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令和07年08月08日

第75回みえ県展 審査評

 

日本画部門審査評

 昨年に引き続き審査の担当致しました。僅かな出品数の減少に多少の不安な気持ちもありましたが、全体の作品レベルは落ちておらず安心しました。審査方法に於いては、審査員同士の話し合いに時間をかけて点数を絞り込めた事が良かったと思います。自身とはまた違う切り口での意見もあり、得票数だけで切り捨てない納得した結果を得られたと思います。最優秀賞《ピントを合わせろ》は一見派手さは無いものの抽象表現にも感じられる画面構成と造形力、視点とその切り取り方が強い印象を与えており、若い作家ならではの攻めの意欲を感じた力強い作品です。優秀賞(三重県議会議長賞)《遺構》は安定した描写力と緻密な表現が独自の絵肌を作り上げている完成度の高い作品でした。同じく優秀賞(三重県教育委員会教育長賞)《聲》は単なる写実にならず自身の解釈が面白く、画面下半分にその魅力が凝縮されているように思います。岡田文化財団賞《渋柿の収穫》は色感がすばらしく、題材に対する愛情が感じられる作品で、精巧な写実表現ではこの味わいは出せないと感じさせるものでした。三重県市長会長賞《聚》は重厚な塗りに反して淡い色調で、どこかノスタルジックな心象風景を感じさせます。三重県町村会長賞《翠明》は題材に蓮を選びながらも主役は陰であり光である、印象派にも通じる表現が美しい。すばらしきみえ賞《花筏、紫陽花》は重い色調になりがちな作品群の中で明るく軽やかな表現が魅力的でした。for your Dream賞《nighty night》は平面的な画面構成で何が描いてあるのか分からない事がこの作品の魅力です。人物の肌色の表現が変われば更に良くなったと思います。自然の恵み賞《新緑の御在所岳》は堅実な描写で隅々まで描かれた力作です。ダイナミックな表現を取り込めるようになると更に良くなると思います。
 今回の受賞作品は絵作りに於いても多様性があり、表現する事の魅力を伝えてくれています。この9点だけ見てもみえ県展の高い水準を示していると思います。
 
                                                                                         日本画部門審査主任 村岡貴美男

 

洋画部門審査評

 今回は、出品数が前回より19点増え、とりわけ若い世代からの参加が増えました。
 全体として、画面の隅々にまで細やかな配慮が行き届き、納得のいくまで制作に取り組まれた真摯な作品ばかりで、大変見応えがありました。絵画に対する愛情と情熱が伝わってきました。
最終審査では、上位2作品が満場一致で票を集めました。どちらも非常に充実した内容を持ち、完成度の高い作品でした。
 最優秀賞《ユウグレドキ》は、独特の雰囲気に満ちており、素材の扱いや動き、色と光の関係をユニークに表現しています。現代的で斬新な感性と秀逸な構成力を備えた、大変魅力的な一作でした。
 優秀賞(三重県議会議長賞)《耀》は、光をつかもうとするシーンが非常に印象的です。手の表現はおおらかで、光を求める若々しい希望があふれており、画面全体が実際よりも大きく感じられるような構成も見事でした。
 優秀賞(三重県教育委員会委員長賞) 《紅葉の帳》は、的確な表現力と緻密な構成が際立つ作品です。丁寧に時間をかけて仕上げられており、奥行きと完成度の高さがあり、見る人の心を引き込みます。
 三重県市長会長賞《羽化》は、モダンでありながら柔らかさを備えた印象の作品です。グレーの調子が美しく、日本的な美意識をたたえた、心に残る表現となっていました。
 三重県町村会長賞《宇宙船たまねぎ号の挑戦》は、タイトルからの発想も楽しく、構成力と緻密な描写が光る作品です。時間をかけて丁寧に向き合った姿勢が随所に感じられます。
 岡田文化財団賞《山と雲》は、上方の線と水平線、山並みから空へとつながる蜘蛛の巣のような線の動きも興味深く、視覚的に引き込まれます。現代的な印象を受ける作品です。
 すばらしきみえ賞《鋳物師》は、構成力に優れ、空間の広がりを感じさせる力強い作品です。光のコントラストが見事に表現されており、臨場感が生き生きと伝わってきます。
 for your Dream賞《燕花万命~roots & rebirth》は、グレーを基調とした均整が取れた構成です。中央に描かれた小さな鳥のようなモチーフに愛おしさを感じさせる作品です。
 自然の恵み賞《朝と河内渓谷》は、水に溶け込むように描かれた情景の中で、岩波の表現が特に巧みで、静謐な自然の息づかいが感じられる作品です。
 どの作品にも、それぞれの作家の視点と世界が丁寧に映し出されており、審査員一同、心から感動いたしました。これからも、それぞれの表現がますます深まり、さらに多くの人の心に届いていくことを願っております。
 
