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令和元年09月12日

三重の統計 - みえDataBox

県民経済計算の概念と用語解説(08SNA)

<目次>

県民経済計算のねらい

県民経済計算は、国における国民経済計算と共通する基本的な考え方や仕組みに基づき構成されており、都道府県という行政区域により地域を区分し、社会会計方式に基づき県という単位で一定期間(会計年度)の経済活動の成果を計測するものである。

県民経済計算は、県民経済の循環と構造を、生産、分配、支出の3面にわたり計量把握することにより県民経済の実態を包括的に明らかにし、総合的な県経済指標として行財政・経済政策に資することを主な目的とする。あわせて国民経済における県民経済の位置を明らかにするとともに、各県相互間の比較を可能とすることによって、国民経済の地域的分析および地域の諸施策に利用しようとするものである。


県内主義と県民主義

県民経済計算の把握には、県内主義(属地主義)と県民主義(属人主義)がある。

県内主義(属地主義)は、県という行政区域内で生み出された付加価値をその生産に従事した人の居住地にかかわらず把握するものである。一方、県民主義(属人主義)は県内居住者が地域にかかわらず生み出した所得を把握するものである。

この県民経済計算推計では、総生産の生産側及び支出側は県内主義(属地主義)で、県民所得(分配)は県民主義(属人主義)で把握している。また、居住者とは個人のみでなく、企業、政府機関など経済主体全般に適用される概念である。


経済成長率

経済活動規模の拡大の程度を数値で表したもので、県内総生産の前年度に対する増減率をいう。その時点での市場価格で集計した名目値による経済成長率と、物価水準の変動分を除去した実質値による経済成長率とが算出される。


市場価格表示と要素費用表示

県内純生産(内ベース)および県民所得(民ベース)の表示には、市場価格表示と要素費用表示とがある。市場価格表示とは、市場で取り引きされる価格で評価する方法をいう。また要素費用表示とは、生産要素(労働、土地、資本)に対して生産主体が支払った費用(賃金、地代、利子・利潤など)で評価する方法をいう。さらに市場価格は、生産者から出荷される時点で評価する生産者価格と、これに運輸、商業のマージンを加えた購入者価格に区分される。

これら二つの表示方法によって推計された県内純生産および県民所得は、式であらわすと次のようになる。

市場価格表示の県内純生産 要素費用表示の県内純生産 生産・輸入品に課される税 補助金
市場価格表示の県民所得 要素費用表示の県民所得 生産・輸入品に課される税 補助金

総(グロス)と純(ネット)

純生産物を評価するに当たって固定資本減耗(いわゆる減価償却費)を含むものを「総(グロス)」概念という。これに対して固定資本減耗を控除したものを「純(ネット)」概念といい、式であらわすと次のようになる。

市場価格表示の県内総生産 市場価格表示の県内純生産 固定資本減耗

経済活動別分類

制度部門別分類が所得の受取や処分、資金の調達や資産の運用についての意思決定を行う主体の分類であるのに対し、経済活動別分類は、財貨・サービスの生産についての意思決定を行う主体の分類である。経済活動別分類は、生産技術の同質性に着目した分類となっており、事業所(実際の作業を行う工場や事務所など)が統計の基本単位となっている。

経済活動別分類は大きくは、「農林水産業」、「鉱業」、「製造業」、「電気・ガス・水道・廃棄物処理業」、「建設業」、「卸売・小売業」、「運輸・郵便業」、「宿泊・飲食サービス業」、「情報通信業」、「金融・保険業」、「不動産業」、「専門・科学技術、業務支援サービス業」、「公務」、「教育」、「保健衛生・社会事業」、「その他のサービス」からなり、大分類においては国際標準産業分類(ISIC rev.4)と可能な限り整合的なものとなっている。


制度部門別分類

所得の受払いと消費、ならびに資産の調達と運用を行う主体の分類であり、経済活動別分類の単位が事業所単位であるのに対して、制度部門別分類の単位は「それ自体の権利により資産を所有し、また負債を負い、他の主体と経済取引に携わることができる経済主体」とされている。したがって企業の場合、法人が単位となる。

