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令和03年08月23日

第71回みえ県展 審査評

 

日本画部門審査評

 現在の日本画と油画は基底材の違いでしかない。社会の背景や日常の生活の変化からみて致し方ないのかもしれない。ただ、日本画の生まれた風土とその文化が何であるか、バックボーンにある精神を知っておきたい。画面の余白に人と自然の営みにある生命観が関わることも知っておきたい。
 戦後、日本画の新しい基底材が開発され多種多様の表現が見られるようになった。人造絵具はボリュームを得られ効果があっても塗り重ねすぎると汚れがくる。個々の工夫により絵具の重色が美しい表現になればと願っている。
 三人による厳正な審査をさせていただき、大きな意見の相違もなく、入選者、入賞者が決まりました。
最優秀賞≪幽深≫水谷 好心は、明代の董其昌の文人にある教養を感じさす好作で、墨の味わいと精緻な筆法に顔料の厚みが加わり精神性の高い作品に仕上がっている。
 優秀賞(三重県議会議長賞)の≪いちじくの讃美≫上岡 奈苗は、ベージュ地に金で骨描き、黒を転写し説明的にならず柔らかく抒情詩を謳う作品になった。空間のやわらかさが心地いい。
 同じく優秀賞(三重県教育委員会教育長賞)の≪春を待つ大地≫中井 康信は、山里の集落に雪が来たのだろう。寒の佇まいに喜びを感じさせおだやかだ。
 三重県市長会長賞の≪名も無き内乱≫たちおか 帽子は、鯉のうろこのうねりを交差させ妖しさの中に自問の深さを見せる。
 三重県町村会長賞の≪始まりの地≫前田 依子は、湖面を写す波紋、赤く水草が輝き、何かが起きる予感がする。
 岡田文化財団賞の≪dreamer≫大岡 優美は、小さな色タイルを水の紋様にして、女性の心理を水の妖精に昇華させた。
 すばらしきみえ賞の≪八重桜≫竹下 藤子は、良い作品だ。シュール(写実)の卓越した描写に惹き込まれる。
 For you dream賞の≪落花流水≫小林 修二は、水中に舞う赤い椿、情念を感じながら生命の定めを見る。
 自然の恵み賞の≪萩≫高橋 弘子は、萩のピンク色の束を緑の葉が包み優しい。
 コロナ禍の中で、何を求め、何を描くのは個々なのだがみえ県展に出品された作品を見て、神から授かった絵心を素直に愉しみにかえ描かれていると感慨を持った。 
                                     日本画部門審査主任 竹内 浩一
 

洋画部門審査評

 前年はコロナ禍のため中止となり、事務局報告によれば今回も落ち込む部門もあるなかで「洋画」部門では大幅に増加して204点の出品。それはグループではなく個人制作の人たちが多く、堰を切ったようにそれぞれの場から発信し始めた表現欲を示しているだろう。実際、初めて本展の審査をした私の印象は、流行の絵画はほとんど無く、様々なもう一つの絵画に立ち会ったというしごく単純だが深い印象であった。
 最優秀賞(知事賞) ≪純潔な戯言≫は実は賞候補として最初に投じたのは私だけであったが、<隅々までの神経が行き届いている><画力がある>という他委員からの意見もあって、瞬く間に受賞となった。扇情的なものは無いにもかかわらず、花の傍らで座す婦人を装飾的かつ濃密に描いた官能性と文学性をたたえたこの作品は現代では稀な反時代的とも言えるもので、後で知れば美大の大学院生であるらしいのだが、この”古い特殊な絵画”は看過しえない印象を逆に残した。対照的に優秀賞(県議会議長賞) ≪守護鳥」は溌溂たる絵画で、平面的な色面の中から、鳥の顔から先が画面から飛び出すように描かれていて、筆者としては一押しの作品であった。優秀賞(教育委員会教育長賞) ≪樹の記憶―空襲≫は全面に樹木を語るように描きこみながら細部を活かすことで、単調ではない集積した全体性を示した。また三重市長会長賞≪刻:toki(中村川) ≫は精緻に描写し尽くしながらも、硬化する手前で踏み止まった。これも「神は細部に宿る」の恵み。三重県町村会長賞≪たゆたう≫はヤギに降り注ぐ木漏れ日を優和に波紋のように描いたもので、手練れた人はフタを開ければ10代の作家だった。さらに岡田文化財団賞≪少年と飛行機1945鈴鹿市庄野≫は平原に残された撃ち落された戦闘機に乗って少年が上を飛ぶ敵機群に対して歯をむいているという敗戦時の光景という既視感のある主題をむしろ鮮やかな色感で平滑に描き、メタリックなフレームも含め再作品化していた。他に、すばらしきみえ賞≪つづらおる≫の波切の石組みの質感表現、for your dream賞≪Never say YES≫はマスク下から覗かせたこちらを射抜く少女の目線とバックの立ち入り禁止の封鎖感が物を言い、また自然の恵み賞≪幸せ家族の絆≫の描き込み方と大気表現が評価された。
 初めに記した点数の増加は、当然厳選となり、多くの意欲作が選外となった。意外なことに最終的に受賞には抽象は残らなったが、それはあくまで作品の質本位での選考の結果であり、われわれはほとんどバランスではなく、作品の強度、探究の仕方に意識を向けた。結果、固有の場からの多様な絵画を見ることとなった。次回はさらに探究を怠らず、フレッシュな美意識を保つことを望みたい。見たことの無い絵画のために。
 
