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三重県議会 > 県議会の活動 > 委員会 > 委員会会議録 > 平成31年度 委員会会議録 > 令和元年9月24日医療保健子ども福祉病院常任委員会 会議録

令和元年9月24日  医療保健子ども福祉病院常任委員会
会議録

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医療保健子ども福祉病院常任委員会
会議録
(開会中)

開催年月日  令和元年9月24日(火曜日) 午後1時1分~午後2時37分
会議室       501委員会室
出席     8名
           委 員 長         中瀬古 初美
           副委員長        倉本 崇弘
           委   員           杉本 熊野
           委   員           北川 裕之
           委   員           中村 進一
           委   員           津田 健児
           委   員           青木 謙順
           委   員           西場 信行
欠席委員   なし
出席説明員  出席を求めず
委員会書記
         議事課       主幹  川北 裕美
         企画法務課  主査  大森 貴仁

参考人     1名
          国立研究開発法人 産業技術総合研究所 客員研究員  鈴木 聡 氏
傍聴議員    2名
          小島 智子
          藤田 宜三
県政記者   なし
傍聴者     5名
調査事項
第1 参考人からの意見聴取
  1 児童虐待の防止と社会的養育の推進に向けた現状と今後の課題について
第2 その他

【会議の経過とその結果】

〔開会の宣言〕

第1 参考人からの意見聴取

〇中瀬古委員長 本日は、児童虐待の防止と社会的養育の推進に向けた現状と今後の課題について、参考人からの聞き取り調査を行います。
 前回の委員会で決定したとおり、本日は、前三重県児童相談センター所長で、現在は国立研究開発法人産業技術総合研究所客員研究員の鈴木聡様に参考人としてお越しいただき、聞き取り調査を行ってまいります。
 本日の調査の進め方についてですが、初めに、鈴木様からお話を伺い、その後、質疑を行いたいと存じます。なお、参考人からの聞き取りは、質疑応答を含め90分程度とします。
 また、参考人に御退室いただいた後に、委員間討議を行いたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 1 児童虐待の防止と社会的養育の推進に向けた現状と今後の課題について
  ア 参考人意見陳述

〇中瀬古委員長 この際、参考人に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、お忙しい中にもかかわらず、本委員会のために御出席をいただき、まことにありがとうございます。委員会を代表して、心からお礼を申し上げますとともに、忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。
それでは、参考人からの意見聴取を行います。
 鈴木参考人、お願いいたします。

