているものは、今日は大学を出る直前に印刷したものなんですが、その後、近鉄特急車内等で修正をしておりますのでちょっと変わっておりますが、そのあたりご了承いただきたいと思います。
私自身、先ほどサイドワークと申しましたけれども、いろいろなところで地域公共交通を再編する仕事をやっています。最近ですと、この東浦町のう・ら・らであるとか、松阪、松阪はずっと何年も取り組んでおりまして、最新のものは機殿・浅見コミュニティバスですけれども、これについてもダイヤを組んだりとかいろいろとさせていただいたところです。
これはもう何をやっているかといいますと、やはり今までの鉄道・バス・タクシーという体系、これが非常に旧弊というと御幣があるかもしれませんが、やはり時代のいろんなニーズとか流れになかなかついていけないということに対して、どういうふうに新しい交通機関をつくって対応していくかという仕事をしてきたということなんです。そういうことをやる中で、やはり地域公共交通をつくるということが、ただバスを引いたりとかどうとかではなくて、まちづくりとか村おこしということにすごく関係があるなということを感じています。
やはり、こういう私みたいなよそ者が、例えば松阪に行ったりとか、あるいは、最近ですと大紀とか多気とか大台とかそういうところも、あるいは今、鳥羽も一生懸命やっていますけども、そういうところをやりますと、その場所を詳しく知らないといけません。まず、地名は当然読めないといけないですし、それから、どこにショッピングセンターがあるかとか、どこに病院があるかとか、そういうことも全部頭に入れておかないといけないと。そういうところで会議しますと、ふるさとですかと間違えられるぐらい鍛えておかないとなかなか対応できないということですね。
その中で、しかしながら、その地域にどっぷり入ってしまうと見えるものが見えなくなるということもありますので、客観的にその地域のニーズを把握する。そして、私自身は研究者ですから、その立場からして、たくさんの人に利用されて喜んでいただけるものをどうやってつくり出すかということを追求していると。そのためには地域を知り、入り込み、巻き込んで取り組まないといけないと。そうすると結局何をやっているかといいますと、その地域公共交通をつくることがその地域の住民の暮らしぶりを変える、それから、その地域のよさを引き出す。それで、そこを持続可能な地域にするという取組なんじゃないかというふうに思えてくるんです。これが、最近、私は地域公共交通の存在意義であって付加価値であるというふうに感じられるようになったんです。
実は、それを一番最初に感じたのがこの現場です。南紀広域バスというものが熊野市、御浜町、それから当時の紀和町ですね。この3つの市町を結ぶような形でできましたけど、私は、ダイヤを組んだりとか停留所を決めたりとかいう仕事をここでやりました。熊野は遠くて、出張するのも、きのうは、実は東京に行っていたんですが、東京よりもずっともう何倍も遠いような感じがいたしました。楽しいですが、大変でしたけれども。
これは出発式の風景ですが。これ瀞流荘ですね、終点の。瀞流荘から木本高校行きということで、熊野市駅をスルーして木本高校まで入るということで。紀和町、ご存じだと思うんですけれども、今は合併していますけれども、人口1,700人で老年人口比率54%ということで、日本で一番老年人口比率が高い自治体と言われたことがあります。そこで、でも何人かは高校生がいました。しかしながら、自宅通学できないということで、このバスでどうやって自宅通学できるかという追求をした。
実は、このプロジェクトは、市町ではなくて県が主導したプロジェクトであったということです。やはり3つの市町を結ぶものですから、それぞれの市町だけではなかなかできないということで、県が主導してこのプロジェクトを進めて、こぎつけたということです。実際問題、高校生のうち、男子高校生は、余り下宿生から自宅生には変わってくれなかった。これは私もよく納得します。別に家に帰りたいと思わないと。ただ、女子高生の方はかなり家から通学するようになってくれたということで、そこそこ成功したかなというふうに思っています。やはり高校生が自宅通学できないということは、もう15歳で外に出てしまうと。そうすると、仕事も当然地元でするわけでもないですから、あるいは地元でずっと住むわけでもないので、結局、人口が流出してしまう。それは、もう何年もたてば、その地域から若者がいなくなってしまうと。つまり、滅びてしまうということですから、このバス1本引くことが、この地域を守り育てることにつながるんだということは非常に深く感じたわけです。
そんな中で、今日お話ししたいことというのは、やはり地域公共交通というのは目的ではなく道具であるんだと。ただ走らせればいいだけじゃなくて、どうやって走らせるか、何のために走らせるかということを考えてくださいということです。そのためにも、最初はサポートするにせよ、どこかの段階では、地域みずからが作り、守り、育てるという体制が必要です。しかしながら、ほうっておいてもなかなかそれは出てきません。
そこで、いろんな役割があります。県の役割としては、その形成とか実現するアクセシビリティの機会均等、これをどう担保するかということが県の役割ではないかなということを最後の方でお話ししたいというふうに思っております。
これは三重県と、ある意味かけ離れた状況なのかもしれません。ドイツのカールスルーエという人口30万人ちょっと切れるぐらいの町の中心部ですけれども、ヨーロッパの中心市街地というのはどこでも、こういうトランジットモールと言われる公共交通の通行を許している歩行者用道路というものがあると。それから、これはバーデンバーデン行きになっています。バーデンバーデンというのは、このカールスルーエから40キロぐらいは離れたところで、当然路面電車がそこまで走っているわけではなくて、いわゆる日本でいうJRにこの路面電車が乗り入れて直行するということですから、ここからぱっと乗りますと、そのバーデンバーデン、バーデンというのはドイツ語で温泉ですので、温泉地へぱっと行けるということで、ずっとこの郊外から路面区間まで直通して楽々ですよと。
それから、ドイツの場合ですとTODと言っていまして、路面電車やバスがきちんと走っているところでないと都市開発を認めない、あるいは、大規模商業施設の立地を認めないというのがありまして、なので、車を使い過ぎないまちづくりということができますよと、こんなことをやっています。
実はこれが、こういうことを一生懸命やる政治家が、ここ議会ですのであれですけど、政治家が選挙で勝てると。こういうものを公約に挙げないと選挙に勝てないというような時代になってきているということのようです。
同じようなことが、この富山でも言えるわけです。富山の場合ですと、もともとあったJR富山港線、これが非常にどうしようもない運行をしていたということで、いろいろ経緯がありましたけれども、富山ライトレールという第三セクターになりまして、このLRTと言われるような車両を入れまして、1時間に1本の路線を15分に1本にしたということで乗客を2倍以上に増やすということになりました。それで、さえなかった路線が、町の軸として誇れる存在、今、観光地の一種になっている。その取組が、富山市内は鉄道軌道が100キロ以上存在していますけれども、ほかの鉄道、例えば富山市内にもともとある路面電車、あるいは高山線こういったところ、あるいは、主要なバス路線にも入ってくると。市が補助金を入れながら路線を充実して利用者を増やし、さらに、その沿線にコンパクトシティをつくるということをやろうとしているということです。特に、駅や電停の周辺に公共施設、特に老人向けの老人保健施設であるとか病院、あるいは老人向けの住宅の再配置をするということをやって、合併で広くなったスカスカの市域を何とか締めようということを富山市は取り組んでいると。これで非常に注目されていますし、実は、ここで気をつけなきゃいけないのは、もともと国土交通省の今の中堅の方々というのは、この先ほどのドイツのこういうことに対して物すごくあこがれというか、これは日本でも実現したいなという気持ちを持っているので、これを非常にくすぐる政策であったということもあって、今この富山市には国交省のいろんな補助制度が、ここを目がけて作られているということがあります。
なので、例えば三重県でも、こういう全国に誇れるようなモデルを作り出して、国の制度をそこに誘導していくような戦略も必要だなと思っています。それは、また、おいおいお話しするとして。
そもそも、なぜこの富山とかのように、もちろんドイツの場合でも、これは採算性だけでできません。税金が入らないとできないということで、なぜ地域公共交通に自治体が関与しなきゃいけないかということなんですけれども、三重県ですと三重交通が全部やっていただけるうちはよかったんですが、残念ながら、モータリゼーション進展によって運賃だけでは採算がとれないと。しかも、2002年の改正道路運送法によって、国と、三重県ですと三重交通、これが公共交通を仕切るというような形がなくなった。それによって、実際には県や市町村、あるいは住民の皆さんが、国や独占事業者に働きかけながら公共交通を守っていくような行動をしないと、採算がとれないですから守り切れないという時代になってきたということです。
これ自体は、ある意味、弱い者いじめだと言われることもあるかもしれません。しかしながら、そう簡単な話ではなくて、やはりもともとこれが成り立っていたということはどういうことかというと、もうかる路線ともうからない路線がある、あるいはもうかる事業ともうからない事業があると。それを全部を三重交通でプールして、その中でもうからない路線も丸抱えして維持してきたということが、ところが、モータリゼーション進展とかによって全部赤字になってきたということで抱えられないということですから、これは単純に三重交通に任せているだけだと、全部路線がなくなってしまうということになってしまいます。
ですから、それに対して今、地域公共交通は、いろんな乗り合いというものがコミュニティーを産むという。コミュニティバスというのはそこから出ている言葉ですね。それから、少子高齢化とか人口減少とか経済成熟に対応するために、公共交通が非常に地域づくりとして重要であると。あるいは、地球環境の面からも重要であるということから、単に赤字補てんするのではなくて、積極的に交通政策として投資するということが公共交通に対して必要になってきているということが言える。ですから、どこかのバス会社とか鉄道会社が商売でやるということではなくて、県や市町が交通政策をやるために、そういうところを使っていろんな施策を展開するというふうに考えを改める必要があるというふうに考えます。
実は、このコミュニティバスの先駆けとなった東京と武蔵野市の「ムーバス」、これは直接、前市長の土屋さん、今、自民党の国会議員ですけれども、その方と直接お話しする機会がありまして、いろいろと話をさせていただきました。その話を受けたものですけれども、これは、もともとは武蔵野市として交通政策をやっていきたいと。そのときに、武蔵野市の中にも民営バスはいっぱいあるし、全部黒字であるということなんですが、それだけだとやっていただけない路線がある。そこで、そのために自治体が路線を企画運営してバス会社に委託するという運行の方式をしたらどうかと。それをやりますと、従来ですと路線は黒字で事業者がやるというのが基本ですから、赤字路線にそんな手を突っ込む事業者はいないわけで、交通政策としては必要であっても収益性が得られないものはできないということだったわけです。それに対して、例えばこういう狭いところを走っていくような路線であっても、これは市として必要ならやるということの補助が、これが正当化されるということになります。ですので、従来ですと採算がとれなかったような小回り循環であるとか、こんな小さいバスで運行するとか、100円運賃であるとかっていうことが、これが交通政策のための公的補助ということが認められたがゆえに実現され、そして、それが今までの旧弊な路線バスの概念を覆すことになったんだということになります。
