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2016(平成28)年度 人権学習指導資料等活用のための講座(12月)報告

 三重県教育委員会は、2016(平成28)年3月に、人権学習指導資料(小学校高学年)「みんなのひろば」を発行しました。12月27日(火)に開催した、本指導資料活用のための講座においては、二人の先生から「みんなのひろば」を用いた実践報告をしていただきました。また、報告内容をふまえて、グループで各校における取組状況や課題等を交流していただきました。
 ここでは、その概要をお知らせします。

1 実践報告

報告Ⅰ

右寄せ

 

(1)活用した学習展開例:「言葉の壁を乗り越えよう」 1. みんなできるかな?(P.50)

(2)報告者:米山裕子さん(伊賀市立柘植小学校)

(3)主な報告内容:
  1. 対象:6年生児童
  2. 実践の特長:学級の実態に応じてアレンジして展開した。
 「みんなできるかな?」ゲームは、「言葉が分からないときの困り感や不安感」を実感させることを目的としたものです。このゲームのために、指導資料の別添CDには、ポルトガル語を用いた例が〔付録〕として収録されています。しかし、このクラスにおいては、母親が中国人であることで、「お母さんが差別を受けるかもしれない」という不安を抱いている子どもAに焦点を当て、中国語を使用してゲームを行いました。また、指導資料の《教職員用資料9》には、中国語で行うための資料も付けられていますが、Aの母親の協力を得て、母親なりの表現を手書きしてもらったカードを使用しました。
 設問3の「外国から日本に来た人の話」も、母親から実体験を聴き取ったものを教材として使用しました。以下は、聴き取りからの抜粋です。

 「Aが小さいころは、よく扁桃腺がはれて病院へ行かなくてはなりませんでした。初めて熱を出したとき、どうしたらいいのか分からなくて、Bさん(近所の住民)に電話をしました。すると、すぐに家に来てくれ、私とAを病院まで連れて行ってくれました。病院でお医者さんに、『どうされたんですか。』と聞かれても、言葉が返せなかったので、咳をするマネをしたり、おでこに手を当てて熱があるというジェスチャーをしたりして伝えました。
 Aが2歳になったときから、保育園にAをあずけて働き始めました。その仕事場には日本人しかいなかったので、毎日話をすることでだんだんとしゃべれるようになりました。今は、研修で来ていたときの工場で、好きな裁縫の仕事をしています。
 言葉が通じなくて、イライラしたり、つらくて泣いたりすることは何回もありました。Aがいなかったらとっくに中国に帰っています。Aが生まれてから、『Aのため』と思うと、なんでもがんばることができました」

(4)授業者からのまとめ
 子どもたちは、Aのお母さんの、いつも元気で明るいイメージとかけ離れた姿に触れて、驚いていました。Aのお母さんからの聴き取り内容を読むことで、外国から来た人にとって、言葉が通じないことは、とても辛いものなのだということが実感できたと思われます。「みんなできるかな?」ゲームのときの、自分だけ言葉が分からなくて不安になった経験と重ねて、「Aのお母さんは毎日が不安やったと思う」と話した子もいました。
 Aのお母さんは、地域の人の支えがあり、「Aがいることでがんばれる」と言っています。そんなお母さんの笑顔を、外国人差別によってなくしてはいけないと、子どもたちは改めて感じたようでした。

(5)人権教育課より
 指導資料の学習展開例を、子どもや学級の実態に応じて効果的にアレンジした好例だと考えます。
 この学習までに、学級では、部落問題・障がい者の人権・外国人の人権等に係わって、それぞれが思いを伝え合う取組を進めてきました。今回の学習で、Aのお母さんの思いに触れたことで、子どもたちは外国人の人権に係わる問題を身近なこととして考えることができたと思われます。以下は、そんな子どもの心の動きが感じ取れる感想です。

  • 「Aのお母さんは参観のときとかいつも声をかけてくれる。そんなお母さんが差別されるかもしれんのにほっとけん」
  • 「『中国人だから』とか『だから中国は』とか、ひとくくりにして決めつけた見方をするのは部落差別と一緒やと思う。部落差別も外国人差別もなくしていきたい」

 このような友だちの発言を受け、Aは後日、「ほっとした」という感想を作文に書きました。「お母さんが差別を受けるかもしれない」というAの不安が、緩和されたことが見て取れます。また、この学習は、Aが母親をみつめ直すきっかけとなるとともに、Aの母親にとっても、「自分が必要とされている」という自己有用感を得ることにつながったのではないかと思います。

報告Ⅱ

右寄せ

(1)活用した学習展開例:「『こころ』と『からだ』のいろいろ」(P.103~P.106)

(2)報告者:前川潤子さん(津市立八ッ山小学校)