〇鈴木参考人 御紹介をいただきました鈴木でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 今日は、子どもを虐待から守る条例から社会的養育推進計画の御審議等に当たりまして、このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 まず、本日は、議会事務局を通じまして御要望をいただきました点を中心に、児童相談所の現場で感じてまいりましたことをお話しさせていただきたいと思います。
 今日お話しさせていただく内容でございます。まず、児童相談の概要、児童虐待の実際、近年の主な取組、トロント視察報告、現在の課題とあるべき姿と、このような形で進めてまいります。よろしくお願いいたします。
 まず、三重県の児童相談所は全部で六つに、この4月からなりました。その辺は、もう委員方は御存じだと思うんですけれども、児童相談所は割と光が当たるんですけれども、ちょっと忘れられがちなところがありますんで、一つ先に御紹介させていただきます。中勢児童相談所の2階にございます児童相談センター総務他と書いてありますけれども、そこは、総務以外にも、里親の募集とか、その研修、各児童相談所の法的対応の支援、市町支援、それから職員の研修の企画であるとか、一時保護の調整とか、全県的な対応が必要な部分を担っております。これら現場をバックアップする部署が独立して存在するのは三重県の大きな特徴でありまして、他県からも注目をされているところでございます。児童相談所と同様に忙しい部署でもあります。
 児童相談所の業務は、現場のケースワーカーだけで行っているものではございません。児童相談所の強化には、ケースワーカーだけではなくて、心理司や保健師、一時保護所の児童指導員、その他そういう専門家とともに、このようなバックアップする体制というのもやはり必要になってくるというところをまず御理解いただきたいと思います。
 では、児童相談所の業務ということでお話をしてまいります。
 児童相談所の相談種別は、その下にありますような虐待、その他養護、障がい、非行、育成、このような形で相談内容によって分類をしてまいりました。これは平成20年と平成30年の相談件数を比べたグラフでございます。濃いほうが平成30年ですね。虐待と障がいのほうに2本の大きな柱が立っているということは見ていただけます。虐待のほうは、平成20年からこれだけ大きく伸びて、今やトップになっているというふうな状況でございます。
 では、児童相談所の仕事はこの虐待と障がいの二本柱なのかというところですが、この写真をごらんください。左側は、児童虐待相談の子どものケース記録です。右側が障がい相談の記録なんですね。虐待のほうは、ナンバー2、ナンバー3という形で、このようなケースファイルが積み上がっていく場合もございます。つまり件数的には二本柱なんですけれども、その業務量というのは圧倒的に違います。児童相談所は以前と異なりまして、今や児童虐待への対応というのが仕事の本当に多くを占めるような、まさに虐待相談所、虐待対応所のような形になってきているということでございます。
 次ですね、児童相談所の虐待対応件数と種別構成、これもいろんなところでごらんいただいたグラフだと思うんですけれども、簡単に御紹介させていただきます。
 児童虐待はすごく増えておりまして、平成30年度、2074件というふうな件数を計上しております。多くの方は、児童虐待が増えたというふうなお話をさせていただくと、殴られたり蹴られたりする子どもが増えているんだなというふうに思われるんですが、現実はそうではございません。一番下の濃い青いところ、身体的虐待のところは、そんなに増えていないのが見ていただけます。赤いのを挟んで一つ上、ちょっと薄いブルーですけれども、心理的虐待というところがすごく増えております。これは、後ほども御説明いたしますけれども、DV関係にある夫婦が、それを子どもに見せつけるという面前DVがすごく増えているということが原因にございます。
 この辺の前提をお話しした上で、我々の現場で、児童虐待のどういうケースに当たるのかというところをまず御案内させていただきたいと思います。虐待は、法律では四つに分類されております。身体的虐待、心理的虐待、養育の放棄・怠慢、性的虐待、今日はこの順番にお話をさせていただきます。
 まず、身体的虐待です。
 「児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること」という定義になっております。ここに子どもをたたいているお母さんのイラストがありますけれども、様々なこういう蹴るとかたたくということが出てまいります。右上の写真、これはアイロンですけども、実際にアイロンの形をしたやけどをつけてくる子どもなんかもおられます。こういう身体的虐待ですね。多くの場合、親御さんは理由を語られます。例えば夜中までゲームをしていたであるとか、家のお金を持ち出したからであるとか、そういう理由はあるんですね。親御さんは、虐待をしているなんていう意識は全然ありません。子どもに大切なことを教えたいということでやられているわけなんですが、この法律を見ていただきますと、しつけを除くというような規定はございません。ということで、やはりこういうことになりますと、身体的虐待ということになって、我々のところに連絡が来るということでございます。
 右側下、これは、厚生労働省の作成いたしました「赤ちゃんが泣きやまない」という動画なんです。動画が動くはずだったんですが、ちょっと動かないですけれども、これですね、揺さぶられ症候群というのを聞かれたことがあると思うんですが、生後半年ぐらいまでの赤ちゃんを、何で泣くんだということで揺さぶったりしますと、頭の中で出血をしてまいりまして、体が麻痺してしまったりとか、最悪の場合命をなくすということが起こってまいります。そういうことも、結構委員が想像していただくよりも多い件数が、今は病院から通告が来るような状況になってきております。ある親が言っていましたけれども、子どもを揺すったらいかんなんて誰も教えてくれやんかったということなんですね。それは親御さんの言い方なんでしょうけれども、やはりそういう啓発というのも非常に大事になってくるんだろうと思っております。
 では、二つ目の虐待です。心理的虐待。
 「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」というのがまず書かれておりますけれども、これは子どもに暴言を吐くということでわかっていただきやすいところだと思います。ただ、今、児童相談所で一番問題になっておりますのは、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、これを見せつけることですね。子どもの面前でDVを行うということで、面前DVというふうに我々は呼んでおります。夫婦げんかも子どもの心には傷をつけるものなんですけれども、DVということになってまいりますと、これは問題が数段も深刻になってまいります。DVというのは、単なる夫婦げんかではなくて、支配構造がその背景にあると言われております。これは、力にまさったものが家族を奴隷のように扱うということなんですね。
 こちらが元暴力夫のもとからシェルターへ避難したお母さんの手記ですけれども、「自分のペースで家事が出来るのでとても楽しい。お風呂の後も自由に動くことが出来るので、テレビも見れる。お茶も飲める、トイレも出来る、自由に部屋も歩ける」と、こんなことを書いております。これですね。普通見ると何のことかよくわからないと思うんですけれども、実際この家庭では、力を持った支配者、夫が、奥さんのすることに全部許可を出すということになっていました。ですから、許可がないと何にもできないような状況で、がんじがらめになっていたということが、この手記の背景から読んでいただけると思います。たとえ逃げ出そうとしても、暴力を振るわれるであるとか、子どもを殺すであるとか、いろんなことを言われて、がんじがらめになってしまうということなんですね。こういう支配関係のある家庭に子どもがいると、どういうことになるかというと、こんな事件が起こってまいります。ぜんそくに効くということで、風呂で長時間息をとめさせる、顔つけを強要し、男児が溺れて救急搬送された事例。それから、ささいな失敗に対してスクワット1000回などの罰を与えて、きょうだいに監視役をさせた事例。母親に暴力を振るい恐怖感を植えつけた上で、連れ子の女児に性交を強要していた事例。こんな信じられないようなことが次々起こってくるということでございます。
 DVは本当は、心理的虐待というふうに分類されるんですけども、内容としてこのように身体的虐待であるとか、性的虐待が伴って起こってくるということで、DVと児童虐待というのは一つの問題の表裏であって、別の社会的な問題ではないと私たちは考えております。
 では、次の養育の放棄、怠慢。私たちは通称ネグレクトと呼んでおりますけれども、御紹介をさせていただきます。
 このネグレクトは、しなければならないことをしないという範疇でくくれる虐待でございます。例えば児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食。右側のグラフ、これは体重のグラフなんですけれども、ぎざぎざしているところが見ていただけます。大体どのお子さんも、大きな子どもはその上のほうの線に沿って、小さい子どもは下のほうの線に沿って、きれいに直線で上がっていくものなんですけれども、こういうネグレクトの子どもというのはぎざぎざしてくる、もしくは途中でこの線の角度が大きく変わって、伸びなくなってくるということがございます。特にこのケースの場合は、がくっと落ちているところが夏休み明けということで、やはり給食でおなかを満たしていた子どもなんだろうと思われます。
 ネグレクトは様々ほかにもありますので、ちょっとこんな例で御紹介をさせていただきます。例えば左上の写真、これは居宅が大変不衛生ということですね。衛生的な環境を準備しないということで、これもネグレクトになります。この家庭は大人の腰ぐらいまでごみが積もっておりました。
 二つ目、長時間子どもを放置している。左下の写真は、子どもの部屋に外側からかけ金がかかるようになっておりまして、子ども自身が出られないという状況の家庭でございました。それ以外にも、保護者が精神疾患にかかり十分な世話ができない。これは非常に調子がいいときはいいんですけれども、悪くなってくると子どもの世話が十分できないということで、非常に子どもにはつらい状況になってまいります。必要な医療を受けさせない。例えば重大な病気にかかっても、もうこのまま死なせちゃってくれということで赤ちゃんの治療をしないであるとか、親の思想信条によって医療を受けさせないというような事例も聞いていただいたことがあると思います。様々しなければならないことをしないというようなことが通告されてまいります。
 では、最後の虐待種別としまして性的虐待をお話しさせていただきます。
 「児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること」という定義になっておりますけれども、これですね。児童相談所につながってくる性的虐待というのは、結構、父親が娘に性交渉を迫っているというような話が出てまいります。最初はそういう話に我々もびっくりしていたんですけれども、そのうちなれてまいりまして、ああ、またそういうのが来ましたねみたいな話になってくるんですね。これは、最初は性的虐待という形であらわれなくても、途中でいろいろ話を聞く中でわかってくるということもございます。私が経験した事例では、小学校2年生から性交渉を迫られていたという事例がございました。その子は最初、何をされているのかわからんかったと話をしておりました。ということで、これは後々被害に遭われた女性の心に非常に大きな傷を残す。大人になっても非常に大変な気持ちの揺れを経験するということで、非常に重篤な虐待でございます。我々、日ごろの中で思いますのは、DV家庭でこの性的虐待がやはり割と起こってくる、支配構造の中で起こってくるということが感じられます。面前DVというのが今非常に増えているというお話をさせていただきましたけれども、その背景で、性的虐待というのが隠れていないのかどうかというようなところは、非常に心配になるところでございます。
 ということで、ざっと御紹介をさせていただきましたけれども、多くの事例で加害親はもちろん、被害児も、それが虐待であるということがわかっていないことがございます。私はいろんなところでお話しさせていただきますが、大学生相手にお話をして、終わった後で学生が1人、2人、寄ってきて、今まで自分はすごく苦しい思いをしていたけれども、今日わかりました。自分は虐待をされているということが初めてわかりましたみたいなことが、これは1回や2回ではないんですね。ということで、本当に、被害に遭われている方もわからない、気づけないと。例えばしつけのつもりということであれば、自分が悪いからこういうことをされているんだというふうなことになってしまうということで、やはり周りの方がいかに気づくかが一つ大事になってくるんだろうと思います。
 では、近年の主な取組と課題ということで御説明をさせていただきます。
 関係機関との連携強化、リスクアセスメントの開発と運用、この辺にふれさせていただきます。
 まず、いろんな事件が起こりますたびに、連携を強化するようにというお話が出てまいります。ということで、どんな形で進めてきたのかということなんですね。まず、一つ目としまして、一番の基本になります市町との連携、二つ目は、最近よく言われます警察との連携、三つ目は、新しい連携になります検察との関係についてお話をさせていただきます。
 まず、これが体制強化確認票と言われるものです。これは市町との連携の部分なんですけれども、平成22年に重篤な事例が発生したことを受けて取り組みましたのが、この体制強化確認票の開発でございました。これは児童相談所だけではなくて、市町もそういう虐待にすごく大きな力を発揮するということがありますので、県だけではなくて、市町のほうの強化も一緒に進めていこうということでつくったものです。ここは50項目のリストになっておりまして、例を挙げますと、地域住民に市町で啓発を実施しているということ、それからケース記録というのは個別に作成をしているということ、それぞれそういうような項目は書かれております。これは、まず市町のほうに送付いたしまして、自己評価というのをつけていただきます。マル、三角、バツというのをつけていただいて、後に児童相談センター、児童相談所職員が市町のほうに出向きまして、それを見ながら、例えば前年に比べてここがプラスになったねとか、ここはまだもうちょっとだねとか、そういうふうなことをお互い話し合いながら進めていく。児童相談所に対する要望も、そこでお聞きするという対応をとっております。そういう中で、両方ともが力をアップしていけるようにということを目指しているところでございます。
 市町に関しては、こういうこともやってまいりました。人事交流ですね。今のところ4市で実施しておりますけれども、これですね、本当に住民に一番近いところでいろんなサービスを展開する市のほうに児童相談所職員が行かせていただくということも非常に勉強になります。逆に、市町の方に児童相談所へ来て、専門的な対応というのを学んでいただくのも、帰られてからのいろんな対応を考えていく上で非常に役に立つと思います。ということで、これは一定の効果を挙げてきたんではないかと思います。
