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鈴鹿市伝統産業会館・伊勢型紙資料館 体験レポート(改訂版)
2019.9.13公開 2020.12.21改訂

 今回は、鈴鹿市伝統産業会館伊勢型紙資料館の二館をご紹介いたします。

  県ホームページ鈴鹿市伝統産業会館ご紹介ページ
   県ホームページ伊勢型紙資料館ご紹介ページ



 この鈴鹿市内の両施設は、2019年11月9日(土)/10日(日)に鈴鹿市の白子・寺家地区行われた「第12回 匠の里 伊勢型紙フェスタ」のメイン会場でした。文化振興課の職員がイベント中の両館を訪問しましたので、レポートいたします。
  (鈴鹿市伝統産業会館の指定管理者・伊勢形紙協同組合の公式サイト)


<目次>
鈴鹿市伝統産業会館
伊勢型紙資料館

各館お問い合わせ先


 

鈴鹿市伝統産業会館


 同館は、鈴鹿市が全国に誇る「鈴鹿墨」「伊勢型紙」の伝統工芸を紹介し、優れた技術を後世に伝えるため、昭和58年に建設された施設です。普段はこの二つの内容を展示していますが、毎年恒例の上記フェスタ期間中、通常の展示を大幅に変更し、「伊勢型紙」一色のイベントとなります。

 

 

  ところで、皆様は、「伊勢型紙」とは何に使うものか、ご存じでしょうか。
 
 鈴鹿近隣の学校の場合、社会科見学等でそれを学ぶことも最近では多いようです。また、県内では、比較的「伊勢型紙」を目にする機会が多いかもしれません。「模様が彫り抜かれた和紙」を名刺にしている方や、栞(しおり)にして本を読む方などがおられます。精密で美しいデザインの和紙が持つ手触りや風合いは、それ自体が芸術品ですし、ランプやふすまなどの日用品に貼られた姿は華やかです。最近ではそちらを産業や美術制作として発展させています。

 



 しかし、本来の伊勢型紙の用途は「着物の柄を染めること」にあります。独特の和紙が用いられているのも、それ自体の魅力を鑑賞するためではなく、反物を染める工程に適した材料だからです。伊勢型紙は、反物を染める用具として、昭和58年に通商産業大臣(現・経済産業大臣)から「伝統的工芸品(用具)」の指定を受けました。

 



 もちろん、その用途をご存じの方は多くいらっしゃると思います。しかし、現代では着物文化が生活の中にほとんどありません。社会科見学等の機会がなかった場合、文字情報では理解していても、実感はなかなか伴わないのではないでしょうか。
 
  そんな方に同館の「体験メニュー」がおすすめです。「しおり彫刻体験」や「ハンカチ染体験」などがあります。 (参照:鈴鹿市伝統産業会館・公式サイト
 
 この鈴鹿市で発展したのは「型紙の彫り抜き」の技術で、「染め」に関しては三重に限定される産業ではありません。三重県鈴鹿市で伝承される文化の体験として直接的なのは前者です。ただ、「伊勢型紙が何のために存在するか」を実感できる点では、後者の体験も重要でしょう。
 
 筆者が後者を体験してきました。実際に着物や浴衣を染める方法とは異なりますが、原理は同じです。




1 まず、無地のハンカチを用意します。



2 型紙を選んで、ハンカチに貼り付けます。

 

3 違う色が混ざらないように紙を当てつつ、彫り抜かれた部分を彩色します。

 

4 型紙を外して乾かせば、オリジナルハンカチの完成です!




 初めての体験で非常に楽しかったのですが、とても集中力を要しました。かなり疲れます。職人さんたちのすごさが、少しだけわかったような気がしました。布地に型紙の柄がプリントされることを実感できると、急に伊勢型紙が身近なものに感じられます。
 


  また、会場では職人さんによる伊勢型紙彫りの実演がありました。こちらは常時毎週日曜に行われています。加えて、フェスタのイベントとして「御朱印の手摺り」が行われていました。この期間には職人さんの自宅の仕事場が公開されるイベントもあり、フェスタ中はより手厚く職人さんたちの技術に触れることができます。




 職人さんが、実際に型紙を彫りながら、見学者の質問に答えつつ、手順、技術、歴史、そして苦労話などを解説してくれます。図案にもよりますが、一種類の型紙の完成に一か月近くかかるそうです。洗練された技術は美しく、いつまでも見ていたいという衝動にかられました。中には一日中眺めている方もおられるとか。

 

 
 「伊勢型紙も最近ではいろんな使われ方があり、ありがたいことですが、そもそもは着物を染めるための道具であることは大事だと思っています」と話す職人さんの言葉が印象的でした。