これが非常にインパクトが大きくて、全国からいろんな方が視察に来られて、どんどんと三重県も含めて全国でいろんなところで運行するようになった。しかしながら、今でもムーバスを超えるヒット作はあらわれていない。むしろ表面的な猿まねによって似て非なる非効率な巡回バスというものが広がる原因にもなっていると。これは国交省とかでも、きつい言い方ですが、お話しさせていただいています。
でも、これはしょうがない。なぜなら、行政がお金を入れる場合には、ニーズよりもどうしても公平性を重視した路線に設定せざるを得ないということです。これはどういうことかといいますと、もともと路線があるところに補助を入れますと、路線がない地域から必ず、そのバスには税金が入っているのに、どうしてそちらにはあってこちらにはないんですかと言われたときに、その路線に対する明確な目的がなければ曲げざるを得ません。曲げていくと結局最後には巡回になるわけです。巡回にすれば、どこの地域も全部網羅できるということになるわけです。
ところが、実際には、網羅してもこれはざるでしかありません。停留所から近い人と遠い人は必ずいるわけですね。もともと鉄道とかバスというのは、このシビルミニマムの確保というものは非常に困難なんですね。どうしてかっていうと、もともと不公平な交通機関だから。だから、鉄道とかバスを引くということとシビルミニマムとは簡単にはつながりません。
実は、巡回形式でいろんなところをうろうろ回るというものは、車を使えない移動制約者にとっても余り便利ではありません。行きたくもないところへ連れていかれて、いろいろ回らされて結局時間がかかるということなんで、これも不便なことなんです。それから一方で、とはいえ、税金を払っているのにおれのところには来ていないという気持ちはずっと起こりますから、これはどうしても受益と負担のアンバランスが起こっていろんな問題を起こします。
それから、もっと典型的にあるものとして、乗らないんだけれども、例えばアンケートなんかでよくとると出てきますが、私は乗らないけれどもバスはあったほうがいいという人がたくさんいる。それから、これは首長さんなんかに多い例ですが、隣の何々市でも走っていると、うちで走っていないのは格好悪いという方がおられます。それから、バスとか鉄道は地球環境に優しいんじゃないかと。それから、交通弱者のために必要じゃないかと、こういうことがよく出てきます。でも、これらっていうのは、実際にはたくさん利用されていなければ全部否定されてしまうものです。
結局どういうことかというと、政策として地域公共交通が存在し得るためには、やはり使ってもらえる、ありがたがってもらえる、それに対して費用が相応である、そういうものを作っていかないといけないということが言えます。それが私なんかの役割であると考えています。
それから、これは土屋さんの言葉ですけれども、ムーバスというものは福祉政策ではありません、交通政策であるというふうにおっしゃっていました。これはどういうことかというと、交通政策というのは、もともとあったバス・鉄道の旧弊なこの交通機関を改革して、全体として利便性を高めることで自治体の政策ツールとして機能するようにすることであると。それに対して、福祉というものは機会均等の考え方で、自由に移動できない人に交通手段を確保するという考え方であると。
実は、ムーバスというものは、既存の公共交通機関では空白であったところに、ちょっと公的補助を入れることで新しい公共交通を供給して、全体として公共交通の競争力を高めるというモデルであったということです。結局そうですので、交通計画というものも、シビルミニマムを確保して格差是正する福祉の計画と、地域を活性化する戦略、この二段構えが必要であるというふうに考えています。
こんなことを考えているときに、私がいろいろといろんなところのバスに乗ったりとかかかわったりとかしていますけれども、やはり大きなインパクトを与えたのは、この鈴鹿のコミュニティバスでした。なぜかというと、このコミュニティバス、これは運行開始のときの宣伝のポスターですけれども、やはり「買い物に便利!通学に便利!なにかと便利!」と書けると、これがいいわけです。いろんなところでコミュニティバスについて、買い物に不便、通学に不便、どれも不便というのが普通のコミュニティバスじゃないですかというふうに言いますと、いや、そうなんですよねとおっしゃる方がたくさんおられます。でも、実際には、やはりこの路線バス、これはその系統とか、後で説明します、ダイヤ、乗降施設、車両といったコンテンツがきちっとそろっていて、それで発想を自由にすることで新たな展開を生み、それによって今までカバーできなかったこの買い物とか通学とかいろんな用途に対して、このバスが応えられるかどうかということが非常に重要になってきます。
そのために鈴鹿の場合は、3年間をかけて地域住民と市がいろいろ話し合いをして、路線やダイヤ設定はもちろん、車両の色、車内の構成、つり革、網棚、それから、いすの配置、そういうところまで話し合って決めるということをやっています。それから、そのためにはアンケートではなくてひざ詰めを活用するということもやっています。こんなようなことをやっていかないと、なかなかいい公共交通はできないということだというふうに思います。
先ほども申しました。公共交通は、系統、ダイヤ、乗降施設、車両の4つが重要であると。そして、実は運賃というのは余り関係ないというふうに考えています。大事なのは、この系統、ダイヤ、乗降施設、車両に見合う運賃を設定することであって、ワンコインがどうとか、そういうことは余り関係がありません。
住民が入ると非常にいいということは言うわけですけれども、これは必ずしもうまくいかないよという例です。ちょうどこの鈴鹿と同時期にありました「高岡ふれあいバス」という豊田の一番南部の高岡地区で運行されていたバスです。これは10年以上地域で話し合いをして、この地域の民営バス、名鉄バスでしたけれども全廃されたということを期にして、住民組織とバス会社の組織と市役所の三位一体で運行されたものです。ところが、やはり住民組織が路線をつくったということで非常に冗長な路線になったと。はっきり言いますと、乗っていますと、とにかく目が回るみたいな。もうすぐ左へ曲がって、右へ曲がって、また左へ曲がってみたいなことで。とにかく落ちつかないというような路線でした。だから、目的地に着くまでに物すごく時間がかかるということです。それから、これはターミナルの高岡公園というところなんですけれども、ここまでこの幹線バスがやってきて、ここで支線バスに乗りかえて地域のそれぞれのところに行くという形態をとったものですから、必ず乗りかえをしなきゃいけないということになりましたけれども、実はこれを見ていただくとわかるんですが、バスが扉を接してとめています。みんな乗りかえするのは嫌なんで、扉を接することによって乗りかえの利便性が上がるように、一応、運転士さんは考えています。ですが、ここは夜になると真っ暗になると。これは何もありません。この周り、公園ですから。何もないので、特に女性の方とか、こんなところで乗りかえるのは嫌だということで利用者はかなり減りました。それから、これは住民組織が運行するということで会員制をやりましたけれども、なかなか会員も増えなかったということがあります。結果的には、大幅に路線を改編して、結局、冗長であった路線を全部直線系に改めました。そうすると、カバーできない区域がたくさんできましたけれども、カバーできない区域ができたのに、利用がかなり増えまして採算もよくなったと。
これは、後で豊田市の担当者の方とも話ししましたけれども、まあやっぱり一回見せないといかんと。とりあえず住民の皆さんが回れって言うんで回ってみて、それでやっぱりだめだったんなら変えればいいというようなやり方をとりましたというようなことをおっしゃっていました。ただ、実際問題考えてみれば、もともとなぜこういうバス路線が必要かということを真剣に考えれば、そんな変な路線にはならないんじゃないかというふうに思います。やはりこの目的に立ち返るということは非常に重要だなと思っています。
そんな観点から、この地域公共交通を再生するためには、私は3つキーワードがあると思っています。「サルマネからオーダーメードへ」と書いてありますけれど。
一つ目は、どうやっていい路線を作って守って育てるかということで、そのために適材適所ということが重要だと思っています。後でちょっと詳しく説明します。
それから、「一所懸命」ということが重要だと思っています。
そして、この路線をうまく作り、守り、育てたときに、それぞれの路線がばらばらになってしまっては困りますので、いい路線網にまとめ上げるための「コーディネート」ということが求められると思っています。
この適材適所、一所懸命、コーディネート、これが地域公共交通がよりよくなるための3つのキーワードです。
一つ重要なのは、どうしても今、格差と、地域間格差ということがキーワードになっていますけれども、地域間格差を解消するためには、例えば三重県内でどこでもバス路線がないといけないとかというふうに考えてしまうかもしれません。これは全然違うことで、そうじゃなくて大切なのは、三重県内のどこでも最低限の生活ができる、最低限が何かということはもう一つポイントですけれども、最低限の生活ができるようにするために生活交通はどのぐらい必要であるかという基準作りが行われていないといけない。そこに格差があってはならない。これが一つです。
もう一つは、そういうことを実現しようとするときの実現機会の均等がなきゃいけないと。この2つの格差是正をしなきゃいけないというふうに私は思っています。
実際には、例えば田舎で住民の皆さんが立ち上がってバスを作ろうとしても、なかなか難しいわけですよ。一方で、やっぱり都市部でそういうことをやろうとすると、お金も集まりやすいとか、人もたくさん乗ってくれるとか、そういう話も出てくる。でも、じゃ、都会が簡単かというと、実は、都会にはバス会社、タクシー会社もあるんで、そういうところと一騒動起こさなきゃいけない。だから、これは逆に難しいかもしれない。ということで、実は、県内のそれぞれの地区をとって住民の皆さんに頑張ってもらってこういうことをやろうといっても、格差が非常に大きいんです。こういうことをどうやって均等にしていくかということも考えないといけません。
まず、適材適所なんですが、地域にとって必要な公共交通というのはどのようなものかは、地域によって異なると。したがって、その地域に存在する資源、人、組織、車両、資金等とニーズ、通学、通院、買い物等とをうまくマッチングさせて、費用効率的な運行、つまり、安くてお得な運行をすると。つまり、とにかくバスが走っていればいいとか、鉄道が走っていればいいとかじゃなくて、目的のためには手段は選ばないと。
そして、これは後でお話しする、地域の一所懸命と外部の適切なサポートによって実現するということなんです。