                                      洋画部門審査主任 東島毅

 

彫刻部門審査評

 熱量の高い候補作品に対峙して、審査は穏やかな空気感での合意形成ができ公正な審査会に立ち会えたことに感謝しています。多様な素材、表現を評価する性質上もつれ始めるとしこりの残るような局面もあり得るのですが今回の審査では最優秀賞候補に木彫2点《海に生きる》と《温もりが包む冷たさ》、同素材ゆえに表現にフォーカスすることができた事がスムーズに合意形成できた要因であるようにも思われます。
 最優秀賞《海に生きる》は作者の素材に向き合う愛情や、フォーカスの効いた主題の設定が明確に表現されている作品で高い好感を持って出会えた作品です。主題となる人物の自然に向き合う哲学や、作品の背景にある風情や匂いまでもが雑味を伴った鑿使いで潔く表現されていてリアリズムに今なお挑む力強い意志を感じる彫刻作品でした。
 審査にあたっては、作者の属性は勿論完全に伏せられているので作者の意図に想像を膨らませるのですが、時折気になって属性の確認をすると可笑しくなるほど大外れな時があって、これはこれで一般的な展覧会を眺める景色とは異なる楽しみのひとつです。今回も三十代後半の女性の手によるものだと確信していた作品が、私より年長の男性の作と聞いて驚かされました。
 
                                     彫刻部門審査主任 川島慶樹
 
 

工芸部門審査評

このたびの工芸部門審査員3名は、技術の洗練度によって表現力の向上をめざす地道な努力の成果について評価させていただきました。具体的には、表現しようとする意図や目的(表現性)の明確化を図った、作者の「手」を丁寧に見ていこうということです。
 これはもちろん、作者が素材の物質性を深く理解しているかどうかにつながってきます。必ずしも作品の完成度が高いということと同義ではありませんが、素材の物質性に親しみ手技を駆使して、自らをかたちに表現していくのが工芸的造形の大前提だからです。
 さて、今年の県展では69点の応募出品があり、そのうち48点が入選となりました。入選作は、陶芸・染織(染色)・木竹・ガラス・金工・伊勢型紙・押絵といった、素材・技法と制作工程が確立された領域のほか、身の回りにあるモノを工芸的造形の素材として用いた自由な表現性の作品がありました。
 選外作品に共通するのは、技術的洗練の方向性が定まっていないこと、またたとえ技術的洗練の方向性が追求されていたとしても、素材の特色を生かしきれないつまり未達の感覚を喚起させる作品だったように思います。ただしそれは、作者が自らの制作目的を明確化して継続的に実践するうち、やがて解決されていく問題だと思います。このたび惜しくも選外となった皆さんは、ぜひ奮起して制作を継続していただければ幸いです。
また入選された方々も、工芸的造形は素材と技術に寄り添う造形思考に依拠する表現行為ですから、自己の表現性に相応しい素材や技術かどうかを吟味し直すこともたびたびあるべきことでしょう。
 綺麗に整っていない、野太く力強いかたちに人は心惹かれることがあります。それは、そこに「生」に対する緻密な重層と未来への展望が、なにかしら感じられるからではないでしょうか。今回の入賞作は、入選作を対象に採点を繰り返して絞り込み、得点順に9点が決せられましたが、いずれもこのような旺盛な生命を感じさせる、工芸的造形の魅力に溢れたかたちばかりでした。
 今回応募出品されたすべての皆さんが、その豊かな感受力をより飛躍的に表現されますよう期待しています。

