三重県議会 > 県議会の活動 > 委員会 > 委員会会議録 > 平成20年度 委員会会議録 > 平成20年10月22日 政策総務常任委員会 公聴会 会議録
政策総務常任委員会 公聴会
会 議 録
(閉 会 中)
開催年月日 平成20年10月22日(水) 自 午後1時02分 ~ 至 午後2時35分
会 議 室 全員協議会室
出席委員 9名
委 員 長 舘 直人
副委員長 小林 正人
委 員 津村 衛
委 員 村林 聡
委 員 奥野 英介
委 員 杉本 熊野
委 員 中村 進一
委 員 西場 信行
委 員 藤田 正美
欠席委員 0名
出席説明員 0名
出委員会書記 議事課主査 西塔 裕行
企画法務課副課長 川添 洋司
傍聴議員 23名
森野 真治
藤田 宜三
後藤 健一
辻 三千宣
稲垣 昭義
青木 謙順
末松 則子
真弓 俊郎
前田 剛志
藤田 泰樹
田中 博
大野 秀郎
中森 博文
前野 和美
野田勇喜雄
岩田 隆嘉
貝増 吉郎
森本 繁史
舟橋 裕幸
三谷 哲央
萩野 虔一
中川 正美
萩原 量吉
県政記者クラブ 6名
傍 聴 者 5名
議題および協議事項
Ⅰ 「美
うま し国おこし・三重」三重県基本計画の策定について公述人による意見陳述及び質疑
(1)松井真理子公述人(四日市大学総合政策学部教授)
(2)伊藤達雄公述人(名古屋産業大学名誉学長・特任教授)
(3)質疑
【会議の経過とその結果】
〔開会の宣言〕
1 議案の審査
公述人による意見陳述及び質疑
○舘委員長 それでは、ただいまから政策総務常任委員会公聴会を開会をいたします。
本日は、議案第17号「美し国おこし・三重」三重県基本計画の策定についてを案件として、公述人からご意見をお聞きすることといたします。
既にご承知のことと存じますが、本公聴会は私どもの委員会が重要な議案等につきまして、その内容に利害関係をお持ちの方々や学識経験をお持ちの方々からご意見をお聞きして、審査や調査の参考とするために開催するものでございます。
特に本日の議題であります「美し国おこし・三重」三重県基本計画につきましては、計画期間が来年度から向こう6年間の長期にわたり、また全体事業費も多額となることから本委員会といたしましては、地方自治法第109条第5項の規定に基づきまして公聴会を開催し、慎重に審査を進めていこうとするものでございます。
公聴会の開催に当たり、去る10月2日から10月15日までの間、公述人の公募を行ってまいりましたが、残念ながら公述人の申し出はありませんでした。そのため、本日は、当委員会で選定をさせていただき出席をお願い申し上げました学識経験者のお2人の方々から公述人としてご意見をいただくこととなりました。
それでは、公述人のご紹介をさせていただきます。
本日、ご意見をいただく学識経験者の公述人として都市地理学、地域経済学、環境政策を専門分野とされ、従来から三重県行政に見識をお持ちの名古屋産業大学名誉学長特任教授であられる伊藤達雄先生及び市民活動NPO論、市民教育を専門分野とされ、市民活動等の立場から三重県行政に見識をお持ちの四日市大学総合政策学部教授であられる松井真理子先生のお2人にご出席をいただいております。
この際、委員会を代表させていただきまして、公述人のお2人に一言ごあいさつを申し述べさせていただきたいと思います。
本日は、本当に公私とも何かとお忙しい中、本公聴会にご出席をいただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表して心から厚く御礼を申し上げるところでございます。どうかこの「美し国おこし・三重」その基本計画につきまして、忌憚のないご意見をお述べくださいますように心からお願いをさせていただきます。よろしくお願いします。
それでは、公述に入る前に議事の順序について簡単に申し上げます。公述人お2人からはお1人20分程度ご意見を述べていただきまして、その後、委員から公述人に対し質疑を行うこととしております。
なお、念のため申し上げますと、公述人がご発言いただく際は私の許可を得ていただきますとともに、発言の内容は「美し国おこし・三重」三重県基本計画の策定についての案件の範囲を超えないようにお願いを申し上げます。
また、本日は委員会が公述人からご意見を聞く会でありますので、公述人から委員に対して質疑することは認められておりませんので、ご了承を願います。
なお、松井公述人から資料を配付したい旨、また伊藤公述人から資料の映写及び配付をしたい旨の申し出がございました。委員長におきまして許可をいたしましたのでご了承を願います。
次に、公述については、初めに批判的なご意見を述べていただく松井真理子公述人、次に比較的肯定的なご意見を述べていただく伊藤達雄公述人の順序で行わせていただきます。
それでは、まず初めに松井公述人からご意見をよろしくお願いをいたします。
(1)「美し国おこし・三重」三重県基本計画の策定に関する公聴会への意見
①資料に基づき説明(公述人:松井真理子)
○松井公述人 それでは、まず反対側の立場ということで説明をさせていただきたいと思います。発言に先立ちまして、県議会でこのような公聴会を開いていただきまして、私ども市民活動をしている立場から見まして、これまで行政の側の市民参加の道は非常に工夫されてきて多数あるわけですけれども、県議会、議会一般にそれの市民参加の道は非常に少ないということを問題意識を持ってまいりました。その中で、今回このような機会を持っていただいて、たまたま一般の方の公述といいますか、参加がなかったようでございますが、これはこれでまた考えるべきことが大いにあろうかと思います。しかし、このような機会が持たれましたことにつきまして、感謝とそれから今後の工夫といいますか、ぜひしていただきたいと考えております。
それから、これから私の発言にまいりますけれども、先程ご紹介いただきましたように私の立場は反対だということでございます。ただ、お手元の資料にもございますように、すべて何事も100%反対ですとか、100%賛成ですとかそういうことはないわけでございます。特に私は7年半程前に三重県にやってまいりまして、それまでは、全く縁もゆかりもない土地でございました。しかし、こうして長らくといいますか、予想以上というか住みまして非常に三重県というところが気に入りまして、できれば骨を埋めたいとも考えている身にとりまして、三重県が発展していく、これが全国発信されていくということについては、非常にうれしく思っている者でございます。
ですから、このたび、この「美し国おこし・三重」の基本計画を読ませていただきましても、書いてあります基本的な骨子といいますか、多様な方々が地域づくりに参加していく。そして三重県はすばらしいところであると、こういうふうなことを作り上げて、それを発信していくという基本的な考え方については、何ら異論を挟むものではございません。
ただ、私どもは先程申しましたように、身近な地域の中でいろいろな地域の方々を拝見してきて、実際に市民活動なり、いろいろな活動をされている方を知っておりますので、その方々を見ておりますと、今のこの手法が全面的に賛成であるとはやはり言いがたいところがいくつかあります。しかもそれはかなり重要なところだと考えております。ですから、そのことについていくつか論点を分けまして、これから説明をさせていただきたいと思います。
まず第1点目でございますけれども、この計画を見ておりますと、割と新しい取組を加えていくと、こういうところが大変目立つわけでございます。これまでもちろん県、それから市、町それから市町にかかわります地域、そういうところがいろいろな既に取組を行ってきている。この蓄積たるやこれは数ではもう申し上げられない程多いものがあると思うんです。それだけでなく、三重県ではご存じのように新しい時代の公の取組、それから文化力の取組、これにつきましても系統立てて取り組んできていらっしゃることもよくわかっておりまして、私は新しい時代の公の推進方針、これを作ることにも携わらせていただきまして、これができましてかなりの時間がたつというふうに思っておりますし、それから文化力につきましても、これ2005年ですよね。ですから、この3年、4年、5年というふうなもの、かなり三重県はこういうことに関して予算もつぎ込まれてきておりますし、人材の育成等も図ってきていらっしゃるというふうに思っているわけですけれども、そのようなこれまでのたくさんの蓄積、それから県の行政の中で推進されてきたものの蓄積というふうなものがどう生かされるのかと。これまでの総括、それから、その関連性というものが非常に私どもにしてみれば、弱いと、ないとは申し上げません。弱いというふうに思うわけでございます。
今回この基本計画の中に書いてあります一つのよく見られます言葉の中に、新たなイベントスタイルとこういうふうなことがございます。それは創造するものであるということで、強調されているわけでございますが、それは今までのイベントというのが非常に一過性であるというふうな書き方なんですよね。しかし、そうであろうかと私は思うわけです。地域の方が本当に密着したところで、いろいろな活動をされているのを見ますと、それは決して一過性ではなく、特に最近の新しい住民参加型の、住民主体の地域づくりということが標榜されて久しいわけでございますから、企画から実施、それから評価に至るまで、本当に住民の方々は一生懸命取り組んできていらっしゃいます。その津々浦々の活動を見ますと、なぜ新たに創造などという言葉は必要なのだろうかというふうに思うわけでございます。このようなせっかくの多くの地域で既に取り組まれている、しかもそれは毎年かなり継続されてきているものも多いわけで、これらをなぜ生かさないのかといいますか、そこのところを地盤にして、その上に築くものにしていただけないんだろうかと、ここを思うわけでございます。