最近ですと、バスだとなかなか難しいということでデマンドと言われる、専門用語ではDRT、デマンド・レスポンシブ・トランスポート、需要応答型交通というものが日本の全体で非常に注目されている。三重県内でも導入しているところがあります。これは何なのかといいますと、これは、ここに路線バスがあります。これ定時定路線、それから、こちらにタクシーがある。これはドア・ツー・ドアでダイヤ非固定と。旧来の公共交通というものは、この定時定路線の路線バスか、ダイヤ非固定ドア・ツー・ドアのタクシーか、どっちかしかなかったということです。それが今は、こんなにいろんな種類があるということなんです。
例えばダイヤ固定でルート・エリア・デマンドのこの愛知県三好町さんさんバス乗継タクシーみたいなものがあると。定時でルート・エリア・デマンドで南相馬市小高eまちタクシーのようなものがあると。ダイヤ非固定でミーティングポイント・デマンドである四万十市中村まちバスみたいなものがある。こういうふうにいろんなバリエーションがあります。
例えば郡上市白鳥町のデマンドバス、これはもともと中心市街地と郊外部を廃止代替バスが結んでいたんですが、これだとなかなか高齢者の方に使っていただけないということで、ダイヤは定時のままで郊外部で家を回っていく。予約した家を回っていく。そして、中心部で病院やショッピングセンターや役場や駅といった、その行き先に送っていってくれるというようなデマンド方式を入れました。この車両ですけれども。結果的に、利用者が1.5倍以上増加したという結果になっています。もちろん、高齢者の方にとっても非常に使いやすい公共交通ということになっています。
それから、三好町の「さんさんバス」フィーダー乗合タクシー、これについては、ここはコミュニティバス「さんさんバス」が2路線ありますが、これは非常に利用者が多いものです。しかしながら、それだけだと空白地域があるということで、コミバスの経路変更をするとせっかくたくさん乗っているものが乗らなくなってしまうので、そのコミュニティバスの停留所からフィーダーでこの区間だけ、このタクシーで送ってあげますよというものを16路線作りました。ですから、2路線のバスと16路線のフィーダータクシーで町内すべてカバーするということをやりました。バスに乗るときに、そのバスの運転士さんにどこどこ停留所でフィーダータクシーに乗りかえたいのでお願いしますと言うと無線で呼んでくれます。それから、逆にタクシーに乗るときには、タクシー会社に電話して、何時何分のこのフィーダータクシーに乗りたいので来てくださいと言うとタクシーが来ると。そうでないときは走りません。ですので、経費が非常に安いということになっています。1年間で、これ16路線もあるのに100万円もいっていないと聞いています。こうやって空白地域をなくすということです。
適材適所を考えるときには、都市部から過疎地までいろんなところがありますけれども、スクール輸送があるかとか、地形とか集落の配置とか、ダイヤがどういうものが必要であるかとか、交通事業者、特にタクシー会社があるかないかということによっていろいろとポイントが変わってきますので、このあたりは詳しく検討して、その地域に何があるのか、何が求められているのかに応じた設計をしていく必要があるということになります。
それを行っていくときには、やはりそういうことをバス会社とか鉄道会社の一存、あるいは、自治体の施策のようなトップダウンで決めるのではなくて、その地域の利用者のニーズがくみ上げられて組織化されるということで、つまり、その地域のニーズに即した身の丈に合ったオーダーメードの地域公共交通システムが形成されるということが大事だということで、最近ですと、三重県は特に多いんですけれども、地域住民組織やNPO等が主体となった取組、お願いして作ってもらう地域公共交通から、みずから作り上げる地域交通へというような流れが出てきています。
ただ、後でお話しするように、こういうことができる地域住民組織とかNPOというものは、非常にまれです。現状の国の制度では、こういう人たちが一生懸命やろうとしても、くいを打つまではいきませんけれども、それを助けてあげる制度にはなっていません。ですので、行政がこの動きをどのように喚起、支援、誘導するかという仕組み作りも必要になってきます。
非常に全国的にも有名なのは、この生活バスよっかいちですね。運賃1と協賛金6と公的補助3を抱き合わせてこのバスを実現するという形ですけれども、その企画運営はNPO法人、地元住民と沿線企業、病院で運営をしているということになっています。ただ、これは非常に大変な活動ですね。私自身も、これ立ち上げに協力しましたけれども、非常に立ち上げるまでに苦労がありました。しかしながら、今でも何とか走っているということになります。
この一所懸命というものは、こういった地域公共交通システムを市町村であるとか交通事業者、沿線企業、地域住民、利用者が、私は、人と金と心と口と、この4つの要素を言っていますけれども、この人、金、心、口の4つのうち出せるものを出して、負担して支援するというような体制作りをすること、これが一所懸命であるというふうに考えています。実は、その地域が作り出す地域公共交通というものはこういうスキームになっているんですが、こういうことを支援する制度ってものはほとんどないという状況です。
しかしながら、名古屋周辺では、この地域参画型の公共交通というものが少しずつ出てきています。豊田の地域バス、名張の地域バス、松阪のコミュニティバス、岐阜市ぎふっこバス、一宮市生活交通バス、豊橋市地域生活バス、これらいずれも去年から今年にかけてずっと雨後のたけのこのように出てきています。おもしろいのは、名張とか松阪は非常に小さいですけれども、豊田、岐阜、一宮、豊橋、全部40万都市ですね。こういうところで結構多いということなんです。これはどうしてかというと自明でして、この豊田とか岐阜とか一宮とか豊橋では、公的補助でコミュニティバスを全部作るといったら何十路線にもなってしまう。これを丸抱えすることは到底財政的にできないということで、やはり地域が参画して、それぞれのところである程度頑張ってもらわないと、これはなかなかいいものができないというふうなことがそれぞれの自治体で合意されているということになります。
そうしますと、この出発式も非常に盛り上がるものでして、この豊田市の旭地域バス、これは豊田市長ですが、豊田市長もこんなにこの旭地域、これは旧旭町ですけれども、こんなに人がいるのかと思うぐらい、本当にもう私もびっくりしましたけれども、物すごい人がもう町民全員出てきたかというぐらいで祝っています。こちらは一宮の千秋とニコニコふれあいバス、これも大変盛り上がった出発式でした。これ出発式は全部地域で主催してやっていると。市が祝うのではなくて、地域が自分たちで作って開業にこぎつけたことを祝うというようなスタンスをとっています。まさに地域作りそのものです。それから、こちら一宮市のふれあいバス、これはここに企業名が書いてあります。これは何かというと、地域の人たちが営業活動をして協賛金を取ってきて、この協賛企業を書いてあるということになっています。こうやってバスを支えるのに、皆さんの力もかしていただくということをやっています。こちらの「みんなで乗ろまい旭地域バス」こののぼりも旭町の人たちがお金を出して作ったのぼりです。これは町内じゅうにあります。
このときにも自治会、町内会とか、商工会議所、商工会とか、あるいはPTA、女性会、老人会、あるいはNPO等、こういうものがその地域にあってどういう役割を果たしているかということをきちんと見た上で、そういうところとうまく連携協働するということになります。これはもう地域によって、どれが活動的かとかそういうことはさまざまですので、それに留意してやっていく必要があります。
それから、お金の方は、これは順番に愛知県の高蔵寺ニュータウンのサンマルシェ循環バス。これは茨城・土浦市のキララちゃん、これは商工会議所がNPOを作ってやっているものです。富山の呉羽いきいきバス、これは商工会が会社を作って経営している。ぐるっとつーバス。生活バスよっかいち。それから、松阪のコミュニティバス・鈴の音バス。それぞれ利用者負担、いわゆる運賃、それから市町村の補助、それから沿線の商業地域に協賛金として出してもらっているものということで、あとキララちゃんと呉羽は、これは国庫補助があります。松阪もそうです。国庫補助があります。これら、それぞれを抱き合わせてうまく、利用者負担だけだと到底走らないようなこんな少ないものしかないものを、どうやってほかとうまく協力して、お金をうまく集めてバスを走らせるかということの工夫が必要になっているということになります。
これは、まさに三方一両損なんですが、いや、そうじゃなくて、これに参加したことで利用者にとっても地域にとっても市町村にとってもおいしいという三方一両得にするにはどうしたらいいかということをバスの適材適所を考えて実現していく必要があるということになります。
それから、今まで申し上げましたように、車両もいろいろあると、運行方式もいろいろあると、運営方式もいろいろあるということで、これはいろんな組み合わせをしていけばいい。例えばバス会社が4人乗りタクシーを使ってもいいし、NPO法人がバスを用いてミーティングポイント・デマンドをすればいい。これは実は、雫石の例というのは、岩手県雫石はこれですね。いろいろと車両と運行方式と運営方式をその地域に合うように組み合わせていけばいいということになります。
それからあとは、このあたりで注意しなきゃいけないことの1つが、公共交通とSTSというものがあります。通常公共交通というものは、不特定多数を対象にしたオープンシステムであって、設定に当たってはある程度、例えば高齢者向けだとか、高校生向けだとか、ターゲットは絞るんですけれども、実際誰が乗ってもいいし、乗ってもらった方がありがたいというものです。
それに対して、STS、スペシャル・トランスポート・サービス、と言われるものですけれども、これはターゲットを限定する。通常ですと、高齢者であるとか、障害者であるとかに限定する。あるいは、地域の住民であるとかそういうところに限定する。そして、それに合ったサービスを提供していくシステム。これは、そういう特定の人に対してサービス提供するので、費用効率性は高くなりますが、会員制なんかをとるので、広く一般の人に使ってもらうことはできません。まさにこれは、公共交通は、いろんな人に使ってもらえる汎用、それから量を追求する。それから、モータリゼーションにかわり得るという広義の福祉であるのに対して、STSは、障害者とか高齢者とか移動制約者という困った人を助けていくという狭義の福祉に当たると。実は、コミュニティバスというものは、その中間をとる。というかもっと言うと、どちらもとろうとしているということで、どちらもとろうとしているのでどちらも中途半端になるという可能性があります。
ですので、この長野県の中川村の例ですと、全部コミュニティバスで網羅するということはもう最初からやっていなくて、循環バスと過疎地有償運送、NPO運送、それから、福祉のNPO運送、そして一般タクシー、この4つがもともとありましたので、この4つをうまく再編して、それぞれ学生・一般の集中需要、高齢者等、障害者・要介護者等、その他のフレキシブルな需要という4つに適材適所に組み合わせて、村の中の移動ネットワークを作ったということになっています。こういうことは非常に重要で、その地域にあるリソースをどうやってうまく組み合わせ、足りないものは補って、全体として生活交通システムにしていくかということは重要です。
