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   2009(平成21)年2月に改定した三重県人権教育基本方針では、人権感覚あふれる学校づくりのための観点の一つとして、家庭や地域等との密接な連携を図り、地域ぐるみの人権教育推進体制の確立に努めることを掲げています。(*1)
 そこで、今回のNewsでは、三重県立名張高等学校(*2)での取組をもとに、人権感覚あふれる学校づくりについて、「人権教育推進協議会」「人権学習教材『みんなで学ぶネットモラル』」(*3)をキーワードに考えていきたいと思います。
 

地域ぐるみの人権教育推進体制の確立をめざして~人権教育推進協議会の活性化とネットモラルに係わる取組をとおして~

                                                                                  三重県立名張高等学校
(2009年11月作成)

1. はじめに~名張高校での人権教育~

 (1) 「日常的に人権が尊重される雰囲気のある学校」とは

    学校は、多数の人間が教育活動を通じて同一空間に存在し、同じ時間を共有する場所です。そこでは、人と人との係わりが必ず生じます。このことから、学校は、すべての生徒、保護者が教育というサービスを受容でき、生徒の人間形成が図られ、進路保障はもちろんのこと、生徒が卒業後の人生を豊かに過ごすことができる礎を構築する場所でなければなりません。また、教職員が安心して教育活動に携わり、生徒との豊かな人間関係を作り上げることで、生徒の心身両面における成長を支援する場所であることが望まれます。
  学校がそのような場所となり得るためには、生徒、保護者、教職員が互いにその存在を尊重するとともに、自分を大切にする気持ちを持ち合わせていなければならないと考えます。それが、すなわち「人権尊重」ですが、本校では、常に人権や差別について考えることで、究極的には「人権」という言葉を使わなくても、自他の存在が尊重される場所となることを目指しています。
  その「目指す姿」に向けて本校が大切にしていることは、「気持ちの良い挨拶をする」「相手の話をしっかり聴き、自分の意見をしっかり話す」「陰口を言わない」「納得できないことは、納得できるまで話し込む」ということが自然にできる集団づくりです。そして、「普段の係わりの中での人権尊重の教育が大切である」という共通認識のもと、学校全体の人権・同和教育努力目標とともに、各分掌・各教科での努力目標も明確化し、あらゆる教育活動の中で人権尊重の意識を高める取組を行っています。
  学校生活においては、意見の相違や衝突は起こり得るものです。その時、人権尊重の意識を持ち、行動できることが大切になります。そのためには、一人ひとりの存在や思いを尊重し、自他の人権を守るための実践行動ができる力を育てていくことが必要だと考えています。

資料1 2009年度の人権・同和教育努力目標

(1) 教職員が、「同和教育の理念と成果を重要な柱とする人権教育」について正しく認識し、共通理解を深めるため、各種の研鑽を重ね資質の向上を図る。

(2) 主体的に創造できる確かな学力の向上をはかり、進路保障の取り組みを進める。

(3) 教職員と生徒及び生徒間の望ましい人間関係をつくることにより、差別を許さぬ人権意識を高め民主的な集団を形成する。

(4) 家庭、地域、中学校及び関係機関との連携を強め、生徒や地域の実情に即した人権・同和教育を推進する。

 資料2 2009年度の各分掌・各教科での努力目標(抜粋)

○ 教育運営部
  生徒の特性を生かし、個性に対応した指導を推進し、充実した学習環境を保障する。
○ 総務部
  地域・社会に情報を公開し、地域・社会・保護者とともに生徒の成長を支援していく。
○ 生徒支援部
  家庭との連携を密にし、また必要な場合はカウンセリング的な個別指導を行うなどする中で、生徒の自律・自立を促していく。
○ 進路指導部
  人権・同和教育推進部と連携し、現実の就職差別を見抜き、許さない精神を養う。進路調査を実施・分析し、進路先との連携を図っていく中で就職の機会均等の保障に努力していく。