今回の計画の中でもキーパーソンでありますとか、あるいはパートナーグループでありますとかそういう言葉も出てまいりますけれども、それにふさわしい人も既にこれまでの事業の中で、その意識するとせざるとにかかわらず、相当の人物の蓄積があるというふうに考えております。これは先程申し上げました三重県が取り組んできているこれまでの蓄積も生かした文化力というものの、まさにあらわれそのものであろうというふうに考えておりますから、これをぜひ生かしてもらいたいと思うわけでございます。
最後の方でもう一度申し上げますけれども、今回この事業、大変多額の予算がつぎ込まれます。その多額の予算というものが1ページ、示されているわけでございますが、その中で今少し申し上げました、例えば新しい時代の公の担い手の育成という、ここのキーパーソンなりパートナーグループなり、あるいは中間支援なりという言葉で説明はされておりますが、今まで既に蓄積されているものを掘り起こしたり、そういうものに対して二、三億円かけると、これは総額でございますが、と書いてあります。果たしてそれだけのものが必要なのかというふうに思うわけでございます。これだけのお金をどう使うのか判断したいわけですけれども、今のこの計画の中では中身が見えませんので、そこが判断ができない、これは最後もう一度申し上げます。
ですから、これまでの蓄積をうまく生かせば、もしかしたらそんなにかけなくてもいいのかもしれない。いいのかもしれませんし、むしろそのほうが重要なのかもしれないと思うわけで、ですから予算の無駄遣いにならないようにするためには、そこのところの検証をしっかりとしてもらいたいというふうに思います。ですから、この計画の中でも絆とか、さまざまな言葉が使われて、今までのものをつないでいくということはあると思いますけれども、新しいものを掘り起こすと、創っていくということにとどまらず、つなぐことが非常にこれまでの蓄積を生かす。そして、それが要するにこれまでの予算を無駄にしない、今までの蓄積を無駄にしてほしくないとこういうふうに思っております。ですから、今あるものを生かすと、この視点があってこそ今やっている特に頑張ってやっている県民にとってみると、親しみが持てるといいますか、自分自身が参画できる。親しみが持てる事業につながっていくというふうに思いますので、ぜひともこのあたりのチェックをお願いしたいと思います。
それから2つ目です。
この事業を本当に継続して6年間かけてやって、その後に残らなければ何の意味もありませんので、ではどこが中心となってやるべきかということですが、この地域で何度も出てきます地域、その言葉としましても11ページに書いてあるんですが、自治変革運動でありましたり、地域づくりの三重モデルでありましたり、こういう言葉が登場いたします。ということは自治、あるいは地域づくりということの基本というのは、もちろん最終的に出発点としては住民自治という一つの単位でございましょうけれども、それをまとめていく存在というのは、私は県ではなく市町だと思います。県はそれを、それこそ発展させていく役割がある。あるいは政策的にリードしていく役割もあるとは思いますが、その市町がいかにこの事業の中で位置づけられるかということが非常に重要な、特にこの後のことを考えましたときに、この事業がそれこそ一過性のイベントでない、一過性でないイベントというみずからの主張を実現するためにはその後まで考えていただきたいわけでございます。そうすると、市町、この役割がいかに重要かということを考えるわけでございます。
先程申しましたパートナーグループ、あるいは市民プロデューサー、そのようなものが掘り起こされていくということで、パートナーグループなどは約1,000というふうな数も出ております。そのようなものを掘り起こしていく主体は一体誰なのかということであります。あるいは掘り起こされた主体をどう取りまとめていくのか、それは確かに中間支援組織という言葉も出てまいりますが、その中間支援組織をどのようにこれ自体も掘り起こすといいますか、既にあるものも使い、あるいはそれをつなぎ、効果的なものにしていくかという、その役割において市町が果たす役割の大きさというのは、誰もこれは否定することはできないと思います。
これまでも県が直営で県民と結びついていく事業がかなりありましたけれども、それは結果的に残らないとは申しませんけれども、市町にとっては非常になじみの薄いものになってしまっております。ですから、最初からこれまでの反省を生かして、これからの発展を考えるのであれば、最初からそれぞれの県民のいろいろな動きと、それから県の動きとそこと一体となった市町がなければそれは残らないというふうに、私は断言とまでは申し上げませんけれども、そういうふうに感じているわけでございます。
ところが、今少なくとも少し準備段階の予算もついておりまして、始まっているわけでございますが、今、市町の状況を見てみますと、とてもこの事業に関心を持って、あるいは主体的にかかわろうという意欲を感じないわけですよ。これからとおっしゃるのかもしれませんけれども、その理由なんですけれども、今市町にそこまでの余裕があるのかということが一番大きい理由でございます。
私は四日市に住んでおりまして、四日市の市の行政職員とよくお話をいたしますけれども、昨晩、一昨晩も夜の8時半、9時ぐらいまでおつき合いいたしましたけれども、役所に行ってもこうこうと電気がついております。その役所には2歳、3歳の子どもを持った若い職員もいるわけですけれども、最近よく国を挙げて言われているワークライフバランスという観点からしましても、早くお帰りになった方がいいと私は思いますけれども、帰れないわけですね。なぜ帰れないかというと、いろいろな理由があると思いますが、その市の方がおっしゃるには人員削減されている。予算がない。そういう中で仕事が軒並み増えていると。そして、それこそ市民との協働でありますとか、さまざまな理由によって細かな仕事が非常に増えているということであるわけです。
だとすれば、特にこれからこの事業がねらっているパートナーグループ、そういうものと市民との協働というのは大変手間がかかる事業なんです。ただ市の方が一方的にばっと決めて、自分たちでやるという方がむしろ楽で、こういうふうに市民と一緒にやっていくということは大変手間がかかりますから、ほかのことを整理していかないと、きっとこれはあっぷあっぷといいますか、そういう状況になることが目に見えてきており、ですから、いわゆる最近流行の協働事業というのは、どちらかというと嫌われるというか、できたらしたくないというお気持ちがあると思うんです。それは私は理解できます、手間がかかりますから。
ですから、今のその現状のところを見たときに、そのまさに実態を見ずしてただ形式的に形としてきれいだから、あるいはそれがすばらしいからその事業を市町にやっていただくということは、恐らく市町の職員にしてみれば、迷惑なことではないかと思うわけです。だから、ただ最初に申しましたように、そうじゃなくてやらされ感じゃなくて、本当にいいことであれば、やはり主体的にやってもらいたいと思いますので、その問題をやっぱり克服するためのいろいろな手法なりを工夫しなければいけないと思います。
この事業がいけないというわけではなくて、いい事業であると私も思いますので、やり方を今のままではなくて大いに工夫をしていただきたいと思うわけですが、私自身の今のとりあえずの現段階のアイデアとしては県はできるだけ手を引いて、ある程度まとまった予算を市町にお渡しして、その中で自由にやってもらって当初考えている成果を上げてもらう。その成果で競い合ってもらっても結構ですけれども、そういうふうな形、かなり自由度の高いやり方を市町にお任せいただくというふうな方法がいいのではないかと思っていますし、そこに市民の協働といいますか、育っている市民グループの、あるいは中間支援組織も利用しながら、そこのつながりを作っていくという方法、非常に抽象的ではありますけれども、そういうことで考えられる方法は、いろいろ私としては考えることができます。
ですので、そのようなことがむしろ、本当の意味で新しい時代の公、県と市町の対等なパートナーとして、あるいは文化力、それから地域づくりの三重モデル、ここに掲げられているものを実現する早道であるというふうに考えております。
最後、予算の件でございます。
この事業は31億円から36億円ということで、1ページ程掲げられておりますが、うち市町だけではないのかな、市町等ということで負担が大体6億円、これは予算がはっきり出されておりますね。この事業のそもそも根拠でございますが、県民しあわせプランの第二次戦略計画というのが掲げられていて、この中の「こころのふるさと三重づくりプログラム」というのに該当するというふうに思います。これは「みえの舞台づくりプログラム」という新しい枠組みで出てきた事業ですよね。
この県民しあわせプランの第二次戦略計画につきましては、パブリックコメントが求められましたので、私はNPOを持っていますから、NPOのメンバーと議論をいたしましてパブリックコメントを出しました。そのときいろいろ出しましたけれども、私どもにとって最も重要なポイントの一つは、ここをちょっと読ませていただきますけれども、今この第二次戦略計画の中間案というのが全く予算が入っていないんです。今の段階で財政的裏づけがないのにこれをやるとかやらないとか、そもそもそれは県民からすると非常にわからないと、本当にやるのかということが予算がついていない中でどこでわかるのか、それは県としてはそれなりに理由があると思いますけれども、県民としてはなかなかわからない、不透明であります。ですから判断ができない上に、その予算が見えない。一体いくらかけてやるのか、本当にやるのかやらないのかは置いておきましても、いくらかけてやるのかということは、非常に重要な問題ですが、そこが見えないのに意見を求められるということに対して、非常に疑問を感じるというふうに意見を出しました。その疑問は今回全くそれがまた当たっております。
