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令和02年06月19日

赤目自然歴史博物館・外観

赤目自然歴史博物館　体験レポート
掲載日:2020.06.19

これまでにない博物館を

    　豊かな自然に囲まれた景勝地である赤目四十八滝の入山口に、2020年3月28日、赤目自然歴史博物館がオープンしました。
    　
    　しかし、感染症拡大のため緊急事態宣言が出され、すぐに休館となりました。宣言解除後に再オープンしましたが、県内外から人が集まる観光地では、なかなか大々的な再開とはいきません。滝、忍者、オオサンショウウオなど、多くの人気コンテンツを持つ場所での博物館新設に、マスコミなどを通じて注目を集めていたにもかかわらず、ひっそりとしたスタートとなってしまいました。
    　
    　それでも、運営の指揮を執るプロデューサー・増田成樹（ますだしげき）さんの顔に、暗さは全くありません。
    　
    　　※以下、カギカッコ内の太字は全て増田プロデューサーのお話です。
    　
    　
    「感染拡大前に開館準備を終え、オープンできたのは幸いでした。感染症の影響で止まっている作業は多いですが、『これまでにない博物館』を作るため、より充実させ進めたい仕事が多いので、この静かな時期を有効に使っていきます。」
    　
    　
    　
    　「これまでにない博物館」を目指すという前向きな気持ちが、明るさをもたらしていました。
    　
    　
    　
    　では、ここでいう「これまでにない博物館」とは、どういうものでしょうか。
    　
    　
      
    （左）赤目渓谷の自然
    （右）館内の様子
    　
    　
    　
     

赤目四十八滝に博物館を作る意味とは

    　
    「日本語の四十八には『非常にたくさん』という意味があり、必ずしも正確な数字を意味しません。そのため『四十八滝』は日本にいくつかあります。しかし、それらはあくまで『近くにたくさん滝がある』という意味です。この赤目四十八滝のように、一つの渓流に多くの滝が存在する場所を、私はここ以外に知りません。
    　
    　    滝の多さが示すように、この赤目渓谷では、狭い地域に多彩な地形と環境が存在します。それが動植物の豊かな生態系を生みました。たとえば、この渓谷には苔（コケ）が１００種類も生えていることが確認されています。
    　
    　それはまた、人の暮らしがある場所のすぐ近くに険しい環境が存在することを意味します。そのため、この赤目は、古くから修験者の修行の聖地となりました。そんな場所がお寺の荘園になり、朝廷や武士政権と対立していく歴史を形成しました。そこから忍者のような個性的な文化が生じました。
    　
    　地理、自然、歴史、文化、それらは全てつながっています。この博物館では、展示を通じて、そのつながりを皆さまにわかっていただき、赤目のことを深く理解してもらうことを目標にしています。    」
    　
    　
    　
    　この博物館には、赤目という限られた地域を、非常に多彩な学問領域から横断的、有機的、総合的に紹介している点に特長があります。
    　
    　なお、これだけの充実した展示内容にもかかわらず、こちらの館は入場無料です！
    　
    　
    　
    （左）赤目地方に自生するコケを紹介するパネル
    （右）南北朝時代のこの地域で活躍した「悪党」の存在が、この地域に「忍者」を生んだ歴史を紹介するパネル
    　
    　
    　

窓のある博物館

    　
    「この博物館の建物は元々は旅館でした。宿泊客に渓谷の景観を見せるよう、大きな窓があります。当館では渓谷に生きる野鳥の種類を展示していますが、運がいいと、同じ鳥が飛んでいるところを窓から見られたりします。
    　
    　また、この博物館で赤目渓谷の動植物を学んだら、そこで完結させず、ごく狭い地域内にいる多種多様な生き物を、すぐ見に行っていただきたいです。
    　
    　窓から見える風景や、すぐ外の地域全体が博物館であると考えています。    」
    　
    　
    　
    　窓から外を眺めるだけではありません。博物館で展示物を学んだら、一度外に出て実物を探し、また博物館に戻ってくることもできます。
    　
    　
    　
    展示品と、大きな窓から見える赤目渓谷の風景
    　
    　
    　

最新技術も駆使し、これまでにない展示を

    　
    「表示方法も工夫しています。
    　
    　たとえば、館の入り口にデジタルサイネージを設置し、プロのカメラマンが撮った地域の写真を次々に表示しています。また、デジタル映像で赤目の自然を疑似体験できます。目の前の環境に直接触れる準備として、まずは気軽に体験できるようにしました。
    　
    　展示品を説明するポップなども、わかりやすさや面白さを優先させています。    」
    　
    　　
    　
    　ユーモアセンスにあふれたポップや最新技術を駆使して、赤目の自然や文化に「とっつきやすくすること」を目指しています。
    　
    ※デジタルサイネージ
    従来の看板や紙のポスターに代え、液晶ディスプレイやLEDなどのデジタル映像機器を使い情報を発信するシステムの総称
    　
    　
    　
    赤目渓谷の風景写真が次々と入れ替わり表示される
    　
    　
    　
    「さらに、この館で学んだ内容を館外で活かすことを容易にするために、展示している情報をスマートフォンで見られるようにしています。館の外は山なので電波が入りにくい場所がありますから、館内のWi-Fiで先に情報をダウンロードしてもらい、それを参照しながら動植物などの実物を探せるようにしています。
    　
    　いわば、赤目のことを深く学べるよう、専用の図鑑を各々持っていただこうと。
    　
    　現在ダウンロードできる情報は限られていますが、コンテンツを今後どんどん増やしていきます。」
    　
    　
    　
    　これが、冒頭の「より充実させ進めたい仕事」の一つです。
    　
    　