具体的には、a非金融法人企業、b金融機関、c一般政府、d家計(個人企業を含む)、e対家計民間非営利団体の5つに分類される。


a 非金融法人企業

非金融法人企業は、主に民間の事業法人がそのほとんどを占めるが、このほか国の企業特別会計、公団、公営企業、一部の特殊法人など、公的機関であっても民間の産業と類似の活動を行っている機関も含まれる。ただし、金融機関は独立した制度部門とされるため、ここには含めない。


b 金融機関

金融機関には、銀行、保険、信託、証券会社など民間の金融機関のほか、公庫等の政府系金融機関など、公的機関であっても民間の金融機関と類似の活動を行っている機関も含まれる。


c 一般政府

公的機関のうち、他に分類されないものがすべて含まれる。したがって、政府の省庁は含まれるが、非金融法人企業に分類される企業特別会計などは含まれない。

なお、中央政府(国)の出先機関及び中央政府によって設定、管理されている社会保障基金(以下「全国社会保障基金」という)の事務所等は、事業所としてはその存在地域に立地するが、制度単位としての中央政府及び全国社会保障基金は、いずれの地域にも属さない擬制的な地域(以下「準地域」という)に所在するものとする。地方政府及び地方政府によって設定、管理されている社会保障基金(以下「地方社会保障基金」という)は、その地域に存在するものとする。

また、令和元年度の県民経済計算から導入された平成27年基準改定による中央政府等の扱い変更により、地域区分の名称を次の様に使い分ける。地理的な区分は、「県内・県外」とし、制度単位による概念的な区分は「域内・域外」とする。ここで、「域内」とは自県の制度部門が所在するとする概念上の地域であり、「域外」とは他県の制度部門及び中央政府等が所在するとする概念上の地域である。「域外」のうち地理的には存在しない地域(準地域)に中央政府等を位置付ける。

今回の基準改定では、制度部門名として「中央政府等」、「地方政府等」の新たな名称を使用する。「中央政府等」は、中央政府と全国社会保障基金であり、「地方政府等」は地方政府と地方社会保障基金である。


d 家計

世帯としての通常の意味での家計のほか、個人企業も含まれている。したがって、ここでいう家計とは、消費主体としての側面と事業主体としての側面も併せ持っていることになる。

なお、個人企業の中には、自営農家等のほか、住宅の自己所有者(持ち家)分も含まれ、不動産業(住宅賃貸業)を営むものとして記録する。


e 対家計民間非営利団体

対家計民間非営利団体は、政府によって支配、資金供給されているものを除き、家計に対して非市場の財貨・サービスを提供する全ての居住者である非営利団体が含まれる。具体的には、私立学校、政治団体、労働組合、宗教団体等が含まれる。


経済活動別県内総生産

経済活動別県内総生産とは、各年度内に県内各経済部門の生産活動によって新たに付加された価値(成果)の生産者価格による評価額を経済活動別に示したものである。県内概念によるものであり、県内で生産された生産物であれば県外居住者に対して分配されるものも含まれる。


a 県内総生産(市場価格表示)

県内の生産活動によって新たに生み出された付加価値の合計額であり、産出額から中間投入額(原材料、燃料等の物的経費およびサービス経費など)を控除したものにあたる。

また市場価格表示には生産者価格と購入者価格とがあるが、ここでは生産者価格を使用している。生産者価格とは、商品を生産した事業所が販売した時点での市場価格である。


b 固定資本減耗

固定資本減耗は、建物、構築物、機械設備、知的財産生産物等からなる固定資産について、これを所有する生産者の生産活動の中で、物的劣化、陳腐化、通常の破損・損傷、予見される滅失、通常生じる程度の事故による損害等から生じる減耗分の評価額を指す。