                                      洋画部門審査主任 天野 一夫
 

彫刻部門

 今年の彫刻部門への応募作品は19点で前回より1点減少した。素材、形態、サイズには例年通りの多様さが見られるが、それらにコロナ禍の情況の反映は感じられなかった。作品が並ぶ審査会場には、三重の風土のセンスのようなものを感じてたいへん好感を持った。
 入選作品数は、「応募作品の多岐にわたる傾向をできるだけ展示に反映させるべき」との審査員全員の意見により、予定された限度数より1点増の13点となった。これにより彫刻部門の展示が活気ある印象となることを期した。
 入選作品はいずれも、材料・技術への取り組みの意欲が表現力の豊かさを獲得していると言うことができる。中止となった昨年に出品しようとしたものをさらに洗練・発展させたのか、“力作”が多いと感じた。
 入賞作品の選定では、審査員の投票数をもとにして各賞を協議した。最優秀賞と岡田文化財団賞の2作品は直ちに決まり、その他の受賞作品に対する審査員の意見も概ね一致した。
 最優秀賞の《いつわりなきもの》は、“うろ”をもつ老木の切り株をくりぬいた内側に、増殖した菌類を思わせるような大小の膨らみを一面に彫刻して、白みを帯びた彩色を施している。作者は、この作品に自然が有する時間と命(あるいは死)への畏敬を込めているのだろう。素材を演出する卓越した技量が、見る者の眼差しを強く引き込む。
 岡田文化財団賞の《祈りの道》は、チベット仏教の“五体投地”を、細部を彫らない木偶(でく)の群像として表現している。巡礼者の足下の彩色した木で、作者は宗教的な何かを設えているのかもしれない。木偶の荒削りな作風に新鮮さと素朴な崇高さを感じた。
 その他の受賞作品も、それぞれの表現を目指した一定の技術的キャリアを示していた。注目を受けるスケールや“斬新な表現”が受賞の条件になりやすいが、受賞から漏れた入選作品のなかには、根付の産地であり橋本平八を生んだこの地の彫り物・彫刻本来の“手堅さ”を意識させるものがあった。
 