 この市町との連携の課題です。まず、体制強化確認票、先ほど御紹介しましたけれども、これで確認できる具体的な項目は大分改善をされてきたんですけれども、ただ、改善が進まない項目というのが残ってくるんですね。この市ではここまで行ったけれども、そこからなかなか進まない。つまり三角とかバツとかいうのが、一定のところまで行くと、なかなか減っていかないということになっていきます。それは、当然市町におかれましても、様々な優先順位もつけて判断をされているものであって、子どもの問題に全ての予算をつぎ込むということはできないんでしょうけれども、次にも書いておりますけれども、やっぱりそういう差が出てくるということがございます。
 県からしますと、県に住んでいるどの子どもも同じようなサービスを受けられるというのが非常に大事なことだろうとは思うんですけれども、やはり市町によっては、そういう差が出てくるということが現実的にございます。
 それから、人事交流についてですけれども、これは非常に有意義だったと思うんですけれども、県の人材不足であったりとか、受け入れ側の市町のいろんな優先順位、お考えもありまして、継続的にとか全てのところで行うことはなかなか難しいということがございました。
 では、二つ目の警察との連携について御説明をさせていただきます。
 これは平成30年8月に、三重県と市町、それから県警本部の中で協定を結ばれております。この辺は委員方も御存じだと思うんですけれども、私の感覚で言いますと、実質、平成25年度に児童相談センターに警察官が配置されるというところから大きく連携が進んできたように思います。これを見ていただくとわかりますけれども、児童相談所と警察本部というのは、まず当然1本の線で結ばれていて、いろんな情報交換をしているわけですけれども、やはりいろんな目的であるとか考え方が違う組織でもありますので、中には感情的なやりとりになってしまったりとか、難しい話になってしまうという場合が現実にございます。そういうとき、他の県であれば、1本の線だけでやっているんであれば、例えばしばらく連携関係がとまってしまったりということがあるのかもわかりませんけれども、三重県の場合は児童相談センターに現職の警察官がいるということで、2本線があるということなんですね。児童相談センターと警察本部の間でもいろんな情報交換ができるという形で、そういうふうに現場同士のやりとりの中でちょっと詰まるようなことがあっても、そこを両方がカバーし合っていろんな調整ができるということで、これは現場を担っていただいている警察官の方に大変なしんどい思いをさせているところはあるんですけれども、やはり組織の考え方の違いというところは、こういう地道な努力を積み重ねることで乗り越えていく必要があると思います。
 左側はそういう関係の中で、立入調査の訓練なんかも警察の方と一緒に実施してきたところです。右側は、警察学校の学生が児童相談所で研修をされていると。こういう関係もあるということでございますね。
 そういう中で、平成25年度からずっとこのように警察の方に児童相談所の現場に来ていただくということが増えてまいりました。こういうことで連携関係が進んでいると言えると思います。
 では、新しい連携であります。検察との連携ということでお話しさせていただきます。
 左側の写真を見ていただきますと、検察・警察・児童相談所による協同面接という場面が映っております。これですね。テレビに映っておりますのは、隣の部屋で子どもに面接をしているところですが、一緒に聞いているのは検事と警察官と児童相談所職員ですね。この協同面接というのは、性的虐待などで福祉的な対応と刑事司法的な対応を両方一度に進めていくような場合に取り組まれるものです。これは、例えば児童相談所も警察も検察もそれぞれ別個に被害の部分を聞いていくと、子どもにとっては思い出すことが非常に心理的にもつらいということになって、再被害に遭うという形と同様のことになってしまう可能性がありますので、それをなるべく一度で済ませようということがあります。それから、子どもの記憶というのは変わりやすいところがありまして、例えばちょっとした誘導なんかにも、その内容が変わってしまうということがございます。ですので、面接をしている職員は一切面接の中で誘導ということがないような訓練を受けた職員でして、その面接の様子をこういうふうにビデオにも撮りまして、場合によってはそれを裁判の証拠にも使っていくという形で、一緒に作業を進めていけないかというような対応をしているところです。平成27年に警察庁、最高検察庁、それから厚生労働省からもこういうのを進めていくようにという通知が出ておりまして、三重県もちょうどそれと同じく、ちょっと早いんですけれども、26年の末ごろからこういう取組を積極的に進めてきたところでございます。
 こういう中で、非常に児童相談所にとっても役に立つ部分が見えてまいりました。例えば、性的虐待を受けた子どもの処遇を決定するのに、従来であれば、加害者の側の処分というんですか、それが全然見えなかったところがございます。つまり、例えば半年でも1年でも捜査に時間がかかってくるわけなんですけれども、その間、子どもは家に帰れるのか、いや、もうすぐ父親が戻ってくるので帰れないのかとか、そういうことが児童相談所にはわからなかった。子どももストレスにさらされるということがあったんですけれども、協同面接の中で、前後に関係者の方といろんな情報交換をする中で、先が一定見えるような部分ができてきて、子どもの処遇というのを子どもも納得する形で決めやすくなってきたということはございます。右側は研修なんかを一緒に時間外にやっているところの写真でございます。
 ということで、こういう連携の課題ですけれども、三重県は決して後ろ向きにやってきたわけではないと思います。非常に前向きに進めてきたんですけれども、目的や背景にある法律が異なる組織の連携というのは、実は簡単ではございません。やはり一緒にすることでお互いの仕事にメリットになるような関係がないとだめだろうというふうに思います。情報共有さえすれば何とかなるというのは、ちょっと甘いんではないかと思います。逆に、生情報を共有することで、かえってあつれきが深まってしまうということも起こるということで、相互に相手の立場を理解する視点というのが大事ですので、本当に様々なところで議論をしながら関係をつくっていく、これは時間がかかると思うんですけれども、そういうことが大事だと思います。
 それから、その下の「連携の中で起こる組織の役割変化」ということがございます。福祉が、例えば刑事司法化という形で、警察の仕事のほうにどんどん近寄っていきますと、児童虐待という部分ではすごくいい部分もあると思うんですけれども、それ以外の児童相談所の福祉として担ってきた仕事をどこが担うのかであるとか、どのようにしていくのかということが一つの課題になってまいります。ということで、「社会での存在意義」というのは、今、児童相談所は児童福祉の機関としてあるわけですけれども、その辺が非常に微妙なことになってしまう可能性も将来的にはあるということを検討しておく必要があると思います。
 では、二つ目のリスクアセスメントの開発と運用というところのお話をさせていただきます。
 これは、委員方に鈴鹿児童相談所を見学に行っていただいた際、児童相談センターのほうからも御説明があったとお聞きしておりますので、簡単にお話をさせていただきます。
 まず、虐待対応のポリシーというのを聞いていただいたと思います。児童の安全にフォーカスするというのが一番のメーンでございますけれども、これは、児童虐待対応に関しては、保護者との関係性維持に力を注ぐのでなく、まずは子どもの安全を最優先に行動するという一つの考え方でございます。
 この三重県版リスクアセスメントシート、これも見ていただいたと思います。真ん中のこれで、15項目ここにありますけれども、一つでもチェックがつくと一時保護を検討するという項目になっておりまして、これはいろんな研究からとってきた、背景にエビデンスのある項目ということになっております。
 では、一つでもチェックがつけば、それを粛々と一時保護として実行しているのかということなんですけれども、せっかくこのような機会を与えていただきましたので、現場で悩んでいるところをちょっと御説明したいと思います。
 例えば、リスクアセスメントでチェックがついて、これはもう保護ですよというふうなケースなんですけれども、現場からはこんな連絡が入ってまいります。精神的に不安定なお母さんなので、これを保護すると自殺してしまう可能性がありますよ、こういうふうなことが入ってくると、これはもう所長なり課長なりというのが、一体どうしたものかと非常に悩むというのはわかっていただけると思います。例えば父は末期がんで余命2カ月という診断を受けています、その子どもを保護するんですかというようなことですね。それから、園長、これは校長という場合もありますが、「保護はまかりならん」と。これもいまだに若干はやっぱりございます。それから、お母さんは間もなく出産予定ですけど保護しますかとかですね。子どもが「絶対に行かない」と言っています。例えばこれは、先ほど御紹介しました面前DVのケースなんかで支配がきつい家庭の場合は、門限が非常に早い段階に決まっていたりします。例えば午後4時には絶対帰ってこいと。我々が子どもと話をしていますと、4時が近づいてきて、時計を気にして、もう本当におろおろしてきて話どころではなくなってくるんですね。その中でもう泣き出してしまうような子どももいる。もう早く帰らんとあかん。そういう縛りを切るのこそが児童虐待への対応ということにはなるんですけれども、やはり子どもをどういうふうに説得していくのかとか、そういうことで非常に現場では悩みが多いということはわかっていただけると思います。
 そういう中で、やはり押してきたことの結果として、左側にありますように、一時保護が非常に増えてきたということがございます。平成24年の倍以上の件数に、今、虐待を主訴に緊急一時保護を行った子どもの数というのはなっております。
 では、家に帰れない子どもが増えてきたのかというと、そうではございません。右下のグラフ、これも御説明されたと思いますけれども、1週間未満で家に帰れる子どもがすごく増えてきているということでございます。それをまとめましたのが、これです。虐待状況がありまして、軽いあざがあって、でも、子どもはやっぱり親元にいるのが一番いいということで、従来は上の対応をとっておりました。ひどいけがになるまで何とか見守りということで在宅で進めておりまして、もうどうしようもないところまで行って保護をして、親御さんに返さない、施設とか里親にお願いするというような対応をとっていたわけですけれども、このリスクアセスメントを導入するようになって、軽いあざで保護をして、まだ早い段階ですので、いろいろ話をする中で親御さんとの改善とか、そういう話し合いなんかもできることが多うございます。そういう中で、早い段階で家庭復帰を目指せるというふうなことになってきた。もちろんこの中で再発という事例もございます。そのときは、きちっとまた保護をする中で、その次はどんなことを考えていくのかということに話を進めていくということがございます。
 ということで、リスクアセスメント導入の効果ですね。そのように非常に職権でこういう緊急保護が多くなってきましたので、一時保護へのちゅうちょというのが減少いたしました。最初は保護者に同意もなく保護するということに対して非常に職員に抵抗があったりもしましたけれども、現在はそういうことがなくなってきたと思います。つまり介入型の対応が根づいてきたということですね。早期に保護をすることにより、平均一時保護期間が短縮されております。
 それから、三つ目ですけれども、市町ともポリシーや対応基準の共有が進んでまいりました。これは、かつては、市のほうが心配であって、何でこれを児童相談所で保護してくれやんのやというふうなことを再三言われて、児童相談所は、いや、まだであるとか、いろんなことを言っていて、お互いのこの話が非常にストレスになっていたということがございますけれども、こういう一定、明確なところが出てまいりますと、市のほうも、ここまでやれば、あとは児童相談所のほうが引き継いでくれるというところがわかってまいります。こういうことが効果という形で見えてきたということでございます。ただ、マイナスの効果といたしまして、児童相談所の業務量が、これはやはり増加しております。
 それと、もう一つ、効果ですけれども、このリスクアセスメントシートですね、まず、それぞれのケースの一時保護判断のためにつけてきたものなんですけれども、これが6000件ぐらいたまってまいりまして、それを分析することでいろんなことが見えてまいりました。どんな事例が再発しやすいのかであるとか、どんな対応をすれば再発が減るかというふうなことが客観的にデータとして見えてくるようになったということでございます。
 実は、こういう分析は今まで日本の児童相談所で行われたことがございませんでした。ということで、今、各県とも、ベテランの退職であるとか、児童相談所の人員を増やすということで新しい方がどんどん増えている中で、この経験が引き継がれにくいというところがありまして、こういうデータの中できちっと見ていくということを各県とも重視していただくようになってきまして、三重県の取組も注目をしていただいているということがございます。
 課題です。
 継続的なデータ分析をどう担保するかというのが一つございます。リスクアセスメントのように一つできますと、行政的には、ああ、いいものができたね、じゃ、これを使っていきましょうということで、一旦そこで終わりになるわけですけれども、実はこういうふうに蓄積をしながら、いろんなデータ分析を進めていくということでは、ずっとそういう対応を続けていかなくてはなりません。つまり継続的なデータ分析、一回きりのリスクアセスメントをつくるとか、そういうことではなくて、どんなふうにデータ分析を続けていくのかということですね。
 それから、データを集めるということについては、やはり労力なりそういうふうなことがかかります。多くのデータを効率よく集めるにはどうすればよいのか、それが業務量の増加ということにもつながってまいりますので、そこをどう減らすのかということが課題になっています。これは、タブレットの導入とかで何とかならないかということで取り組んでいるところでございます。
 それから、意思決定のブレをどう減らすか。先ほどちょっと御紹介しましたように、実はいろんなことが起こってきて、一時保護の率というのは変動いたします。これが、先ほどのような外因的なことだけではなくて、例えば所長とか課長の考え方によっても変わってくるということがございます。一定のレベルの範囲内で上下している分にはいいと思うんですけれども、これがどんどん下がってきて、例えば保護率が10%を割ってまいりますと、いずれ事件が起こってくることにもなりますので、そういうことをきちっと見ていく必要があるというのが課題でございます。
 最後、これは三重県だけの課題とは限りません。支援型の対応をどうするのか。今、社会的な要請もあって、児童相談所は全国的に介入型の対応というところに力を入れております。その後の支援型の対応をどこがするのかということは、どこでも課題になっておりまして、都市部であれば、例えばNPOにお願いするとか、いろんなこともあるわけですけれども、三重県の場合はそこが十分にできていないというところが課題になっております。
 では、トロント視察報告ということで御報告をさせていただきます。
 実は10年ぐらい前から、カナダの西海岸にある都市に児童相談所があるんですけれども、そこの方にも知り合いがおりまして、いろんな連絡をとってまいりました。そういう中で、今回、トロントの視察も、非常に興味深く、知事の視察に同行させていただいたという経過がございます。平成29年9月のことでございました。幾つか参りましたけれども、今日はこの三つを御紹介させていただきます。