固定資本減耗は、企業会計における減価償却費が簿価で記録されるのとは異なり、全て時価(再調達価格)で評価される。


c 生産・輸入品に課される税

生産・輸入品に課される税は、原則として、①財貨・サービスの生産、販売、購入又は使用に関して生産者に課される租税で、②税法上損金算入が認められ、③その負担が最終購入者へ転嫁されるものを指す。これは、生産者にとっては生産費用の一部を構成するものとみなされるという点で、「所得・富等に課される経常税」とは区別される。

例としては、関税、消費税、酒税等の内国消費税、不動産取得税、印紙税等の取引税、固定資産税、企業の支払う自動車税(種別割、環境性能割)などが挙げられる。特殊な例としては、家計に対する固定資産税も、持ち家家計は住宅賃貸業を営んでおり、帰属家賃の一部を構成するという観点から「生産・輸入品に課される税」として扱われる。


d 補助金

補助金とは、一般的に、①一般政府から市場生産者に対して交付され、②市場生産者の経常費用を賄うために交付されるものであり、③財貨・サービスの市場価格を低下させると考えられるものであること、という3つの条件を満たす経常交付金である。制度部門別所得支出勘定では、一般政府の受取(控除項目)としてのみ記録する。市場生産者に対する支払であっても、投資を支援するための支払や運転資産の損失補填のための支払については補助金には含まれず、資本移転に含まれる。また、一般政府内や対家計民間非営利団体に対する支払も、上記①を満たさないことから補助金には記録しない。

法令上又は予算上、常に補助金と呼ばれるとは限らず、補給金、負担金、奨励金、交付金、助成金、給付金等の名称のものもある。


e 県内雇用者報酬

生産面における雇用者報酬は、県内ベースによるもので、県内での生産活動に労働を提供した雇用者への分配額をいう。県民所得(分配面)における雇用者報酬(県民ベース)とは、県外からの所得(純)のうち雇用者の報酬分だけ差異が生じる。


f 営業余剰・混合所得

営業余剰・混合所得 県内要素所得(純生産) 雇用者報酬

営業余剰・混合所得は、生産活動から発生した付加価値のうち、資本を提供した企業部門の貢献分を指すもので、制度部門としては、非金融法人企業、金融機関、家計(個人企業を含む)の三つの部門にのみ発生する。

一般政府と対家計民間非営利団体は非市場生産者であり、定義上、財貨・サービスの販売収入では、生産および他の活動にかかる費用をカバーできない生産活動であること、利潤を得ても制度上それを配分できないことから、営業余剰・混合所得は存在しないものとする。政府サービス等の産出額を生産費用の合計額として計測するときには、営業余剰・混合所得を考慮しない。

営業余剰・混合所得は、大きく営業余剰と混合所得に分けられる。営業余剰は、生産活動への貢献分として、法人企業部門(非金融法人企業と金融機関)の取り分を含むとともに、家計部門のうち持ち家分の取り分も含む。一方、「混合所得」は、家計部門のうち持ち家を除く個人企業の取り分であり、その中に事業主等の労働報酬的要素を含むことから、「営業余剰」と区別して「混合所得」として記録する。


g 総資本形成にかかる消費税

財貨・サービスの出荷額、産出額は、消費税等の生産に課される税を含む生産者価格で記録し、これをベースに推計した総資本形成には、消費税が含まれているという意味で「グロス」ベースで記録する。一方で、税法上、課税業者の資本形成に係る消費税分は、他の仕入れに係る消費税とともに、当該事業者が消費税を納入する時点で納税額から控除できる制度(仕入税額控除という)が採られている。総資本形成(総固定資本形成、在庫変動) については、この控除分を「総資本形成に係る消費税」として除いた金額を記録する。グロスベースの総資本形成から、仕入税額控除分を除く処理は「修正グロス方式」といわれる。生産側から県内総生産を計測する際も、この総資本形成に係る消費税分について控除する必要があるが、経済活動別にこの控除額を分割することが困難であるため、一括して控除処理を行っている。


h FISIM(間接的に計測される金融仲介サービス)

68SNAでは、金融部門の産出額は、帰属利子という形で推計記録がされていたが、93SNAから、間接的に計測される金融仲介サービス(FISIM:financial intermediation services indirectly measured)を通常の財貨・サービスの一つとして位置づけている。