この第二次戦略計画は結局最終的には今できて、今日は持ってきておりませんが、厚い本になっていますけれども、予算をすべて未定と書いてあります。その未定というのは今回のこのイベントの事業が明確になった段階で入れるということ、これは注記はされていますけれども、その第二次戦略計画に書かれているプログラムの想定事業費はとりあえず入っています。これは2007年から2010年までの4カ年ですけれども、1億1,200万円と書いてあります。これはイベント経費は入っていないと書いてあります。しかし書いてありますが、イベント経費が全然見えていない中で、1億1,200万という数字があれば、何だこんなものかなというふうに思われかねません。そうして今回出てきたものは36億円で、1つけたが違います。ですから、これを私どものように一応まじめに中期計画を読んできた者にしてみれば想定外の数字でございます。せめて1億円台の金額であれば何となく理解できなくもないですけれども、余りにも大きいということでございます。
ですから冒頭に述べましたように、県民として、三重県が元気になり、発信されるということは大賛成でございますが、要は県はさんざん私ども県民としていろいろ県と折衝するときに、県は金がないんだと、常に言われるわけですね、二言目には金がないんだと。金がないと言っていて金があるのかという話になるわけです。さんざん聞かされているんですから、じゃ、ないんならないであきらめもつきますけれども、あるのならなぜこれまで、これまで言ってきた事業をしてくれなかったんだと、こういうことになります。
ごく最近私が出た会でも、これは防災関係の会議でございますけれども、防災というのは非常に重要な県民の命にかかわる特に緊急の地震ですとか水害ですとか、特に最近は豪雨が多いのでこのことでいろいろな計画、新しい条例も作られようとしていますけれども。そういうときに緊急時のための電話、私よく知りませんけれども、特殊な電話があるそうでして、これを備えれば非常にいいんだという話がございました。いくらかかるのかと、総額が3,000万円だそうですけれども、半額を県が持って半額は市町が持つと。1500万円が市町の総額ですよね。すべての市町の金額が1,500万円、この1,500万円を市町が出せないということでございます。出せないのでこれは設置ができないというお答えで、要は金がないんだという話ですよね、これも一例でございます。
私がほかにかかわったのでは、たった10万円の切手代が出せないと、こういうふうに言われました。このように枚挙にいとまのない金がないと言われている説明を納得させるためには、今この計画がいかに県民にとって役に立つ意義のあることなのかということを、説得力をもって説明していただく必要があります。
ですから、再度繰り返しますけれども、「美し国おこし・三重」これは大変いい事業だと思っていますから、ぜひこの事業を説得力あるものにするために、金額が妥当であることを、私どもの代表であります県議会でぜひチェックしていただきたい。先程言いました計画の中に予算は確かに出ておりますけれども、たった1ページで、この一応柱ごとに2億円、3億円、あるいは5億円とかいろいろ書いてありますけれども、積算根拠が書いてありません。ですから、これは恐らく議会の方では出されるし、チェックできると思います。県民はこれはチェックできませんので、本当にこれが意味があるものかどうかということをぜひ見ていただきまして、この三重県が進めているのは県民しあわせプランですよね。県民の幸せにつながるために、まさに県民も出している貴重な予算でございますから、納税者が納得する予算額に相応する事業にしていただきたいと、こういうふうに考えております。
以上が、私からの意見でございます。
○舘委員長 松井先生、どうもありがとうございました。
次に、伊藤公述人からご意見をお願いいたしたいと思います。
(2)「美し国おこし・三重」三重県基本計画への意見
①資料に基づき説明(公述人:伊藤達雄)
○伊藤公述人 伊藤でございます。
それでは、私はちょっとパワーポイントを使って意見を申し述べさせていただきたいと思います。パワーポイントがちょっと小さいかもしれませんので、お手元に同じものをプリントしてございます。
私は先程委員長からご紹介をいただきましたように、大学で地理学、都市地理学とか経済地理学を教えておりまして、その応用分野として国土計画、地域計画にかなり深くかかわってまいりました。したがって、私としてはこの「美し国おこし・三重」の基本計画を地域計画の計画論の立場から意見を申し上げたいと思っております。送っていただきました資料をちょっと整理しまして、これはもう皆さんは議論され尽くされておられるので、今さらと思われるでしょうが、ちょっとだけ復習をさせてください。
目標で3つ程整理させていただきました。住む人、訪れる人が心の豊かさを実感できる三重県を目指し、県全域で文化力を生かす取組を展開します。その結果、自立・持続可能な地域を作ります。そのための手段、方法はどのように考えられているかといいますと、実行委員会が計画を立てて、プロデューサー主導の座談会でパートナーグループ、ここでPGと書かせていただきました、を作ります。委員会はPGの意図を把握してプロジェクトを選定する。行政とPGとの間に中間支援組織を立ち上げ、イベントを展開して交流を生んで絆を紡ぎ出すと。このへんがややわかりにくいというのが県民の意見かもしれません。あるいは目標も具体的ではないという意見も承知しております。計画期間、予算ですけれども、7年間で先程松井先生のお話もありましたように総額31億から36億円で、うち県費が25から30億ですね。そして6億が地元の負担であると。どのような成果を期待しているのかというところで、座談会を2,000回やります。PGを1,000立ち上げます。恐らくこの中には今三重県下には500程のNPOがあるそうですけれども、これを1,000ぐらいにする。中間支援組織を30件立ち上げる。これを三重県モデルとしたいというふうに言っております。ネットワークの構築を3,000行う。集客、最終的には集大成イベントのときに3,500万人の参加を求めるというふうに読ませていただきました。ちょっと時間がありませんでしたので、余り正確ではないかもしれませんが、私としてはこの目標のところと手段・方法というようなところに大変関心を持ちました。この期間が長いのか短いのか、あるいはお金がこれで十分なのか十分でないのかというのは、私は財政額の専門ではありませんので、そうかなというふうに感じたところでございまして、私の専門分野から言いますと、やっぱり計画は目標をきちっと立てる。それをどのように進めるのかというところが、計画論からは意見を述べていきたいとこんなふうに思っております。
その前に、これ参考資料と書いておきましたけれども、実はこれは1990年、今から18年程前に県は第3次長期計画というのを作っておられます。そこでどのような基本方向を書いてあったかというのを、順序も変えないでそのまま書かせていただきました。
最初に、豊かな文化の創造と明日を担う人づくりをすると、今回の計画とほとんど一緒でございます。それから2番目にゆとりとうるおいのある快適空間を形成する。これが心の豊かさなんですね。あとその3、4、5は今度の計画には直接触れておりませんけれども、福祉社会を作る。あるいは産業を振興する。21世紀に向かって県土づくりを進めるというふうに書いてあります。その地域整備の基本方向というのはどういうことが書いてあるかといいますと、地域アイデンティティの確立とプロジェクトイベントの推進というんです。今20年前に考えられたことがほとんど変わっていないということにお気づきだと思います。計画というのはこういうものなんです、もともと。
参考資料の2でございます。
今国土計画が新しくなりました。それで私も今、国土審議会の一員として中部圏の広域地方計画を策定する1人でございますけれども、私も国の計画も、もう随分長い間かかわってまいりました。今3つ挙げてあります。国土の均衡ある発展。地域格差の是正というのは全総以来の60年の課題でございます。まだ解決されておりません。東京一極集中、これは過疎過密のなすところですけれども、所得倍増計画ですから、これは池田内閣のときにこの言葉は使われております。既に70年たっておりますけれども、全く解決されておりません。それから三全総以降では地方の時代、地方分権が最大の課題です。この課題は三重県も同様ではないのか、南北問題、あるいは限界集落の問題等々、解決すべき問題は地域計画としては、日本にとっては最大の課題なんです。国も地方もこれに取り組んでいるというのが現状でございます。この中で作られたのが今度の美し国プランだと思います。これは有斐閣でこんな本も私ども出しておりまして、東京一極集中に私はさんざん議論に参加してまいりました。
以上のことを踏まえて、まず意見の1を申し上げたいと思います。
先程、参考意見というのを申しましたように、理念と目標には新しさはございません。心の豊かさとか、文化とかということはもう30年も前から三重県も言ってきているわけです。新しさはないが計画の目標を達成するための方法論、手法には意欲的で具体的なチャレンジを認めることはできるというふうに私は評価しました。これをもうちょっと3つに分解してみました。