ただ、その場合でも、この中川村の場合は、ありがたくも過疎地有償もNPOがやっていた、福祉有償もNPOがやっていた、それからタクシー会社もあったということで、公共交通や福祉輸送にやる気のある人たちがたくさんいたと。これは非常にありがたい。ところが、実際にはそういうことが成立するためには、この交通を必要としている地域住民の願いや活動も必要ですし、それを理解して下支えする自治体も必要ですし、交通事業者も貪欲でないといけないし、さらに、こういう全く言葉の通じない3つの主体をつなぎ合わせるコーディネーターも必要であると。
これは、もう生活バスよっかいちのようなものがあれだけ視察され、あれだけ代表の西脇さんがいろんなところで講演とかされているにもかかわらず、ちっとも全国に広まらないことからも明らかなように、いろんな条件がそろわないとできない。まさに偶然とも言えるものです。これをどうやって必然にしていくかということをまじめに考えないと、地域の皆さんに頑張っていただくことが、なかなか公共交通という形につながりません。
このことは、実は運輸省の中部運輸局が出しています中部地方交通審議会というところの答申、これが「みんなで“創り・守り・育てる”公共交通」というものが、これがタイトルとしてできています。実は、これは私がつけたものですけども、私も委員でしたのでつけましたけれども、この答申でも言っていますけれども、まさにそういう市民参加と協働をはぐくむためには、プロデューサーとして運輸局・支局や県、そして、ディレクターとして市町村、こういうところが活動することがないとなかなか市民の皆さんが参加して協働しろといったってできませんよということが書いてありますが、実際に運輸局・支局と県というところがそう動いているかというと、なかなかそういうふうにはなってきていません。やっぱり地域で考えてくださいといったってなかなかそう簡単には動きませんし、そのためにも地域の状況やニーズ把握に基づくソリューションをうまく提示してあげて、人的ネットワークとノウハウの地道な蓄積が求められる。ここに私は県の役割があると思っています。実は、運輸局・支局は、全国的にいろんな研修とかをやっていまして、こういうことをできるようにするためのいろんな勉強をされています。しかし、やはり運輸局・支局は、しょせんと言っちゃいけませんが、許可権者なので、許可するところが支援するというのも何かおかしな話なんですね。
これは後でお話ししますけれども、実は、運輸局・支局ってものはもっと大事な役割があります。そうなると、むしろ地域に対してソリューションを提示してネットワークづくりをするのは、むしろ私は県の役割だと思っています。実は、三重県は一生懸命そこは頑張っていると思っていますけれども、頑張っているんですが、まだ物足りないところが結構あると思っています。
いずれにしても、そうなるとこのコーディネートということが出てきます。今までですと、公的補助を打てばいいとか、コミバスを運行すればいいと。これが自治体の役割だと思っている方が多かったんですけれども、そうではなくて、公共交通とか福祉交通戦略をうまく確立して、その戦略に基づいてその地域の交通をプロデュースするという機能が自治体に求められます。それから、それぞれの取組をうまくネットワーク化していくという取組も自治体には求められます。それから、それぞれで頑張っている人たちをサポートする。まさに、戦略に適合する交通機関に対して公認、広報、案内をするとか、適材適所になるようにコンサルティングをするとか、担い手となるNPOや住民組織を支援する、こういったことも自治体にとってはすごく必要なことだと思っています。
例として舞鶴市を挙げますけれども、これは舞鶴市の場合は、実はもう1973年から運行していたということなんですが、これ実は、この地域住民がバス運行協議会を組織して、白ナンバーのバスを運行するということをやっていましたけれども、これは73年11月の段階では、近畿運輸局は許可を出したんですが、実は違法なんですね、これ当時の法律で見ると。なので、違法でしたのでもぐりで。でも、許可しちゃったんで、許可した以上、後で違法とわかっても引っ込めるわけにはいかないんで、余り宣伝するなということで20年ぐらいずっと黙ってやっていたという、そういう変なものです。今は、これができるようになっています、こういうことが。地域住民が協議会を立て、市が車両購入、運行助成、ノウハウ支援をして白ナンバーでバスを運行するということが、今の法律体系ではできるようになっています。
舞鶴市の場合は、実はこういう協議会が市内7地区にありまして、それぞれ地域の名前をつけた何とかバスという名前になっています。それで、それぞれの地域のニーズに合った路線、ダイヤ設定を自治会で決めています。そういう形ですので、例えばバス路線が廃止になった、あるいは、舞鶴は定期航路も、湾ですので湾を横断するような定期航路がなくなったということでバスを運行するというものがありますけれども、必ずしも運行はされない。要するに、自分の地域にとってバスは要らないというところは運行しないという選択もできます。ということで、この7地区は手を挙げて運行したいということで運行したということになっております。こういう選択が一応可能であるということです。
実は、松阪がそういう仕組みをとっています。松阪の場合ですと、市の全体会議に対して、各地区で検討委員会を作ることを推奨しています。逆に、この検討委員会を作らないとコミュニティバスは引きませんというような約束をしています。これをやりますと、もともとやはり地区は何もないと走らせてくれということを言うだけ。それから、費用も行政で何とかしろと。それから、企画も行政で考えろということだったんですが、これが検討委員会をつくって立候補しろということになりますと、それなりの組織をつくってこなきゃいけない。それから、それなりに費用はなかなか難しいとしても、いろいろと運営に協力するとかという形で、先ほど人、金、心、口と言いましたけれど、いろんなもので分担するということが出てくる。それから、企画運営にしても、ダイヤとか運行経路にしても、地区と行政が相談して決めるということで各地区の意向が入ってくる。あるいは、各地区の意識が高まるようなシステムとしてできてくると。実は、これは地域も地区も苦労するんですが、行政も苦労するんですね。いちいち地区の言うことなんか聞かなくても、自分たちで勝手に決めて運行したら簡単なわけですよ。ところが、それでは成果が出ないので、やはり地域の皆さんといろいろ話をして路線は作っていかないとうまくいかないと。それから、例えばデマンドシステムを入れるにしても、そのデマンドシステムというものはどういうもので、この地域にとってふさわしいかふさわしくないかということを、その町内と話し合わないと、なかなか導入したって定着しないということですから、こういう仕組みをとるということは非常に重要だと。松阪の場合は、そういう認識がされています。
ただ、もちろんこの場合でも、立候補するかどうかというものは、その地区がどのぐらい熱心か、働いてくれる人がいるかとか、そういうことに左右されますからなかなか公平性が担保されません。つまり、本当は必要なところであってもなかなか走らないというところもあります。ですから、行政等によるノウハウ支援とか検討機会の確保、こういうようなことによって格差是正する必要もあります。
そういうことを担保するためにも自治体の公共交通戦略は非常に重要です。これは、本来でしたら、今市町村合併が進んできましたけれども、合併と無関係に生活圏、あるいは日常交通圏のレベルで必須です。人は、市町村単位で動くわけじゃありませんので、それを越えて動くということになります。
ただ、合併が進みましたので、そういうふうに複数市町村で協議会みたいなものをつくるのはなかなか困難であると。なぜなら、そういうところは合併しているからということになります。ですので、単一市町村でやられれば十分かもしれませんし、逆に、大きな市町村だと、その中を分けてやった方がいいかもしれません。
これは、実際に岐阜県のある例ですと、本来だったら合併する予定であった2つの市が合併しなかったと。片方の市が、別の町村をくっつけて大きな市になったということがありました。その中のある村からは、その合併しなかった市の病院へみんな行っていたということなんですが、合併しましたら、その路線も公的補助路線だったので便を半分以下に減らされまして、その新しく市に入った市の病院へ行く路線が新設されたということがありました。こういうものっていうのは、その市の担当者の方は、あなたの村は何々市になったんだから何でよその市に行く用事があるんですかとおっしゃっていましたけれども、こっちの自治体に合併したからあっちの病院へは行かなくなったとかそんなことは普通ないものですから、そういう計画というのはちょっとナンセンスなような気がするんですが、実際そういうことも起こったりもしているということです。でも、本当はそれではだめで、その2つの市が同じ生活圏であれば、やはり一緒に公共交通戦略を作るべきでしょう。そのときに、やはりその上に立つ県が仲立ちをする必要があるかもしれません。
それから、移動制約者対応、これもやりながら。ただ、これはあくまでもSTSというところが非常に意味を持ってくるところですので、公共交通も視野に入れるのであれば、自治体の魅力づくりをきちっとやっていかないといけないというふうに思います。
それから、細かい地区内とか特定の需要については、自治体の直営でなくて、それが必要と考える地区内当事者内で担ってもらうシステム。これは先ほどから申し上げているような一所懸命のシステムですね。逆に同じシステムで全域を埋めることが適当、公平ということはあり得ない。めり張りがあって当然だということを私は思っています。
各地区の運行形式はばらばらでも全体としてコーディネートされていることが必要と。パッチワークのような、近くで見ると余りきれいじゃないんだけれども、遠くから見るとすごくきれいであるというような公共交通を作る必要もあります。
そういうことをやろうとしたときに、実は、今ある地バス補助と言われる国と県の協調補助の仕組み、これが実は今、国の段階でも物すごく問題になっています。これはなぜかというと、補助が非常に巨額であるということに対して成果が出ていないということで、成果が出ていないというふうに財務省とか内閣府あたりが国交省にいろいろと言っています。今その詳しい調査をしているそうです。本当にこの地バス補助が意味がある制度なのかどうかということについて検証をやっているらしいです。
ただ、確かに問題はいろいろある。もし、この国県の協調補助がなくなってしまうと、三重交通の路線は相当なくなると思います。なので、これはある程度守っていかなきゃいけないことは確かなんですが、一方で、この国県協調補助の路線というものは、実はそうなりますと市町村負担はあるところまではゼロですから、その地域の市や町がその路線についてモラルハザードを起こす懸念があると。国と県がお金出してやってくれているから、うちは何も考えなくていいわというようなことが起こりがちであると。それから、補助基準を満たすために、利用状況と整合しない路線を設定する例も多数あります。例えば10キロ以上という基準がありますので、無理やり寄らなくてもいいところに寄って10キロ以上にしてしまうとか、そういうことも見られます。
それから、退出申し出なく廃止となる場合があると。これはちょっと面倒なことなので、ちょっと説明しませんけれども。
コミュニティバス等との重複はできない。これはどうしてかというと、コミュニティバスと国県の強調補助の路線が重複しますと、そうすると通常コミュニティバスの方が運賃が安いので、国県の協調補助が増えてしまうことになって、なので絶対に国県の協調補助路線とコミュニティバスとは重複してはいけないというようなことがある。