○ 数学科
  生徒のひらめきやつまずきを授業展開に取り入れた習熟度別学習、仲間意識を育てるグループ演習を行う。
○ 芸術科
  芸術の表現活動や鑑賞活動をとおして、自己の内面をみつめ、感性を育て、一人ひとりの個性を尊重することができる豊かな情操を養う。
○ 家庭科
  人の一生と家族、福祉などに関する知識と技術を習得させ、男女が協力して家族や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てる。
○ 商業科
  授業を通して地域との連携を強め、自ら考え問題を解決していける能力を身につけさせる。

 (2) 取組の概要

    生徒に対しては、年に3回(各回2~3時間)の人権学習LHRを通じて、人権に関する理解と認識の深化、人権感覚の育成を図っています。また、その後の個人面談週間では、学習の振り返りを行うとともに、生徒の考えや思いを聴く機会を作っています。面談を通じては、生徒と教職員のより良い関係を作ることもねらいとしています。さらに、日常的に、生徒向け人権通信(月に1度)を発行したり、SHRで人権に関する話題を提供したりするなど、人権を尊重する意識や態度の育成に努めています。
  生徒の自主活動に関しては、校内で人権サークルが組織され、伊賀地区の活動に参加しています。また、今年度からは、人権について考えようとする生徒を増やそうと、校内での活動の充実、活性化に取り組み、校内での話し合いを行うようになりました。
  教職員に対しては、年に数回の研修会を開催し、人権感覚を高める授業づくりや教育課題の解決のための知識・技能の習得に努めています。また、教職員向け人権通信を発行することで、校外での研修を紹介したり、研修成果の還流を行ったりし、人権意識の向上を図っています。
  保護者に対しては、連携・協働が大切であることから、昨年度のPTA総会後、保護者が人権劇を観覧する機会を設けました。また、詳細は後述しますが、昨年度からは、4名のPTA本部役員に人権教育推進協議会に参画してもらっています。

資料3 2009年度の人権・同和教育年間計画(概要)

○ 4 月
  1年次生人権教育オリエンテーション、伊賀地区高校生友の会新入生歓迎会、教職員研修会
○ 5 月
  1年次生家庭訪問(~8月)、教職員研修会、中高連絡会
○ 6 月
  人権学習LHR、人権面談週間、人権教育推進協議会
○ 7 月
  地区別人権フェスティバル、教職員研修会
○ 8 月
  三重県高校生人権活動交流会

○ 9 月
  あいさつ週間、教職員研修会
○ 11 月
  人権学習LHR、人権面談週間、あいさつ週間
○ 1 月
  人権学習LHR、人権面談週間、人権教育推進協議会
○ 2 月
  あいさつ週間、教職員研修会
○ その他
  学年別人権講演会、人権・同和教育推進委員会(月に1回程度)、人権・同和教育推進部会(週に1回)

2. 名張高校人権教育推進協議会

 (1) 協議会の設置

    本校は、2004年度に県事業の「人権教育セットアッププラン21」の指定を受け、人権教育の推進に取り組みました。取組での大きな柱は、人権学習の公開と人権教育推進計画の策定、そして、人権教育推進協議会(以下、協議会)の設置でした。
  協議会の構成メンバーは、校長、教頭(全・定)、人権教育推進担当者(全・定)、各学年人権教育推進担当者、PTA会長、卒業生、評議員、教育集会所関係職員、市教育委員会及び県教育委員会関係職員でした。当初は、協議会の目指すものや進め方をはじめ、あらゆる面で手探りの状態でした。しかし、メンバーの「子どもの姿を中心に据えながら議論しよう」という声を受け、活発に意見が出されるようになりました。そして、「人権学習を公開しようと思っても、教職員の理解が得られない」「教科学習なら良いが、人権学習になると構えてしまう」といった本校の課題が明らかにされながら、協議が進むようになりました。
  人権学習LHRの指導案についての協議では、「子どもの現状や実態を把握しているのか。その中にどんな課題があるのか。また、課題を解決するためにどのような学習計画がつくられているのか」という指摘を受けたことで、内容ばかりに気を取られ、何のために取り組むのかという原点を忘れていたことに気づかされました。また、人権教育推進体制についての協議でも、多面的、多角的な視点から意見が出され、具体的な行動計画に結びついた体制づくりへと繋げることができました。さらには、学校そのものの在り方を共に考えていく中で、例えば、教育に係わる専門的な用語を平易な言葉で表現するようになるなど、教職員間では見落としがちな点についても、細部にわたって改善することができました。