                                      彫刻部門審査主任 黒川 弘毅
 

工芸部門審査評

コロナ禍にあって、工芸部門は今回83点という6点の応募増であり、三重県の工芸制作者の意欲が数の上からも窺われた。万古焼や伊賀焼、伊勢型紙の技術を基礎にした作品など三重県の工芸の歴史や伝統が現代の表現として開花している様子が、受賞作を含め随所に見られた点も頼もしい。
 最優秀賞の≪多様な仲間≫は、6匹のヤドカリのサイズや釉調を変えながら並べた陶芸作品で、現代社会に尊重されるべき「多様性」を想わせる、どこかユーモラスな作品である。実際に足が動かせるような作りとした点も、作者の思いの強さを感じさせる。伊勢の題材に想を得た染屏風《伊勢の幸》は大胆なカニやエビの背景である藍を用いた構成にも工夫が見られ、《層の表情》はキューブ状の形の組み合わせで新たな陶の表情を築き、いずいれも優秀賞を受賞した。岡田文化財団賞の《伝統工芸こぎんししゅう「層の表情」》は伝統技術による新鮮な意匠を両面で構成した端正な作品である。他にも土木、七宝、金属の優品が受賞し、従来的な工芸の粋に収まりきらない作品までも現れるなど、三重県工芸の拡がりとエネルギーを確信する内容であった。
  
                                    工芸部門審査主任 外舘 和子

 

写真部門審査評

 昨年、コロナ禍で中止になったみえ県展が、無事開催できたのはとてもよかった。とはいえ、その影響がまったくなかったわけではなく、写真部門の応募点数は47点減ってしまった。外に出て撮影するのが難しい時期があったことが、多少は影響したかもしれない。とはいえ、今回の上位入賞作のレベルはかなり高かった。何度か審査に立ち会っているのだが、その中でも印象に残る回になった。
最優秀賞の≪包容≫は、堂々とした風格を感じさせる作品で、見る者のイマジネーションを大きくふくらませる魅力を発している。自然と人間とのあり方を考えさせる作品ともいえる。優秀賞(三重県教育委員会教育長賞)の≪西日の虚像≫、同じく優秀賞(三重県議会議長賞)の≪秋の名残≫も、目のつけ所のいい作品だった。リズミカルな人の形のシルエットが印象的な≪西日の虚像≫、逆光の効果を巧みに活かした≪秋の名残≫の両方とも、甲乙つけがたい出来栄えだった。
新人賞にあたる岡田文化財団賞を受賞した≪先行き不透明≫は、影を中心に大胆な画面構成を試みている。モノクロームの諧調表現もうまくいっていた。他の入賞作品からも、それぞれ強い意欲を感じた。For your Dream賞の≪Phantom≫は、みえ県展には珍しい女性ポートレート作品で、今後の展開が期待できそうだ。
祭り、古い校舎、海女さん、猫、花鳥風月などの写真があいかわらず多い。
どうしても似たようなものになりがちなので、上位入賞はむずかしくなる。それでも、少し撮り方、狙い、構図などを変えるだけで、新鮮な印象を与えることができる。若い世代の応募がもっと増えていいだろうと思うが、ベテランの方たちでも、大事なのはチャレンジ精神ではないだろうか。次回も力作、意欲作が多数寄せられることを期待したい。

                                     写真部門審査主任 飯沢 耕太郎
 

書部門審査評

  コロナ禍の社会生活が困難な中で、多くの力作と対面することが出来て、大変嬉しく思います。
 書の審査は、島谷弘幸先生、永平巴旺子先生と小生が担当させて頂きました。書の活動分野は、漢字、仮名、調和体、篆刻など多岐にわたり、表現内容も豊かで、みえ県展の意欲的で活発な活動が伝わってきます。一作一作心に響くものがあり、日頃の努力の累積が読みとれます。
 審査にあたっては、当然のことですが公正、公平、透明性のある審査を重ね、合議により入選作品を決定いたしました。
①最優秀作品は、筆勢のある線で、字形、結体が引きしまり、行間の白が変化に富んでいて美しい。線が響き、 
 生命感豊かな生き生きとした作品に仕上がった。
②優秀賞(三重県議会議長賞)作品は、おだやかで静かな線で自由自在に筆が展開する。一字一字の表情が豊
 か。
③優秀賞(三重県教育委員会教育長賞)作品は、躍動する生きのいい線で、構成も見事。リズミカルな動きで生
 彩のある横作品に仕上がった。
   
                                     書部門審査主任 新井 光風

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