    Wi-Fi環境の中でQRコードから簡単に情報をダウンロードできる
    　
    　
    　

エコミュージアムとエコツーリズムを目指して

    　
    「この館では、ヨーロッパで提唱されている『エコミュージアム』という考え方を実践していきたいと思っています。」
    　
    　エコミュージアムは、「ある一定の文化圏を構成する地域の人びとの生活と、その自然、文化および社会環境の発展過程を史的に研究し、それらの遺産を現地において保存、育成、展示することによって、当該地域社会の発展に寄与することを目的とする野外博物館」と定義づけられています。
    （文部科学省「エコミュージアムについて」より https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/shiryo/07082703/002.htm）
    　
    　地域全体を展示物と考えるこの博物館は、まさにこの考えに沿ったものです。
    　
    　
    　
    「さらに、『エコツーリズム』という考え方も実践していきます。
    　
    　博物館に、ツーリズム、つまり観光の考え方を取り入れます。そこで、博物館に『観光案内所』の機能を持たせようと、観光庁の『JNTO認定外国人観光案内所』の認定を受けました。国内旅行者と外国人旅行者両方に対応できるよう、観光の情報の収集発信の充実を目指しています。
    　
    　加えて、観光途中の『休憩所』としても活用していただきたいです。」
    　
    　エコツーリズムは、「自然・歴史・文化など地域固有の資源を生かした観光を成立させながら、観光によってそれらの資源が損なわれることがないよう、適切な管理に基づく保護・保全をはかること」などと定義されています。
    （日本エコツーリズム協会「エコツーリズムとは」より　https://ecotourism.gr.jp/definition/）
    　
    　生きた自然などの地域資源の豊かさを展示しながら、それを観光資源にするという発想です。一般の観光地で観光名所を案内するように、「珍しい植物」や「史跡」などの、博物館が提供する情報で観光してもらうのです。そのために自然や文化の保護にも努めます。
    　
    　また、この博物館の前庭には、いくつもテーブルと椅子が置かれ、自由に利用してもらえるようにしてあります。休憩所として、道沿いのお店で買った名物のお饅頭などを食べることができます。さらに、今後、館内にカフェを作る予定です。
    　
    　「博物館」「休憩所」「観光案内所」という複数の機能をこの館に持たせ、赤目の観光再開発を目指していきます。
    　
    　
    　
    館の入り口横に設けられた休憩所
    　
    　
    　
    「『エコミュージアム』と『エコツーリズム』を実践していくため、展示の仕方等をどんどん充実させていきたいです。
    　
    　現在、博物館の２階を特別展示のスペースとし、１階とは違う視点で、赤目の文化や歴史などをより深く学べるテーマで展示しています。とくに、エンターテインメントとして扱われることが多い忍者という文化について、歴史に基づいてしっかりとお伝えしていきたいです。
    　
    　また、博物館オープン前から行っていた、お子さん対象の『忍者修行体験』もいずれ再開します。この地域の資源の価値を、とくに若い人たちに知ってもらいたいと思っています。
    　
    　この元旅館の建物は、地上２階と地下２階の４フロアありますので、さらに展示場所を広げ、内容を充実させていきます。
    　
    　まだまだやることがたくさんあります！    」
    　
    　
    　
    （左）忍者修行体験の衣装
    （右）鳴子（なるこ）の罠を避けて進む修行
    　
    　
    　
    　この事態に「忍び」ながら、新しい考え方に基づいた新しい形の博物館を目指して、今も進化し続けている「赤目自然歴史博物館」の、これからの姿には要注目です！
    　
    　
    　

現在の特別展示

　2020年6月現在、同館２階では、以下の特別展示を行っています。
　
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　オープニング記念企画展示『赤目に生きた忍者たち』
　
　　時間 9:00～17:00　※入場無料
　　　
　　　※期間を延長して開催しています。
           詳しくは公式ＨＰにてご確認をお願いします。　
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　楽しく忍者文化について学べる展示です。
　
　
　
１階とはガラッと雰囲気を変えた会場で忍者にまつわる展示を（2020年6月現在）
　
　
　

お問い合わせ先


赤目自然歴史博物館

〒518-0469 名張市赤目町長坂671-1
0595-41-1180
公式URL：http://www.akame48taki.com/

営業時間 9:00～17:00
入場無料


【公共交通機関でのアクセス】
近鉄赤目口駅より三交バス約10分「赤目滝」下車

【お車でのアクセス】
名阪国道針インターより約40分／上野インターより約45分
（周囲に有料駐車場あり）

本ページに関する問い合わせ先

三重県　環境生活部　文化振興課 〒514-8570　
津市広明町13番地
電話番号：059-224-2176　
ファクス番号：059-224-2408　
メールアドレス：bunka@pref.mie.lg.jp

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