まず1つは、県が進めようとする地域政策を市町を舞台に展開しようとしている。こういうプロセスを明言しているのは私は全国初ではないかと思っているわけで、ちょっと当局には褒め過ぎかもしれませんが、どういうことかと言いますと、やっぱり市町というのがこれからは大変重要でございます。三重県も69程ありました市町村が今29になったんでしょうか。ようやく市町を舞台に県が地域政策を展開することができるようになりました。このことを私は評価したいと思っております。
2番目に、住民と市町と県の水平的協働による地域振興策の具体策は提言されている。これは松井先生のご専門かもしれませんけれども、私もNPOを35年もやってきまして、このことは痛感しております。後で申し上げますけれども、PPPという言葉がございます。パブリック・プライベート・パートナーシップという、これはアメリカ生まれの言葉ですけれども。これは住民と行政が水平的に協働していく、私は三重県のNPOはかなり先進的であると思っておりますけれども、これを生かしていこうというところに、今回の計画の30年前とは大きく違う点があると見ました。
その次に、徹底したソフト系インフラの整備による地域整備をしようとしている政策展開が読み取れました。これは従来の地域政策というと、すぐ箱物あるいは基盤整備というところで何十億も使ってやるわけですけれども、今回は徹底したソフト系インフラの整備、インフラという言葉は、ここではソフト系インフラというのは制度とか人とのつながりとかいうものでございますが、この3つが確かに理念とか目標は30年前から余り変わっていませんけれども、この手法に今回かなり新しいものが見られているというところでございます。
もうちょっと資料を見てみますと、意見のⅠ-1ですけれども、なぜ市町を舞台に展開しようとしているのが新しいかと言いますと、この図が計画の中にはありました。それをちょっと拾ってきたんですけれども、ここに市町が真ん中にあります。この下にあるのが県のものです。プロデューサーなどと協議をしながらしていくわけですけれども、このパートナーグループを育てていく。こういうふうに市町を位置づけた計画というのは、従来の三重県の計画にはありませんでした。その点でなかなかおもしろい結果になるかもしれないという期待感が寄せられます。
今のことに関してもうちょっとだけ意見Ⅰを言いましたけれども、このうちの参考資料としてちょっと見てみますと、今までは先程言いましたように国益が尊重されていて、地方益を優先する時代に今はなりつつあります。1960年、全国総合開発法が国土形成計画法にかえられたというのもご存じのとおりです。これは国レベルの計画では今国土形成計画を作っている最中ですけれども、従来の国益優先が地方益優先になるような計画を今模索されております。県レベルでこれは三重県だけではありませんけれども、県全体も大事だけれども、市町あるいは単位地域の益を優先していく地域計画を各県が模索しております。今、下の3行これ大事なんですけれども、今全国各地でその行政手法が模索されています。美し国計画では、三重県モデルを提唱しようとしているというところに、従来型ではない計画の手法が見られると私は評価したいと思っています。
これについてはちょっと細かいんですけれども、私も学会でもこういうことは議論されております。これは私の論文ですけれども、新しい国土形成へのソフトアプローチと書いてございます。ソフトアプローチというのは、やっぱりお金を使って物を作って、道路や港を造ってだけが地方の整備ではない。人を育てるという意味でございます。計画行政学会での報告論文。
先程、意見3つ申し上げました。
そのうちの2番目でございますが、住民と市町と県の水平的協働による地域振興策の具体的手法を提案していると先程申し上げました。これを松井先生が先程からおっしゃっている三重県の新しい時代の公、これ2005年の4月に公にされておりますが、なかなかこの野呂県政になってからのものですけれども、こういう新しい時代の公についてかなり具体的に踏み込んでおられます。
これとそれから先程申しましたパブリック・プライベート・パートナーシップという、これはアメリカですけれども、アメリカの地方自治体では本当に民間にさまざまな事業がパートナーシップとして投げ出されております。
私は今度の美し国おこし・三重県計画が、このPPPの社会実験となるかもしれないというところに期待を寄せてみました。実はこれは自治体経営の新たな視点というところで、私はこれ一番右側にいるんですが、コーディネーターを務めて名古屋で今年ですけれども、シンポジウムを開きました。このときのタイトルがパブリック・プライベート・パートナーシップということの勉強会なんですけれども、この一番左側の写真に写っているのが田渕さんという人ですが、この人はアメリカの大学の先生です。今東洋大学の兼任教授ですけれども、新しい自治体経営のあり方を研究されておられます。実は、こういうところで勉強していることは、よく今回の美し国のプランを読みますと、その手法の中にこの思想がうかがわれます。アメリカ程ではありませんけれども、かなりこれにはなかなか当局勉強しているなという感じを持ちました。
次に、3番目です。
ソフト系インフラの整備による整備政策というのは、なかなかできるものではございません。今まで、県レベルの地域整備政策でハード系行政投資をゼロとした計画は本邦初ではないか。つまり今まで県の長期計画なども、このハード系をゼロとした計画というのは見当たりません。この箱物の指向から完全脱却を果たせるかどうかというところに疑問はありますけれども、なかなかおもしろいと思います。
以上3つの意見を総括して、私は意見のⅠ-1、2、3を総括しまして「美し国おこし・三重」の計画は一種の社会実験が行われようとしているんではないかと思っております。下に書いてあります実験には失敗がつきものです。しかし、チャレンジしてみる意義はあるんではないかということを、議会でご検討をいただきたいと、こう思っているわけです。
次に、意見のⅡです。
これは、今度の計画書を見ていて2つ程大変気になった点がございました。
1つは文化力とはという点です。やっぱりわかりにくいという人がたくさんおられるのもこの言葉なんです。もう一つは自立・持続可能な地域とはどういう地域なのかということですが、この説明が十分書かれていないように思いました。私の意見としては、いずれの提言も明確でない。行政用語としては、簡潔で明瞭な定義がなされるべきではないかというふうに感じました。
例えば文化力についてですけれども、文化という言葉の定義は、非常に広いということを皆さんも議論されておられます。しかし、一般には文化といいますと、学問、芸術、宗教など大事なことは人間の精神活動の所産です。つまり価値観を伴っております。一人一人によってこの価値観は違います。これが文化なんですね。いい文化とか悪い文化とか誰が決めるんだというところでございます。技術的所産つまり物質です。これは文明というふうに呼ばれております。物質文明という言葉はありますが、物質文化という言葉は普通はないんですね。精神文化はあります。その区別はどうもこの計画にはなされていないように受け取りました。
なお、ちょっとこれは言い過ぎかもしれませんけれども、広義にとらえ過ぎますと文化至上主義というふうに批判されています。これはもう明治の昔から政治の世界では、この至上主義という言葉がありまして、今はどうやら文化至上主義という批判的用語として使われているようですが、文化の使い方に気をつけたいと思います。
私の意見としては下に2行書いてみましたが、行政が行う文化行政の範囲とか対象は厳密に定義されるべきと考えております。これは私は文化というものを本を作ったことがあります。このタイトルは「新しい地域づくりと文化」というタイトルの本です。冒頭一番右側にあるのが私の名前ですけれども、この本を作ったのは今から35年前です。発行は1976年ですから32年前に作った本なんですけれども、この32年前に何が起こったかと言いますと、愛知県では仲谷さんが当選されて知事になられました。仲谷さんは教育委員長を経て知事になられたんですが、あのときに桑原県政がものづくり中心でやってきた、これから文化の時代だというので、文化行政の研究会というのを作りまして、私は35年前はまだ大分若かったんですけれども、京都にあります民俗博物館の館長の梅棹さんと2人で、この2人並んでいますけれども、作った本なんですが、このときに本当にまじめに行政における文化とは何か、地域づくりの文化にどのように活用することができるのかということをまとめてあります。この話をするととても20分ではできませんので、私も多少は勉強したということだけ申し上げて、先程の意見に役立てていただきたいとこう思っております。
意見の2ですけれども、先程の自立可能な地域についてということについて、若干考えていただきたいというふうに思いました。自立した地域とは、実は経済的に自立した地域を私たち経済地理学では言っております。地域経済の成長というのはどういうことかと言いますと、資本と労働、人口の関数で説明されております。資本量も労働つまり人口も地域間を自由に移動することができます。これが過疎や過密を生む説明原理でございます。ちょっと難しいかもしれませんけれども、お金と人と言ったらわかりやすいかもしれません。お金と人が集まるところが元気になるという意味です。じゃ行政はどうしたらいいのかというのは、この赤字で書いてきましたように、行政の役割は何かと言いますと、地域外から資本と人口を呼び込めるような基幹機能が育つ環境を整えることでございます。これをぜひ行政にはやっていただきたい。よく読みますと、この美し国おこし・三重の仕組みづくりには、この思想は読み取れます。しかし、もうちょっとはっきりしていただきたいと思っています。基幹機能Bというのは経済機能だけではありません。自然景観、文化遺産なども地域活性化の潜在的基幹機能と。これを掘り起こす環境を整えるのが行政の役割なんですけれども、今回はこれをハードでなくてソフトでやろうとしているのが今度の計画だと、私は見せていただきました。
