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三重県議会 > 県議会の活動 > 委員会 > 委員会会議録 > 平成31年度 委員会会議録 > 令和2年2月18日 予算決算常任委員会 会議録

令和2年2月18日 予算決算常任委員会 会議録

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予算決算常任委員会
会議録
(開会中)

 

開催年月日   令和2年2月18日(火曜日) 午後1時30分~午後2時55分
会  議  室    全員協議会室    
出席委員       50名
               委 員 長   小林 正人
               副委員長     杉本 熊野
               委     員   川口   円  喜田 健児  中瀬 信之
                          平畑   武  石垣 智矢  小林 貴虎
                          山本佐知子  山崎   博  中瀬古初美
                          廣 耕太郎  下野 幸助  田中 智也
                          藤根 正典  小島 智子  木津 直樹
                          田中 祐治  野口   正  倉本 崇弘
                          野村 保夫  山内 道明  山本 里香
                          稲森 稔尚  濱井 初男  森野 真治
                          津村   衛  藤田 宜三  稲垣 昭義
                          石田 成生  服部 富男  谷川 孝栄
                          東     豊  長田 隆尚  奥野 英介
                          村林  聡  今井 智広  北川 裕之
                          日沖 正信  舟橋 裕幸  三谷 哲央
                          中村 進一  津田 健児  青木 謙順
                          中森 博文  前野 和美  舘   直人
                          山本 教和  西場 信行  中川 正美 
欠席委員        なし
出席説明員   出席を求めず
委員会書記
        議事課      班長   中西 健司
        議事課      主幹   黒川 恭子
        企画法務課   主幹   早川 哲生
        企画法務課   主査   手平 美穂 
参 考 人     1名
           明治大学 公共政策大学院 ガバナンス研究科 教授  兼村 髙文 氏
傍聴議員     1名
          中嶋 年規
県政記者     なし
傍 聴 者   2名
調査事項
1 参考人からの意見聴取
(1)住民参加型予算の現状と課題について
 
【会議の経過とその結果】
 
〔開会の宣言〕
 
1 参考人からの意見聴取
 
○小林委員長 本日は、住民参加型予算の現状と課題について参考人からの聞き取り調査を行います。
 前回の委員会で決定したとおり、本日は、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授 兼村髙文様に、参考人としてお越しいただき、聴き取り調査を行ってまいります。
 本日の調査の進め方についてですが、はじめに兼村様からお話を伺い、その後各委員からの質疑を行うという順番で進めたいと存じます。
 なお、参考人からの聴き取りは、質疑を含め概ね1時間30分程度といたしたいと存じますので、御了承願います。
 また、参考人に御退室いただいた後に、委員間討議を行いたいと存じますのでよろしくお願いいたします。
 
(1)住民参加型予算の現状と課題について
  ア 参考人意見陳述
 
○小林委員長 それでは、調査に入ります。
 この際、参考人に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、大変お忙しい中にもかかわらず本委員会のために御出席いただき、まことにありがとうございます。
 委員会を代表して心から御礼申し上げるとともに、忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。それでは座らせていただきます。
 それでは、参考人からの御意見の聞き取りを行います。
 参考人の方からは、住民参加型予算の現状と課題、来年度予算に向けて本県で実施している、みんつく予算等について御意見をお聞かせいただければと存じます。
 では、兼村様、よろしくお願いいたします。
 