こういうようなややこしいことがあるので、この補助制度が地域のいい路線網をつくることになかなか結びついていません。
実は、例えば岐阜県の輪之内町の例は、うまくそのあたりを補完しまして、今までなかった路線を、ここの場合はもともと路線が何もなかったんですが、大垣からの路線と羽島からの路線を両方とも国県補助で作り、それで余っている分で町内の路線も作ってしまおうというようなことをやっています。ただ、こういうように国県補助をうまく使っていい路線を作った例というのは、もう輪之内町のほかにはほとんどないです。
それから、京丹後市の例ですけれども、ここは6町合併ですけれども、6町合併ですので複数市町村ということで、国庫補助の路線がたくさんあります。これらの路線を例えばコミュニティバスとかにしていくのは非常に困難であるということで、じゃ、どうしようというときにアンケートをとりましたら、住民の皆さんがバスに対して運賃をどこまで払っていいですかというふうにアンケートをとりましたら、9割が200円以上は払いたくないというふうに言った。じゃ、いっそのこと運賃200円以上上がらないことにしましょうということにしたということですね。ここでは、一番長い路線が850円ぐらいまでいきます。ですが、200円以上はもう全部200円。差額については市が補助するという形をとりました。この結果どうなったかといいますと、実は、結果的に利用者は1.6倍ふえまして、運賃収入は微減、96%、4%減にとどまりました。ですので、市が補助する分は4%分増えただけという結果になっています。これは、バス会社も市も、あるいは国県も、本当にまさに清水の舞台から飛びおりるようなもんだと。今までそんな800円だった路線を200円にしてどのくらい人が増えるのかと思ったら、非常に利用者がふえてくれて、運賃収入をカバーしてくれるということになったと。なので、これは既存の国庫補助の路線を生かしながら、運賃政策を変えることによって生かすということも考えられます。これ今、大紀町がやろうとしている策ですね。
それから、豊田市みたいに財政的に余裕があるところは、国県補助を全部返上して、全部コミュニティバスにしてしまうというものもあります。これは旭町、これは旧稲武町の出発式ですけれども、これは副市長ですが、その後に商工会の会長とかが、豊田市に合併して今までいいことが一個もなかったけれども今日はすごくいいことがあってよかったと言って、今まで合併して本当によくないことばかりだったというふうに率直におっしゃっておられました。豊田市ですから、こんな最新のバスを入れていただいて、実はこれ、市内の高校に通学できるようにした。朝は稲武も旭も、朝5時台から走っています、バスが。ですので、豊田市に7時ちょっと過ぎにつきますので、豊田市内の高校の部活に参加できます。で、都心部で21時ちょっと過ぎに出るバスがあります。これが最終です。これによって飲み会の1次会は出られると。2次会以降はタクシーで帰ってくださいというようなことで、一応、豊田市の場合は、市内でしたら高校通学できます。飲み会は1次会まで出られますという品質保証を市がしたということになっています。ただし、6億5,000万円の補助金をつぎ込んでいるということになっています。
そこまでだと金がかかかるので、綾部の例ですと、「あやバス」といいまして、この幹線バスと支線バスの組み合わせで、支線バスの方はデマンドにすることによって経費をかなり切り詰めて、市内のネットワーク構築を図っています。
いろいろと幹線をどう作って太い流れを作るか。それから、支線の方は、先ほどのような地域参画型を入れまして一所懸命でやっていただくと。この幹線と支線をどういうふうに結節させるかということ。例えば一番いいのは、生涯学習施設とか中核商業施設、こういうところに結節点を設けてうまくネットワークとして作っていくということが必要で、この幹線については国県補助の路線が非常に重要になってきますので、こういうところとどう連携するかという話が出てくることになります。
それから、実は、そういうことをやりやすくするために06年の道路運送法改正が行われているということになります。06年の道路運送法改正については、私自身が国交省の委員会で原案作りに参加していましたので、その中でいろいろとこういうことをしたらいいという話をしていました。もともとはこの改正については、乗合事業を整理するとか、あるいは、自家用のいわゆる白ナンバーのお金を取る運送、これは通常だと違法なんですが、ある場合には認めるというような位置づけをするということをやりまして、全体としては地方に権限を移譲して、公共交通サービスの供給は自治体、輸送の安全確保は国という役割分担を明確化するということがありました。
先ほど申し上げましたように、国や県は、市町村や地域住民に対してのコーディネーターとか、それからサポーターとしての役割を担わなきゃいけないということなんですが、国は、法律上は輸送安全確保が大事だというふうに言われています。ですので、安全確保のために許認可をやるということなので、その地域にどういう交通機関がふさわしいかということまでは余計なお世話だということになっています。でも、やっています。本当のことを言いますと、それは私が思うには、県がやらなきゃいけないことだと思っています。なぜなら県は、県の補助制度を持って、三重県の場合でもありますし、愛知県はないんですが、岐阜県でも、ほとんどの県で補助制度を持っている。それによって、その地域の公共交通をコントロールすることができるし、実際、いろんな都道府県のバスの状況を調べますと、県の補助制度にかなり依存して決まっているんです。ですので、実は、県の役割は新しい改正法で全く位置づけられていないんですが、というか、市町村と県は同格になってしまっているんですが、それではだめで、県がきちんと市町村とか地域の公共交通ニーズをうまく把握して誘導していく役割を果たさなきゃいけないということを思っています。
一応この改正道路運送法、それから、後で説明する地域公共交通活性化・再生法、この2つの法律で3つの協議会、地域公共交通会議、有償運送運営協議会、それから、活性化・再生法定協議会、この3つができました。これが、この協議会を作って議決すると特区のようになりまして、いろんな恩典が与えられるということになっています。
これを地域公共交通会議で説明します。地域公共交通会議というのは、市町村が立てまして、その地域にとってどのような公共交通が必要かという戦略を議論し、具体的な実施方法を協議していくものです。ここで協議が整いますと、そのときにそこにある事業者に走ってもらう場合には事業者が運行するんですけれども、いろんな手続の簡略化とか弾力化が得られます。それから、やってくれる事業者がない場合には、いわゆる白ナンバーの有償運送になるということになります。こういう仕組みを市町村がコントロールできると。従来ですと国だったんですが、市町村ができるということになりました。ところが、なかなかそうはいかなくて、三重県もそうなんですけれども、コミュニティバスを作ったりとか変えるときにこの会議を開かなきゃいけないのとか、こんな会議を開くと日程調整とか会議を持つのが面倒で、前の方が楽だったんじゃないのみたいなそういう話があります。
これはちょっと違っていまして、先ほど申しましたように、地域公共交通会議というものは、地域が欲しいと思えばその協議路線というものは国の基準を越えられる。具体的に言うと、運賃や停留所やダイヤ設定や事業者選定の自由度と許可手続の簡略化が保証される。これまさに適材適所と一所懸命がこれで保証されるということになります。そういうことになりますので、つまり自分たちで地域公共交通戦略を立案して実行していくに当たって、国の基準だと窮屈であるときには、この会議を開いていろいろと恩典をもらうのがいいですよという仕組みになっています。
そうしますと、国の協議でそういうことがあったんですけれども、例えば三重交通さんが、この制度を悪用して全部協議にかけてくるんじゃないかと。これで本当にいいのかという話がありました。これは、実は本当の私の実のねらいというのは、みんな協議路線になってしまうと。つまり、地域の路線がすべて事業者が勝手に走らせているものではなくて、この地域公共交通会議によって協議されて、協議の結果、この路線は必要だということにちゃんと位置づけられるということが大事であって、むしろ、そのためにバス会社がこの恩典を与えられる、国の基準を越えられるということをどんどん悪用してくださいという制度なんです。つまり、事業者さんは、今までだと簡単にできなかった停留所の増加とか経路変更が、この会議にかけると容易になる。運賃改定も容易になります。それから、バス会社がコミュニティバスみたいなものとかDRTを走らすことができる。これも地域公共交通会議を経るとできます。そういうことによって、公共交通網をより発展させるようにコーディネートしていくということがこの会議に期待されますし、根本的には、これは市町村がガバナンスをとりますので、事業者さんにも頑張っていただきながら、市町村がどういう公共交通政策をやりたいかということを実現するためのツールであるというふうに考えてもらえればいいです。
そのときに、実は、県の地域協議会と言われるものがもともとありますけれども、これと市町村の地域公共交通会議の位置づけ、これがかなり問題になってきます。これはちょっと一番最後に詳しく述べます。
実は、地域公共交通会議については、道路運送法に基づく会議なので、バスとタクシーにしか力が及びません。例えば鉄道の再生、あるいは鳥羽市なんかで問題になっているような船の見直し、こういうものには無力です。それから、地域公共交通会議においては、公共交通計画や戦略の策定というものは義務づけられていません。なので、いきなり会議を開いて、一発でとにかく手を挙げろというような、そういう場当たり的な開催を行っている自治体があります。これは、三重県内にも多数そういうところがあります。だから、本来だったら協議しなきゃいけないのに、とにかくお墨つきを与えるような会議になっているところもあります。それから、メンバー参加に拒否権がありまして、例えばバス会社がうちはそんな会議出たくないから参加しないというと参加しなくていいと。参加しないと、この地域公共交通会議が開けなくて協議ができないというような問題点があります。
このあたりについて、実は新しくできた地域公共交通活性化・再生法、これは去年の10月の法律ですけれども、ここですべてカバーしていただいています。実は、バス・タクシー以外のほかのモード、あるいは新しいモードにこの法律が適用される。それから、公共交通計画・戦略については、計画を作るとそれに対して補助がもらえるというそういう制度ができた。それから、メンバー参加への拒否権はありません。参加応諾義務がある。こういうふうに新しい法律ができたことによって、従来の地域公共交通会議の問題点が全部解決されています。
さらに、もともと地域公共交通会議は協議機関ということで、計画なしでも特区制度活用可能ということで、その協議をしていくだけの機関でしたが、この法的協議会は実施機関ということで、その連携計画の策定実施に対して国庫補助するという仕組みが新設されている。つまり、協議するだけじゃなくて、実際に実行も行う組織としてできています。
ここで、連携計画、これですね。地域公共交通総合連携計画というものが規定されている。この連携計画というものは、実は関係者間の連携、それからモード路線間の連携、それから生活圏内の地域間の連携、この3つの連携が必要になっているということがあります。ここまででもお話ししたように、公共交通というものは、いろんな人たちが、いろんな地域が、手を組んで連携してやらないと機能しないんだと。これがまさに活性化・再生法で問われているエッセンスだと言えます。