 (2) 協議会の再スタート

    設置当初の協議会では、会の持ち方や在り方について模索を続けながら、特に、人権学習LHRの授業公開に力点を置き、協議を進めてきました。前述のように、指導案についての協議では、活発な意見が出され、子どもの見方をはじめ、改めて気づかされることがたくさんありました。また、継続的に協議を行うことで、協議会のメンバーの関係性が深まっていきました。さらには、メンバーそれぞれの協議会に対する評価も高くなり、「このままでは勿体ない」「もっといろんな話をしよう」などの意見が出されるようにもなりました。
  しかし、年数が経過するとともに、開催の時期や回数の関係もあり、せっかくの協議が机上だけのものに終わってしまう状況が見られるようになりました。また、協議会のメンバーが人権学習LHRの様子等、子どもの姿を実際に見る機会がないこと、協議会として、学習の成果と課題を検証・評価する働きが弱いことが課題として浮き彫りになってきました。そのため、教職員が感じている困難さや不安等も協議の場で明らかにされることが少なくなり、何のために協議会を設置しているのかということさえも不明確になってきました。何よりも、PTA会長が構成メンバーとして参画していたことに甘んじ、多くの保護者と共に地域ぐるみで人権教育を推進するという視点が欠落していました。
  2008年度になり、「もっと原点に戻って、人権教育の在り方を協議すべきではないか」という意見を契機に、「子どもたちの育ち」を共に考えていくという視点で、協議会の持ち方や在り方を再確認するとともに、多くの保護者と共に人権教育を推進できる体制づくりに取り組み始めました。
  人権教育推進担当がPTA役員会に出席し、人権教育に対する保護者の考えや思いを聞かせてもらうことから、取組は始まりました。保護者一人ひとりからは、自分が受けてきた人権教育の印象や子どもたちへの思いが語られました。また、PTA役員会では、協議会についての説明を行い、協議会への参画を依頼しました。保護者からは、「参加させてほしい」「私も入りたい」などの声が上がり、結果、4名の保護者と共に、協議会を再スタートさせることができました。

3. 人権学習教材「みんなで学ぶネットモラル」の活用

    再スタートした協議会では、常に「自分の子どもはどうなのか」「まわりの子どもはどうなのか」という視点が軸となり、子どもの成長をいっしょに考えるための協議が行われるようになりました。協議をとおしては、「子どもの姿から」ということを一番大切にしなければならいと、改めて実感しました。
  そのような中、協議では、「取組の説明を聞いているだけでは、想像できない」「子どもたちがどのような人権学習を受けているのか、実際に見てみたい」などの保護者の声が届けられました。また、今日的な課題として、子どもの携帯電話やパソコンの使用についての不安も出されました。さらに、県教育委員会発行の人権学習教材「みんなで学ぶネットモラル」について説明した後には、「子どもはインターネットをいろいろと使いこなしているが、大丈夫なのかと思うことがある」「子どもたちが学習する内容を、私たちも知っておく必要があるのではないか」などの意見も返されました。
  そこで、今年度の取組として、保護者と教職員が一緒に学ぶネットモラル研修会を実施することを決定し、多くの保護者に参加してもらおうと、PTA総会の場で開催することにしました。

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 以下、研修会に参加した保護者の感想から、主なものを紹介します。

○ ネット、チャット、掲示板など、自分の子どもが何をしているか、親として把握していない。サイトロックにも登録はしてあるが、いろいろな抜け道もあるので怖いという思いがある。研修を受けて、もっと勉強しなければいけないと感じた。

○ 自分の子どもも「携帯依存症」で、寝るまで携帯を離さない。クラブのホームページなどを見ているようだが、何をしているのかわからない。

○ 子どもは四六時中、携帯の画面を見ている。電話会社で危ないサイトにいけないように止めたこともあったが、結局、今は本人任せになっている。あるサイトには様々な書き込みがあり、生徒だけでなく、その親の情報まで載っていると知人から聞いた。本人が知らない間にどんどん広がっていることがわかった。