○兼村参考人 こんにちは。私は、今御紹介いただきました明治大学の兼村でございます。本日はお招きいただきありがとうございます。
 私の専門、地方財政なんですけれども、同時に、こういった市民参加、もう10年近く前から地方財政、財政が専門ですけれども、財政というのは議会制民主主義なんです。いずれにしろ国も地方も議会で全て予算を決めるということが大前提になっています。ところが、こういった中でも国のほうは財政、全然健全化しないと。民主的な決定は行われているんですけれども、財政が全然よくならないじゃないかというようなことで、どうしてこういうことなのかなということで、ちょっと疑問抱きまして、いろんな国を見ていると、こうやって市民参加の予算というのが随分広まってきていると。
 我が国は、まだ実際には、今日御紹介する市民参加予算というのは、まだ実施されていません。いろんな形で市民参加というような取組は、いろんな形で行われているんですけれども、予算に関して、市民が直接意思表明をして決定をするというような仕組みは、まだ導入されていないんです。ところが、海外ですと随分前からいろんな形で行われているということで、こういった取組も、我が国もやはり検討するべきではないか。こういった取組を、主に地方ですけれども、導入してはどうかなというようなことで、これまで幾つかの自治体の首長に会って、進めてきたんですけれども、まだまだ現実としては実際には実現していないと。
 ところが、御連絡をいただいて、みんつく予算というのを始めたと。ああ、いよいよ日本でもこういった市民参加型の予算が実施をされると。非常に私自身もこういう研究をしていてうれしく思って、今日はここに参加させていただきました。
 ただ、単純な疑問として、予算というのは、これはどこの国でも民主国家であれば、最終的には議会で議決をして承認されると、執行されるというようなもの。そこには代表制民主主義、投票によって選ばれた人たちが決めると。直接民主制を導入している国も、スイス、韓国とかアメリカのニューイングランド、若干ありますけれども、基本的には代表制民主主義で決めているというようなところです。
 なぜ、じゃ、今そういった市民が予算の編成に関わってくるのかというようなところ、これは幾つかの理由があるんですけれども、そんなお話をしながら、じゃ、今、会議でどんな事例があって、どんなふうに行われているのか、それから、どんなことが問題なのかというようなことを1時間程度お話をさせていただければと思います。
 お手元にレジュメがお配りされていると思いますけれども、今日1時間程度ですので、そこに掲げました内容についてお話させてもらえばと思います。
 最初、今、なぜ市民参加なのかという、これはあえて申し上げることもないんですけれども、とにかくやっぱり投票率がどんどん低下していると。これは日本のみならず世界的にも投票率がずっと下がっているんです。我が国の場合には終戦直後、国政90%ぐらいありましたけれども、そこのグラフでありますように、ずっと国も地方も下がり続けていると。これどこまで下がり続けるんだ、国政選挙でもそろそろ50%割るような、そこまで下がって、つまり2人に1人しか国政選挙ですら行っていないと。地方の選挙だともっと低いわけです。
 この次お話ししますけれども、そういった政治参加する人も少なくなって、議員のなり手もいなくなっていると。だから、投票する人もいない、議員のなり手も、代表制民主主義どうなっているのか。このままどこまで下がり続けるのか。恐らくこれは、投票率が低くなって選ばれるということになれば、これは大変なことになりかねない。ある一定の特定の集団が、ある一定の政策を掲げてぽんと入ってしまうと、場合によっては巨額の予算を動かしてしまうというようなことにもなりかねないわけです。そういったことが一つあります。
 それから、もう一つは、年齢別の投票率もこれも非常に偏っていると。そこにちょっとお書きしましたシルバー民主主義というようなことを言われています。若い世代、18歳に引き下がりましたけれども、相変わらず20代、30代の投票率が低いと、そうするとやはり政治、政策も偏ってしまっているというようなことにもなりかねないわけです。実際にそういうことも場合によっては起こっているということが言えるかと思います。
 今、申し上げたこの4ページ、無投票、投票率の推移ということで、ずっと下がって、30%ぐらいになっています。それから、隣の図にありますように、主要政党の立候補者数、これもずっと下がってきているわけです。ですから、投票に行く人も少ない。それから、政治のなり手もいないと。高知県の大川村でしたが議員足りないというようなことも、そういうのが実際に起こってきている。今後、恐らくそういうことも、これはまた行政区画等の問題でいろいろ検討されますでしょうけれども、実際にはそういうなり手もいなくなってきてしまっているというようなことです。政令市も一時無投票で当選してしまったというようなことがありました。
 こういうのがまず現状にあって、代表制民主主義を補完する、これ、じゃ、このまま放っておいていいのか。例えば投票率を上げるということであれば、オーストラリアとかイタリアでしたか、投票への義務化をしていくと、そうすると90%以上上がりますから。例えばオーストラリアは投票に行かないと罰則規定があるということで、じゃ、投票率を義務化して上げればいいのかというようなことになると、それも問題だと思うんです。何も政策あるいは政治に関心も持たない、ただただ投票所に行って、わけの分からない投票をしてしまうということになると、これは本当にそれでいいのかというような問題も出てこようかと思うんです。
 いずれにしろ我が国、そういった投票率の義務化ということは議論されていませんので、あるいはほかの国でも、それほど投票の義務化というのは議論されていませんから、じゃ、現状況の中で、どうやって改善策を見つけていこうかというようなことで、一つ言われてきたのが代表制民主主義を補完する直接民主主義というようなことなんです。
 市民参加予算というのは、ここでの市民というのは選ばれていない市民なんです。だから、直接に予算の決定にも関わってくるということでいけば、直接民主主義ということになるわけです。
 そこに書いてありますように、世界的にも低下する投票率、これを代表民主主義を基本としながらも、補完的に直接民主主義を導入してはどうかというようなことです。そういう意味で市民参加予算ということを位置づけているわけであります。
 じゃ、その直接民主主義として市民参加予算をどんどん導入すればいいかという問題でもないわけです。
 一つは、ただただ、じゃ、こういうのがいいから、じゃ、こういうのに俺やってくれ、これやってくれというと陳情になってしまいますので、参加する市民については、ここはやっぱりきちっと討議をしてもらうと。
 もう一つの議論がこの討議民主主義ということなんです。やっぱり行政あるいは予算というものは、ある程度その仕組みを理解してもらわないと、ただただこれやってくれというんでは、これは全く意味がありませんので、じゃ、予算というのはどういうのか、今、何が公共で問題になっているのかというようなことを、もう参加する市民については討議してもらうということなんです。これが重要なんです。ただただやってくれ、やってくれという話じゃなくて、とにかく興味ある人は市民参加予算に参加してくださいよ、その前に、それぞれ、例えば自治会単位でもいいですし、自治会単位でそれぞれ集まってもらって、こういうのが今度始まりますよ、今こういうことが問題になっています、じゃ、あなたたちはどういうような行政にやってもらいたいのか、あるいはどういうことが問題なのかというようなことをお互いに議論してもらう、討議してもらうというようなことなんです。できればそういうところにみんなに参加してもらうということが、この市民参加予算の一番のポイントになります。
 それから、もう一つは、もちろん多くの市民に集まってもらえばそれは一番いいんですけれども、ただ、やっぱり恐らく今まで各国でやってきた例では、多くて人口の5%程度なんです。多くは大体1%あるいはそれ以下の人口の比率でしか集まってきませんので、そうすると、どうしても参加するという人は限られてくる。何か行政に不満持っている人、絶えず何か言い続けている人というようなことで偏ってしまいますので、偏らないような、参加する市民については偏らないような工夫が必要であるということなんです。
 そこに、下に書いてありますように、市民参加予算は一つの直接の手法であると。ただ、そこには市民の討議・熟議があることが前提というようなことで、これがないと、やっぱりただ単に不満を持った人が入ってきて、これやれ、あれやれというふうになってしまいますので、あまりやる意味ないわけです。
 じゃ、こういうのはどこから始まったのかというようなことで次のページを見ていただくと、これは1989年なんです。ブラジルの南のほうのポルトアレグレ市というところ、人口140万人ぐらいでしたけれども、そこから実は始まったんです。市民参加あるいは市民参加予算というのは、もうもちろんそれ以前にもありましたけれども、今日につながっている市民参加予算というのは、まさにこのポルトアレグレ市で始まりました。
