宅地建物取引と人権について
人権とは
人権とは、すべての人が生まれながらに持っている、人として幸せに生きていくために必要な、誰からも侵されることのない権利です。すべての人の人権が尊重される豊かな社会を実現するためには、自分の人権のみならず、他人の人権についても正しく理解し、人権を相互に尊重し合うことが必要です。
三重県では、このような社会の実現を図るために、「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」を施行し、不当な差別その他の人権問題のない、人権が尊重される社会を実現に向けて、取り組んでいます。
[参考] 差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例(令和4年5月19日制定) 第1条(目的) この条例は、不当な差別その他の人権問題の解消をはじめとする人権尊重に関し、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、不当な差別その他の人権問題の解消を推進し、もって不当な差別その他の人権問題のない、人権が尊重される社会の実現を図ることを目的とする。 |
宅地建物取引と人権問題
宅地建物取引業者は、憲法で保障された居住・移転の自由に関する重要な業務に従事しており、業務の執行に関しては、常に「基本的人権の尊重」を十分に理解し、認識することが求められます。
国土交通省では、「宅地建物取引業者の社会的責務に関する意識の向上について」(平成8年1月26日)において、宅地建物取引業者としての人権問題に対する意識向上を図ることを目的に、業界団体宛に、人権に関する教育・啓発活動をより一層推進するよう、協力を求めています。
業界団体の長 殿 建設省建設経済局
宅地建物取引業者の社会的責務に関する意識の向上について 建設省においては、従来より宅地建物取引業者の社会的責務に関する意識の向上を目指し、宅地建物取引主任者等の従業者に対する講習等を通じ、人権に関する教育・啓発に努めてきたところである。 |
また、平成29年9月14日に「不動産業に関わる事業者の社会的責務に関する意識の向上について」により、再度、業界団体宛に、人権に関する教育・啓発活動をより一層推進するよう、協力を求めています。
国土動指第35号
別紙業界団体の長殿
平成29年9月14日 国土交通省土地・建設産業局不動産業課長
不動産業に関わる事業者の社会的責務に関する意識の向上について 平成8年1月26日付建設省経動発第8号「宅地建物取引業者の社会的責務に関する意識の向上について」、平成13年1月6日付国総動第3号「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」及び平成25年7月23日付国土動指第26号「不動産業に関わる事業者の社会的責務に関する意識の向上について」において、宅地建物取引業をはじめとする不動産業に関わる事業者の社会的責務に関する意識の向上について通知を行ってきたところである。 また、平成28年4月に施行された障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第11条第1項の規定に基づき、不動産業を含む国土交通省所管事業向けの対応指針を策定して、障害者差別の解消に向けた適切な対応を求めてきたところである。さらに、同年6月に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組についての基本的施策等を定め推進することを目的とする、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消にむけた取組に関する法律(平成28年法律第68号)、同年12月に、部落差別の解消を推進し、部落差別のない社会を実現することを目的とする、部落差別の解消の推進に関する法律(平成28年法律第109号)が施行されたところである。 宅地建物取引業をはじめとする不動産業に係る人権問題の最近の状況を見ると、不動産業界において人権問題に対する意識の向上に向けた各種の取組が行われる一方、未だ一部において人権の尊重の観点から不適切な事象が見受けられる。 不動産業は、住生活の向上等に寄与するという重要な社会的責務を担っていること及び人権問題の早期解決は国民的課題であることから、基本的人権の尊重、特にあらゆる差別の解消に関する教育・啓発が重要であることにかんがみ、同和地区、在日外国人、障害者、高齢者等をめぐる人権問題に対する意識の向上を図るため不動産業界として不断の努力が求められる。 このため、貴団体におかれては、不動産業に従事する者に対する講習等を通じて人権に関する教育・啓発活動のより一層の推進を図るとともに、不動産業に関わる事業者に対する周知徹底及び指導を行う等継続的な取組をお願いする。 |