着物を染める工程のために作られた形状があり、それを彫る工夫や技術が、長い年月の間に積み重ねられてきたのですから」と。


 

伊勢型紙資料館


 屈指の型紙問屋であった寺尾斎兵衛家の住宅に、型紙資料などを収蔵・展示するものです。寺尾家住宅は、江戸時代末期の住宅を修復した建物で、型紙関係の商家として、また町家建築の代表例として、市史跡に指定されています。
 
 伝統産業会館がすぐれた産業を後世に伝えていく目的で近年に建築されたのに対し、伊勢型紙資料館は、ゆかりのある文化遺産を利用して、資料館としたものです。

 

 
 また、両施設には次の違いもあります。
 
 伝統産業会館が対象とするのは、主に「産業」としての伊勢型紙です。産業ですから、型紙を使用して何らかの製品にすることまで対象となります。「伝統的工芸品(用具)」としての存在意義に重点が置かれることになります。同会館は、同じく国指定の伝統的工芸品である「鈴鹿墨」とともに、鈴鹿の伝統産業の文化的価値を振興・広報する施設です。
 
 それに対し、伊勢型紙資料館の対象は、「型紙を彫る技術」そのものです。その技術は国から重要無形文化財に指定されています。そして、その技術の担い手が「重要無形文化財保持団体 伊勢型紙技術保存会」です。

 ある技術を国が重要無形文化財に指定したとき、その技術の担い手を個人として「重要無形文化財保持者」に認定するか、技術を持った人の集団を「重要無形文化財保持団体」に認定することになります。個人を認定したときが、いわゆる「人間国宝」です。

 伊勢型紙の技術を伝承するために組織された「伊勢型紙技術保存会」は、いわば「国宝」に相当する技術を有する人の集まりとして、平成5年に「保持団体」に認定されました。同資料館では、その制作と伝承の活動の資料を展示しています。

 


   
 この資料館も「伊勢型紙フェスタ」の会場の一つでした。
 
 伝統産業会館と同じく、職人さんによる型紙彫りの実演と、御朱印の手摺りがありましたが、こちらではフェスタ中のみの特別イベントです。同資料館では通常時は行っていません。逆に、伊勢型紙に関する同資料館の通常展示は、フェスタ中も変わらず行われていました。



 

 
 作品の展示では制作者の表示に肩書が付されています。「重要無形文化財保持団体」における地位です。修行中の人は「研修生」と呼ばれます。そこを脱し「研修者」になるには5年を要します。5年経って、ようやく仕事を受けられる立場になるのです。
 
 ちなみに、型紙彫りには大きく4つの技法があり、図案の特徴によって使い分けますが、その一つの技法について「研修生」を脱するのに5年かかるということです。必然的に、ほとんどの職人さんは、ほぼ一つの技法のみを専門として研鑽することになります。それでも、「保存会」の正式な「会員」となるには、ずっと研鑽を続けて、何十年もかかります。
 
 しかも、その地位を維持するため、毎年、技術を審査されなければならず、新しい作品の提出が義務付けられています。その審査に合格できないと、退会(引退)か、降格かの選択を迫られます。いつまでも研鑽は続きます。職人さんの中には、細かい図案を彫る視力を維持するため、家にテレビを置かず、家族全員がテレビなしの生活をしている方もおられるということでした。
 
 「伊勢型紙」技術保存会の内田会長から、「重要無形文化財の担い手という資格は、それほど厳しいものだ」と教えていただきました。家族を巻き込んで研鑽し、試され続ける姿勢は、毎年契約更改をするプロスポーツ選手などの、トップアスリートの世界を思い起こさせます。

 会長さえも、毎年作品を提出して、審査されています。下の写真は、会長が平成30年度の審査に提出した作品です。

 


 
 この資料館で展示されるのは、そんな審査を通過した渾身の作品たちです。通常は撮影禁止ですが、取材のため特別に撮影させていただきました。しかし、写真では、この美しさや独特の味わいはほとんど伝わりません。皆様も、ぜひ、直に展示をご覧ください。


 

お問い合わせ先


鈴鹿市伝統産業会館
電話 059-386-7511
FAX 059-386-7511
E-mail j-densan@mecha.ne.jp
ホームページ http://densansuzukacity.com

伊勢型紙資料館
電話 059-368-0240
ホームページ http://suzuka-bunka.jp/isekatagami



※ご見学等の際は、十分な感染症対策をお願いいたします。


 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 環境生活部 文化振興課 〒514-8570 
津市広明町13番地
電話番号:059-224-2176 
ファクス番号:059-224-2408 
メールアドレス:bunka@pref.mie.lg.jp

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