 どうしてここで始まったかといいますと、これは、ブラジルは1985年に軍政から民政に移管したんです。あちこちでいわゆる民主国家として、左派系の政党が首長あるいは知事に選ばれてきました。その中の一つの市のポルトアレグレというところで、ここも85年に市長選があったときに、労働者党、これは左派系ですけれども、労働者党の候補者が市長として選ばれました。彼がその選挙のときの公約として、この市民参加予算を実施するということで選ばれて実施をしたということなんです。この左派系の労働者党の首長が2004年ぐらいまでずっと続きました。
 最初は、もちろんみんなこういう仕組みについて知らなかったわけですけれども、だんだん、お、何か面白いことやっていると。実はその下に絵がありますように、これが以前、川だったんです。それが市民参加予算、自分たちの要望でこういうふうに改善されたと。これは非常に目に見える成果として評判になるわけです。
 ブラジルはまだまだ途上国でありましたので、それから、ブラジルの荒廃地のほうは、市民もほとんどこういった政治参加しなかったわけです。だから、そういった行政サービスは全く届かなかったわけです、貧民窟で。だからもう道路も舗装もされていない、それから学校もない、それから保健所みたいなのもないというようなところです。そういうところにこの左派系の市長が、どんどん参加して、どんどん要望を言ってくださいと。いろんなそういうところも含めて自治会をまとめていって、市民の要望を聞いて、予算を、投資的予算の半分ぐらいですけれども、こちらのほうに割いて、市民の要望に従って、こういうようなことをずっと進めてきたわけです。だから、目に見える改善が物すごく広がって、それで評判になって、ここの人口の5%ぐらいがこの仕組みの中に参加をしたということなんです。
 やっぱりこれは、各国から注目されまして、あちこちからこれを見に来る、視察に来るわけです。1990年代から2000年代にかけて。やっぱりこれはすごいじゃないか。国連でも取り上げて、いろんなそういった開発関係の会議がこのポルトアレグレで開催されました。それで、いろんなところで評判になって各国に広まっていったというようなことなんです。これが自治会、140万人、非常に大きい大都市ですから、集会にも多くの人がこうやって集まって議論をしたというようなことであります。
 ここに年間のスケジュールが書いてありますけれども、会計年度ですので、3月ぐらいから始まって、これは行政の方がそれぞれの集会所に行って説明をするわけです。予算とはこうですよ、あなたたちはこういうことやってくださいよというようなことです。
 それから、次は何をしてもらいたいか。行政はある程度メニューを示しまして、自分たちでそれを議論して、いや、もっとこっちをやってくれとか、あるいはこれはいいねというようなことを議論をして、最終的には、人口が多いもんですから、ここからそれぞれの自治会から代表者を立てて、代表者が集まって討議をして、最終的に予算のメニューを決めていくと。それを議会のほうに出して、議会でそれを、じゃ、どういうふうにするかというのは、最終的にはやっぱり議会で採択をして決めていくと、こういう手順になっています。
 どこの市民参加予算でも市民は幾つかのメニューを提案します。あるいは優先順位づけて提案しますけれども、最終的に決めるのは議会なんです。ただ、議会も市民が持ってきた優先順位、こういうところでやってくれというのは無視することもできませんから、ほぼ大体そのままですけれども。ただ、予算の規模とか、これはそれぞれの年度によって違いますから、最終的には議会できちっと決めて、あるいはそういった市民の要望も参考にしながら予算を決めていくというようなことで、それぞれ議会のほうもそれを参考にしながら決めるというようなことで、かなりここは10年以上にわたって実施してきました。
 もちろんブラジルでも、そこに書いてありますように250以上の都市に広がりました。それから、南アメリカの、チリあるいは他の国も同じようなことを取り入れて実施してきました。
 ここに書いてある、それぞれきちっと計算したわけではないんですけれども、世界では3000ぐらいこういった取組をしたんではないかというふうに言われています。非常にこういう目に見える成果がありましたので、住民にも感謝をされ、評判になったというようなことです。
 その後、どうなってきたかというと、これは、世界でどのぐらいの数が導入されているかという地図で、数を円グラフの大きさで表したんですけれども、今や各国で、いろんなところでこういった市民参加予算が実施をされています。そこにアドレスがありますので、御興味ある方はそれを検索していただくと、これがずっと詳しく書いてあります。大陸ごとに、どのくらいの国が導入していますかというのがずっと書いてある、数も書いてあるんですけれども、世界で1万という数字が出ていますけれども、これはちょっとなかなか数え方で数字がどんどん変わってきますので分かりませんけれども、ただやっぱり、まだまだずっとあちこちで導入されている、実施されているということは確かであります。
 その中で、幾つか大きな都市での事例を御紹介いたしますと、これはPBというのはParticipatory Budgetingの略なんです。参加予算というふうで。この49というのは、これはシカゴ市の第49区の、ニューヨークもそうですけれども、選挙区ごとに1人選ばれて、ニューヨーク市の場合は51人の議員がいますけれども、それぞれの議員が投資的な予算を、そこに書いてある130万ドル、毎年、議員にそれぞれ市から与えられるわけです。その予算については、その議員が投資的経費と投資事業として決めていいと、それぞれの選挙区の中で決めるということになっているんです。
 シカゴ市の49区の議員がポルトアレグレ市の事例を見て、これは面白い、ぜひ私に割り当てられている予算を、市民、選挙区民に決めてもらうということで、これアメリカでは、たしかここが初めてこういったポルトアレグレ市の事例を参考にしながらやりました。それぞれ選挙区民にこういうことをやりますということで呼びかけて集まってもらって、何をやろうかというようなことで、それぞれの選挙区の中の地区で市民に議論してもらって、場合によっては、それぞれここを直してもらいたい、このベンチがもうひどいからこれを直してもらいたい、それぞれみんなで歩いたそうなんです。歩きながら、これはどうだこうだということで、最終的にメニューを考えて、選挙民に投票してもらって、多い順に最大で130万ドルという金額まで埋めて決めていったと。
 これは、ニューヨーク市のほうにも広まりまして、今実際に、これはロゴマークですけれども、PBのニューヨークシティです。これはニューヨーク市のホームページ見ますとこれが出ています。こういった活動がそれぞれ行われていて、実際これまだ継続して広まっています。ここにアドレスがありますけれども、ここにこういった活動が毎年アップされて、こんなことを今やって、こういうふうに決めましたというようなことで出して出ています。
 それから、カナダ、トロント市です。これは、ちょっと形態は違うんですけれども、市の公営住宅の共用部分について、これは、そこに住んでいる住民に決定をしてもらおうというようなことで、これも公費について、市民の意見で使途を決めているというようなケースであります。カナダも市民参加予算、いろんな形で、幅広く市民の意見を聞きながら決めるというような仕組みを取り入れて実際に行われています。
 それから、この韓国なんですけれども、ここは、こういうポルトアレグレの事例を見て、幾つかの市がそれぞれ独自にこの仕組みを取り入れていったんです。これは面白いじゃないかということで、2012年に大統領令で導入を決めました。たしか李明博大統領のときだったかと思いますけれども。向こうは大統領制ですので、大統領がいいと言ったらもう即決めて、すぐ実施しました。実は2011年に大統領令が発令されて、その年に地方財政法が改正されて、2012年度からこの仕組みが、これは広域自治体と基礎自治体、全ての自治体に住民参与予算制というのが今実際に実施をしています。
 私も何回か見に行ったんですけれども、去年11月に忠清南道という、これは道ですけれども、日本で言うと県です。ここに実際にどういう実施状況かというのを見に行きました。担当者の話を、担当者ですのでいいことしか言わないんですけれども、うまくいっていますと。住民の意見をよく聞いて、ちゃんとこういう改善をして市民も随分喜んでいますと。うそか本当かは分かりませんけれども、住民に聞く機会はありませんでしたので分かりませんけれども、そんなことを言っていました。
 その下の市レベルの自治体へも行ったんです。同じようなことを言って、真意のほどは分かりませんけれども、実施しているということでありました。ただ、いろんな人に話を聞くと、ほとんどの市民が知らないんです、そういうことは。とにかく法律で決められてしまったので、毎年やらざるを得ないというようなことで、ほとんどのケースで形式的な実施状況にあるようであります。
 やっぱりもちろん大統領令ですから逆らうことはできないんです。やっぱり議員が忠清南道の例もいろんな人の話を聞きましたら、議会でやっぱり相当反対していると。なかなか条例がつくられなかったということなんです。やっぱり同じ懸念なんです。なぜそんな予算、大事なものを市民が決めてしまうのかというようなことで、これは議会でも相当反対したようですけれども、大統領令ですので実施しないわけにはいかないということで、今実施している。