 まず、トロントCASというところですね。これは、向こうの児童相談所に当たる機関です。児童相談所は、向こうは、実は法的な対応もできるNPOが担っているというふうな形なんですけれども、児童相談所の方にお話を伺ってまいりました。オンタリオ州では、通告事例の70%は貧困家庭に属するということをおっしゃっていました。つまり児童虐待とそういう経済的な状況、貧困というのは非常に関係するということでした。それから、保護者からの子どもの分離は極力しない方針に変わったというふうなことをおっしゃっておりました。これは、従来は、このトロントCASもそうですけれども、例えば子どもの虐待があると、あちらは裁判所で親権をとめたり、剥奪したりして、その後、里親にお預けするという対応をとってきたわけです。里親にお預けする中で、例えば里親からこんな難しい子はもうちょっと対応できないというような話があって、里親宅を転々とするということであったりとか、里親のところから逃げ出していなくなってしまう、ホームレスになってしまうということなんかもあって、なるべくそういう環境が変わるような分離というのをしないようにしようという方針に変わってきたということでした。家族を一つのまとまりとして強力に支援をしていくんだということですね。もし分離となってもできるだけ早く家庭に戻すという対応に大きくかじを切ってきたとおっしゃっておりました。知事がもしもここで死亡事件とかが家庭に帰した子どもに起こったらどうするんですかというふうな質問をされていましたけれども、いや、それでも家庭に帰すという方針は変わりませんというふうに説明をいただいたところです。こういう対応を進めているということでございました。
 次に、トロント大学の大学院を訪れたときの様子を御報告させていただきます。
 ここは、オンタリオ州の児童虐待のデータベースというのをお持ちなんですね。1993年からそのデータベースを構築されていまして、今や150万人分のデータ蓄積があると。三重県は6000件でしたけれども、オンタリオ州では150万人分のデータ蓄積があると。それらの分析から、州内の虐待状況とか施策の効果、今後必要な対応について分析して、関係者にフィードバックをしていますということでした。まさにエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングというふうな、エビデンスに基づいた施策の決定がされているということだと思います。
 その中から見えてきたこととして、オンタリオ州では緊急対応ケースは減ってきていると。ただ、慢性的なケースは増加しているということでございました。この緊急対応ケースといいますのは、例えば命にすぐ結びつくような身体的虐待なんかが当たると思います。慢性的ケースというのは、例えばネグレクトですね。家庭の状況が非常によくなくて、すぐに命には結びつかないけれども、徐々に子どもに影響が出てくるというものだと御理解ください。ということで、行政の目はどうしても緊急対応ケースに向きがちですけれども、データ分析からは決してそうではないと、慢性的なケースも予算と人員を入れるべきであるということが語られていました。
 では、オンタリオ州の通告の比較ですけれども、これを見ていただくとわかります、左側二つがオンタリオ州ですね。ちょっと日本とは統計のあり方が違いますので、このような2段階になっておりますけれども、通告、児童虐待実証数というのが、これぐらいの数が出ております。それに比べて三重県、日本の数というのは非常に少ないというのが見ていただけます。これを見て、向こうの先生がまず、多分日本は緊急ケースばかりが通告になっているんじゃないですかというふうなことをおっしゃっていました。それは、現実に当たらずとも遠からずという可能性もあるかもわかりません。
 ということで、次の行ったところを御紹介させていただきます。ブースト子ども若者アドボカシーセンターというところに参りました。
 ここは、NPOがやっているアドボカシーセンターなんですけれども、ここの中に警察と児童相談所が同居しているという非常にユニークな対応をされています。下の写真を見ていただくとわかりますが、ガラスのドアがありまして、その奥が警察署になっています。手前が児童相談所の部分ですね。それがNPOの中にこういうふうにガラス1枚隔てて存在しているということなんです。初期調査であるとか、子どもの保護なんかはそういう公的な機関が行いまして、その後のいろんなトラウマの治療であるとか、そういうことも含めてNPOのほうがやっているという、スムーズに後々までつながっていくような対応をやられているんだろうと思いました。こういうことも、非常に参考にさせていただいたところです。
 これは後でいただくことができたんですけれども、今のアドボカシーセンターで、こんなものをもらってまいりました。これは、身体的虐待・性的虐待の共同調査のための協定書というものでございます。右側に、そこの関係機関、警察とか児童相談所とか様々なものの代表者がサインをしている協定書ですけれども、これですね、実は53ページもあるんですね。分厚い協定書になっておりまして、詳細に連携の内容を規定しておりました。どうしても、連携というと例えば守秘義務をお互いに守りましょうねというふうな、割とざくっとしたような形の連携の中で、あとはその現場でやりましょうというふうなことが多いわけですけれども、こういうふうに具体的な内容を決めていくということが、やっぱり先ほども申しました目的の異なる機関にとっては、非常に大事なんではないかなと思います。
 では、最後の、現在の課題とあるべき姿ということで、ここにありますような項目で思うところをちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 まず、児童相談所職員の時間外勤務をどう減らすかというところでございます。
 これ、あるケースワーカーの1日ということで書かせていただきました。朝の9時前後から難しい事例の打ち合わせであるとか、家庭訪問の打ち合わせなんかを課長を交えてやっております。その後、電話が頻繁にかかってくるということで電話対応に追われます。あっという間に昼になりますね。その後、時間を見つけて里親宅であるとか、施設であるとか、そういう家庭訪問もしながら、その間に虐待通告があると、家庭に行って、場合によっては子どもの保護をするということもあるわけです。保護をしてきたら、親御さんを呼び出して話をしなくちゃいけませんけれども、昼間は仕事があるということで、そんな昼間なんか行けやんということですので、そういう面接が夜になるということで、7時とか8時とかから面接が始まると。非常に攻撃的なというか、怒鳴ったりするような方もおられるわけですが、夜間にそういう対応をして、ちょっと落ち着いたところでもう9時になってくるというようなことで、じゃ、また翌日以降で話し合いをしましょうということで、そこから児童相談所職員は記録をつくって11時ぐらいになって家に帰るというようなことがあるわけですね。ここで帰れればいいんですけれども、実は夜間の通告というのがまだございます。先日も北勢児童相談所の所長と話をしておりましたら、全体の通告の2割が時間外にかかってくると言っておりましたので、ここでやっと帰れるかといったところで、また通告が来て、それが深夜に及ぶというようなこともございます。
 ということで、本当に過労死ラインなんていう言い方をされますけれども、児童相談所職員は、非常に厳しい仕事も続けているという現状を見ていただけると思います。
 これは、乳児院という施設ですね、乳児院に入れる場合と里親に委託する場合の業務量の差をグラフにしたものですけれども、今、国は家庭養育推進ということで、里親のほうにすごくかじを切ってきております。それはすごくいいことだというふうにも思います。施設も一生懸命やっていただいているんですけれども、特に小さい子どもは里親のところで育つというのが非常に大事なところもあると思うんですけれども、児童相談所にかかってくる業務量というのは、これだけ差があるわけですね。ということで、児童相談所の仕事は、いろんなことが出てくるたびに増えていくというような状況になっております。
 どういうふうに減らすかということなんですけれども、児童相談所は、児童虐待であるとか非行であるとか、そういう児童相談所でしかできない仕事に特化をして、例えば二本柱のもう一本、件数が出ておりましたが、療育手帳の判定とか、そういうものは児童相談所以外の部署で担っていただくことができないのかなと思います。
 それから、支援部分ですね。先ほどからちょっと、支援というのはなかなか、もう今は介入に非常に時間がとられているというお話をしました。支援というのは、市町であるとか民間の児童家庭支援センター、施設なんかに附置をしていただいています、そういうセンターなんかに任せるということも視野に入れていけるんではないかと思います。
 ケースワーカーのみではなくて、バランスをとる形での職員増員というのをぜひとも実現していかないと、これは児童相談所の時間外勤務が減らないと思います。ケースワーカーのみ増やしても、例えば一時保護所がいっぱいで子どもが入れないということであれば、私も経験がありますけれども、相談室に布団を敷いて自分が子どもの世話をしながら寝たというようなこともあるんですね。そういうことで、ケースワーカーだけ増やしてもなかなかうまくいかないということがございます。
 今、働き方改革、これは非常に大事なことなんですけれども、人が増えない中でそれを余りに強く進めますと、つまり時間外勤務を抑えろということでやってしまいますと、確実に仕事の質が下がってまいります。それとともにチームワークが崩れてくるということで、いずれ事故が発生するということにもなりかねません。非常にそこは工夫して、いろいろやっていただきたいと思うところです。
 人材確保、人材育成をどう進めるかという、これもまた難しい課題でございます。ここに出しておりますのは、児童福祉司、ケースワーカーですね、任用後研修の法定カリキュラム、児童福祉司になった職員に対して法律に決められたこれだけのカリキュラムの研修をしなさいということなんですけれども、90分が20こまで、大学院の1年間の授業に匹敵すると言われる先生もございます。これが、もうここまで法定ということで言われても、なかなか受ける時間すらとれない。忙しいところほど、なかなか時間がとれない。でも、義務研修ですので、補講とか、いろんなDVDを見るとかいうことで時間外にやったりとか何やかんやしながら、つじつまを合わせているわけですけれども、本当にそういうことで、大変な状況、研修にも追いかけられているという状況がございます。
 これですね、先ほどもお願いしましたような人員確保という上で、人材育成を進めていくということがやっぱり必要不可欠になってくるんだろうと思います。都市部では今、例えば東京なんかでも児童相談所を区部に設置するということで、非常にそういう職員の不足感が強まっておりまして、関連分野で働いた経験のある職員を社会人採用するということも積極的に行われているようです。そんないろんなできる手をとりながら、人材育成を進めていければと思います。
 次ですね、施設の多機能化、高機能化とその支援ということになります。
 これですね、ある施設が昨年まで開催しておりました市民向けの子育て講座の写真でございます。ペアレンティングプログラム、親子の関係をつけるようなプログラムを勉強された職員が、市民向けにこういう講座を開いているという場面なんですね。このペアレンティングプログラムというのは、例えば子どもが家庭に帰るとき、施設から帰るときも、その親御さんに対していろいろするということで、非常にいろんな使い道があります。ただ、資金的にも、その研修を受けるというのはかかりますし、職員への負担もかかって、結局去年で中止になったと聞いております。施設は、多機能化に向けて里親支援であるとか、先ほどから申しております民間の相談機関であるところの児童家庭支援センターの設置など、非常に様々な努力をしていただいているところが多いです。そういうやる気のあるところにいかに支援をしていくのか、多機能化の中で里親を支援するとか、様々なことをどういうふうに進めていくのかということを考えるのはぜひ必要だろうと思います。
 次に、市町の相談、支援機能強化をどう図るかということでございます。
 正直なところ、市町の本音といたしましては、例えば市町に専門性を持った職員が十分いないということであるとか、やっぱり虐待というのは児童相談所の仕事ではないのかという思いがまだあるんではないかと思います。真剣にその市町の役割を考えているところと、そうでないところの差があるというお話もさせていただきました。これは決してマイナスという意味ではなく、例えばほかのところに力を入れなきゃいけないということ、市町の事情もあると思います。でも、子どもにとっては、どういうふうにしていくのか、やっぱり一律に最低限のサービスを保障していくということは大事だと思います。ということで、ここにありますような子ども家庭総合支援拠点ということを、国も2022年の末の全国展開をにらんで、いろいろ考えているところでございます。
 三重県内でも幾つかの市町ではこういうのを検討しているとは聞いておりますけれども、現実には今のところまだ立ち上がっておりません。そういうことで、本当にそういうところの職員の支援であるとか、人材交流とか、そういうことが三重県としてもできればいいなと。もし、例えば人口規模の問題だとか、いろんなことで自前のサービスが困難なところは、先ほど言いましたような児童家庭支援センターというのを三重県内に立ち上げて、そこに委託をするということも考えられるんではないかと思います。
 それから、今後のその展開ですね。例えば県と市町の役割分担なんていうことも考えてまいりますと、体制強化確認票は限界があるというお話を先ほどさせていただきました。これですね、それをちょっと改めまして、例えば県と市町の協定を締結するということも考えられるんではないかと思います。県と市町が協定を結ぶというようなことは余り聞きません。協定というのは、大体例えば警察と結ぶであるとか、NPOと結ぶというものが多いと思いますけれども、市町ときちっと話をして役割分担を決めていくというようなこともできるんではないかと思います。
 最後ですね、子どもや教職員への啓発をどうするかということでございます。
 児童虐待防止法の第5条に、「学校及び児童福祉施設」、これは保育園なんかだと思いますけれども、「は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない」と書かれております。私は年に結構多くの回数、いろんなところへお話に行きますけれども、小中学校の子どもに直接語りかけるということは、実は今までに1回しかございません。それもキャリア教育ということで、児童相談所がどういう仕事をしているか紹介してくださいということであって、児童虐待の内容を詳しくお話しするということはありませんでした。そういう意味では、それも非常にいいとは思うんですけれども、子どもに対してやるとか、保護者に対して、学校も我々県も一緒になって、私ども児童相談所も一緒になってこういう研修を進めていくというようなこと、これは非常に大事なことだと思います。
 例えば自分が暴力に遭ったとき、友達が暴力に遭ったとき、それは親御さんに限りませんけれども、そういうときにどんな対応をすればいいのかということも、きちっと伝えていくと。その中では児童相談所の役割もあるんだよというようなことを子どもにもきちっと伝えていければ非常にいいんではないかと。つまり児童相談所とか、県のほうも、学校などに任せっ放しにせずに、そういうことも一緒に考えていければいいなと思っているところでございます。
 長時間ありがとうございました。とりあえず、こういう形で私からのお話を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