    保護者の感想に係わっては、保護者向けPTA通信にも、参加した保護者の声を掲載しました。

「人権研修会に参加して」zu1

   PTA総会の後、県教育委員会の方をお招きし、「ネットモラル」について人権研修会が行われました。世代的にでしょうか、人権という言葉についつい難しいのではと身構えてしまい、機会を逸していた私でしたが、参加してみると、それはあまりにも身近にあふれている問題で、昔、道徳の授業で学んだ、人として何が大切なのかを考えさせられる時間でした。

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  今の子どもたちにとってネットを扱う事は日常です。しかし、表情が見えない分、考え方や言葉のニュアンスは伝わり難いもの。相手の反応も然りです。誤解や一方的な感情はエスカレートし易く、危険な事もあるでしょう。だからこそ必要なモラルを子どもたちと同じ教材を使って、同じ方法で教えて頂きました。
  子どもたちの進化は早いです。私たちも身構えてばかりはいられません。次はあなたも参加してみませんか?

~名張高校PTAだより№82(平成21年7月17日)より~

4. おわりに

    多くの学校の課題でもあるようですが、本校でも、PTA総会等、PTA関連行事への保護者の参加率が全体の1割にも満たないという課題が見られます。そこで、数年前からは、土曜日の午前に授業公開を行うとともに、吹奏楽部の演奏を鑑賞したり、人権ステージ「はっぴいま~る」(*4)による人権劇を観覧したりする機会を設けてきましたが、なかなか保護者の参加に繋がらないという状況があります。
  今回のネットモラル研修会についても、携帯電話が子どもたちの生活の多くを支配する今、ネットモラルについての保護者の関心は高いと考えましたが、参加の広がりという点でいくつかの課題がありました。
  ただし、今年度は、ネットモラル研修会以外にも、PTA役員による人権学習LHRの参観及び事後意見交換会の実施を実現させることができました。また、前述のように、PTA通信を活用した情報発信にも取り組むことができました。これらは、少なくとも、保護者とともに進めてきた協議会の成果であると考えています。
  そこで、今後も、保護者に学校をより身近に感じてもらえるよう、取組の一層の充実を図るとともに、PTA通信に「人権コーナー」を設けるなどし、取組内容や、取組に係わる保護者の感想・意見等の発信に努めていきます。
  現在、協議会に参画する保護者には、「学校を支援しよう」「子どもたちの育ちを共に考えよう」という情熱を強く持ってもらっています。その思いに助けられ、協議会をはじめ、学校の取組が成り立っていると言っても過言ではありません。また、前掲のように、本校は、「家庭、地域、中学校及び関係機関との連携を強め、生徒や地域の実情に即した人権・同和教育を推進する」ことを、今年度の人権・同和教育努力目標の一つに置いています。
    だからこそ、今後も、地域ぐるみで人権教育を推進するという視点を大切に、保護者、地域や中学校等との連携に力を入れながら、目の前の生徒や保護者の思いや願いをしっかりと受けとめ、「日常的に人権が尊重される雰囲気のある学校」を目指して取り組んでいきたいと考えています。

(*1) 詳細については、三重県教育委員会事務局学校教育分野人権・同和教育室ホームページ(http://www.pref.mie.jp/DOKYOUI/HP/plan/jinken/index.htm)を参照されたい。
(*2) 概要については、三重県立名張高等学校のホームページ(http://www.mie-c.ed.jp/hnabar/)参照されたい。
(*3) 三重県教育委員会が2008(平成20)年11月に発行した、人権学習教材「わたし かがやく ◆豊かな 出会いのなかで◆ みんなで学ぶネットモラル(小学生版、中学・高校生版)」。概要については、三重県教育委員会事務局学校教育分野人権・同和教育室調査研究グループ(人権・同和教育センター)のホームページ(http://www.pref.mie.jp/DOKYOC/HP/netmoral/netmoralkyozai.htm)を参照されたい。
(*4) 日常生活に存在する様々な人権課題に題材を求めた人権劇の創作・上演を行う。地域住民、保育士、教職員、行政職員で構成され、名張市内を中心に活動している。詳細については、「人権・同和教育センターReport第18号『住民とともにすすめる人権教育の取組』」を参照されたい。

 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.lg.jp

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