金融仲介機関の中には、借り手と貸し手に対して異なる利子率を課したり支払ったりすることにより、明示的には料金を課さずにサービスを提供することができるものがある(このような金融仲介機関に資金を貸す人々(預金者)には他の場合よりも低い利子率を支払い、資金を借りる人々にはより高い利子率を課する。)。こうした金融仲介機関による明示的には料金を課さないサービスの価額を、間接的な測定方法を用いて推計したものが、「FISIM」である。預金取扱機関で産出されたFISIMは各経済主体で消費される。


県民所得(分配)

県内の居住者である県民が、生産活動に対してその所有する土地、労働、資本といった生産要素を提供することによって、県内外から受け取る(分配される)現金・現物など所得の総額を計量したものである。なお、ここでいう県民(県内の居住者)とは、個人ばかりでなく企業なども含まれている。


a 県民雇用者報酬

県内に常時居住地を有する雇用者が労働の報酬として、雇い主から受け取る一切の現金および現物給与をいう。

この雇用者報酬は税金および雇用者の社会保険料負担の控除前で計上される。内訳として、「賃金・俸給」と「雇主の社会負担」に分かれ、後者はさらに「雇主の現実社会負担」と「雇主の帰属社会負担」に分かれる。

(a)賃金・俸給

賃金・俸給は現金および現物給与、役員給与手当、議員歳費等および委員報酬、給与住宅差額家賃、副業所得を加えたものである。

なお給与住宅差額家賃の評価については、原価(公営住宅家賃を実質コストとみる)ではなく、時価(市中平均家賃)を採用している。

また副業所得は、雇用者が本業以外の勤め先をもっている場合、その従たる勤務先から得る所得については、雇用者数を把握する際に、副業者数を含めて推計する方法をとる(二重雇用として、雇用者数を事業所ベースによりとらえている)。

(b)雇主の社会負担

社会負担は、社会保障制度に対する負担であり、雇主の現実社会負担と雇主の帰属社会負担に分けられる。

雇主の現実社会負担は、医療保障、年金給付、労働災害補償、失業保険、児童手当給付などの社会保障基金および金融機関に格付けされる年金基金に対する雇主負担額をいう。

雇主の帰属社会負担は、確定給付型の退職後所得保障制度および退職一時金および社会保障基金によらない業務災害補償などの雇主負担額をいう。

b 財産所得

ある経済主体が、他の経済主体が所有する金融資産や土地などの資産を使用する場合、それを源泉とする所得の移転をいう。

具体的には利子および配当、地代(土地の純賃貸料)などが該当するが、構築物(住宅を含む)、設備、機械など再生産可能な有形固定資産にかかる賃貸料は、サービスの販売とみなされて企業所得に含まれ、財産所得には含まれない。

また、2015年(平成27年)基準改定により、2011年(平成23年)基準で分配系列の財産所得の賃貸料に含まれていた「著作権使用料」は、著作権等が生産資産となったため、賃貸料として分配系列では記録せず、生産系列において、「著作権等サービス」というサービスとして記録される。

なお、財産所得(非企業部門)とは、地方政府等、家計、対家計民間非営利団体の制度部門の財産所得を指し、非金融法人企業、金融機関といった企業部門の財産所得は含まない。

・利子

「利子」は、特定の種類の金融資産-例えば、預金、債務証券、貸出等-の所有者である制度単位が、それを他の制度単位の自由な使用に委ねることにより、他の制度単位から受け取る所得を指す。

受取は、金融資産の所有者が受け取る所得であり、一般預貯金利子、有価証券利子、信託利子などからなる。また、支払は、家計などが消費活動の資金などの一部として金融機関などから借入した資金に対して支払う利子の合計をいう。