(3)主な報告内容:
  1. 対象:5・6年生児童(地域の高学年児童学習会にて)
  2. 実践の特長:指導資料を用いた学習を様々な場での学びにつなげた。
 「『こころ』と『からだ』のいろいろ」は、「性のあり方の多様性に気づくとともに、性的マイノリティの人々の思いを自分の経験と重ねて理解する」ことをねらいとした学習です。
 自分のことを「隠さなければ」と思わされてしまう、性的マイノリティの人々の思いについての理解を深めた後、「自分にも『人と違う』『隠したい』と思うことはないか」と問いかけると、ほとんどの子どもが「ある」と答えました。その後、授業者から自分の「多くの人と違う」と思っていることについて話しました。
 数ヶ月後の児童学習会で、改めて「自分が他の多くの人とは違うかも」と思っていることを出し合いました。ある子どもCは「他の子はみんなと一緒がいいと思うけど、わたしは一人がいい」と発言しました。それに対して「一人やとさみしくないの?」と質問した子がいました。Cは「みんなとおって楽しいときもあるけど、わたしは自分のペースでいきたい」と答え、質問した子は「不思議に思ったけれど、理由を聞いてわかった」と言いました。また「私も、そういう(一人でいるのが好きな)ところがある」と返した子もいました。C以外の子どもも、今まで、「人と違う」と感じて言いにくかったことを出し、それに周りの子どもが返すことで、「すっきりした」「知れてよかった」という感想がたくさん出されました。参加した子どもの中には翌日、学級の朝の会で、学習したことをスピーチした子もいました。
 夏休みの家庭訪問のときに性的マイノリティの人権について話題にするなど、保護者に対する発信も行いました。さらに11月には、保護者・地域の方・八ッ山小学校の教職員が参加する保護者学習会を、児童学習会と同じ内容で行いました。ある保護者からは「自分も学生時代に同性愛者の友だちがいて、相談されたことがあった。異性じゃなくて同性が好きなところはわたしとは違ったけど、人を好きになる気持ちは一緒だった」といった、自分の経験を踏まえた発言がありました。

(4)授業者からのまとめ
 最初に、絵本『王さまと王さま』の読み聞かせをしたとき、王子様どうしの結婚を否定的に捉えていた子どもが、学習の最後には、「そういう人もいることがわかった」「みんなが理解することが大事」という認識に変わっていきました。正直な気持ちを押さえつけてしまうのではなく、同性どうしの結婚をその子どもに否定的に捉えさせてきた周りの意識があることを理解したうえで、正しく知る取組を進めていかなければならないと思いました。
 今後の児童学習会でも、自分の思ったことを正直に出し合い、相手を認めようという思いで聴き合える仲間となっていけるような手応えを感じることができました。今年は担任をしていなくて少しさびしい思いをしていたけれど、わたし自身のことも話して、子どもたちと本音の話ができて、子どもたちとの距離が少し縮まったような気がしました。
 この実践に係わって様々な場で助言をいただく中で、性的マイノリティの方たちは、家族の中でもマイノリティであるため、家族にも言えずに、自殺を考えるほど一人で悩まれることがあることを知りました。だからこそ、周りの理解が必要であり、そのためには、自分も多様な性を生きる当事者として考えていくことが必要だと思います。今回の実践では、性の多様性や性的マイノリティについて「知る」だけにとどまっているので、今後は、一人ひとりが、自分も多様な性を生きる当事者であることに気づくことのできる取組をしていきたいです。
 自分のことを「隠さなければ」と思わせてしまうところは、部落問題と通じるところがあると思います。ここで学んだことを他の様々な人権問題の学習につなげ、それらを他人事と思わずに、「自分はどうだろう」「自分はどうしていきたいのだろう」と振り返り、誰もが自分らしく幸せに生きていくために、自分たちができることを考え行動していこうとする子どもたちを育てていきたいと思います。

(5)人権教育課より
 性的マイノリティに対して否定的な捉え方をしていた子どもの意識が、学習を通じて変化したことが見て取れました。「正しい知識を得ることで、意識が変わる」ということを示していただいた実践であると考えます。知識はどんな人権問題を学ぶうえでも重要ですが、性的マイノリティの人権に係わる問題のような、社会的な理解が不十分な事柄については、特に大切なのではないでしょうか。また、性的マイノリティの人々が抱きやすい、「人と違う」「隠さなければ」という思いを、自分に重ねて考え、出し合う活動を行ったことで、仲間づくりにもつながる学習になったと思われます。
 さらに子どもの学習を、家庭訪問や保護者学習会につなげたことで、より広がりのある取組になっています。一連の取組の中で、家庭で保護者から性的マイノリティの人と出会った経験を聴き、身近な問題であることを実感した子どもがいたことも報告していただきました。様々なことを「隠さなければ」と思わせてしまう社会のあり方を変えていくには、子どもが学習するだけでなく、保護者・地域も巻き込んだ学習にしていくことが重要です。そういった取組のモデルを示していただいたと思います。
 

2 グループ交流

右寄せ

 報告内容をふまえて、実践報告者にもご参加いただき、グループで交流していただきました。
 以下は、グループ交流において話された内容の一例です。



 
  • 子どもにつけたい力を明確にして取組を進めているからこそ、「みんなのひろば」の「外国から日本に来た人の話」を、「Aのお母さんの話」に編集加工することができ、子どもの実態に合った学習を進めていけたのだと思いました。人権学習での学びを一人ひとりの問題に返していく、自分につなげていくということが、実践報告を通じて理解できました。

  • Aのお母さんからの聴き取りを教材化したことで、子どもたちのつながりができていったことが伝わってきました。仲間づくりは、子どもどうしの自然発生的なものではなく、教職員の意図的で継続的な取組によって生まれるものだということを、具体的な事例を通じて教えていただきました。

  • テレビ番組等で、性的マイノリティを笑いの対象として扱っている場面を見ることが多いです。そのような状況の中で、どのような学習に取り組めばよいのか迷っていましたが、そのヒントをもらえました。

  • 今まで、性的マイノリティに係わる学習をしてきませんでしたが、この講座を受けて、「やってみよう」「やらなければいけない」と思いました。3学期にこの学習展開例を使って実践してみようと思います。

 【参加者アンケートより】
  • 児童に合わせた取り上げ方やアレンジ方法等、具体的なことがわかり、大変参考になりました。

  • 自分も実践していきたいと思いました。グループで交流することで、よい刺激を受けました。

  • 3学期に部落問題学習を進めるときに、子どもたちの課題とどうつなげていくか悩んでいるところでした。実践をとおしてその道筋を示していただき、とてもよかったです。 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.jp

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