以上、大変つたない意見ですけれども、申し上げました。
以上でございます。
○舘委員長 伊藤先生、ありがとうございました。
以上で、公述人のご意見の開陳は終わりました。
(3)質疑
これより質疑に入ります。質疑を行う委員の方は公述人をご指名をいただいてから発言をお願いいたします。
なお、傍聴議員からの質疑につきましては、委員からの質疑が終了後、時間の許す範囲で認めることとさせていただきますので、ご了承願います。
また、質疑、答弁につきましては、できる限り簡明、簡潔にお願いをいたしたいと存じます。
それでは、委員の方、質疑をお願いをいたします。
○中村委員 今日はありがとうございます。お二方の先生とも松井先生の方はかなり鋭い私自身は問題提起といいますか、欠けている部分を随分と指摘をしていただいたんじゃないかな、頭からこんなものをやったらだめだみたいな雰囲気は感じられなかったんです。それから、その中でちょっとまた先生に具体的なことをお聞かせいただきたいと思います。私自身も私は伊勢に住んでいるもんですから、前回のまつり博のイメージがありまして、ご遷宮のときにその波をうまく活用して、三重県全体が何かをやるべきだという、そういったイメージだけは持っておったんですが、何が出てくるかなということをずっと気にしておりました。今、まつり博のときはサンアリーナが残って、あるいはぺけだという議員もたくさんおりますし、私どもも地元としては、あれが持続可能ないわゆる一定のさまざまな文化を持ってくる、あるいはイベントを持ってくるということで、私自身は一定の評価もしているんですが。
今回の場合はとにかく一過性にならないようにということは、前の多くの議員の思いもあって、一過性にならないような何かをということの中から、多分こういった計画が出てきたのではないかというふうに私は思っております。そういった中で、お金の使い道も私自身も指摘をしているんですが、具体的にはっきりしないということですが、これがお金の使い道がはっきりしてきて、そしてまた既存のさまざまなNPOとか、まちづくりの団体も無数にあるということも私も先般の常任委員会でも言わせてもらっているんですが、それを育てるということも、この中に入っているのではないかという読み方を私自身はしているんですけれども。
そういった部分で既存の今頑張っているグループ、それから今さらに大きくなろうとしているグループ、地域のために頑張っているそういったところに対して、もっともっとこういった形で、具体的に支援するんだというものをこの計画の中で明らかにしてくれば、そのためのお金の使い方がこうなんだということを明確にさせていくという議論を我々がしていけば、もっと計画がはっきりしてくるのではないかなというふうに思うんですが、その点についてちょっと考え方があれば、松井先生お願いします。
○松井公述人 おっしゃるとおりでよろしいかと思うんですけれども、たださっきも申しましたけれども、無数にあるんですよ、確かに。先程NPO法人だけでも500弱あるわけでして、それから当然四日市、NPO法人じゃない市民団体というのがもう200あります。
実はこの間、まちづくりの基礎に人権があるということで人権関係の子育てとか、高齢者の関係とかいろいろな団体を全部網羅してピックアップしてみようと。今ちょっとそれに取り組もうとしているんですけれども、膨大でちょっとイメージがつかないという感じぐらい、それを拾い上げていくこと自体が一つの事業になっていくような感じになっています。ですから、その中で全部じゃなくて、プロジェクトを採択されていたりするわけですから、この結構大変な作業を誰がするのかというところですよね。だから誰がするのかというところを、市町のところが動きやすくしてあげないといけないんじゃないかというふうに思っていて、ですから、いろいろな必要なことが事業がある中で、何をどのようにされて、それを誰がするのかというところが予算の中にどう反映されているのかをチェックしていただいて、おっしゃるようにそれがこの事業にうまく持続的な事業というか、一過性に終わらない事業になっているような仕組みになっているかどうかのチェックをしていただく。それは予算に伴って、予算と絡めて。
先程申しましたように、その予算がちょっと見えないので、それがいいか悪いかがなかなか判断できないでいます。そこのところをお願いしたいということでございます。だからおっしゃることの趣旨は私が先程申し上げたことと基本的には違わないだろうというふうに思っています。
○中村委員 伊藤先生、ありがとうございました。ちょっと結構褒めすぎのところがあったものですから、気にかかったんですが。ハードがない、こういうイベントというのはなかなか珍しいといいますか、ということなんですが、こういった中で人づくりとか、あるいはリーダーづくりといいますか、そういったものが作られていく、ハードがない中で、そういったハードがないと県民から見えにくいですよね。一体何をやっているのかというような、そういったものをどのようにとらえられておられますか。ハードがないということを褒められたんですが、具体的な成果として、こういった事業はどういうものとして県民の目に明らかになっていくのか、そこらへんも我々は検証していく必要があるんじゃないかなというふうに思うんですが。
○伊藤公述人 私のプリントの2枚目の後ろに、県がお作りになったフロー図があると思います。4ページになりましょうか。これはこういうことをやるためにお金を使うと言っているわけで、これが多いか少ないか私も判断の基準がちょっとありませんけれども、市町というものを中心に置きまして、そしてここに向かってさまざまな申請とか認定とか交付とか実績報告等々があって、市町もお金を出してプロデューサーという人をリーダーにして進めていく。それが左側にパートナーグループというのがあります。このパートナーグループを1,000作るとおっしゃっているんですね。この1,000というのは恐らく先程松井さんもおっしゃったようにNPOは500近くもありますし、そのほかのグループ、数え上げればたくさんあります。恐らく1,000ぐらいはあると思います。しかし、それらが今どのように活動しているのかということは全部がわからないんです。じゃこれを組織立てをすることによって一つのシステムになっていく。これを私はソフトなシステムと呼んでいるわけです。
従来ですと、例えば2005年には愛知県で万博が行われました。万博というあれはハードなイベントですけれども、あれを愛知県が全県下に何とか普及させたいと言って、全市町に国際的な交流を各国とさせました。こんなこともそしてまつり博のときには三重県の全市町村がアリーナに行ってお祭りをやりました。そういうハードな場がないとできないというのは、その後を見てみますと、本当に費用対効果が満足されたかどうかということには反省すべきことはたくさんあります。
ハードがないところでどうやったらそれと同等の仕事ができるのかというのは、私はやっぱりシステムづくりだと思っています。今情報の時代です。これだけ交通機関も発達しています。県、市町、市町も29になりましたので、これをネットワーク化するということは可能だと思います。市町は、例えば津はたしか10の市町村が一緒になってようやく形は整ったんですね。しかしまだ、私は津に住んでいるんですけれども、10の人たちが本当に市民意識を持っているかどうかわかりません。これからは29の市町の中の一体感も必要だと思っています。そういうものを作っていくのに、果たしてハードというものがどれだけ役に立つのか。ハードでなくてソフトでそれをさせようというのが今回の美し国おこしの舞台づくりではないかと。
この図はそういう意味では、これが完成したと思いませんけれども、これはそこに市町に推進組織が設置された場合と書いてあります。こういう組織というのはソフトですから、こういうものができることによってハードにかわる地域づくりのコアができる。これを中心に全県的にネットワークができていくということは、まつり博のときのやり方とは少し違う、あるいは非常に大きく違う。ハードなしに地域振興とネットワークづくりをしようとしていく。しかも、各地域、地域が特色あるイベントをやって人づくりにつなげていこうというのは、私はそれを評価してみたいと思ったわけです。
そして、恐らくこれは遷宮が2013年中に今度あるわけですけれども、そのときに盛り上げようというのは三重県としては当然だと思います。県民の意識もお祭りというところでは、そういうところにいくと思いますけれども、20年前のお祭り、スペイン村ができアリーナができたというのとは違う形の組織ができる。組織は一度作ればこれを大事にしていきますと、膨れ上がっていきます。そのことによって、次の世帯につながるということをこの計画は期待しているんじゃないかと、そんなふうに私には読めたわけでございます。
○中村委員 最後の質問です。今両先生からお話を聞かせていただきました。市町の理解度、市町がどれだけ動けるかということに、私はかかってくると思うんです。市町は当然、自分のところの地元のNPOとか、そういったものとかいろいろなまちづくり団体は把握を大体しているというふうに思うんです。そういった中で市町との連携がどれぐらいできるのか、だから納得をいかせるようなそういう指示といいますか、協力体制を作っていくことかなというふうに思わせていただいておりますけれども、そういった市町に対してどのようなアクションを持っていったら、これが成功するかと、松井先生、ちょっと最後に聞かせてください。