これを進めようとするために、この通称30億円と言われる、この地域公共交通活性化・再生総合事業というものが新設された。これもご存じかどうかちょっとわからないんですが、これは20年度の当初予算では、概算要求ではゼロ査定であったと。それに対して、後でかなり復活折衝でアプローチして全額認めてもらったという。かなりそういうものは異例だと思うんですけれども、実は、私はそのときに国交省に頼まれまして、復活させるための資料作りの手伝いもやっていました。その中で、例えば三重県だと、ここでこういう事業を導入するとこんなことができるようになるよということをあることないこといろいろ私の頭の中でつくりまして、桑名だとこういうことができますよとか、いなべだとこういうことができますよとか、四日市だとこういうのができますよみたいなことを、とにかく玉を出して出して、こんなことができるんだから30億円絶対つけてくださいという資料作りをずっとやっていました。そういうことが盛り込まれています。
それによって、実はこの制度っていうのはおもしろくて、自治体は裏負担しなくてもいいということなんで、例えば地域組織が主体となるような生活バスよっかいちのような運行であるとか、民営事業者がICカードを導入するような、三重交通さんは考えておられますけれども、こういうものに対しても補助が出るという仕組みになっていまして、これは欠損補助ではなくてアイデア料だと。地域公共交通に関するおもしろい計画が出てきたら、それに対して国が支援するという仕組みとしてできています。
こんなような新しい国の展開、まさにこのアイデア料をこういう形で総合事業として規定するという中で、一体、県が何ができるかということの私の個人的な考えなんですけれども、やはりこうなってきたからこそ、県が持っている生活交通確保計画というものを、国が広域幹線補助を打っていくための計画の裏づけのようなものではなくて、もっとだれもが安心して生活できる県土を実現するために、公共交通とかSTSというものはどうあるべきかということを規定するようなものとして実質化される必要があると思っています。
それから、どうしてもこの確保計画なるものはどこの路線を守っていくかということの計画なんですが、そうではなくて、その路線が何を県民に提供できるか。例えば冒頭の南紀広域バスでお話ししたようなことだと、この地域からは高校に3校通うことができますと。だけれども、こっちの地域だと1校しか通えません。ここだと1校も通えないでみんな下宿しないといけませんと。そういうことではなくて、例えば三重県の中であれば、必ずどこからでも高校は2校通うことができるとか、そういうようなアウトカムを基準にしたような路線の担保をしていかなきゃいけないというふうに考えています。実は、これは岐阜県さんにもお話しして、岐阜県さんではそういうことを考慮したような計画づくりをしていただいています。
それから、県の単独補助についても、やはり現在ですと既存のバスをどうやって残すかということの補助になっていて、新しく地域のニーズに対応できない公共交通をどうやって作りかえるかということのインセンティブがありません。今のまま走らせていた方が得なんですね。なので改革が行われない。これではだめなんで、もっと作りかえるインセンティブを付与する必要があると。これは静岡県が昨年度あたりからこういう改革を行っています。
それから、地域自身が支えることを支援する仕組みも必要で、例えば今の単独補助ですと自治体にしか補助が出ませんので、生活バスよっかいちとかのようなものには補助が出ないという仕組みになっています。こういうところも問題だと言えるでしょう。
それから、何といっても広域路線、鉄道やバスをきちんと維持して活用していくようなことが、県の役割として重要であると。どうしてもこれはJRさんとか近鉄さんとかに依存することになってしまうんですけれども、あるいは三重交通さんですね。依存するんですが、それでもやはりこういう広域路線がきちんと機能しなければ、幾ら支線のところでこちょこちょやっても、なかなか利用者が増えていかない。全体として、この広域路線という幹をちゃんと発展させ、各地区の交通システムと結節連携させて全体としてネットワークを作っていく。これをサポートすることが県の役割であるというふうに考えています。
ちょっといろいろと話をしてきましたけれども、またこの後、議論もできますので、またいろいろと議論しながら私の考えも述べたいというふうに思います。一応、話題提供としては以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございます。
② 質疑
○水谷委員長 どうも長い間、ありがとうございました。
それでは、これより質疑に入りたいと思います。
なお、念のために申し上げますが、参考人は、委員長の許可を得て発言し、また、委員に対しては質疑をすることができないことになっていますので、ご了解願います。
それでは、委員の皆様から質疑がありましたら、よろしくお願いをいたします。
○萩原委員 ちょっと教えてください。私は、四日市なんです。それで、いわゆる郊外の団地、四日市は団地が随分たくさんできていますけれども、そして、やっぱり駅へのバスという路線になっちゃうんですね。昔は、私も免許証がないころに議員になりましたもので、最初はバスに乗って随分通っていました。だけれども、なかなかもう本当に人が少ない、乗らない。最近は、だからどんどん夜が切られていく。悪循環で、おじいちゃん、おばあちゃんが圧倒的に多いんだけれども、市営住宅もありますから。だから、病院経由に走らせてくれというそういう声が強いんですけれども、それで結構高い。やっぱり不便だしというので車に乗るようになって、最近ではもう車ばっかりに乗っているという。だから、バスの実態、この頃本当に知らない。まあ、空で走っておるな、空気乗せてという話ぐらいはようわかるし、結構いろんな利用者の方々の切実な声は聞くけれども、なかなかそれが十分な声にもならない、できないというそんな状況がありましてね。
そんな中で、さっきちょっとお話があったC-BUSと言われる鈴鹿のバスが早くから話も聞いて、これはなかなかという思いもしたんですけれども、さっきまとめられた「買い物に便利、通学に便利、何かと便利」というこの鈴鹿方式と言われているものが、なぜそう高く評価されたのか、また、それを本当に可能にしたということのお話の中にもあったと思うんですけれども、基本のコンテンツが大事なんやというお話も、その中で4点というのはいただいたんですけれども、どういう発想の転換なり、あるいは地域の住民と行政の企画なりとがうまくマッチしたのかというそのあたりをもうちょっと教えてほしいなと、そんな思いがするんですけれども。
○加藤参考人 簡単なことでして、結局、今までバス会社は、住民の皆さんの意見とか、何を考えているかということを別に聞くわけでもなく、路線とかダイヤを作っていたと、単純に言うとそういうことですね。特に最近、三重交通さんもそうですし、ほかのバス会社さんもそうなんですけれども、こういう地域公共交通会議とか、住民の意見を聞くような機会がかなり増えてきて非常に勉強になるという話をおっしゃるんですね。勉強になるってどういうことですかって言うと、今までそんなこと考えたこともなかったと言うんですよ。
つまり、本当にそれこそ、免許を持っておられなかったということなんですが、その頃だと、おれが走らせるときに乗れと。それは、その運用の都合であると。ちょうど1台で走っていると、ちょうどその時間が都合がいいんだとかっていうので走らせていると。確かにそうだったと思うんですよ。ところが、車に乗るようになれば自分の都合で動けるわけですから、みんな自分が動きたいときに動きたいと思うようになる。そうなると、それに対してどうやって対応するかということを、本来だったらバス会社、鉄道会社は考えなきゃいけないのに、そこがなかなかそういう変化が起こらなかった。それで、だんだんお客さんは逃げていったと。
それに対して、じゃあどうしたらいいかというと、鈴鹿の場合ですと、結局、バス会社が住民や利用者の皆さんにどういう時間にどこへ行きたいかということを何も聞いていないからってことでしょうということになったと。それでひざ詰めをやりまして。もともとここは本当に非常に利用者が既に少なかったですから、もともとのバスも。なので、利用者だけに聞いていてもしょうがないので、潜在的な利用者になる住民の皆さんにかなりしつこく意見を聞いて、利用のニーズを聞いた。さらに、これはわがままがいっぱい出てきますね、これをやると。そうすると、あなたの話とあなたの話を全部聞いていると運賃は1,000円ぐらい取らないといけませんねというようなお金の話も率直にすると。このくらいまでまとめてもらえれば200円ぐらいでいけますねと。ただ、市の持ち出しも何千万ありますねというような、お金をこれだけかけてこれだけのものが得られるよというような話もした。コミュニケーションですね。そのあたりを率直に地域でやっていけば、これだけのお金をかけて、国とか県とか市からもこれだけお金をいただいて、これだけのものが実現できるんだと。だったら納得がいくねというような合意が得られるということですね。地域公共交通会議とか法定協議会は、やはりそういうことがきちんとできるようになってほしいなという希望があります。
鈴鹿の場合は、そのかなり先駆けであったし、実は、鈴鹿で一生懸命頑張っておられたスタッフの方は、武蔵野市でやっておられたスタッフと同じ方なんです。だから、実は、武蔵野でやったことと同じことを鈴鹿でやったという経緯なんですけれども。さらに、鈴鹿でやられたものを見ていた人たちが、生活バスよっかいちをやったという。実は、かなりつながっているんです、これ。人のつながりとしては。そのときに鈴鹿の例を見て、やっぱり地域で一生懸命取り組んでいかないといいものはできないねということで、四日市の場合は、実は四日市市さんはなかなかいろいろそれまでにコミュニティバス等で手痛い、要するに、作ったけれども乗らないということが何回もあったので、それだけじゃ認めませんという態度でしたので。これは、僕は全く間違っていないと思っていまして、そういうことだったら自分たちでも必要だからやろうということで、となるとやっぱり鈴鹿でやったような徹底的なニーズ把握を地域でやらないといけないだろうと。これも事業者も入って作り上げたということになります。
でも、これはもう最近ではかなり当たり前に近いやり方になってきていますので、地域公共交通会議も法制化されましたので、かなり一般的にはなってきていると思っています。ただ一方で、そういうふうにやるところもあれば、全く趣旨がわからず、とにかく集めてセレモニーやれば路線をトップダウンで変えられるというふうに考えているところも少なからずあるということにかなり問題があると思っています。
○萩原委員 もう一つ、この三重県の交通政策なんかをやっている政策部なんかにもこの話はされたことがありますか。県当局、行政に。
○加藤参考人 7割か8割ぐらいは同じような話はしています。今日初めて話したこともありますけれど、大体筋としては話しています。
○萩原委員 そうですか。はい、ありがとうございました。
○大野委員 基本は、地域交通会議がかなり根気よく、行政も入って住民も入って根気よくここでやらないと、ここで急ぐと結局結果は空気を乗せて走るバスとか、住民のニーズに合わない運行になってしまうような気がするんです。ここが一番キーポイントと思うんですけれども、そうじゃないですか。