・配当

個人配当金(個人が法人から受ける利益または利息の配当、剰余金の分配など)および役員賞与からなる。

・保険契約者に帰属する投資所得

保険契約者に帰属する投資所得は、保険契約者の資産である保険準備金の運用から生じる所得であり、生命保険・年金基金・非生命保険の保険帰属収益と、保険契約者配当からなる。この保険帰属収益は、実際には保険企業に留保されるが、いったん保険会社から家計に支払われ、同額が追加保険料として保険会社に支払われるものとして扱われる。

・賃貸料

土地の資産運用に関連して受け取る財産所得が該当し、住宅やその他の建物、機械設備などの賃貸料はサービスの販売(営業余剰を構成)として財産所得には含まれない。

対家計民間非営利団体

対家計民間非営利団体の財産所得(利子、法人企業の分配所得、保険契約者に帰属する財産所得、賃貸料)を計上する。


c 企業所得

企業所得は、営業余剰・混合所得に企業分の財産所得(受取-支払)の差額を加えたもので、(a)民間法人企業所得、(b)公的企業所得、(c)個人企業所得の3部門別に計上される。

ここで、b財産所得とc企業所得に含まれる企業分の財産所得は、概念上同じものであるが、分類上は各々に含めて計算している。

(a)民間法人企業所得

県内民間法人事業所が得た所得であり、非金融法人企業と金融機関に分けて計上される。

(b)公的企業所得

法人格を持つ公的法人企業および企業特別会計(非法人の政府事業体)に属する県内の国、県、市町、公団・公社などの事業所(病院、下水道は除く)の純損益により把握する。

(c)個人企業所得

個人が企業の主体となって、家族や雇用者の労働力を使って運営して得た所得(兼業所得を含む)、内職所得および住宅自己所有による帰属所得からなる。農林水産業とその他の産業および住宅賃貸業のうち持ち家による営業余剰・混合所得の3つに分類して推計される。

・本業および兼業所得

営業余剰・混合所得から財産所得(支払)を控除して求める。個人企業については、個人企業に発生することが明らかなものはcの企業所得に含め、個人企業と非個人企業との分割ができない受取利子などについては、bの非企業部門の財産所得として記録する

・持ち家

「家計」に含まれる持ち家の営業余剰から持ち家の支払利子と支払賃貸料を控除して記録される。実際には家賃の支払を伴わない自己所有住宅(持ち家)についても、通常の借家や借間と同様のサービスが生産・消費されるものと仮定して、それを市場価値で評価した帰属計算上の家賃をいう。

生産では「不動産業」の産出額、分配では「個人企業」の営業余剰、支出では「民間最終消費支出」に含まれる。


d 県民可処分所得

県民可処分所得は、「県民雇用者報酬」、「財産所得(非企業部門)」、「企業所得」、地方政府の「生産・輸入品に課される税(控除)補助金」の合計(県民所得(第1次所得バランス))に、「域外からの経常移転の受取(純)」を加えたものに等しい。すなわち、生産活動によって生み出された県民所得に県外からの移転分を加えたもので、県民全体の処分可能な所得を表している。


県内総生産(支出側)

県内の生産活動によって生み出された所得を支出面(消費および投資)から捉えたものであり、市場価格ベースで評価される。また、市場価格表示の県内総生産(支出側)に県外からの所得(純)を加えた額が県民総所得(GDI)である。


a 民間最終消費支出

県内に居住する個人(家計)が行う財貨・サービスの取得に対する支出および対家計民間非営利団体の自己消費をいう。

(a)家計最終消費支出

家計が行う消費活動のための支出をいう。農家における農産物の自家消費、現物給与なども含まれるが、仕送り金、贈与金、労働組合費などは移転的なものであり、消費支出とはみなされない。

(b)対家計民間非営利団体消費支出

対家計民間非営利団体の産出額から家計に対する財貨・サービスの販売収入で賄われる部分や総固定資本形成に充てられる部分を除いた価額からなる。


b 地方政府等最終消費支出

県内の地方政府等(県、市町村、地方社会保障基金)に属する事業所の財貨・サービスに対する経常的支出であり、人件費、物件費などからなる。具体的には、政府サービス生産者の生産額(=中間消費+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)から、他部門に販売した額(財貨・サービスの販売、例えば、公立学校の授業料)を差し引いた額に、現物社会給付などを加えた額を自ら消費したものとして計上する。


c 最終消費支出と現実最終消費

政府や家計などの消費には、各制度部門が実際に負担した額と各制度部門が享受した便益の額という2つの消費概念の考え方がある。前者を最終消費支出、後者を現実最終消費と表章している。