○松井公述人 今の市町は多分戸惑っているところが多いと思うんですね、現段階では。といいますのが既に本年度の中で、もう説明も一定されていると思うんですけれども、地域の方を呼んで昔の県民局単位で意見交換をするというのを人選をしてくれと頼まれていたみたいですね。しかもよくわかりませんけれども、今までに余りいなかった人をというふうに言われたのか、困っておられたらしくて、たまたまそこに呼ばれたのが私のかかわっている活動のメンバーです。割とどちらかというと新顔の方です。よく来てくれた、じゃ今日行ってくれという感じで、だからどうしていいのか多分わからないんだろうと。行ったら2人ぐらいしかいなかったと、こういうことです。ですから、動きは起こっているんだなということはわかるんですけれども、呼ばれ方もたまたま来たから行ってくれとか、要するにシステマティックになっていないというか、だから要するに手法が見えていないんだろうというふうに思っています。現段階では。
ですから、先程もちょっと申し上げたんですけれども、もう少しやり方をこういうふうにしろというふうに言われるんではなくて、それぞれの地域、地域の今までやってきた蓄積の度合いとか、あるいは住民との関係の持ち方とか、あるいは巡回支援があるかないか、さまざまなことの要素が違うと思います。ですから、余りこんなふうなやり方をしてくれじゃなくて、本当にいいやり方を、それも行政主導というよりも先程先生がおっしゃいましたPPP方式で、やっていくということを1つの柱としてのこの条件なり進めるようにして、もう少し自由度を高めてやっていかれる方が市の実態に合った、地に足のついた、残っていく一過性のものじゃないものになるというふうに考えております。
以上です。
○舘委員長 ありがとうございました。
○西場委員 じゃ、ちょっと数点いろいろ先程の説明に関係しましてお聞きいたします。伊藤先生の説明の中で1つはソフト系インフラ整備というご説明がございました。新しい手法ということでご説明いたただいたんですが、この特にNPOとか市民活動等を中心とした今回のこの取組の中で、ソフト系というものがどういう位置づけになるのかわかりませんが、こういうものを行政がかかわっていくという中で、多様な価値観がぶつかり合うような市民活動とかいろいろな価値観が多様化しているんだと思うんですが、そこへこういうソフト系インフラというような事業が入ったときに、価値観を統一とか統制とか、あるいは枠にはめ込むとか、そういった介入的なものになってしまうようなところも少し心配するんですが、そうなった点についての、少しコメントをいただければなとこう思いますのが1つと、それから文化力につきましては、行政用語ですから厳密な定義をしたほうがいいというようにお話をいただきまして、三重県の資料の10ページの下の方には三重県は文化を生活の質を高める人々のさまざまな活動及びその成果と広く定義して、文化の持つ人や地域を元気に、暮らしをよりよくしていく力及び人が地域を持っている人々を引きつけ魅了する力を文化力ととらえると、こういう定義なんですが、これについて先生の言われる行政用語としての位置づけとして不十分なのかどうなのかというところについての、少しお話、それから自立についてのお話いただきましたけれども、その持続可能という部分については、県がこれを目標にしたという点についても、この要望についての先生のコメントをいただきたいなと思います。
それから松井先生には、既存のNPOをもっと大事にしていったらどうかというようなお話だったように思いまして、私もそういうような思いが強くしておるんですけれども、その場合に全体をとらえるプロデューサーを置くということになっているんですが、果たしてプロデューサーが要るのかどうかということと、それからもし置くとすればどのようなプロデュースをしていくというプロデューサーが要るのか。その現場なり、既存のこれまでの蓄積を大事にするというようなところの視点に置けば、そういった全体を見るプロデューサー、あるいはプロデュースがどういう形で要るのかという、また要らないのかという点についてお聞きします。
以上です。
○伊藤公述人 西場委員が3つ私に質問されました。1つはソフトインフラに関して行政がその価値観にどのようにかかわるかという問題ですが、私はその意味でも行政の役割を十分、私は守備範囲と言っているんですけれども、守っていただきたいと思っているんです。特にソフトの場合には、先程言いましたように人的つながりなんです。
この行政とそれから市民というときに、今度のこの美し国おこしで、私が先程申しませんでしたけれども、やっぱり市町を中心に据えることによって、市町の職員の質的向上が得られるのではないかと思っているんです。こういう言い方は失礼かもしれませんけれども、県の職員がすべて高度な資質を現状で備えているかどうかというのは問題ですし、市町に至ってはさらにそうなんですけれども、立派な人がたくさんいらっしゃいます。しかし、その市町の行政職員のレベルを上げていくということが、今度のソフトのシステムの中ではできるのではないかと思っています。住民には先覚者はたくさんおられますけれども、そういう人たちと協働作業をしていくことによって、本当にやっぱり地域に根差した市町の行政に携わる人たちのレベルアップにつながってほしいと思っています。それを私はソフトインフラと呼んでいるわけです。立派な建物を造ることだけが市町の行政ではないのではないかと、ソフトインフラを整えるというのはそういうことだと思います。人材育成と言ったらもっといいかもしれません。
それから、2番目に文化というところですけれども、今文化力とはという、読み上げていただきました。私もそこを読んだんですけれども、結局何のことかよくわからないんですね。私はやっぱり別な言葉で、例えば地域の潜在力とか言っていただいた方が、地域の持つ文化力というよりは地域の持つ総合的潜在力、それを生かしていくことが地域おこしになるんだというふうに素直に言っていただいた方がいいんじゃないかと、やっぱり文化至上主義と言いたくなってしまうんです。そんな感じを持っています。もうちょっとこの言葉を言いかえるとすればどの言葉がいいのかと。野呂さんはあらゆるところで文化力とおっしゃっていますから、変えてくださるとは思っていませんけれども、やっぱり文化力とは地域力なんだと。それぞれの地域が持っている文化が今まで育ってきたのは地域の力になっているんだと、それが十分発揮されていないんじゃないかというふうに言っていただいたらわかりやすいと私は思っているんですけれども、僕はそのことは知事にもちょっと申し上げているところはあるんですけれども、おれは文化力でいくんだとおっしゃっていますから、そうかと言っていますので。このへんになりますと、もう見解の相違か、あるいは個人だと思っています。野呂さんの文化ではないかと思っていますので。
それから持続というのがございました。やっぱり自立していない地域が持続するということは非常に難しいと思います。持続というのは、現代の世帯が次の世帯につながっていくことが持続なんです、恐らく。つまり後継者がいるかいないか、後継者がいなければ持続はできません。そういう意味では、やっぱり後継者が喜んでそこに育っていくということが持続であり、その活力になるのが自立なんです。だから自立していないところに息子に継げといってもこれは無理な話で、したがって、自立というのは持続と直結している言葉だと思っています。そのためにこそ自立とは何か、どうすれば地域が自立するのかということをまじめに考えていただきたいと、これは多分産業政策かもしれません。
以上です。
○松井公述人 まず第1点ですけれども、私がこれまでの蓄積と申し上げたのは、NPOだけではもちろんないわけでございまして、NPOの定義にもよりますけれども、まさに地域の自治会とかそういうものをつないだ地域の中のいろいろなグループとか、そういうものも含んでのことであるわけでして、決して狭い意味でのNPOだけではないということをまず申し上げておきます。
それで、今プロデューサーの話がありました。こういう人たちが要るのかという、どうするのかということなんですけれども、この計画を見ますとパートナーグループを対象に、こういう人たちを育成するとこういうふうに書いてあります。ですから、逆にこちらがこの計画を作られた方に聞きたい感じですけれども、何をどこまで市民プロデューサーがやるのか、それはもし本当にこれを成功させようと思ったら、かなりこれに入れ込まないとできないと思うんですよね。そうすると入れ込むということになりますと、相当な逆に言うとそこのお金がかかってくるんだろうというふうに思うわけで、ですから、そこに使われているのかどうかもちょっとよくわかりません、今回の予算が。この二、三億というのが一体何なのかというのが先程申しましたように本当にそれが必要なのか必要でないのか。働きの度合いによっては必要なのかもしれませんし、恐らく本当にこの事業を成功させていくための市民プロデューサーであれば、フルタイムの職員でなければできないというふうに思うんですけれども、どこまで期待されているのか、これは逆に聞きたいです。むしろそれを職員として例えば雇用する。例えば市の嘱託職員と、雇用するとなると市民プロデューサーというのかという問題もあります。ですから、この現実的な姿というのがもう少し具体的に議論される必要があって、もし例えばそれを公募して、仕事を給料を保障するからやれと言われたらやる人はいると思いますけれども、多分そこまでいかないんじゃないかなと。そこらへんが中途半端ではないかと思っていますけれども、人は多分いるとは思います。呼びかければ、それは条件次第とこういうふうに思っています。