 ただ、一ついい点は、ここにありますように市民予算学校というのを実は開いているんです。これはよその国はあまりないんですけれども、参加してもらう市民については、こうやって行政のところに集まってもらって、予算の仕組み、それから、何をこれからやろうとしているのかというのをレクチャーをして、理解をしてもらうというようなことがあります。こういった隣の韓国、韓国は非常にそういう意味ではスピーディにいろんな意思決定が行われている国であります。
 最近の事例でいきますと、大きなところでいくとパリ市です。こちらでも参考にされたようでありますけれども、女性の市長が誕生して、2015年から20年、今年度まで、この公共事業予算の一部について、市民に決めてもらうというような取組が行われています。概要がそこに書いてありますけれども、これは、いろんな仕組みが出ていて、これがパリ市のリーフレットみたいな、英語版なんですけれども、こういうので解説書が随分いろんな形で出ていますけれども、これが市民参加予算で決められた一つの成果です。
 それから、実際にはこうやって集まって、これは討議の場なんです。市民に、これは休みの日だと思いますけれども、こういう公共の場で市の行政のほうで説明をする。市民の中でいろいろ、どんな事業をしてもらおうか、これについてはどういうメニューを考えようかというようなことで、ここでずっとやっぱり議論するんです。こういうようなことが行われながら決められてきます。これも市民集会、討議の様子であります。
 これは、大体どこの国も、ヨーロッパ辺りはこういった幾つかのグループなり、分かれながら討議をしたり、あるいは小さい場合ですと、それぞれパネルにこんなものはどうかというのを貼りながら、これがそれぞれの投票、どういう事業を自分はやってもらいたいというのを、投票して決めていくというようなことであります。
 ここに予算が書いてありますけれども、年間予算80億ユーロ、日本円で1兆円余り、このうちの18%、かなりの金額でありますけれども、公共事業に使われていると。ここも公共事業のうちの何%かについて、市民に決めてもらうというようなことでありますので、投資予算の5%について市民に決めてもらいましょうというようなことであります。2014年、それから、2020年の市民参加予算の総額が5億ユーロ、658億円ということです。かなりの部分が決められているのかな。
 どうもいろんな内容を見ていますと、環境の投資、環境に関わるような事業に、そういった市民が要望を出しているようです。なかなか行政の立場でいきますと、やっぱりいろんな道路区画とか、あるいは学校とか、いろんな施設整備というようなところに、どうしてもやっぱり回ってしまいますけれども、市民からこういった提案をしてもらうと、行政がなかなか気がつかないところにメニューが出てきているというようなことがありました。そういったところのメリットも、この市民参加予算というのはあるのかなというようなことであります。
 日本では、市民参加予算ではないんですけれども、この市民参加型予算です。よく取り上げられてきたのは、市川市の1%支援制度、これを始めた前の市長が千葉市長でしたか、NHKのこのポルトアレグレみたいな番組を見ていて、これは面白いということで始めたらしいんですけれども、住民税の1%についてNPO等の支援に回そうじゃないか、今お話ししたポルトアレグレの市民参加ではないわけです。もう予算決められた中での予算の使い道ですから、市民参加予算というのは、予算を決める前に予算の使い道を決めましょう、これはもう決まった中で予算をそっちのほうに振り分けましょうということですので、厳密の意味ではありませんけれども、そういったアイデアの中で、日本で行われてきた一つの例ということで、これは市長が替わりましたので、もうこれはやめていますけれども、それと同時に、あと愛知県の一宮市とか、それから千葉県の八千代市、こんなところはまだ続けて、そこに示したような仕組みで実施をしているということであります。
 私も市川市にヒアリングに行ったんですけれども、そこに支援金額1500万円ぐらいということで、そんなに大した金額じゃないんですけれども、実はこの仕組みを運用するに当たって、市の職員とか、いろんな広報で、これに近い金額が行政の中で縛られているということで、結局その1%予算を運営するに当たって相当な金額がかかってしまっているということで、そんなにかかって、年々、住民もそんなに興味を持たないような仕組みをいつまでも続けてもしようがないというようなことで、市長が替わり、あまり代替するようなアイデアはないということでやめてしまったというようなことであります。
 我が国は、まだそういった市民参加型の予算というのも、本当に数少ないというような状況であります。
 市民参加の期待として、世界で、実は先ほどの図にもありましたように、まだまだ増えたりしているわけです。じゃ、どんなことを市民参加予算に期待しているのか。行政にとって、そこにちょっとまとめたんですけれども、期待できることとして、予算の仕組みを市民に理解してもらうと。韓国は予算学校というのを実施をしている。それから、実施に当たっては必ず地区ごと、あるいはみんな集まってもらって、そういうふうに行政が何をするのか、予算とはどういうものかというのを説明してもらうということで、理解が深まるだろうということです。それから、やっぱり行政の説明責任も一旦そこで果たされるのではないかということであります。
 あともう一つは、やはり市民にそういったところに参加をしてもらうということで、協働、co-productionです。こういったことも、より理解をしてもらうということができるんではないかということです。もっと大きく言えば地方自治、地方というものを自分の身近な自治体について、より実体として感じてもらうというようなことにもなろうかと思うんです。
 一方、市民にとってはどうかということでいきますと、いきなりぽんといくわけではありませんので、みんなで議論したりしますから、行政は何をしているのか、こんなことをやってきてくれているのかということを、実際に行政の人と直接話せる、あるいはお互いに住民の中でいろんな議論ができるというようなことで、そういったところを理解する機会が得られるんではないかというようなことです。まさにここは、そこに書いてありますように討議民主主義なんです。これは1990年代ぐらいから言われました。東欧の崩壊後、市民社会というのがまた見直されて、各国でそういう組織が、あるいは機運が高まってきました。
 我が国は、私もそうなんですけれども、学生運動のとき、そういったものが一時起こりましたけれども、なかなか今そういった討議民主主義というのは、我が国ではなかなか醸成されないようでありますけれども、ちょうど1990年前後の東欧が崩壊したときに、こういった市民社会というのがまた新たに出て、討議というのが復活をしてきた。これは討議民主主義というのは、大体そのぐらいのときから、またこういうことは言われ始めたわけですけれども、実際に、こういう討議民主主義というのは、やっぱり民主主義の基本ですから、市民の場で、市民がきちんと議論するという場を提供するということも非常に重要ではないかなというふうに思います。
 ここにちょっとまとめたんですけれども、市民参加予算というのは同床異夢であると。市民にとっては、そういった行政のあるいは予算に自分が関われるという機会を提供してくれるという意味では非常にいい機会だと思うんです。そういったところで行政と市民が一つの場で討議をするということで、協働という意識もきちっとまた認識されるんではないかということです。
 公共の資源、これは、今高齢化社会と言っていますけれども、高齢者も一つの資源ですから、そういった高齢者含めて、公共の資源というものを見直しながら、こういった市民との協働というのが重要になってくるんではないか。その一つの手段として、市民参加予算というのがあろうかと思うんです。
 一方、課題ももちろんあります。市民参加予算、数え方にもよりますけれども、2000、3000、あるいは先ほどのでいくと1万ぐらいあるんじゃないかというようなことも言われていますけれども、ただ、先ほど市民参加予算が始まったポルトアレグレ市、実はもう今やっていないんです。ほとんどのブラジルの都市で市民参加予算なくなりました。というのは、やっぱり左派系の市長から右派系の市長にどんどん替わりましたので、そうするとやっぱり右派系の首長というのは、どうしてもこういうのには積極的ではないわけです。それは民主主義というのは、議会できちんと決めればいいんだと。何もそんなわざわざ選ばれていない市民を、それから、特定の市民しか参加しないような、そんなものをやってもしようがないじゃないかというようなことなんです。結局は多くのブラジルの都市でも実際にはやめてしまったというようなことです。
 ただ、ヨーロッパあるいはアメリカ、先ほどのニューヨーク市もそうですけれども、向こうではむしろどんどん広まっている。じわじわとこういった取組が行われています。というのは、市民意識がずっと変わってきているわけです。市民意識がだんだんどんどん高まってくると、やっぱりそういうところに自分たちもそういった行政の予算に関わって、こういうことをしたほうがいいんではないか。例えばパリ市の場合には非常に環境にどんどん市民の意見、メニューが出ているようでありますので、やっぱり行政に目につかないような、気がつかないようなところ、どうしても行政というのは、いろんな枠組みの中で決めていきますので、そういうような中で、やっぱりちょっと細かいところのそれぞれ自治体レベルの環境事業というのは、これやっぱり直接そういうところに関わっている市民の意見というのは非常に貴重だろうというふうに思います。