〇中瀬古委員長 ありがとうございました。
 それでは、このままの状態で進行させていただきます。

  イ 参考人への質疑

〇中瀬古委員長 それでは、ただいまの御意見を受けまして、委員の皆様方から御意見等をお願いいたします。
 なお、念のため申し上げますが、参考人は委員長の許可を得て発言し、また委員に対しては質疑をすることができないことになっていますので、御了承願います。
 それでは、御質疑があればお願いいたします。

〇青木委員 最初に、しつけという名の許される暴力はないという話でした。揺すぶりによって脳から出血したりという影響もあるということで、その辺は親の虐待をしているという認識の薄さというか、しつけをしているんだという自信というか、そういうのが強いように感じます。最後に、学校内でそういった教育、啓発をどうするかと。時には専門家の方が見えてPTAの研修会とか、いろんなところで出る機会も少しはあると思うんですけれども、私も昭和の最後のほうに教育現場におったもんで、例えば中学校に勤務していたときは、家庭科は、今、男女共修にどんどん進んでいるんで、その中で男女ともそういったことを、家庭科の保育領域の中で指導するとか、それから高校も、今、家庭科は男女共修になっていると思うんで、その辺、今ふわっとした感じでなっているかわかりませんけども、まずは子どもたちが親になったときにしなかったらゼロになるわけですから、今現在の問題もありますけども、そういう将来のことを考えて、認識の違いから、しつけとは何ぞや、昔からだんだん変わってきつつある中で、これからの子どもたちが親になるときの、いろんなそういうような教育が非常に大事という認識はあるんです。そういったあたりをちょっと思うんですけれども、考え方としてそれでいいんでしょうか。教育現場の教育内容にきちっとした、虐待というものの内容を取り入れても、相手が子どもですから、中学生、高校生ですから、その辺はどうなのかというのが一つ。
 もう一つは、小学校2年生の子どもが親の虐待で犠牲になって、という話もありました。そうすると、大学生が言うてきたという話ですけど、その子どもらが自分の親から何を、その辺の虐待されている認識が薄くて、今なるほどと10年たって気づいたという話だと思います。非常に不幸な話ですし、そういったところで小学校、また低学年の時代から、親は家庭内でね、トロントの話じゃないですけど、家庭内で帰結するのが一番いいのかわからないけども、親を疑いなさいとはなかなか言いにくい部分になるんですけれども、子どもらが気づいて、これはおかしいなということを例えば小学校低学年の子どもが担任の先生や養護の先生に訴えられるようなチャンスというか、それは周りが気づくのが一番いいんですけども、それが難しい場合、本人の心の中にしまわれていることがあるので、そういったところも、今ちょっと認識を新たにさせていただいて、小学校の子どもらにはどんな啓発をしたらいいのかなということもちょっと感じるんですが、参考人のお考えがあれば教えていただきたい。
 以上です。