それから、さっきのちょっと文化力の関係なんですけれども、ちょっと関連して思いますが、ソーシャルキャピタルという言葉がございますね、その地域力にかかわることとほとんど同義だと思うんですけれども。ただその今回もさっきも評価の話が出ていて、6年後にどういうふうにそれが進んだのか、これをはかる物差しというのが一応ここに掲げられていますけれども、果たしてそれでいいのかどうかということも含めて、一体6年間でこれがどのような成果があったのかということをはかる物差しの具体的な検討、研究というものはあわせて必要かと思っております。
以上です。
○西場委員 ごめんなさい。松井先生、私はちょっと言葉は適切じゃないのかわかりませんけれども、市民プロデューサーじゃなくて、県計画の全体をプロデュースするプロデューサーの必要性と、もし置くのであれば、それはどういう役割を担うプロデュースになるのかという点をお聞きしたいわけ……。
○松井公述人 県全体のプロデューサーというのが、一体現在そういう役割の方を入れるということで、あるいはいらっしゃるということで決まっているんですか。
○舘委員長 計画の中にはプロデューサーをという記述はされている。
○松井公述人 それはどうなんでしょう。まさに今申し上げましたように、それは何をさせ、その待遇をどうであれ、それによってそれは人はいると思います。だから条件次第、何事もNPOもそうなんですけれども、何事も条件次第で人はいるんです。ただ、NPOなんかの場合ですと条件が極めて悪いもんですから、それだけの人が集まらないと、こういうことだと思います。
○奥野委員 松井先生にお伺いしたいんですけれども、私11年間町長をやっていたんですけれども、この事業はまた県からの押しかけか、またかというようなそういうイメージでとらえていたんですけれども、松井先生のこのずっとこれ今拝見させていただいて、全くそのとおりだと思います。特に市町を通り越して県が直接やってしまっては云々という部分と、最後のただ他にも多くの重要課題があるということで、そういうことを考えてみると、この事業をこのままやって果たして成功するのであるだろうかというのが大きな疑問点なんですけれども、もう1年委員会の方で、もう1年ゆっくり考えてやったらどうやと言ったんですけれども、私はやっぱりその方がいいんじゃないかなと思うんですけれども、仮に、私がこの代表一般質問の中で大分県の一村一品運動みたいなそういうイベントをやってはどうかとおっしゃられたんですけれども、それも一つの考え方でもあるのかなというふうに思いますので、今市町にはそんな69から29市町になって、特に合併した津とか伊勢とか松阪とかいろいろな町があるわけですから、そんな中で今県が押しつけてこれやれ、あれやれ言ってもそれだけの人もいないし、知恵も出ないし、今やれるのはこの合併した10市町村や、まだ6や5の市町がいかに融和をしていくことが大事であるかというのが、一番今その市町が抱えている問題だと私は思うんですよ。
そういう意味で、この県の今回の美し国おこしのイベントというのは少し疑問を感じるし、もう少し市町と議論、協議をした上で、この事業をやっていくのが妥当なことではないかなと思うんですけれども、その最後の先生の部分のこの市町を通り越してというのと、納税者にもっと説明が要るということで、それには時間が必要じゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
○松井公述人 行政部門といいますか、これではもう今までのところでかなり、かなり時間をかけているわけでもないと思うんですけれども、1年ぐらいは少なくとも1年以上ですかね、かけていらっしゃるので、その間の議論というのはこれは正当な手続を経てやっていらっしゃるので、私自身はなかなか無視ができないところでもあるかなというふうに思うんです。ただし、先程申したように、新しいというか今のこの事業が本当にできるかどうか、それでこのメンバーの中に関係者がいなかったわけでもないですよね。ですから、そこのところが大変難しいんですけれども、私自身がこれを1人の個人的な今回は立場でお話をすれば、おっしゃるようにかなり難しかろうと感じているわけです。だから、これはあくまでも個人としてはおっしゃるように少し修正をしたり、のんびりしたりしていただいた方がいいんじゃないかとは個人的には思いますが、そこのへんは議論をしていただきたいとこういうことでございます。
○杉本委員 今日はどうもありがとうございました。私今までちょっとわからなかったところやら、それから今日新たに教えていただくことがたくさんあり、本当に感謝しています。いろいろなことでこの計画を考えてきたんですけれども、私今一番こだわっているのが実は評価と検証のところについて、うまく自分の中で整理できないで困っています。両先生にぜひこの際、この検証、評価のところを読まれてお感じになったことですとか、それからこの点について、何かご助言がいただけるとありがたいというふうに思います。
先程、松井先生が物差しの検討が必要という一言がありましたし、それから伊藤先生にはPPPの社会実験というところがありましたので、このPPP方式というかPPPについての検証のあり方のようなことについて何かご示唆いただければというふうに思います。
○伊藤公述人 評価・検証というのは計画にとっては必要なお仕事です。そういう意味で、この計画を評価しあるいは検証するということは大事なんですけれども、それをいつどのように行うかということは非常に千差万別です。特にこういう行政の計画というものは、実行段階で例えば物理や化学のように実験室の中で実験してみてよかった、悪かったということができないんですね。ですから、私はあえて社会実験という言葉を申し上げているわけです。つまりここでは県ですけれども、県の当局がプランを作って、議会がそれを承認して、県下でそれを展開するということはまさに社会実験なんです。その結果、いいか悪いかということは、それぞれ立場もありますから、それについて特に私は申し上げませんけれども、今度の「美し国おこし・三重」というのは、その手法についてもまだ未知数のところがたくさんある。これはもう私は今日はここの疑問については、あえて触れないようにしているんですけれども、本当に各ページ首をかしげるところはたくさんございます。それを全部クリアしないと、この計画にはゴーサインが出ないのかというところで、ではこの計画に対しては反対するというのも簡単なんですけれども、じゃこれを肯定的にとらえるとすれば、私はやっぱり社会実験として認知するしかないだろう。社会実験であるとすれば、これは生きているわけですから、6年たって初めて評価するというのでは、これはやっぱり責任の所在は問われることになると思っています。
したがって、この仕事を進めるあらゆる主体がかかわるわけですから、あらゆる主体がそれぞれチェックシートをもって、刻一刻1年とはいわず、もう本当に事業が進んだらたちまちそれを途中でも、一段落したところでもいいから、それをチェックシートを作って、チェックすることによって次のステップにつなげていく。つまり評価をし、検証をし、それをつなげていく。その繰り返し、このシステム自体もまだ確立されていないんですけれども、PPPなんかではそういうところが非常に厳密にされるようになってきております。ですから、本もたくさん出ていますので、一度杉本議員もお読みいただきたいと思いますけれども、参考すべきところはたくさんあります。
つまり、これだけ高度に複雑化した社会においては、やっぱり評価・検証というのは外せない仕事だと思います。計画を作ったら放り投げ、丸投げという言葉もよく使われますけれども、それでは社会実験にはならないと私は思っています。
以上です。
○松井公述人 先程ちょっと尺度の話を評価の物差しの話を申し上げました。今この計画の中で、ある程度の具体的なこういうものを物差しにするんだということが掲げられていますけれども、ほとんどこれはそういうパートナーグループの数ですとか、参加者の数とかそういうもので、そういうものもあってもいいかと思うんですけれども、果たしてこれが妥当なのかどうかとか、それから、やっぱりそこに住んでみて本当に幸せ度といいますか、幸せ度というのはこれではかれるのかというものも当然ございます。
ということで、さっきちょっと申し上げましたけれども、そのソーシャルキャピタルという地域力という国際的に最近言われているものについての評価のあり方といいますか、その尺度というものについての研究というふうなものが、数年来国の方でも一部行われておりますし、それから、それをちょっと私も見させてもらったんですけれども、発表も聞いたんですけれども、いまいちなんですね。ほかの国でも行われておりますので、そういうことをもう少し研究をして、本当にいい指標なんかを作っていくということもこの事業の中に入れるなり、あるいはここで限定して、これが何点というものとはちょっと違うとか、何かそういうふうなことに言及していただくのも大事なことかなとこういうふうに考えております。
○舘委員長 申し上げますけれども、時間も押しておりますので、できるだけ簡潔な質疑をよろしく発言をお願いします。
ほかどうですか。
よろしいか。それでは、せっかくでございますので、傍聴の議員からの質疑がございましたら。
○萩原議員 1つ教えてください。1つはハードがないというお話がありました。確かにアリーナみたいな前のときのばかでかい施設造ってというこれは後大変だったんですけれども、それは確かにないけれども、野呂知事が国の方への今予算要求で、伊勢の遷宮で物すごくようけたくさん他県から人がござる。そのためのやっぱり道路を造らないかんということで、5,000億円です。国へ予算要求をしているんです、5,000億円。これは総額ですから、県費負担は数百億円オーダーになるんだったかと思いますけれども、今ちょっと細かいデータ持っていませんが、やっぱりこういうことも一つのイベントとのかかわりの中で、ハードをこの機会にやっぱりやってしまおうという、そんなねらいが端的にあるというふうに思いますけれども、その点では参考人の方、何かご見解があれば教えてほしいなというのが1つ。