 そういうようなことで、なかなか持続はしないんですけれども、ただ、ヨーロッパあるいはアメリカ辺りでは、いろんな形でどんどん広がっているということであります。
 ここで、ここに課題、一つ挙げておきませんでしたけれども、選ばれていない市民、とにかく興味ある人来てくださいよと言うと、言葉は悪いですけれども、いわゆるノイジー・マイノリティと言われる非常に意見の強い人、ノイジーなんて言ったら失礼ですけれども、ただ、やっぱり自分のエゴでどんどん来てしまうと、これもまた逆効果になってしまうんです。じゃ、どういうふうにして多くの人に参加してもらうか。どういうふうな仕組みがそこに考えられるのかということが一つポイントになるわけです。
 いろんな方法があるんですけれども、一つは無作為抽出というのがあります。討議民主主義の場合にもDPというのがあるんですけれども、Deliberative Pollingという仕組みがあるんですけれども。この場合は、日本でも例えば神奈川県の道州制という議論で討議民主主義というのをやりました。その場合に無作為抽出なんです。行政が年齢別あるいは男女別、階層別に無作為で抽出をして選んで、そういう人たちに集まってもらって討議をしてもらうと。そうすると偏りがなくなってくるだろうというようなことで、そういうのも一つの手法とあります。
 ただ、無作為抽出だとやっぱり大変な作業になりますので、なかなか簡単にはいかないと。多くのこの市民参加予算のケースでいけば、無作為抽出とか特定の人を偏らないような仕組みとして導入しているところは少ないです。多くはオープンに、とにかく誰でも来てくださいよ、それぞれ意見を述べてくださいよというようなことでオープンにしてあります。それが本来の姿かもしれませんけれども、ここはやっぱり一つこれから導入して進めていくとなると、議論の一つのポイントになろうかと思うんです。そういうような課題もあります。
 あるいはドイツのように、インターネットで参加をするというのもあります。ただ、インターネットで参加をしてしまうと多くの人が入ってきますけれども、そうすると討議ができないんです。結局自分の興味のあるものしか上げてこない、要望してこないということになると、じゃ、果たしてこれでいいのかというようなことになりますので、市民参加予算、確かにこういった投票率が低い、議員のなり手もいない、代表制民主主義、非常に危機的な状況にあるんじゃないかと。その一つの代替的な手段として、市民参加予算なら一つ考えられる方向かなということは思いますけれども、ただ、今お話ししましたように、やっぱり市民どういうふうにして選ぶの、じゃ、予算をどこまで市民に決めてもらうのということに、この辺はまだまだ課題があるところでありますけれども、代表制民主主義の一つの危機に対する一つのソリューションとしてはあるのかなということであります。
 最後に、これは市民参加予算とは直接は関係ないんですけれども、よく協働、協働ということが言われてきています。この字ですね、最近もう協働と言えばみんなこの字を書き始めています。これ書き始めたのはそんな古い話じゃなくてつい最近です。これは、もともとco-productionの訳として、この字を当てるようになってきたわけですけれども、もともとそのco-production、これはイギリスで始めたのですけれども、実はこれは成果と効率を目指して住民と専門的スタッフによるカイゼンの取組であると。ここは一つは専門家、専門的なスタッフとともに成果を目指して取り組むというのが協働なんです。
 この協働の取組としては、ここに挙げた四つが挙げられています。
 一つは、協働のデザイン、co-designです。例えば、これはイギリスの例ですけれども、こういった議会のホームページを利用者とともに作成しようというような取組がイギリスのある自治体で行われました。
 それから、協働の評価、co-assessment、サービスを当事者も参加して評価をして決めていきましょうというようなことです。評価というのは、イギリスから始まったわけですけれども、最近ではどうも評価疲れ、あまりにもあちこちで評価をしましたので、イギリスは全部、国も地方も事務事業評価、2010年にやめてしまいましたけれども。こういったアセスメントというのも行われていました。ただ、これはもうちょっと評判が悪くて、なかなかもう実施はしていないわけでありますけれども、つまり行政サービスというのは、評価というのは本来難しいんです。なかなかできない。評価できるんであれば民間のほうで全部やっているわけですから、民間でできないから行政が受けた、それをまた評価をするということは、これは論理矛盾なんです。だから、なかなか成果が上がらないわけなんです。イギリスはとにかくお金ばかりかかって大変だということで、もう既にこれ全部やめてしまいました。
 それから、もう一つが協働の計画ないし優先順位づけ、co-commissioningという、ちょっとこれ文章切れてしまいましたが、市民やコミュニティ等と協働して計画をつくりましょうというようなことであります。これは、まさに市民参加に入るわけですけれども、協働の取組の一つとしてこういうのがあるということです。
 それから、もう一つが協働のサービス提供、市民等の保有者も協働してサービスを提供するというようなことです。
 なかなかちょっときちっと分けることができませんけれども、こういったようなco-productionの取組というのが、いろんな細かいそれぞれ事業について今行われています。これは、ヨーロッパもこういった大きな事業じゃなく細かい事業、だからこの議会のホームページを、じゃ、住民と一緒につくりましょう、利用者と一緒につくりましょうみたいのも、これも一つの協働の作用というようなことであります。
 結局、協働というのは、自助、それから共助、公助というふうなことで、公共が高齢者の介護含めて、ずっとやってきたわけですけれども、なかなか財源の問題、いろんな人的な問題で、全て公助でということが難しくなりましたので、協働というのを、共助への逆戻りというのが最近いろんなところで議論されているというようなことであります。
 こういった公共のガバナンスでは、行政の役割というのは、これは奉仕者であり、調整役であるということ。協働の取組では推進役であると。ですから、市民参加予算というのは、やっぱり行政が入っていって住民との間を取り持ちながら推進をしていくという、これ非常に大変な仕事になるわけですけれども、公助から共助にいっていますので、全て行政じゃなくて民間と協働、まさにco-productionとして、いろんな事業を今後進めていかなければならない。既にいろんなところで、co-productionとして事業を進めてきていると思いますけれども、そういうようなことで、どんどんそういう時代に入ってきているということであります。
 その中で、議会、行政と議会というのは、協働の推進役として市民の信頼のもとに活動する役割を担うのではないかということ。既にそういうことでありますけれども。
 そのときに、少子高齢社会と言っていますけれども、高齢者も公共の資源として協働の取組に入って活躍してもらうことが必要になる。これはco-productionで、向こうで説明するとき、高齢者も、これはきちっとした資源なんだと。例えば65歳とか70歳ということで線引きするんではなくて、イギリスは、法律で年齢による退職が禁じられていますので、定年というのはないわけです。日本もだんだんそういうふうになってくると思いますけれども。ですから、高齢者ということではなくて、多くの成人の人は資源として、こういった協働の取組の中に入ってもらって、活動してもらうというようなことが今後、必要であろうというようなことであります。
 そこに最後に書いてあります市民参加予算の取組を通して討議・熟議を経た意見は動かないと。政治学もそうですけれども、きちっとした議論というのは、自分が意見が固まってくるとこれは動かないんです。ところが、意見が固まっていなくて、テレビのワイドショーか何か見て、これはいいんだと、悪いんだとか、そっちへすーっと流れていってしまう。そうすると、もうこれは自分の意見ということよりも大衆迎合、大衆に流されると、今度は政治もそういう大衆迎合にすーっと乗ってしまうということになれば、これはどういうふうになると、市民の意見というのは何だということになるわけです。
 やはり市民がきちっとした意見を持ってもらうために、やっぱりこういった機会を通じて議論をしてもらう、討議をしてもらうということが、今後の民主主義のきちっとした維持においても非常に重要なことではないかなというふうに思っております。
 最後に、理想的には、市民の政治、討議ですね、いろんなところで討議をしてもらう、こういう機会を通じて提供することによって討議をしてもらうということ。
 もう一つは、議会の政治です。これは、先生方はきちっとしっかりおやりになっていることと思いますけれども、そういった議会の政治とそれから市民の間の討議、これがきちっと、そういった市民参加予算みたいな機会を通じて、つながることによって、より民主的な、みんなが納得いくような意思決定ができてくるんではないか。そういうような機会を提供する上においても、市民参加予算というのが今後広まってくれればなというふうに私は思っております。
 以上、雑駁ではありますけれども、私からの話はこれで終わらせてもらいます。ありがとうございました。
 