〇鈴木参考人 まず、質問ありがとうございます。
 お話しさせていただきますけれども、教育がどれだけ大事かという点は、私も教育の専門家ではございませんので、これは学校の先生方にお考えいただくことではあるんですけれども、現実に、例えば諸外国では、親を悪者にするという意味ではなくて、一般の方からの暴力なんかも含めて、そういうふうなことがあったときにはどんなふうなSOSを出せばいいのかとか、そういうことはきちっと小さい子どものころから教育されています。ただ、それが性加害、例えばスーパーのトイレで何か変質者にさわられたとか、そういうことも含めて、どうすればいいのかということはきちっとやられているとお聞きしております。これは決して親をどうのこうのということではなくて、子ども自身の安全をどう守るのかということだと思いますので、別に親を悪者にするわけではないですので、様々な機会でもって、これは進めていくべきだと思っております。
 低学年の子どもにも、そういうことはすごく大事だと思います。イギリスの虐待防止協会がつくっております動画があるんですけれども、幼児向けの、性加害を受けたときにどうすればいいのかみたいなのを説明している動画があるんですけれども、本当にこういうとこら辺も力を入れてやっているんだなということで、すごく大事だと思います。今、メディアで児童相談所がすごくやられています。子どもたちも当然それを見ていますので、もう子どもたちの中には、それなりにいろんな知識はあるんだろうと思います。中には、私がそれこそ一般の方にお話しすると、ああ、児童相談所はそんな仕事をしていたんかと、何もせんと座っているだけで税金を無駄遣いしている部署やと思っとったみたいな反応があったりするんだけど、やっぱり子どもも、児童相談所が何をしているところなのかということは、今のメディアの中でわからない可能性もありますので、そこはきちっとお伝えをしていくということが大事だろうと思っております。ありがとうございました。

〇青木委員 もう十分に御回答をいただきまして、ありがとうございました。
 教育現場で、ただ中・高の家庭科の中で、教員といえどもなかなかそういった、指導内容の部分の資料提供とか、実態とかがわからないかもしれません。そういったところを中学校の家庭科で、こんなのを使ってくださいとか、そういうのはあるんですか。今、そういう教材というか、そういったものがあるんでしょうか。

〇鈴木参考人 先般も、東京都とか千葉県とかでいろんな事件がありまして、文部科学省も学校は虐待対応をこんなふうにせえというものを出しておりますけれども、この項目に対する回答はないんです。ほかの通告の義務であるとか、そういうことについてはこういうふうにせえというようなことが書かれているんですけれども、この法律第5条の、子ども自身もしくは保護者に対して教育をしなくちゃいけないということに対するやり方はないんですね。やはりその辺は非常にまだ弱いところだと思います。今の段階としては、まず、学校の先生であるとかPTAの方がそういう啓発の中で勉強する段階なんだろうと思いますけれども、いずれこちらのほうにも向かっていくべきだろうというふうに思っております。

〇青木委員 ありがとうございました。

〇中瀬古委員長 いかがですか。

〇北川委員 貴重なお話、ありがとうございます。
 素人的な話で申しわけないんですけれども、日本の場合は、ここ数年、センセーショナルな事件の取り上げられ方の中で、やはり一時保護の強化とか、そういうところに注力されているところがあって、今、国の新しい方針の中では、児童相談所の職員の中の役割も、いわゆる分離保護する担当者と、その後の家庭をフォローしていく担当者とに分けてやりなさいよという流れがずっと来ている中で、先ほどの参考人のお話の中で、カナダの話で、いやいや、もうそんな時代ではありませんよ、一時保護するよりも家庭の中でと、もちろん緊急性の高いものばかりではなくて、それこそ先ほどの表にあったように、慢性的なものも含めて幅広く見ておられるからそういう捉え方になるのかもわかりませんけれども、何か今の日本の状況なり流れと、カナダの今のその考え方とのギャップをどうしても感じてしまうんですけれども、その辺はどんなふうに。あるいはまたカナダでやっぱり家庭をって、どちらかというと、今の日本の流れはやっぱり一時保護して、もうあかん親はあかんと、里親や施設に預けていったほうが、託していったほうがよっぽど子どもにとってええやないか、安全ですくすく育つのではないかという雰囲気で来たんだと認識しているんですけど、そこでまた改めて、いやいや、家庭ですよというふうに言われると、「んんっ」と思考がとまっちゃうんですけど、どんなふうにそこはつなげればよろしいんでしょうかね。

〇鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
 例えばカナダが正しいかというふうなことはわかりませんけれども、カナダは日本より20年ぐらい進んでいるんだろうと思います。児童虐待への対応というのは、やっぱり非常に揺れるんですね。非常に強く分離とかいうふうなことがある。それから、そうじゃなくて揺り戻しの時期、こういうのが非常に起こってくる中で一番必要な方策というのをされてきたんだろうというふうに思います。
 カナダなんかは、例えば先住民の子ども、トーテムポールが立っているような、そういう方の子育てというのは、こんなもんは未開なので児童虐待に当たるんだということで、先住民の子どもをどんどん保護して、白人の里親のところに預けるみたいな、結構手荒なことまで実はやってきておりまして、それの反省が今すごく出てきているというふうなことを、トロントに行かせていただいたときも言っておりました。そういうことで、本当に強いところから弱いところ、こういうふうに揺れ動くというふうな中で、やはり今の方策としては、まず支援を入れるということを一番重視しようということだと思います。
 見てきましたけれども、トロントでも通告数というのは日本の比じゃございません。そういう意味では、徹底していろいろやってきた中で、揺り戻しが来ているというふうなとこら辺ですね。日本は、まだそこまで行っていないというふうに思いますけれども、いずれそういうことが出てくる時期はあるんではないかと思います。
 ただ、やはり家庭でできる子どもは、それが一番いいと思います。児童虐待と一言で言いますけれども、実はいろんなタイプがまじっております。育児不安から子どもをちょっとたたいてしまったということもありますし、さっきお話ししましたような、ああいう支配関係の中で虐待が起こってきている、それは同じ虐待という言葉ですが、全然内容は違うわけですね。ですから、きちっと支援で何とかなる子どもというのは、どんどん支援をして、やればいいと思います。DV家庭へ支援ってしても、なかなか難しいところがございますんで、そういうところは場合によっては切り離すというふうなことを考えていかなくちゃいけないというのがありますので、やっぱり一つ、児童虐待という言葉だけでくくらないほうがいいのかなというふうには思っているところでございます。

〇北川委員 ありがとうございます。
 もう一つ、子ども家庭総合支援拠点のことを挙げていただいていたんですけれども、鈴木参考人は三重県のことにもお詳しいので、県内のその状況だとか、その設置の課題とかいうところを、役割も含めて少し説明いただけるとありがたいんですが。

〇鈴木参考人 そこについては、私は今、退職もしまして一応民間人ですので、答えるのはちょっとどうかと思います。幾つかの市では、非常に前向きに検討をしているんではないかというふうに思います。その話も聞こえてきております。ただ、例えば人をどういうふうに増やすのか。支援拠点はできたけれども、前と全然変わっていないとだめなので、そこをどう増やすのかというのは、市の内部でなかなか理解が難しいというふうなことを言っている人もおりました。支援拠点ができたから、すごく充実したものがばっと出るということではないかもわかりません。人数的な配置もそんなにあれで、大きく改善されるということではないようです。

〇北川委員 最後に、名張市なんか地元は、たしかもともと高齢者向けにある地域包括の拠点があって、そこに子どもや妊婦や生活困窮者や、そういうところの支援も含めて合算するような制度で進めていたかと思うんですけれども、それもある意味、子ども家庭総合支援拠点の一つという考え方になるんでしょうかね。

〇鈴木参考人 本当に名張市もすばらしい取組をされているというふうに思います。あそこはフィンランドを参考に取り組まれているというふうなこともお聞きしましたけれども、虐待への対応は、大きく分けて二つの対応があるというふうに言われています。片や、きちっと親の義務というのを強調して、できていなかったら、もう行政が取り上げて子どもを保護するんだ、世話をするんだというふうな考え方。もう片方は、きちっとした支援があれば親御さんはできるんだ、そういう能力をみんな持っているんだというふうな、二つの大きな考え方がありまして、ヨーロッパ、フィンランドとかは割と支援をするという側でやっていこうという流れの中にあります。日本は、今のところ、若干、取り上げるということに偏っていますけれども、この一つの考え方のほうは、それはすごくすばらしいことだろうと思いますね。ただ、それは決して子どもだけに限らず、おっしゃったような老人であるとか、障がいを持った方であるとか、いろんな方に優しいまちづくりということになるんだろうと思います。

