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岩戸の塩工房

まちかど博物館体験レポートvol.11 ~岩戸の塩工房~
掲載日:2022.01.20


目次
・はじめに
・塩作り工程
・塩作りで心掛けていること
・塩作りにかける思い
・見学にあたって
・館の情報


 

はじめに

 
 今回は、伊勢まちかど博物館「岩戸の塩工房」をご紹介します。
 
 同館は、しばらくの間、移転のため休館していました。令和3年の9月から移転先で本格的に再稼働しましたので、改めて訪問することになりました。
 
 移転後の場所は、以前よりもさらに海に近い場所となりました。海水から塩を作る同工房は、大量の海水を汲み上げるため、これまでより材料の調達が楽になったということです。風光明媚な神前(こうざき)海岸がすぐ目の前にあります。名所の夫婦岩(めおといわ)もすぐ近くです。観光やレジャーの一環として見学するのに、より便利になりました。実際、私が見学している間にも何人かの方が訪れ、お話を伺うと、付近の旅館に泊まりに来た津在住の方でした。観光スポットになるまちかど博物館です。

 

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塩作り工程


 工房に入ると、燃えさかる薪の火で海水を煮詰める「釜」に出迎えられます。3つの釜が接続された形をしていて、陶芸で使う登り窯と同じ仕組みになっています。火が煙になって煙突から出ていくまでに、火力を有効に利用するための構造です。
 
 マメに火力を確認する姿も、陶芸に近いものを感じます。火力を落とさないようにすること、気温や湿度に応じて適切な火力を探すことなどが大事だということでした。

 


 最初の釜は、ほぼ海水のままのお湯です。まずは水分を蒸発させ、塩の濃度を上げる場所になります。沸騰して水の量が減ると、海水を追加して、さらに煮詰めます。それを繰り返し、ある程度濃度が高まると次の釜に移します。

 


 次の釜は、塩の結晶を「塩水」の中で作る過程になります。水の色がかなり白くなっています。濾(こ)してみると、食卓塩に似た白色の結晶が見られます。

 


 最後の釜で、水分がかなり飛んで塩に近くなったものを釜に焼き付け、「焼き塩」として仕上げていきます。
 
 館長さんによると、「焼き塩」にとくに定義はなく、単に焦げ目をつけただけの物でもそう呼びうるのですが、伝統的な塩作りで「焼き塩」と呼ぶのは、海水の持っているミネラル分を塩に焼き付けて、栄養価や滋養を高めたものに限るということでした。このマグネシウムなどのミネラルが、いわゆるニガリです。一般的な食卓塩では製造過程で抜かれますが、ニガリがそのまま残るこちらの塩には、独特の旨味やまろやかさがあります。

 


 ほどよく水分が抜けてパラパラになると、釜から出して、寝かせる作業に入ります。ダマをほぐして、粉状の塩に近づけていきます。

 

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塩作りで心掛けていること


 この工房で作る塩に、海水以外の材料は使われません。海水から水分を飛ばすことが作業のほぼ全てで、仕組みとしてはとても単純です。しかし、すさまじい手間と時間がかかります。
 
 1tの海水からとれる塩は20㎏ほどだそうです。火入れだけで12時間はかかります。その間、火の入りが均等でなくなったり、焦げたりしないよう、常にかき回し、火の番をして、手をかけ続けます。長年の経験と勘で塩の様子を見守ります。
 
 火入れにガスや灯油を使えば楽になりますが、同工房では薪にこだわっています。燃やして匂いが出るものを使いたくないからです。建築廃材などを使ってコストを下げていますが、あくまでニスなどが塗っていないものに限ります。工房の外で、「材木」を「薪」に変える作業がされていました。
 
 自然な海水から、自然な薪を使って、自然な塩を作ります。

 

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塩作りにかける思い


 塩を一般の企業などが販売できるようになったのは平成9年のことです。塩の安定供給や物価安定といった国策から、明治時代以降、塩は専売制だったからです。その後、製造方法も科学的な精製に限られました。そのため、日本では長らく自然な塩を作って売ることができませんでした。江戸時代までこの地方で盛んだった「塩田」は、久しく姿を消していました。
 
 この地で再び塩を作りはじめたのは、館長のお母様です。家族の一人が体調を崩し、塩分の摂取を制限されたことがきっかけでした。館長さんは「美味しいものは、体が欲しているから美味しく感じるのだと思います。美味しいものは体にいいのだと考えています」とおっしゃります。その上で、「私たちは海からいただいているだけです。海の水に溶けている成分を、人間の手で作ろうと思っても作れるものではありません」ともおっしゃります。それが最も美味しくて体にいいとの思いから、「海の滋養をすべてもらう方法」にこだわり、昔ながらの塩作りを続けています。
 
 
 ちなみに、こちらのお塩は、お料理に使うだけではなく、「何もつけず」そのままで日本酒のツマミにするのもお勧めです。それだけで十分美味しいです。個人的には、この自然な風味とまろやかさを味わうには、それが一番いい方法だと思います。

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見学にあたって

 
 館内には塩の即売所もあり、会社が営業している時間であればどなたでも訪れることができます。ただし、火入れをしていない時間もあるので、見学の際には必ず事前にお電話で予定をご確認ください。



 
 ずっとお湯が沸いていますので、夏は大変暑くなります。50℃になるときもあるそうです。それはそれで非日常的な体験ではありますが、やはり見学に適しているのは冬でしょう。当課職員が訪れた12月には、薪の火の柔らかい温かさが心地よかったです。
 
 館長さんは、「何のお構いもせず、ただ生業を見ていただくだけです」とおっしゃりながらも、仕事中にもかかわらず、どんどん質問を受け付けてくれます。ここに書き切れないお話もたくさんお聞きできました。しっかり塩作りに取り組んでいる館長さんの「生業」のお話には、塩と同じくらい滋養が含まれていると感じました。

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館の情報


岩戸の塩工房(いわとのしおこうぼう)
百木良太(ももきりょうた)館長

伊勢市二見町松下1366-9
電話0596-65-7980
FAX 0596-65-7981

JR二見浦駅 徒歩30分 車5分
駐車場10台
開館日 平日9:00~17:00
要予約
(県HPではこちらのページでご紹介しています)




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本ページに関する問い合わせ先

三重県 環境生活部 文化振興課 〒514-8570 
津市広明町13番地
電話番号:059-224-2176 
ファクス番号:059-224-2408 
メールアドレス:bunka@pref.mie.lg.jp

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