  イ 参考人への質疑
 
○小林委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御意見を受けまして、委員の皆様から御質疑等をお願いいたします。
 なお、念のため申し上げますが、参考人は委員長の許可を得て発言し、また、委員に対しての質疑をすることができないことになっておりますので御了承願います。
 それでは、御質疑があればお願いいたします。
 
○小林(貴)委員 ありがとうございました。
 冒頭に、まず最初の問題提起として、投票率の低下が世界中で止まらないということがあったわけですが、国外のケースはいろいろ状況が違うので、国内の市川市、一宮、八千代、大分で、その後、投票率で何か変化があったかどうか、調査結果なり御所見があればお伺いしたいんですが、お願いします。
 
○兼村参考人 投票率は、私チェックしていなくて、上がったかどうかというのはあまり分かりませんけれども、ただ、この1%予算、支援制度に参加する人自体が、市川市の場合には、住民税を納税している人に限っているんです。ですので、その中でも本当にごくわずかの人ですから。ですから、全体として150ぐらいのたしか団体に出したと思うんですけれども、投票率までには至っていないというふうに私は思っています。
 ただ、それで一つ議論があったのが、それは憲法違反じゃないかと、住民全てにやっぱり機会を与えていないんじゃないかというようなことで議論になりまして、一宮市は納税者だけではなくて、18歳以上の人に全て投票権を与えたというようなことであります。ですから、それにしても人口の1%もたしかいっていませんでしたので、投票率の改善までにはいっていないというふうに私は認識しております。
 以上です。
 
○小林委員長 ほかにございますか。
 
○村林委員 ありがとうございました。
 御説明いただいた最初の、今もあった投票率が低下して、限られた民意、限られた政治参加の中で政治が動いていくことに対する補完的な機能として、こういう住民参加型予算があるという御説明だったと思うんですけれども、しかし、そうした位置づけとして今度捉えたときに、今御説明いただいた1%とか5%というような方々しか参加しないということになると、投票率が仮に50%だとすると、さらに限られた民意、限られた政治参加の中で政治が動くという今度は懸念があるような気がするんですけれども、その点はいかがなんでしょうか。
 