〇北川委員 ありがとうございました。

〇中瀬古委員長 ほかにはいかがですか。

〇津田委員 人材が足りないというところで、ケースワーカーではなくて別の人材が非常に必要なんだというお話をいただきましたけれども、ケースワーカーというと児童福祉司だと私は思っているんですが、実際問題、ケースワーカー以外の人材で、どういう人材が必要なのか。こういうことが起きているから、ケースワーカーじゃなくてこういう人材が必要なんだということをちょっと詳しく教えていただきたい。

〇鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
 ケースワーカーはやはり非常に足りないというふうに思うんですけれども、ケースワーカーができることというのは、例えば親御さんから話を聞いて、その後、どんなふうに処遇を決めていくかというふうなことになってくるわけですが、例えば今、三重県の場合、子どもから話を聞くのは心理の担当者という者が多いわけですね。やはり心理の担当者も非常に多忙を極めております。子どもにきちっと話を聞くという意味では心理の担当者であったりとか、親御さんに話を聞くのに保健師という存在も、非常に三重県では大きくなってきていると思います。今、四日市の児童相談所と津の児童相談所に2人ずつ保健師が配置されていると思うんですけれども、親御さんの子育て不安があるとか、精神疾患のある親御さんとか、そういう親御さんに対して保健師の専門性ということで、いろんな話ができるということがありますね。
 それから、一般的な形でいえば、子どもを預かるときに、一時保護所というのがございます。そこには指導員であるとか保育士であるとか、行政職の方にも入っていただいたりしていますけれども、24時間、施設の中でケアワークというんですか、子どもの世話をするというような部署、そこもやはり人が足りないというか、子どもがいっぱいになって、もうこれ以上入れられませんということも、やっぱり時々起こってまいります。そういう意味でいうと、総合的に、ケースワーカーだけでなくて、いろんな背後で子どもを支えたり、親御さんを支えたりする職種も足りないということがあると思います。
 それと、児童相談センター、最初に申し上げましたけれども、そのバックアップする組織も、例えば里親研修であるとか、いろんなことをやっておりますけれども、あっぷあっぷしながらやっているところですので、本当に、子どもに直接ということではありませんけれども、総合的な力のパワーアップが必要ということでございます。

〇津田委員 ということは、もう全ての人材が足りていないという認識でよろしいんですね。三重県の場合は、他県はわかりませんけれども、だまされているのかもしれませんけども、他県と比べて非常に厚く人員を配置しているんだと私は聞いているんですけれども、それでもやっぱり全然足りないという現状でよろしいんですか。

〇鈴木参考人 法律で定められた枠というのは、やはり最低限守らなくてはいけないということであると思いますので、そこについては問題ないと思います。厚生労働省は全国を調べて、この県はどうのこうのというような数が出てきたりしますので、やっぱりそれは満たされていると思います。現場的に今これだけどんどん増えてくる中で、例えば過労死とか、そういうふうなこと、職員の負担なんかも考えると、私の中ではもっと職員が欲しいなと思うところです。
 ただ、これはいつも児童相談所職員にも申し上げてきましたけれども、忙しいのは児童相談所だけではないということで、どこの部署も、やはりそういうぎりぎりのところでやっておられるところがあります。ですので、そんなに自分たちばっかりが特別なことをやって、増やしてくれ、増やしてくれと言うのばっかりでもいかんのやないかという話はしておりますけれども、現実に、本当にニーズを満たそうとすると、いろんなところで足りない部分があるということでございました。

〇津田委員 人材育成だとか、また市町との関係で顔の見える関係をつくっていくというところなんですけれども、大体人事異動は3年か4年ぐらいで回ってきますよね。参考人としてみれば、もうちょっと専門職的な、3年、4年でかわっていくんじゃなくて、児童虐待にかかわる部署についてはもうちょっと長目のスパンで人事異動をしていくべきだというふうにお考えですか。

〇鈴木参考人 非常につらい質問だと思います。非常になれない人が来て、やっとなれてきたころに転勤をしていくと。それもなかなか自分に合っていないというふうに感じられる職員も多いもんですから、そんなに長いこと、4年も5年もおらされたらしんどいわというふうな思いがある方もいると思います。この業界の中には、児童福祉司というのは例えば10年やらんと一人前にならんみたいな言われ方があるんですが、現実にそういうのは、なかなか今は無理になってきていますよね。その中で、いかにある人たちだけに負担がかからないような形でやっていくのかというふうなことは、すごく大きなことなんです。それの一つとして、こういうデータ分析なんかもやっているわけなんですけれども、職員の年限ということからいいますと、どうでしょうか、もうちょっと長いことおっていただくとありがたいなというふうな思いはあります。
 ただ、それが10年もおってくれというつもりはありませんし、5年もいると本当に大変なことになってくるんだろうと思いますので。

〇津田委員 よくどこどこの側溝を直してくれだとか、土木で舗装してくれだとか、去年言った担当者がかわっていたら、そんなん、知りませんというのを自治会とか地域の人からちょっと聞いたりするんですけれども、児童虐待のケースは、やっぱり信頼関係で非常に属人的というか、信頼関係が非常に大事だと思いますので、三、四年で、短いスパンで回っているんであれば、少し長いスパンで人事を動かしていくということも大事なのかなというふうには思いましたけれども。以上です。

〇中瀬古委員長 ほかに。

〇中村委員 ありがとうございました、今日は。
 市の職員にお越しをいただいて、連携、人事交流をされている成果があったんではないかなというお話を聞かせてもらったんですが、そういった人たちというのは、具体的に児童相談所の中でどんな役割をして、戻ってからどんな活躍をされているのか、何かつかまれていますでしょうか。

〇鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
 先ほど、一定の効果があったというふうに申し上げました。これですね、児童相談所に来ていただいた方は、ケースワーカーとして児童福祉司の仕事をしていただいているということです。

〇中村委員 ケースワーカーの仕事。

〇鈴木参考人 はい。

〇中村委員 了解です。

〇鈴木参考人 それで、子どもの保護に行ったりとか、そういうふうなケースワーカーと一緒の仕事をしておるわけですけれども、戻ってからどうかというところなんですが、実は児童相談所でいっぱいいっぱいになっちゃって、戻ってから、もう別の仕事にかわりたいというふうにおっしゃったところも一部ございます。ということで、一定のというふうに、ちょっと何か限定的な言い方をさせていただきました。ただ、多くは児童相談の部署に移っていただいて、非常に連携よく熱心にやっていただいている方が多いです。
 やはり市も人事異動があります。県も異動があります。両方に人事異動があるわけですので、せっかくそれでつくった人間関係なり、連携関係というのが、人事異動の中で失われてしまうということはやっぱり起こってくるところが実はありますので、ちょっとつらい。ですから、継続的にいろんな形でやれればいいなと思っているところでございます。

〇中村委員 ありがとうございます。
 本当は、全市から、幾つか、さっき少なかったですけれども、いろんなところからどんどんと来てもらって、児童相談所の人員不足とか、そういったところもちょっとカバーしてもらって。何でかというと、平素から市の職員たちが結構現場に遭遇するわけですやんか、民生委員とか自治会長から、ここでこんな人がおるとか、大変なことになっているとまず言われて、児童相談所へ連絡したりとか、そんなところがスタートしているんですけど、まさに現場の最先端で、ほかの仕事もいっぱい抱えながら行って、そんな人たちが児童相談所で一定の力を蓄えてもらって戻ってくるという、これは市にとっても非常にありがたいことやし、児童相談所から見ても、それぞれの市に、自分のところでしばらくおってくれた、1年なら、1年の研修というか、体験した人がそこにおってくれるだけで、また仕事も連携も深まるし、いい形になるんじゃないかなというふうに思うんですが。そうやってそういうのが形として体制ができ上がってきたらええかなという感じはしますけども、どうなんでしょうね。

〇鈴木参考人 やはりそれぞれ市町には事情があると思います。そんな県のほうに出す人はいないというようなことも、現実にはあるかもわかりませんし、逆に県から交流ということで出すとき、誰を出すんだというふうなとこら辺も、今の人材不足の中ですごく大きな課題にはなりますので、全部の市町にやるというのも、非常に県にとっても重たいところはございます。
 ただ、今おっしゃいましたように、市町の職員に県に来ていただいて帰っていただいたら、すごくいいと思うんですね。市町の仕事というのは基本的に支援というふうに言われています。県が割と介入型で、市町は支援というふうに言われていますけれども、虐待というのは、再発してくるってことが結構あるんですね、市町が支援をしている中で、再発をしてくる。例えば家庭訪問に行ったときに、またたたかれてけがをしているとかいうふうなことが起こってくる可能性がある。ですから、支援というても、じゃ、支援だけしておればいいのかということではなくて、今の状況を見きわめて、すぐ介入に切りかえるというふうな厳しさも、支援の中には入っているんですね。ですから、そういうところは、児童相談所に来ていただく中で学んでもいただけるところだと思いますし、やはりそういうことというのは、なれないとできないところがありますので、できたらそういうのを進めていければいいなとは思います。