                                     工芸部門審査主任 石﨑泰之

 

写真部門審査評

 第75回目を迎えた「みえ県展」の写真部門には、今回257点もの作品が集まりました。コロナ禍前に比べると控えめな数字とのことですが、応募作の技術的なレベルは高く、撮影テーマも多彩でした。写真表現の面白さとは、カメラによって、肉眼では捉えきれない被写体の新鮮な表情を見つけること。その発見はカメラという機械を、撮影者の個性や感性が乗り超えたときに訪れるものです。それを実感させてくれたのが、最優秀賞の前部淳さん《五月の舞》でした。青空に泳ぐ鯉のぼりを真下から眺めるというアングルの工夫、遅めのシャッタースピード、ハイキーな露出などの組み合わせにより、一味も二味も違う造形が生まれています。一方、優秀賞(三重県教育委員会教育長賞)に決まった梁井英雄さんの《雨宿り》は、お祭り装束を着た少年たちの心配そうな表情をよく捉えており、気遣う女性の仕草には優しさが表れている。優秀賞(三重県議会議長賞)の佐々木正和さんによる《愉快な仲間たち》も同様で、満開の桜を背景に、楽器を演奏している女性5人の関係性の表現が味わい深いものです。三重県市長会長賞の西山壽一さんの《母の年輪》は、節くれだった手の指の描写が見事で、“人生の経験”がしっかりと見えてきます。三重県町村会長賞の望月順一さん《赤い洗礼》は強い驚きを与えるイメージでありながら、ほっとした気持ちにもさせる、その緊張と緩和がとても面白い。
 4点の縦位置写真を並べて構成した、中北喜得さんの《俄雪中逍遥之圖》は岡田文化財団賞です。それぞれ大胆に切りとられた雪景の構成が視覚的ダイナミズムを生むとともにモノクロの繊細な味わいが魅力で、挑戦的な試みです。すばらしきみえ賞の木村正美さん《帰路の途》は、通りを練り歩くお祭り装束の子どもたちと、それを眺める母子との対比によって、この地域の歴史の豊かさを見事に表現しています。for your Dream賞の大田保さん《スポットライト》は、笛を吹く少年の顔に当たった光が美しい作品ですが、影につつまれた部分がしっかり描写されてさらに印象を強くしています。自然の恵み賞にふさわしいと思えたのは、西岡春代さん《97才のおとなりさん》で生きる喜びが溢れていました。審査全体を通して、三重県という地域に根付いた写真文化の豊かさであり、それを支えるアマチュア写真家のエネルギーを感じました。豊かな自然と歴史に恵まれた環境のなかで、これからも写真による発見を続けられることを期待しています。
 
                                      写真部門審査主任 鳥原学
 

書部門審査評

 先の寒暖差が激しかった陽気も一段落し、桜の季節を過ぎた四月下旬、みえ県展の審査に初めて参加させていただきました。書部門は昨年とはほぼ同数の139点の応募(漢字94点、かな18点、調和体3点、)でした。
 審査は富田淳先生、上小倉積山先生とともにジャンル毎に漢字、調和体、かな、篆刻の順に進めていきました。展示スペースの関係で入選率は70%前後、まずそれぞれのジャンルの作品を入賞候補、入選候補、そして選外と鑑別しました。漢字作品はレベルの高い作品が揃っていて入落の線引きがとても困難でした。どのジャンルでもそうですが作品を書くことは自分の表現です。書き手のリズム、呼吸、ただ文字を書く、並べるといったことではなくそこに書き手の生命(いのち)を込めなければなりません。生命(いのち)を感じられた作品を選んだつもりです。かな作品には誤字が見うけられました。ただ手本等を見て書くのではなく、文字に誤りがないかよく確かめてから筆を持って下さい。
 入賞された9点は審査員の合議で決めました。第一席のかな作品は自然で流れ美しく、墨の扱いも素晴らしかったです。入賞作9点を並べてみるとバラエティに富み、審査員皆満足して会場を後にしました。
 展覧会に来場された方々にはそれぞれの作品から書き手の生命(いのち)を感じ取っていただけると嬉しいです。
 
                                      書部門審査主任 高木厚人


 

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