○兼村参考人 投票率を持ち出したのは、今の議会制民主主義というのが非常に限られた人によって決められていると。これは、だから代表制民主主義の危機じゃないかというようなちょっと申し上げたんですけれども。じゃ、その直接民主主義としての市民参加というのは、別にその市民参加に参加する人の数の多い少ないということではなくて、予算という非常に重要な意思決定について、その限られた人の議会、議員だけで決めてしまっていいのだろうか。例えば30%しかない、あとの70%はそこに参加していないと。そういう人たちが、これはいい悪いの話じゃなくて、じゃ、70%の人が参加をしていない、30%の人しか参加していないんで、その人たちによって決められていると、じゃ、予算をその市民全体の人たちによって、参加の機会を与えて決めるということもあってもいいんじゃないかというような意味なんです。
 だから、それによって、じゃ、市民参加に参加した人の数で議論ということではなくて、そういう人たちにそういう機会を与えるというようなことです。だから、70%の人が参加して、それはもちろん参加しないのは悪いんですけれども、ただ、じゃ、そのままでいいのか。予算は30%の人たちで決めちゃっていいのですか。じゃ、ほかに手段として、多くの人が参加しないんであれば、多くの人が参加する機会として、そういうものを設けたらどうですかという話なんです。
 だから、投票率という話じゃなくて、市民参加予算、直接民主主義的な制度としては設けておけばどうですかという話なんです。そうすると、どういうどれだけの参加があろうがなかろうが、機会が提供できるというふうで、そういう意味で補完的な仕組みというようなそういう意味なんです。
 
○村林委員 ありがとうございます。
 つまり機会の提供だと、参加機会の提供だというふうに理解させてもらいました。地方自治は、民主主義の学校だなんていう言葉もありますけれども、多分そういうことなんだろうなと理解させてもらいました。ありがとうございました。
 
○小林委員長 ほかによろしいですか。
 
○稲垣委員 ありがとうございました。いろいろお話をいただきまして。
 7ページの一番下のところに、アメリカでデンバー市等は予算削減のメニューを市民参加で決定というのを書いてもらってあるんですけれども、この予算を市民がつくっていくという、市民参加予算の今各国の事例の中で、この予算削減のメニューを市民が決めていくという事例も結構広がっているんでしょうか。
 
○兼村参考人 広がってはいないと思うんです。
 あと、もう一つは、ドイツのゾーリンゲン、ちょっと不確かなんですけれども、ドイツのある自治体が連邦からの補助金が削減されて、次年度の予算を削減しなくちゃいけないという事態に追い込まれたときに、市民に予算の削減のメニューを示して、それに投票してもらって、それで市民に決めてもらうということを導入したんです。
 つまり、ドイツは連邦国家ですので、連邦からの補助金がかなり占めているんです。その連邦の財政厳しくなったので、その下の都市の補助金をカットしようと。そうすると、自治体もその分予算を削らなければならなくなる、そういう事態になったときに、ドイツのたしかゾーリンゲンだったと思いますけれども、これだけの予算を削減しなくちゃいけない、そうすると、何を削減しましょうかというのを行政はメニューを示している。一つは増税、一つはこの予算の削減、それで住民、たしかインターネットだと思いますけれども、インターネットで投票してもらって、そのメニューを決めたと。これはデンバーもそうです。今はたしかもうやっていないと思いますけれども、そういう事例がありました。
 ただ、事例としては非常に少ないです。後ろ向きですので。
 
○稲垣委員 ありがとうございました。
 
○小林委員長 よろしいですか。
 ほかにございますか。
 
○北川委員 本当にいろいろと勉強させていただいてありがとうございます。
 市民参加といったときに、参加の在り方というのは幾つかあるように思っていまして、三重県なんかの今回のみんなでつくる予算も、参加とはいうもののいわゆる提案するという、提案型の参加という形で、その結果について住民、県民が責任を持つという形ではないんですけれども。
 一方で、恐らく先生の研究対象でもあっていただくと思うんですけれども、私、三重県の中の名張市というところですけれども、名張市は、地域内分権、都市内分権を進めていて、市内の15の地区に対して約1億円の地域予算を配分して、そして、それを15の地域がそれぞれ何に使うか、福祉に使うところもあれば、防災に使うところもあり、これは、それぞれの地域の中で話し合って決めるわけですけれども。これについては、使い方を決めることから最後の説明責任、結果に対しての責任を持つというところが非常に重たいわけですけれども、私的には本当のこの市民参加、住民参加というのは、そこまであるべきなのかなという思いがあります。
 ただ、一方で、三重県とか、この広域自治体で見たときに、そういう手法が、そういうお金の使い方から実施から最後の説明責任まで果たすような、そんな参加の形がとれるかというと、これはなかなか難しいんだろうなと思っていまして、やはり提案型という県民参加、市民参加が限界なのかなという思いもしているんですけれども。そんなところで、かつては三重県でも九つの地域に分けて、地域で予算を振り分けた時代もあったんですけれども、いわゆるその提案型ではなくて、もう少し住民が最後まで参画をして、説明責任まで担うような、そういう広域自治体の中で考えられる住民参加、県民参加の在り方というのは何かありますでしょうか。
 
○兼村参考人 おっしゃるとおりで、名張市は、そういう意味では非常に先進的な自治体の一つとして、私も注目をして、いつか行きたいなと思っていたんですけれども。
 今おっしゃったように、各町内会に、ある程度の資金を配分して、それぞれ使ってもらうというようなやり方は、幾つかの既に自治体で実施していると思うんです。私もちょっと関わったところでは、金額はそう多くないんですけれども、200万円とか500万円とか、そういうようなことで、それぞれ責任を持って使ってもらいますということでやっています。
 ただ、それぞれいろんな自治体に特色があるもんで、一生懸命やっているところもあるし、そうでないところも、じゃ、何に使うかというと、人件費に使ってしまうとか、いろんなやり方があると思うんです。
 ただ、やっぱり今おっしゃったように説明責任、行政はどんどん説明責任を言うんですけれども、住民のほうの説明責任というか、いわゆるパーセクティビリティとも言うんですけれども、きちっとそういうことを認識をして、住民の意識というのはそんなにないわけなんです。どうせ行政のお金という意味が非常に強いので、そこのところをどういうふうにきちっと干渉して責任を持ってやってもらうかというのは、ほかの国もそうなんですけれども、やっぱり住民のほうの意識というのはまだまだ低いので、行政ばかりどんどん説明責任、説明責任というふうに言ってというのが現状だと思うんです。
 僕も幾つか見てきましたけれども、先ほどもちょっとお話しした韓国の忠清南道の道レベル、県レベルですけれども、そこもやっぱり当初始まったときに議論したんですが、やっぱり県でやれるというのは限度があるよねと。住民と直接接することが少ないもんですから、住民の意見といっても、大きなところの予算でありますので、なかなか住民で決められないというようなことは、同じ共通の議論がありました。
 ただ、みんつく予算を見てみると、それぞれ住民もいろんな要望も出ているし、県でもいろんなそういった個別の住民との関わる事業というのは、見ていくと、やっぱりこういうのもあるんだなというような僕は感心しました。だから、それぞれ県レベルの予算での事業の在り方、市民参加予算の在り方、それから基礎自治体での在り方というのは、それぞれあろうかなというふうに思います。恐らく、これが今後続いてくればいろいろ改善して、いろんないい成果が出るんではないかなと。
 まさに初めてのケースで、非常に私もうれしく思って、やっと日本でも始まったかと。さすが三重県だな、公共経営でも、ここがまさに初めて財務処理をつくり始めたりとか、事務事業を始めた先進的な自治体の一つとして私も認識していますので、この市民参加も、また三重県から始まったというのは、またこれはすばらしい、ここでこういう機会を与えられたというのは、私も本当にうれしく思って、今日は楽しくお話をさせていただきました。
 以上であります。
 