〇中村委員 ありがとうございます。
 あと、さっき、三者協同面接の中で、検察の方が入っているという話がありましたけれども、この辺のメリットというか、警察の場合は結構今までも、一般質問で取り上げたときにも、三重県は警察との連携はしっかりやっているんで完璧ですって、そんな答弁を何度もいただいているんですけれども、検察ということ、この辺のメリットをちょっとまた教えてくれませんか。

〇鈴木参考人 検察は、基本的に警察が調べた事件を裁判のほうに持っていくのかどうかというところを決める権限があります。つまり、警察は事件を調べるというところはしますけれど、その後については検事がやるということになるわけですね。先ほど、ちょっと触れさせていただきましたけれども、子どもの処遇を考えるとき、例えば性的虐待を受けた子どもがいて、これから家に帰れるのか、施設に行かなきゃいけないのか、それは家に帰れるというためには、加害者がそこにいないということが大前提ですので、その間、例えば加害者が検察のほうで裁判にかかって、しばらくは帰ってこないということがわかれば、家に帰れるという選択肢もあるわけです。そういうふうなところが、今まで警察だけではなかなかわかってこなかったところなんですけれども、検事と一緒にそういう情報交換をする中で、この事例はどんなふうに進んでいきそうですね、子どもにとってはこれからそういう裁判の中で、どんな協力をしてほしいんですというような、そういういろんなことが見えてくるわけです。それが子どもへの処遇にも役立つということは、これははっきりあると思います。

〇中村委員 三重県はそうやって警察、検察も入れてやっているって、さっきの写真でありましたけれども、そういう対応をされているということなんですね。ありがとうございます。
 まだよろしいか。

〇中瀬古委員長 はい、どうぞ。

〇中村委員 あ、ほか。

〇中瀬古委員長 じゃ、先に、杉本委員。

〇中村委員 ありがとうございました。

〇杉本委員 一時保護をした子どもは、大体1週間で帰っているケースが多いということで、家庭は本当に改善しているんでしょうか。どのような支援があってとか、一時保護されたということで、気をつけていくというか、そういうことなのかということを一つお聞きしたいのと、もう一つは、児童相談所の長時間勤務をどう減らすかという中で、療育手帳の認定は他部署へというのも、あ、なるほどというふうに聞かせてもらったんですけれども、もう一つ、その後の支援なんですけれども、本当は市町が子ども家庭総合支援拠点をつくってやるべきで、今も本当は市町がすべきだけれども、現実そうなっていない中で、案として児童家庭支援センター、施設がそれを持っているところも多いですけれども、そこに委託する、これは市町が委託するのかなと思ったんですけれども、選択肢として、児童家庭支援センター、児家センに委託するということは現実的なのかなっていうこと、それは施設の多機能化にもつながっていって、そのあたりのところへ近づいていくというほうがいいのかなというのと、とはいえ、やっぱり子どもなり家庭、家族なりをDVも含めて広く支援していくというところが大前提なので、そこはやっぱり市町の役割やと思うので、市町をどういうふうに今後もっと連携とか体制強化できるかというところはどうしたらいいんでしょうかということで、三つ目に提案された県と市町が協定を結ぶというのは、そのあたりのところなんでしょうか、協定を結ぶとしたら、どんな協定でしょうかというところを教えてください。

〇鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
 まず、一時保護、たった1週間で何が変わるんだというふうなところはあると思います。それは私どももそこを最大限話はするんですけれども、どういうふうな結果になるんだろうということはあったわけですが、実際データ分析をしてみると、一時保護をしたこと、そのことでその再発率というのが下がっているということが見えてまいりました。それを後づけで考えるとすれば、やはり委員がおっしゃったような、一時保護されたことということで、親御さんが考えるんだろうというふうに思います。
 それと、一時保護までされるということで、児童相談所はそこでほっておくわけではありませんので、様々な支援を入れるような努力をそこでつけておりますので、そういうこともあっていろいろ改善されていくんだろうというふうには思います。
 ただ、これで改善されない家庭というのはやっぱりありますので、そういうのを見きわめていくという作業がこれから要ると。どういう家庭にはそういうのが効果があるのか、どういう家庭には別のこれが要るのかというふうなところは、それもきちっとエビデンスのある形で見ていければいいなと思っております。
 それから、支援ですね。児家センも今のところまだ限られております。始まって間もないところもありますので、まだ十分力をつけているわけではないんですけれども、今、非常に熱心にやっていただいています。県からの指導委託なんていうのも実際起こってきて、ありますので、そういう中で力をつけていただいて、これから市町の仕事なんかも担っていけるような形になっていけばいいなと思っております。
 ただ、だからといって、市町の責任がないということではないのは当然のことです。そういうふうな、例えば児童相談所と市町がどんな役割分担をするのかというふうなことも含めて、今のところ具体的な決めというのは、国が出しております子ども虐待対応の手引きぐらいしかないわけですね。それは、きちっと協定なり何なりという形、これはあくまで私の勝手な思いなんですけれども、目の前にそういう形でしっかりつくるというふうな、共同作業をする中で市町の役割とか、そういうのを考えていただけるかもわからないなというふうに思うところです。本当にたくさんいろんな課題がある中で、児童相談所のやっているような、そういうところになかなか目が向かないということもあると思いますね。例えば御老人のことが大変であるとかいろいろなことがあると思いますけれども、そういう中で協定の話し合いをしようということになれば、いや、そんなん知りませんということではなくて、一定考えていただけそうな気が私はしております。

〇杉本委員 県と市町の役割分担というのは、私はもう法的にはできていると思っていたんですけれども、そんなに詳細なところまではないということでしょうか。加えて、一時保護の後の支援の役割は、本来はどこがするものなんですか。

〇鈴木参考人 法律的には、委員がおっしゃったような形で、例えば一時保護から帰った後、市町がサポートをするであるとか、そういうふうなことは書かれておりますけれども、現実に、じゃ、市町に十分人がいるかというと、そうではないですよね。ですから、次々と、一時保護、えっ、また帰ってきた、また帰ってきたと、どこまでできるのかというふうなことはやっぱりあります。
 本当にそういう意味では、どこでも手いっぱいでやっているところはありますので、簡単にぽいっとお願いということにはいかないわけですよね。ですので、そういうことも含めて。それから役割。例えば、今、送致というふうな言葉ができてきました。市町からなかなか難しいケースは県のほうに送致をする。市町がやったほうがいいケースは、県から市町に送致する。でも、具体的にどんな事例を送致するかというふうなところも、明確に市町と県が了解しているわけではないんですね。その辺のところも、一定の目安みたいなものをつくるとか、そういう中で将来的な展開なんかもそこに入れていければ、もうちょっと話し合いもできるかななんていうのは思います。ただ、余りそういうふうな例はないもんですから、どこまで実現可能なのかというのは、これから検討していっていただければなというふうに思っています。

〇杉本委員 ありがとうございます。
 もう虐待というと、県議会ばかりいつも議論しているんですけれども、市町議会でどれぐらいこのことが議論されているのかって常々私は思っていて。いろいろありがとうございました。

〇中瀬古委員長 ありがとうございました。
 質問もまだあるかもしれませんが、参考人も今日は大変お忙しく、この後、東京のほうにも行っていただくことになっておりますので、よろしいでしょうか、皆様方。

          〔「はい」の声あり〕

〇中瀬古委員長 ほかには御質問、済みませんが……

          〔「なし」の声あり〕

〇中瀬古委員長 このあたりで質疑を終了させていただきたく思っております。
 では、この際、参考人に対し、委員会を代表して一言お礼を申し上げます。
 本日は、大変お忙しい中、本委員会のために御出席をいただきまして、本当にありがとうございました。
 このたび頂戴いたしました貴重な御意見は、今後の本委員会での議論に反映し、役立てていきたいと思っております。本当にありがとうございました。

          〔「ありがとうございました」の声あり〕

〇鈴木参考人 お世話になりました。

          〔「ありがとうございました」の声あり〕

〇中瀬古委員長 それでは、以上で参考人からの聞き取り調査を終わります。ありがとうございました。

          〔「ありがとうございました」の声あり〕

〇中瀬古委員長 ここで暫時休憩いたします。
 なお、再開は2時35分からといたしますので、よろしいですか。

          〔「はい」の声あり〕

                  〔参考人 退室〕

                    (休 憩)

〇中瀬古委員長 それでは、休憩前に引き続き委員会を再開いたします。
  ウ 委員間討議   なし

第2 その他

〇中瀬古委員長 この際、ほかに何かございますでしょうか。

          〔発言の声なし〕

〔閉会の宣言〕
三重県議会委員会条例第28条第1項の規定により記名押印する。
医療保健子ども福祉病院常任委員長
中瀬古 初美

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