また、政府最終消費支出は、個別消費支出と集合消費支出に分けられる。個別消費支出は、医療保険および介護保険によるもののうち社会保障基金からの給付分(現物社会給付)と、教育や保健衛生など政府の個別的サービス活動に関する支出を合計したものである。一方、集合消費支出(=政府現実最終消費)は、外交、防衛や公共の秩序安全などの社会全体に対する公共サービス活動に関する支出をいう。

2つの消費概念の関係を式であらわすと次のようになる。

政府最終消費支出 <個別消費支出> <集合消費支出>
家計現実最終消費 民間最終消費支出 <個別消費支出>
家計現実最終消費 (家計最終消費支出 対家計民間非営利団体最終消費支出) <個別消費支出>
政府現実最終消費 <集合消費支出>
政府現実最終消費 政府最終消費支出 <個別消費支出>

d 県内総資本形成

民間企業および公的企業(公的法人企業および企業特別会計)、一般政府、対家計民間非営利団体、家計(個人企業)が県内において行う投資活動のための支出をいい、総固定資本形成と在庫変動に大別される。

(a)総固定資本形成

建築物(住宅含む)、構築物、機械設備などへの支出をいう。土地については、土地造成などによる価値の増加分のみ計上され、土地の購入費や地価の上昇分は計上されない。

また知的財産生産物(研究・開発、コンピュータ・ソフトウェア等)などについても総固定資本形成に含めることとしている。

(b)在庫変動

民間企業、公的企業および一般政府が所有する製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産の物量的増減を市場価格で評価したものをいう。


e 財貨・サービスの移出入

居住者と非居住者との間の財貨・サービスの取引である。これには、居住者の域外消費、非居住者の域内消費を含む。


f 統計上の不突合

県内総生産の生産系列と支出系列は、概念上総額で一致すべきものであるが、推計上の方法や基礎資料が異なっているため、推計値にくいちがいが生じることがある。このくいちがいを統計上の不突合として表章している。

県民経済計算では、生産側に計上する国民経済計算とは異なり支出側に計上する。


g 域外からの所得(純)

県民所得から県内純生産(要素費用表示)を差し引いて求められる。域外との所得の受け払いには雇用者報酬、財産所得などが含められる。


h デフレーター

デフレーターとは、名目値を基準年の価格で評価(実質化)するため、基準年からの物価変動分を除去するために使用される係数(物価調整指数)をいう。

従来の県民経済計算では、支出側を実質化し、実質総支出を推計して表章していた。

この支出系列の実質化においては、支出系列の構成項目ごとにデフレート(物価指数により基準年の評価額に換算)しているが、総額においてのデフレーターは、各項目ごとに実質化した後、これらの合計額(実質)と名目値の総額の比率で逆算されている。

このような方法で事後的に求められるデフレーターをインプリシット・デフレーターという。

なお、平成16年度から実質化の方法に連鎖方式を導入して生産側および支出側での実質化を行い、表章を行っている。(後述)


勘定体系

県民経済計算では、生産、分配、支出の3面それぞれについて主要系列表を作成しており、各主要系列表は1面だけを表すものである。これに対して勘定は、貸方・借方として2面を結びつけてバランス関係を示すものである。5つの制度部門ごとの制度部門別勘定と、制度部門をトータルして全体をまとめあげた統合勘定とがある。

県民経済計算では、①県内総生産と総支出勘定、②県民可処分所得と使用勘定、③資本調達勘定(実物取引)、④域外勘定(経常取引)の4種類の統合勘定と、①制度部門別所得支出勘定、②制度部門別資本調達勘定(実物取引)の2種類の制度部門別勘定を、基本勘定として作成している。


a 統合勘定

(a)県内総生産(生産側と支出側)