○加藤参考人 はい、そう思っています。
ただ、ちょっと注意しなきゃいけないのは、地域公共交通会議の法定の仕組みは、20人ぐらい委員が必要なんです。これは警察の方とか、道路管理者の方とか、いろんな入ってもらわなきゃいけない委員の方がおられまして、なので、地域公共交通会議自体でやろうとすると、これは事務局が疲れてしまうんです。なので、通常は、私とか国交省がお勧めしているのは、分科会とか幹事会とか地域部会とかも作りながら、そこでうまく合意形成をして、全体としてやらなきゃいけないことは本体の地域公共交通会議でやるといったような、会議の運営についてはいろいろ工夫してくださいと。ただ、大枠としては、その地域公共交通会議という体制の中でいろいろと議論してもらうと、その結果が直接法律の緩和とかにはね返るので非常にいいです。逆に言うと、その緩和をえさにして、ちゃんと協働をやってくださいねという仕組みをつくったということなんで、ぜひ活用はしてほしいなと思っています。
○水谷(正)委員 先生、県の広域自治体の役割のところの話なんですが、私も四日市なんですけれども、生活バスよっかいちが立ち上がってくるときに市議会にいたものですから、これはもう基礎自治体が最も得意なところだなというふうに思うんですが、県の役割についてのところ、64ページ目のところでちょっと述べていただいておりますけれども、もうちょっと絞り込んで、広域自治体がやるべきことを、そのポイントをおっしゃっていただけるとありがたいなと思うんですけれども。私自身は、もう市町を越える路線ぐらいかなというふうに思っておるんですが、どうですか。
○加藤参考人 そういうふうに言い切れないところがちょっと難しいですね。単純に言うとそういうことなのかもしれませんが、本当にその現状ですと、実際問題としては市町村を越えるバス路線ってほとんど要らないんですよね、現実には。だから、市町村を越える路線については県がというふうに言ってしまうと、そうすると、それ自体が自己目的化する可能性があるんじゃないかなという懸念があるんです。ちょっと変な言い方なんですが。
そうではなくて、やはり県としては、その県の中でどういう生活交通が確保されているべきかというビジョンがあって、それが保証されるために、市や町の取組の中で足りないところをどうフォローするかということが必要だと思っています。それが典型的にあらわれてくるのは、どうしても市町境で路線が切れると。それは本当は必要なのに切れると。それに対して何かやらないといけないと。結果的にそうであるんならいいんですが、最初から複数市町の路線を県は対象にするというふうには、ちょっと言うべきではないんじゃないかなと思っています。
○水谷(正)委員 さらにそのお話を具体化されると、お話の中に出てきた、最低限、三重県立の高等学校2校ぐらいはそれぞれ県民が通えるよというのが具体的な話になるわけですか。あと、何か全国の事例の中で、こういうアウトカムで指標があるというのを教えていただけるとありがたいんですが。
○加藤参考人 総合病院が一番多いですね、やはり。総合病院に行けると。高校というのは、実は余り。高校の方の再編が今進んでいるので、高校の再編とバスの再編が同時みたいなことなんで、実はその流れの中で高校を守るためにバスを引かないとか、そういう逆も結構ありましてですね。バスを引いてしまうと、それでもっと町の高校に通えるから、自分たちの高校が守り切れないとか、そういうのもあります、実際には。なので、これ高校とバスを絡めると非常にいろんな問題が起こってくるんでなかなか難しいんですけれども、病院については余りそういうことはなくて、その地域の総合病院にきちんと行けると、通院できるということを担保するとか、あるいは役場とか、あるいは拠点となる生涯学習施設とか、いわゆる拠点となる公共施設に対して通えるということを基準にしているということも見られますね。
これはちょっと結局、生活交通とかシビルミニマムというものを県としてどう考えるかということがあって、それに基づくものなんで、三重県として何が重要なのかということをきちんと総合計画とかいろんなこととの関係で考えていくということが本来必要だと思っています。
そうでなくて、何か公共交通はとにかく守らなければいけないとかっていうとちょっと、実は公共交通って何のために走らせているのかということがよくわからなくなってしまうのではないかなという懸念があります。
○水谷(正)委員 例えば四日市の生活バスよっかいちのときに、あの方々が官、もっと言えば県や国が邪魔だと。判断するときに、逆にいてほしくないということもあったんじゃないかと思っているのですが。完全にあそこはサンシとかのスーパーがあったりして、住民で作り上げていったなという印象を私自身は持っているんですけれども、どうですかね。
○加藤参考人 国は邪魔でしたでしょうね。許可出さなかったですから、最初。許可を出すためのいろんなやりとりをしたのが私なので。どうやったら許可が出るかということの算段をしたんです。それは、そのときにもやはり感じましたけれども、だから、現行のそういう道路運送に関する法律というのは非常に紋切りで、実際に必要とされる地域公共交通を作り出すことに対して余り寄与していないなと。むしろ足を引っ張っているなというふうに感じたことが、その後、偶然にも2006年の道路運送法改正に参画することになったので、こういうものを地域公共交通会議で認めていく制度を作ったらどうかということになって結実したということなんで、当時と今と、国のその道路運送に関する制度体系が変わっていますので、今は余りそういうことはないだろうと思っています。
ただ、県に関しては、ほとんど意識していなかったんじゃないかなと思っています。結局、プラスでもマイナスでもどっちでもないというような感じだったんじゃないかと思います。私の中では、それならそれでもいいかもしれませんけれども、先ほどから申し上げているような、県としてどういう生活保障を県民の皆さんにしていくかということの基本的なビジョンがあって、その上でこの生活交通、地域交通の果たす役割があるとすれば、それに対して何らかの支援策とか、あるいは底上げとか、サポートをしていくような機能が県にあるべきであるし、市がそれをやらなくて県が手を出すというのはおかしいというふうに考えるのかもしれませんけれども。これちょっと県と市の役割分担の話なんで非常に難しいんですが、県としては、そうであっても助けるということもあってももしかしたらいいのかなというふうにも思ったりもしています。
○水谷(正)委員 よくわかりました。ありがとうございました。
○津村副委員長 すいません、少しちょっと本題から離れるかもしれないんですが、ちょっと参考までにご意見を聞かせていただきたいなと思いまして、ちょっと発言させていただきます。
私は、東紀州、尾鷲から来ているんですが、近いうちに高速道路がつくことになります。それによって、私たちの地域にとっては、その高速道路がいわゆる命の道として、災害のときであったり、あるいは病院、医療の関係でどうしても必要だということでつくことになったわけなんですが、逆に、高速道路によって、いわゆるよく言われているストロー効果、ストロー現象といって、人や物やお金が逆に外部へ流出してしまうんじゃないかというような懸念もありまして、それが命の道がいわゆる命取りの道になってしまわないか。そうならないためにもっと魅力ある地域作りもしていこうねという話ももちろんしてはいるんですが、そのあたりで先生の方で何かこう参考となるようなご意見とか、一番最初の方でいただきましたヨーロッパの方の車に頼り過ぎないことが市街地のにぎわいを復活させるとか、そのような話とちょっと絡めた中で何かこうよきアドバイスをいただくことがないかなと思いまして質問させていただいたわけですが。
○加藤参考人 実は、尾鷲の地域公共交通活性化再生計画にちょっとかかわっていますので、また、お世話になるかもしれません。
今日午前中に、そのストロー効果について授業をしていました。学生がそういうのがあるねって言ったら、そうしたら、じゃどうしたらいいですかって言うんで、これは非常に難しい問題だよねという話をしていまして、また、午後に聞かれるとは思っていなかったんですが。
もうはっきり言ってしまうと、吸い取られないようにするためには吸い取らなきゃしようがないということなんで、例えば尾鷲が名古屋とかから見ても目立つ。例えば遊びに行くとしたら、選択肢としてかなり上位に上がってくる。そういうかなり目立つというか、個性とか魅力を持つようなものにならないと、逆に尾鷲から見れば名古屋っていうのは必ず選択肢に上がるわけですよね。周辺の大都市で、行けば何かおもしろいものがあるところということで。名古屋の方から見たら尾鷲というのは上がらないでしょう、きっと。これは上がらないものを上がるというところに引き上げていかないと、必ずストロー効果は起こるということですね。そうなったときに今、現状でも遠いんだけれども尾鷲に行く気になるかどうかというと、今でもそういうものは余りないと思うんで、これが近くなると非常に大変なことになるかもしれませんね。
そういう何か尾鷲が誇るものが何なのかなというのを。それも難しくて、自分たちがこれが大事なんだと思うことだけが、都会とかそんなほかの地域に通用にするかどうかというのはまた別の問題なので。でも、それしかなきゃ、それで勝負するしかないのかもしれませんが、そういうものも大切にしながら、皆さんがどういうところに行きたいと思っているのかとか、どういうことを求めているのかということも横並びで見て、それに対応したものをきちんとやはり用意していくという必要はあるわけで、そういう周到な準備をやはり高速道路が来る以上、もうタイムスケジュールをきちっと組んでやっていく必要があるのかなと思っています。そういうのはやっているんですかね。
○津村副委員長 いや、まだ何もやっていないと思います。
○加藤参考人 でも、かなりやっぱりすごいインパクトなので。これは大切だと思います。東海北陸道の沿線で、そうやって一瞬、高速道路の終点になって栄えて寂れて栄えて寂れてという、東海北陸道は順番に1インターずつ延長していきましたんで、ずっと見てきましたので、その状況を。あるところでは美並村が栄え、あるところでは八幡、あるところでは大和、白鳥、高鷲と順番に、例えばドライブインとか、できては滅びできては滅びという流れをずっと見ていましたので、やはりそういう大きな力に対してどうアピールするかということは重要だなと思っています。
○津村副委員長 ありがとうございます。
○中村委員 私の方は伊勢なんですが、ちょっとかかわっておられたら教えてほしいんですけども、伊勢は合併と同時に、旧小俣町が非常に福祉バスを走らせておられて、前の小俣町時代は非常にサービスがよかったと。旧伊勢市と合併をして、旧伊勢市はそういうのがなかったということもあって、だけれども地域の団地の方からそういうサービスのいい小俣町と合併しましたものですから、全体としてそういう福祉バス的なものを走らせるべきだというようなことが多分あったんじゃないかなというふうに思いまして、「おかげバス」でしたかね。伊勢神宮にちなんでだと思いますが、おかげバスというのを走らせておりまして、結構バスはよく見るんですが、空気も運んでるんですが。多分、今の財政状況でいきますと結構厳しいものが将来出てくるんじゃないかなと思います。結構、地域住民の皆さん、どこも一緒ですけれども、とにかく走らせろという要望で、走らせるならここまでというかなりいろんな要望があって、それを受けてどんどん路線をいろいろ、まず実験的にやろうということでやっていますが、そのへんを伊勢市にもう少し突っ込んで聞かないかんと思うんですけれども、そういった新しいサービスをやろうということで動かしていることと、それから、このいただいた資料の52から53のこういった新しい地域の例えば有償運送の福祉有償運送なんかも始まっていますので、そういったものと実際に行政から離れたそういった団体なんかと組み合わせていけば、もっと空気を運ばなくもいいような形になるわけなんで、そういったヒントみたいなものを。もし先生、この伊勢なんかのああいうのも情報をご承知でしたら、ちょっと教えていただきたいなというふうに思います。