宅地建物取引業者が、取引の相手方から同和地区に関する質問を受けた際に、その回答を拒否しても、宅地建物取引業法第47条に違反しないことはもとより、同和地区の問い合わせに関して回答することは、差別を助長する行為となります。
また、宅地建物取引業者が、家主の意向だからといって外国人等であることを理由に入居を断ることも差別を助長する行為になります。
このような行為は、宅地建物取引業者としての社会的責任を果たしていない上に、取引の公正を欠くことで、宅地建物取引業者としての信頼を失うことにつながります。
三重県の取り組み
三重県では、公益社団法人三重県宅地建物取引業協会及び社団法人全日本不動産協会三重県本部と連携して、宅地建物取引業者を対象に、人権研修を実施しています。
【平成22年度】
同和地区等を調べて報告書に記載していた土地差別調査事件の概要とその背景を説明するとともに、大阪府が作成した啓発ビデオ「宅地建物取引における土地差別:第2巻・宅建業者向け」を教材に、実際の取引の場における現状や業者としての対応など、同和問題を中心に研修を実施しました。
【平成23年度】
県内に事務所を有する全ての宅建業者を対象に、土地建物取引の場における人権問題の実態調査を行い、その結果を分析した報告書及び概要版を作成し、人権研修等に活用しています。
■第1回宅地建物取引に関する人権問題の実態調査
報告書:全体(3,453KB)
分割 :調査概要・単純集計(1,311KB) 、詳細分析(826KB) 、資料(1,398KB)
概要版(5,442KB)
【平成24年度】
平成23年度実施した実態調査において、不動産売買における同和問題や外国人、障がい者、高齢者、母子家庭や父子家庭に対する入居問題の現実が明らかとなり、その解決に向けて、宅建業者をはじめ、県民や賃貸住宅の家主を対象とした啓発の重要性が指摘されています。そこで、その調査結果の概要と具体的な対処方法等をとりまとめた啓発用パンフレット「宅地建物取引と人権」、宅建業者の事務所に掲示していただく啓発用ステッカー、及び賃貸住宅の家主に配付いただきたい啓発用チラシ(A4表裏1枚)を作成し、県内に事務所を有する全ての宅建業者宛てに送付しています。
啓発用パンフレット(3,062KB) 啓発用ステッカー(247KB) 啓発用チラシ(2,340KB)
また、宅地建物取引業における人権問題の解決を図るため、県、宅建業者及び業界団体の役割を明記した「宅地建物取引業における人権問題に関する指針」を平成25年4月1日に制定しました。
なお、令和6年4月1日に同指針を改正し、事業者の責務として報告義務が明記されました。
【平成29年度】
平成23年度に実施した実態調査から5年経過し、これまで行ってきた啓発活動の効果を検証するため、三重県内に事務所を置く全ての宅建業者を対象に「第2回宅地建物取引に関する人権問題の実態調査」を実施しました。
実態調査の結果から、土地差別の実態は着実に改善されており、普及啓発に取り組めば差別実態が改善されることが示された一方で、外国人、障がい者、高齢者、母子・父子家庭に対する入居差別の実態については、あまり改善が見られず、家主に対する人権啓発の課題が浮き彫りになりました。
このように依然として存在する土地差別や厳しい入居差別の実態があり、また、平成28年度には「部落差別解消推進法」や「障害者差別解消法」が施行されたことから、宅建業者をはじめ、県民や賃貸住宅の家主を対象とした普及啓発活動の重要性が指摘されました。
■第2回宅地建物取引に関する人権問題の実態調査
報告書(4,685KB) 啓発用パンフレット(16,205KB) 啓発用家主向けチラシ(1,028KB) 啓発用ポスター
【令和4年度】
第2回宅地建物取引に関する人権問題の実態調査から5年経過したことから、県内の宅建業者の人権意識の確認及びこれまでの啓発活動の成果を検証するため、三重県内に事務所を置く全ての宅建業者を対象に「第3回宅地建物取引に関する人権問題の実態調査」を実施しました。
実態調査の結果から、宅建業者の人権問題への対応(土地差別や入居差別など)は、この10年間において着実に改善されてきました。しかし、土地や建物を求める消費者においては、土地差別への意識がほとんど改善されず、いまだに土地差別問題が残っていることが明らかになりました。また、家主においても外国人や高齢者に対する入居差別の実態についてはあまり改善が見られず、前回に引き続き家主に対する人権啓発が課題となっています。
県では宅地建物取引における人権問題が少しでも改善されるよう、啓発用パンフレットや啓発用家主向けチラシを更新作成し、宅建業者及び宅建業者を通じて家主への普及啓発につとめていきます。
■第3回宅地建物取引に関する人権問題の実態調査
報告書(5.41MB) 啓発用パンフレット(9.78MB) 啓発用家主向けチラシ(9.23MB)