それからやっぱり式年遷宮20年ぶりにというこれにひっかけてやろうという、このねらいというのが私は文化力などという言葉を使っているけれども、大変大きな疑問を持っています。もちろん伊勢神宮の遷宮はそれはそれで大事な行事なんでしょうし、それはそれで信仰される方やら、希望される方やら、よそから来る人がやっていただくのはいいんだけれども、これに行政がかかわるという点でのやっぱり政教分離の問題を当初から言っておりますが、そのあたりが日本書紀や古事記やあるいは神話や伝説やというような形でそれに結びつけられて、伊勢神宮は心のふるさとやというのは、そう思う人もあるでしょうし、それぞれの人たちに心のふるさとは違うはずだと思うので、そのあたりで果たして三重県全体でそんな形の地域づくりがうまくいくのかという、第一、美し国おこしというのこれ読めない人も結構ある。それから「めぐる つぐむ はぐくむ 常若の三重」までいってしまうと、もう一つさっぱりわからないという、そんなことにもなるので、私はけちをつけるわけじゃないけれども、こういうのはイベント会社やら旅行会社やら、けちをつけるわけやないけれども、けちをつけている。いやいや、これはやっぱり正しい県民の疑問を投げかけているんですよ。それで、イベント会社、旅行会社とかいうそういうところがやっぱり実行委員会にだーっと並んでいることなども含めて、いかにもスローガン等を含めて実際ねらっているものが違うんじゃないかと。だから県民は喜ぶのかどうなのか、よそから来る人はこのことによって喜ぶかもしれないし、そのことによってかなり利益を得る人たちは随分あるだろうと思うんだけれども、こんなことに行政が36億も、あるいは市町が6億もかけてかかわっていくということが果たしてどうなのかという点では、基本的に大きな疑問を持っています。参考人の皆さんに率直なそのあたりのご意見を聞かせてほしいと思います。
以上です。
○伊藤公述人 意見になるかどうかわかりませんけれども、この遷宮を機会にハードを整備したいと、道路を造る5,000億という話は、僕は今初めてお伺いするんですけれども、これはこれで1つ、20年に一度のご遷宮に合わせて整備が進むのなら、これはこれで結構ではないかというふうに割り切れないかというふうに私は思っています。それが宗教とかかわるかどうかというところは、私はもう断固、政教分離はすべきだと思っていますし、行政が宗教に手を突っ込む、足を突っ込むということはあってはならないことだと思っています。それと、やっぱり遷宮というこれがかなりな話題性があるのであれば、三重県のPRに使ったり、道路ができたりするのは悪いことではないというふうに私は割り切りたいと思っています。
たしか20年前のときに伊勢自動車道が伊勢までつながったと思います。その前の40年前のときには、南勢バイパスあたりができたんじゃないかと思っていますけれども、ちょっと違うかもしれませんが、そのたびに三重県の南部が少しずつよくなっているということに、これをけしからんという程の目くじらを立てることはないと、私は率直にそう思っています。
これと今度の美し国おこしですけれども、私は初めは遷宮が2013年にあるので、それに向かって三重県は36億円使って何か県民の盛り上がりをやろうというふうに考えているのではないかというふうに実は思ったんです。あの計画をじっくり読ませていただきました。ところどころにその雰囲気は残っていますけれども、しかしこれをやっぱり本当に29の市町が、先程私が申しましたように、地域をどのように作っていくのかということを行政も県民もあるいは市町村民がこれにかかわっていくきっかけになるんだったら、それは評価すべきではないか。このことは多分遷宮が終わってもつながっていくだろうと、これは本当の意味でのうまくいくかどうかわかりません、社会実験としての提案だと。したがって、私はソフトでこれをやろうとしているところに評価をしたいと、実はこれも率直に思ったところです。
以上です。
○松井公述人 まずハードの道路の件ですけれども、これについては全く私も存じ上げなかったということもありますし、それとこの事業との関係というのは、直接は今日話すことではないかなというふうに思いますので、必要な道路は必要だろうし、必要でないものは必要でないと思いますので、それは別途ご検討いただきたいというふうに思います。
それから、そういう文化と宗教との関係というのは非常に微妙なところがあるわけですけれども、特に今回のこの事業が、これも使い道をしっかりチェックしていただきたいんですけれども、そこと一応切り離されているかどうかというチェックは必要だろうと思いますので、そこのところをぜひお願いしたいと思います。ただ、この事業がソフト事業であるにもかかわらず非常に高額であると。私は一般的にソフト事業というのはお金が非常に少なくて済むということ、人件費を除けば非常に少なくて済むのが一般的にソフト事業です。なぜこんなにかかっているのか、ここがもっと知りたいんですけれども、ぜひそこのところをご検討をお願いしたいと思います。
○舘委員長 ありがとうございます。
○萩原議員 おっしゃっていただいたことをあれですが、道路ができてよくなってというので、伊勢の地が中南勢地域中心に大きくそのことによって本当に発展したのかどうかという点では端的に言うて、リゾートなんかは随分騒がれたんだけれども、実際今は破綻しているという状況なども含めれば、やっぱり私はそういう点はもう結果が出ておったのではないのかなという、今大きく評価ができるんやないかと、そんな思いも含めて極めて問題点を感じます。
以上です。
○三谷議員 簡単に伊藤先生にお伺いしたいんですが、この総括評価1で「美し国おこし・三重」三重県計画は一種の社会実験として期待をしたいと。実験には失敗がつきものだがということでチャレンジしてみたい。こういうふうに書いていただいておるんですが、行政が行うこの種の事業で、しかも36億使って、しかも6億の市町に対する負担も含めてやるときに、失敗をしてもいいということには絶対ならないんですよね。これ失敗したときに、一体じゃ誰が責任をとるのかと、恐らく誰もとらないとこう思います。そういう意味では、もう少し本当に市町の声もしっかり入った計画で、しかももし失敗したときにその責任がきちっととれるような計画でなければ、僕は実行してはいけないとこう思います。
それからもう一つは、本当に市町がこういうことに期待しているのかどうかと、その前提の部分が全く見えてきていないんです。市町からしてみれば、県が小さな親切でいろいろ考えておられるのかもわかりませんが、大きな迷惑な可能性もあるわけで、そのあたりの検証もしないことには、この基本計画、そうですかというわけにはいかないと思いますが、先生のご見解ちょっとお伺いしたいんです。
○伊藤公述人 簡単にお答えします。冒頭申しましたように私はちょっと財政の専門家ではありませんし、特に三重県財政については全くわかっておりませんので、この金額が多いか少ないかということについては、お答えできる資格はないんじゃないかと思っています。ただ、1,000のグループを作って、2,000回、3,000回というミーティングを行い、それをベースにしていくらなら、それができて妥当なのかというそういう単純計算ぐらいなら僕もやってできないことはありませんけれども、その作業を自分でやっておりませんので、これをぜひご担当のところでやっていただきたいと思っています。ただ、社会実験は失敗が私はつきものだと思っています。先程のご質問で言えば、リゾート法を作ったというのは、あれは社会実験だという、明らかに失敗の産物だと思っています。あれは行政手法が悪かったと思っています。しかもフランスなんかで行われているようなバカンス法に相当する法律を作らないで、ものづくりだけをする、まさに社会実験としては欠陥商品だったと思っています。そのことを僕はリゾート法ができたときに論文に書いています。したがって、もう始める前から失敗するんじゃないかということがわかるような実験計画もあります。したがって、この実験計画はどの程度成功の確率があるのかということは検討する必要があると思っています。これはお金を含めてやっていただきたいと思っています。
それから、市町と十分コンタクトをした上かどうか、先程、奥野委員も同じことをおっしゃったわけですが、これも私はこの計画を読んで意見を言ってくれと言われて、ただ本を読むように読んだだけで、市町がこれにどのようにかかわってきたのか、議会の意見集がありまして、あれを読ませていただきましたけれども、あの程度ですので、やっぱりこれ参加していただく市町との十分なコンタクトと相互理解がなければだめではないかという奥野委員のお話に、私はそのとおりだなというふうには思いました。お答えになったかどうかわかりませんが以上です。
○舘委員長 ありがとうございました。
以上で、公述人に対する質疑を終了させていただきたいと思います。
それでは、委員会を代表させていただきまして、一言お礼を申し上げたいと思います。本日は本当にお忙しい中にもかかわりませず、長時間にわたりまして貴重なご意見を本当にありがとうございました。心から感謝を申し上げたいと思います。
本委員会といたしましては、今後、本日いただきました貴重なご意見をもとに審査に十分生かしていきたい、このように考えております。本日はまことにありがとうございました。
以上で、政策総務常任委員会公聴会を終了いたします。
準備の都合もございますので、14時50分から参考人のご意見を伺いたいと思います。
よろしくお願いいたします。
〔閉会の宣言〕
政策総務常任委員長
舘 直 人