県内における経済活動を総括する県内総生産勘定に当たり、複式簿記の手法に基づいて示したものであり、最も総括的な勘定である。勘定の貸方(支出側)は、県内生産物に対する支出の総額を市場価格によって評価しており、一方、借方(生産側)は、経済活動の付加価値総額を市場価格によって評価している。

(b)県民可処分所得と使用勘定

県民可処分所得は、県内で発生する第1次所得に県外からの雇用者報酬の受取(純)及び域外からの財産所得の受取(純)を加え、さらに域外からの経常移転(純)などを加えたものである。また、その「使用」として、民間と地方政府等の最終消費支出および県全体での貯蓄が記録されている。この勘定は制度部門別所得支出勘定を統合することにより得られる。

(c)資本調達勘定(実物取引)

資本形成とその資本調達のバランスを示したものである。実物取引と金融取引に区分されるが、県民経済計算では実物取引を記録の対象としている。この勘定は制度部門別資本調達勘定を統合することにより得られる。

(d)域外勘定(経常取引)

県全体として捉えた域外との取引が計上される。この勘定は、域外の視点から記録されているため、県内から見るのとは受取と支払が逆になっている。経常取引と資本取引に区分されるが、県民経済計算の県外勘定では経常取引を記録の対象としている。


b 制度部門別所得支出勘定

この勘定は、非金融法人企業、金融機関、一般政府(地方政府等)、家計(個人企業を含む)、対家計民間非営利団体の5つの制度部門別に作成され、生産活動により発生した付加価値がどの部門に配分され、さらにそれらの所得がどのように消費されたかを記録している。

この勘定は、バランス項目としての貯蓄を通じて各制度部門別資本調達勘定に接合している。


c 制度部門別資本調達勘定(実物取引)

この勘定は、非金融法人企業、金融機関、一般政府(地方政府等)、家計(個人企業を含む)、対家計民間非営利団体の5つの制度部門別に作成され、資本蓄積の形態とそのための資本調達の源泉を示すものである。

資本調達勘定には実物取引表と金融取引表とがあるが、実物取引表のみ推計している。


その他


a 08SNA

SNAとは、「System of National Accounts」の略称であり、「国民経済計算」または「国民経済計算体系」と訳される。このSNAは、一国の経済について体系的に記録する国際的な基準である。

08SNAとは、2009年に国連が加盟各国にその導入を勧告した国民経済計算の体系の略称であり、日本の国民経済計算では平成28年11月からこの08SNAを使用した推計方式に移行している。

県民経済計算では、すべての都道府県が平成29年度からこの08SNAを使用した推計方式で算出している。


b 移転取引

反対給付を伴わない一方的な資金の受渡し(一方的取引)を移転という。移転取引は、所得支出勘定に記録される経常移転と、資本調達勘定に記録される資本移転に別れる。経常移転は、支払側の資産や貯蓄ではなく経常的な収入から充てられ、また受取側の総資本形成、土地購入又は金融資産形成の源泉とならない。一方、資本移転は、支払側の資産または貯蓄からまかなわれ、受取側の総資本形成やその他の資本蓄積あるいは長期的な支出の源泉となる。


c 基準改定

県民経済計算では、毎年各種の統計資料を基礎に推計が行われるが、当該統計調査が3年ないし5年ごとの実施であったり、結果が公表されるまでに年月を要したりして、毎年の推計に利用できない場合もある。このため、これらの統計資料の結果が公表され次第、毎年の推計とは別に過年度に遡って改定する遡及改定の作業が行われる。

また実質値は、特定年次の価格で評価されるが、可能な限り最近の経済実態を反映した価格体系により算定するために、評価の基準となる年次を改める作業も概ね5年ごとに行っている。