○小林委員長 ほかに御質疑はございませんか。
 
○野口委員 先ほどから言われている民度というのはかなり難しいところあると思うんです。先ほど言われた選ぶ方は納税をされとった方とか、18歳以上にしたという話をされました。集まってくる人たちも一部だと感じているんです。全員が来られるわけじゃないんで、どうしても声の大きい方が、団体がなるような気がするんです。それをしていくと、本来の、先生が思っているようなんじゃなくて、その地域のある程度声の大きい方の声で決まっていくようなことがないんかなという話なんです。昔、高山市やったかで一度公民館に対して年間予算をつけて運営全部をさせて、5か所ぐらいでしたけど、、結局3か所ぐらいが横領か何かで捕まったという話聞いたことがある。そのときもやっぱりやる人の、指導者の民意の問題があって、そこまで熟してこないと、これはなかなか難しいのかなということ。
 それと、先ほど機会を与えるということですけど、僕はやっぱり今の選挙制度自体も機会を与えているはずですし、その予算の使い方については、各住民、自治会なり、住民の方が直接その行政に対して、やっぱりかなり議員以上にわあわあ言われていて、かなり声が張っているのかなと、これは市、町も含めてですけれども、そこら辺の考えというのはどういうふうに思われていますか。
 
○兼村参考人 やっぱり外国の例もそうなんですけれども、参加する人というのは本当に限られています。特にヨーロッパなんかというのは、ほとんど白人なんです。
 イギリス、例えばロンドンなんていうのは、白人は人口の半分以下なんです。そういうところの自治会の集会、僕も何回か出たんですけれども、そういうところに行くと、もう白人だけなんです。だから、日本はそういう意味では統一単一なんで、そういうことはないんですけれども、ヨーロッパでこういうことやっていますといっても、やっぱり参加する人というのは本当に限られてしまって、格差も本当にかなりありますんで、そうすると、じゃ、これで果たして民意かというと、そうではないんです。全員がみんな出てきて、議論してくださいよといっても、これはなかなか難しいと思うんです。だから、人口の少ないところだったら、スイスの一部は直接民主主義、これ人口、物すごく少ないですから、何百人単位というところであれば、これは可能なんです。
 だから、大川村みたいに、じゃ、全員協議会、そういうのをやろうじゃないかというところも出てくる。それは一つの方法かもしれませんけれども、やっぱりそれはどんな場面でも、なかなか全員が出てきて討議するというのは、現実では難しいと思うんです。
 だから、これはやっぱりだんだん、その意味でもこういう機会を提供しながら、こういうところに参加して住民参加予算というのはある、そういうのに参加すると、こういうことがあるんだということが分かってくれば、恐らく、だんだん、だから、ブラジルもそうだったわけです。最初は本当ごくわずかだったんですけれども、目に見える成果が出てくると、多くの人が集まってくるというのは、やっぱり実績でこれから示していかないと、じゃ、この民主主義だから皆さんどんどん来てくださいよといっても、それはやっぱり自分の身に何かいいことがなければ、なかなか出にくいと思うんです。
 そういう意味では、成果が生まれることはやっぱり多くの人とかが参加をする、あるいは民意が高まるということじゃないかと思います。
 そういう意味では、こういったのが一つの機会になればとは思っています。
 
○野口委員 最後にちょっとあれなんですけど、政権が替わることによって、廃止になっていったようなことを考えるときに、それが主だったのか、それとも廃止になっていったというのは、予算的に、先ほど言われたほかの問題が生じてきたから駄目になったのか、そこら辺どうなんですか。
 
○兼村参考人 世界の事例でいくと、多くの事例が首長主導なんです。議会の主導というのは、僕は一回も聞いたことがないんです。議会がやろうなんてまず思わないですから、議会の主導というのはないです。行政の主導というのはないんです。だから、首長がイニシアチブをとって導入するか、あるいはNPOです。
 今、スコットランドでやり始めているのは、NPOが起きて、そこにスコットランド政府がある程度お金をあげて、それでやり始めている。今10億円、ホームページもありますけれども、かなり市民の間では成果があって、いろんな事業をしているんです。だから、NPOが主体となってやるケースがごくわずかで、ほとんどが首長ですから、やっぱり首長が替われば、それぞれのマニフェストなり何なりで、僕はそういうような、市民参加予算というのは、やれないと言えば、それでばっと終わってしまうし、成果があれば、恐らく次の首長も、じゃ、受け継いで、それをやりましょうということになるかもしれませんけれども。
 ただ、あまり長く続いた事例というのはあまり聞かないです。
 
○野口委員 ありがとうございました。
 
○小林委員長 そろそろ予定の時間なんですけれども、あとお一人ぐらい大丈夫ですが、よろしいでしょうか。よろしいですか。なければ質疑を終了いたします。
 この際、参考人に対し、委員会を代表して一言お礼を申し上げます。
 本日はお忙しい中、本委員会のために御出席いただきありがとうございました。
 このたび頂戴いたしました貴重な御意見は、今後の本委員会での予算決算審査等の際に役立てていきたいと存じます。今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、以上で参考人からの聞き取り調査を終わります。ありがとうございました。
 ここで、参考人が退室されますので、着席のまましばらくお待ちください。
 
          〔参考人 退室〕
 
  ウ 委員間討議   なし
 
〔閉会の宣言〕
 
                             三重県議会委員会条例第28条第1項の規定により記名押印する。
                                             予算決算常任委員長     小林 正人
 

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