○加藤参考人 伊勢市の前おられた副市長さんは大変お世話になった方でして、私が。いろんな運輸局とか国交省の本省におられるときお世話になった。馬場崎さん、大変お世話になった方なんです。もし、当面のことが落ち着いたら、伊勢のバスを作りかえる仕事をやりましょうねと、かたく誓ったんですが、果たせずに終わりました。
おかげバスというのは、やっぱり私の中では余りよくないと思っています。やはり伊勢市で一番重要なのは、三重交通が運行している幹線の路線、これをどうやって守り切れるかですね。それに対して、それに網をかぶせるようにおかげバスというものを引いてしまったということが命取りになる可能性があると考えています。この幹線の路線をどうやってうまく守りながら、おかげバスをもし走らせるのであれば、それを補完する形として走らせるということをやるべきだったし、きちんと結節してターミナルをそれぞれに作っていったりとかですね。例えば二見あたりとかでも全く結節していないんですよね。小俣もそうです。御薗の方面でも全然結節とかしいてなくて競合していたりすると。これではだめなんで、やはり路線バスというものは旧態依然としたところもあるんですが、いいところも走っていますから、いいところを走ってそれなりに利用者が多い路線を守りながら、それをまた培養できるような支線として補強していくためにそういうバスがあってほしいなと。
最終的には、先ほど地域公共交通会議のことでも申し上げましたんですけれども、三重交通の路線がすべておかげバスにならなきゃいけないんですね。今は、路線バスとおかげバスというふうに分かれているんですが、いつかはすべてが協議路線になって、そのおかげバスの幹線と支線というふうに位置づけられることが私の中で理想です。それが路線バスとおかげバスが、ある意味の競合というか共存であるということがおかしいと考えているんです。
鳥羽市については、私が今、委員となってやっていますけれども、路線バスをコミュニティバスのように作りかえようという計画を作ろうとしています。やっぱり路線バス対コミュニティバスではなくて、路線バス的なものが幹線となり、コミュニティバス的なものが支線あるいは補完路線となって、全体として公共交通網として再編されて、それが新たなコミュニティ交通として作り上げられるということが必要だと思っています。そういう意味ではちょっと、おかげバスとか、あるいは桑名のああいうバスというのは、ちょっと私は、お金もかかりますしね。なかなか難しいと思っています。いなべぐらい、もう路線がほとんど何もない状況ですとあれでいいという感じなんですが、路線があるところであれば、やっぱり生かすやり方をしないといけないと思っています。
地域公共交通会議を使えば運賃も、もちろん補助とかを考えなきゃいけませんけれども変更できますので、そのコミュニティバスと路線バスと一体となっての運賃制度ということも導入できるということなんですよね。運賃は一番難しかったんですね。どうしても公共料金で認可制度でしたので難しかったんです。これも実際、地域公共交通会議の制度ができたときに、みんな国交省の担当の方も驚いていましたけれども、公共料金という壁を突破することができたと。地域公共交通会議を経れば、運賃も認可運賃よりも高くも低くもできると。実は、高くという方がポイントで、低い方はいいんですが、高いというのはまずいということだったんですが、住民が合意していれば高くたっていいと。ですから、例えば深夜料金とか。先ほど、バスがだんだん時間が早い時間しか走らなくなったという話がありましたけれども、例えば深夜料金を3倍とか5倍に設定して走らせるということで担保するということもあると。これもできるようになりました。でも、そういうことにみんな気づいていないんですね。地域公共交通会議の制度はそういうこともできるんだということ。そういういろんな使い道をまだ皆さん気づいていないので、活用されていないんですが、いろんなことができるんです。伊勢もそうなってくれるといい。
○中村委員 整理をさせてもらいますと、今、三重交通の基幹バスが既に走って、ちょっと不便ですけども走っていると。それぞれまだ骨は残っているわけなんで、そういった中で無理にサービスをもっとああいう福祉バス的なものをどんどん走らせれば、住民から結構受けがいいだろうみたいな感覚でサービスを強化しようということで、ああいうおかげバスをどんどん走らせた。それでダブらせて走らせとるわけですよね。ダブらせてというか、時間は多分違っているかわかりませんけれども、そういった部分の整理をする一番切り口といいますか、入り口といいますか、そういったものということになってくると、これはまず県なんかのかかわりとか、そんなものはどうなんでしょうかね。
○加藤参考人 幹線の場合は、伊勢の場合ですと、例えば南島へ行く路線とか、あるいは鳥羽へ行く路線とかでも、これは国県補助になっていますから、県の関与が結構重要になります。結局、市内だけで勝手に考えてもらってはだめで、やっぱり南伊勢町とかへ行く人たちのことも考えて路線もちゃんとやってもらわないといけませんよということがそこで出てくるということですね。それもありますし、それから三重県の場合では、そのあたりの制度は余りちゃんとできていませんけれども、岐阜県だとコミュニティバスは全部県単補助がありますので、その県単補助をどういうふうにコントロールするかということによって、そのコミュニティバスのあり方もかなり変わってくるというやり方をとっているところもあります。そういうコントロールはもちろんあり得るということですね。
ちなみに、おかげバスって非常に本数が少ないので、先ほど三重交通は一応本数は少ないけれども骨ってことですが、三重交通のバスの方がずっと本数は多いですから。本数は多いんですが高いんですね。だから、急いでいるときは高い金を払って三重交通で、全然急いでないときには200円払っておかげバスを乗り継いでいくということかもしれませんが、それってすごく公共交通としては競争力の低いものだと思いませんか。そうじゃなくて、やっぱり幹線のところは三重交通、三重交通かわかりませんけれども、いわゆる民営バス路線でぱっと動き、細かいところはそういう地域のバスに乗りかえて動くと。それがダイヤ的につながっているというのが一番効率的だし、全体として地域公共交通の力を高めるし、それから、いろんな買い物であるとか通勤・通学であるとかに使えるようなものとして生きてくるというものだと思っているんですが。
○山本(勝)委員 私、桑名なんですけど、桑名は、幹線道路がやっぱり十文字にございます。その路線バスが朝晩を主にずっと走っておって、その朝晩の通勤客はそこへどんどん乗っていくという。昼間は、その碁盤の目を少し縦横に走っているのがコミュニティバスで、それは市民の皆さん方の、老人の皆さん方のちょっとした駅とか病院へ行くとか、それから、名所旧跡をぐるっと回るというこういうバスで走っておって、団地の方の大山田団地あたりは、ある程度買い物客をその対象にして走っておる。あと多度と長島については合併をしましたもので、そこの広域的なところが今はなかったもんやから、バス路線で広域的に多度と長島を駅を中心にしてつないでいくという、こんなような状況なんですけど、まだ、多度と長島のそういうところが合併して2年ぐらいたつんやけども、乗る乗客数が少ない停留所はどんどんその状況によってもう閉鎖をしていくという、こんな流れでずっときとるわけですわ。特に多度なんかは、最初は一番山奥まで行ったけれども、もう乗降客がないというとどんどん閉鎖をしていくというこういうことになってきて、大分やっぱり合併しても当初の約束と違うやないかというこんな話も出てきてますのやけど。
今言われたように、路線バスは少し高いですけれども、コミュニティバスはやっぱり100円で行けるという。こんな形の中で、やっぱり三重交通とそれからコミュニティバスが競合しとるんですけども、そのへんのところ一回どうやったら桑名の町の中で整理していった方がええですやろうか。
○加藤参考人 旧桑名市については、今おっしゃったように、朝夕の通勤・通学についてはかなり路線でやり、昼間の買い物とか通院絡みはコミュニティバスでやるという分担はいいと思います。ただ、停留所がお互い全然違うところにあるとか、全く運賃制度が共通でないとか、そういうことがすごく問題で、ですから、片方しかみんな知らない人が多いと思うんですよね。だから、やっぱりこれも網になっていないと。だから、もうちょっと昼間のコミュニティーと朝晩の路線がもっとうまく連携できるような施策が必要じゃないかなと思っています。
多度と長島は、私はもう路線は要らないところだと思っています。あそこはデマンドが適切だと。多度の場合だと、やはり多度の駅を中心に、あるいは多度の診療所とか庁舎ですか、支所ですか、中心にして1時間に1本ぐらい養老鉄道とかに接続していくようなデマンド運行をやるという形で十分多度地区内カバーできると思いますし、あそこは昔、町時代に実験を一回3カ月やりまして、私も2回ほど乗りに行きましたけれども、2回とも1人で車両を独占して大変豪華気分を味わいましたけれども。それから、長島も無料バスをずっと運行していましたけれども、無料であってもほとんど乗っていませんでしたので、あそこも。有料になったらもっと乗らないということで、これもやっぱ難しいと。あそこはまた集落も分散していますので、やっぱりデマンド的なものがふさわしい。路線はもちろん長島温泉へ行くものがありますから、もうそれで十分であるというふうに考えています。
だから、合併したから桑名にあったものを長島にも多度にもという、その発想はちょっと考えた方がいいなと。だから、同じ例えばデマンドで9人乗りとか4人乗りを運行していくのであれば、色だけは同じ色に塗るとかですね。そうやって同じシステムだよというふうにして、だけれども、この地域はこの程度の需要だから、ちょうどコンパクトでいいでしょうと、こういうような説明をうまくしながら、全体としてはK-バスとして説明していけばいいということだと思うんですよ。何でも同じ車両が走って同じ路線で走るということである必要なんか全くないというふうに考えています。
○山本(勝)委員 はい、どうもありがとうございました。
○水谷委員長 ほかにいかがでしょうか。
〔「なし」の声あり〕
○水谷委員長 他になければ、以上で参考人をお呼びしての調査を終了いたしたいと思います。
この際、参考人の加藤准教授に対し、委員会を代表して、一言お礼を申し上げたいと思います。
本日は、大変お忙しい中を委員会のためにご出席いただき、貴重なご意見をいただきましたことに心から感謝をいたします。
本委員会といたしましては、ちょうだいしたご意見を今後の調査に十分生かしてまいりたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。
(休 憩)
③ 委員間討議
な し
2 その他
〔閉会の宣言〕
地域間格差対策調査特別委員長
水谷 隆