さらに、経済活動の適切な把握に向けた推計方法の改善など、推計方法の見直しの実施を行っている。これらの作業を基準改定という。


d 寄与度

全体の変動に対して、各構成項目の変動がどの程度影響を与えているかを示す指標で、式であらわすと次のようになる。

寄与度 前期における構成比 × 当期の前期に対する増減率

e 帰属計算

財貨・サービスの提供ないし享受に際して、実際には市場でその対価の受払いが行われなかったにもかかわらず、それがあたかも行われたかのようにみなして擬制的取引計算を行うことをいう。原則として市場で行われる取引を記録範囲とするが、制度や慣習の異なる各国間の計数比較を可能にするもので、帰属計算には帰属家賃、農家の自家消費などがある。


f 在庫品評価調整

県民経済計算では、発生主義の原則がとられており、在庫品増加は、当該商品の在庫増減時点の価格で評価すべきものとされている。

しかし、入手可能なデータは企業会計に基づくものであり、企業会計上で認められている様々な在庫評価方法で評価されている。このため、期末在庫残高から期首在庫残高を差し引いて求められる増減額のなかには、生産活動を伴わない期首と期末の評価価格の差による分(一種のキャピタル・ゲインあるいはロス)も含まれている。この評価価格の差による分を除くための調整を在庫品評価調整という。


g 一人当たり県民所得

県民所得を総人口で除したもので、県民経済全体の水準を示す。なおこの県民所得は財産所得や企業所得を含んでおり、県民個人の賃金水準や個人収入を示すものではない。

一人当たり県民所得 県民所得 ÷ 県民総人口

(※ 県民総人口は総務省の都道府県別推計人口を採用)


h 経済活動別就業者数および雇用者数

経済活動別の労働投入量を年間平均就業者数、雇用者数で示したものである。

分類はSNA分類による。いくつかの仕事を兼ねている者、あるいは2カ所以上の事業所に雇用されている者などは、事業所等でそれぞれ一人として数えているため、一人を1つの就業に限って数えている国勢調査などの調査とは異なる。そのため、利用の際には注意が必要である。


i 連鎖方式と固定基準年方式

名目値の実質化には固定基準年方式と連鎖方式があるが、固定基準年方式の指数(実質値:ラスパイレス型、デフレーター:パーシェ型)は、相対価格の変化が大きい場合、経年変化するにつれて、「指数バイアス」がかかることが知られている。すなわち、数量と価格に負の関係がある時、ラスパイレス型は上方に、パーシェ型指数の場合、下方にバイアスがかかる(いわゆる「代替バイアス」)。

一方、連鎖指数は隣接する2時点間の比較に注目した指数であり、常に前年を基準年とし、それらを毎年毎年積み重ねて接続する方法である。つまり毎期基準改定しているのと同じことになるため、「指数バイアス」はほとんど生じないとされている。

このため、08SNAでは実質値及びデフレーターの計算においては、連鎖方式を採用することが勧奨されている。

なお、連鎖方式では、実質値における「加法整合性」が成立しない。すなわち、固定基準年方式の場合、実質値の内訳項目を合計したものは、集計項目の実質値と一致するが(加法整合性が成立)、連鎖方式では一致しない。つまり、連鎖方式の実質値では単純な足し算・引き算はできない。また、実質値を用いた割合を計算することにも意味はない。このため、「開差」項目を設けて、内訳の合計値と合計値との差を示している。


j 県民経済計算における実質化方式の変更

国民経済計算では「平成15年度確報」から国内総支出系列については連鎖方式によるデフレーター及び実質値を採用することとなった。また、「平成16年度確報」からは国内総生産系列に連鎖方式が採用された。

本県の県民経済計算においては、平成15年度推計まで支出系列において固定基準年方式による実質化を行っていたが、平成16年度推計から生産系列でこの連鎖方式による実質化を導入した。また、支出系列においても、平成27年度から従来の固定基準年方式から、連鎖方式による実質化を導入した。

算出の具体的方法は、主に国民経済計算の経済活動別産出額デフレーターと経済活動別中間投入デフレーターを用いて、県内産出額と県内中間投入を連鎖方式で実質化し、その差額を実質の経済活動別県内総生産額とするダブル・デフレーション方式を用いている。


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